1787.覇権とその移行期について



覇権移行期の混乱時代に入ったようだ。昔書いたコラムをリメイク
する。   Fより

世界史の中心テーマは、覇権の移行史で、ギボンのローマ興亡史は
覇権確立から滅亡までのローマ史である。その他中国の三国志や新
書太閤記等、どの地域の歴史書もその地域の覇権の取り合いを描い
たものです。

・覇権のテーゼ
この歴史書を読むと3つのテーゼがあるようです。
1.第1テーゼは、覇権国が衰退すると、世界が不安定になると言う
 こと。
2.第2テーゼは、覇権国の条件は、軍事力と経済力が他国を圧倒し
 ている必要があること。
3.第3テーゼは、覇権の確立は、世界を支配する体制が必要である
 こと。

覇権は、世界のすべての人々に影響を与える。もし、旧ソ連や旧中
国、現北朝鮮のような国が世界の覇権を握ったら、我々の生活は今
に比べて貧しくかつ自由のないものになっていたでしょう。

もし、第二次大戦で、連合国に勝って日本とドイツが世界の覇権を
握っていたらどうなっていたかという仮定の話は止めるが、これも
今の世界とは違う雰囲気になっていたでしょうね。

・覇権の4条件
1.軍事力が他国を圧倒していること。
 米国は現在12隻の空母を持ち、常時3隻の空母を全世界に展開
 しているのです。
 この3空母で1編成され、1隻が配備、1隻が訓練、1隻が休暇
 というように構成している。他国は軽空母を1隻か2隻しか持た
 ず、常時空母を世界に派遣できない。
 このように、米国は世界でただ1つの大海軍国となっている。

2.経済力が他国を圧倒していること。
 軍事力は経済力の裏付けが必要です。軍事力の意味は、自国の海
 外での権益の保護が目的です。米国であっても、米国の利益のた
 めに軍事力を行使するのです。国連のためでも日本のためでもな
 いというおとを知っておくことが必要である。陰謀論の前提に、
 米国は世界のために振る舞いべきという暗黙の了解事項を持って
 いるようですが、それは違う。

 それでは、経済力が無くなるとどうなるのか?
 この良い例は、旧ソ連の軍事力が経済的な問題で、米国の展開し
 たスターワーズに対抗できないこととハッキリしたため、米国と
 の対決を放棄したことです。

3.文化・思想レベルが他国に比べて高く、その文化・思想をひろめ
 ようとすること。ナイのいうソフトパワーですね。
 戦後生まれた世代は、米国に強烈な印象を持っている。米軍キャ
 ンプにいくと、いろいろ便利な道具があり、おいしい食料・お菓
 子がある。米国に強く憧れたものです。これは、文化レベルが高
 いためですね。
 この憧れの気持ちは、米国の覇権確立を助けたはずです。
 少なくとも2度と米国と戦争しようとは戦後世代は思わない。

4.支配体制を確立していること。
 第2次世界大戦後の米国が構築した世界支配体系を見るのがてっ
 とり早い。米国は戦前参加を拒否した国際連盟に似た国連を作り
 、通貨体制としてプレズン・ウッド体制、IMFを米国指導でき
 る形で作り、金融として、世界銀行を作った。

・覇権移行の原因
 覇権の移行は、覇権の条件が揺らいだときです。
 ・軍事力が揺らいだ時
  軍事力が揺らぐと、他国の軍事力に挑戦を受けた時、脅しが効
  かなくなる。このことが、覇権の移行として推移していくこと
  になる始めです。

  また、経済力が他国より劣るとソ連のように軍事力を増強でき
  なくなる。軍事力が強く経済力が弱いと、近代以降では他国の
  経済権益を守ることになり、経済原理に反することになり、長
  続きしない。この状況に現在の米国はなっている。
  軍事力がグローバルで経済力もグローバル・パワーが一番安定
  していること。

  しかし、軍事力がグローバルで経済力がリージョナルであり、
  他国が反対に経済力がグローバルで軍事力がリージョナルであ
  る時、世界は不安定になります。

 ・米国と中国、イスラムの関係
  15年前クリントンは日本をたたき、米国経済の再復興を意図
  した。このため、国家経済会議のローラ・タイソンとMITを
  中心として、日本経済の原動力を研究し、米国の復活ができ、
  日本を沈没させることができた。
  米国はNECの方が国家安全保障会議NSCより上に位置づけ
  られた時期があったのです。今は再度NSCの方が上です。

  現在は、米国経済の復興を諦めて、経済では中国を利用しよう
  としている。そして、石油や資本主義以前の国家の社会資本を
  民営化させて、そこに投資して利益を得ようとしている。金融
  帝国化になっている。

 ・支配体制の崩壊
  支配体制は、軍事力や経済力に欠陥が現れた後に崩壊となる事
  が多い。それと文化レベルが他国より低いと判定されると、モ
  ンゴルのように軍事力が少し衰えると、すぐに被支配民族の反
  乱が多発し、支配ができなくなるのです。この減少がイスラム
  圏から出ている。

・覇権移行の歴史
 ・ローマからイスラムへの移行
  ローマ帝国崩壊時、ローマ文化・文献等をイスラムが引き継い
  だ。1世紀以上後、欧州のルネサンスまでイスラムが近代科学
  の基盤を保管・発展させた。アラセン帝国は中東・地中海地域
  およびスペインまで制圧した。それとシルクロードの交易で富
  も得ていた。

 ・スペインから英国への移行
  スペインの無敵艦隊を全滅させて、制海権を英国が取った。そ
  して、制海権取得の後、産業革命が起こり、経済力・軍事力と
  も他国を圧倒し、覇権を確立することにより、大英帝国を築く
  ことになる。

 ・英国から米国への移行
  英国の工業力が低下し、経済的に弱くなって、化学工業・自動
  車工業などの発展で経済大国化してきた独国に世界を分けてく
  れと、挑戦を受け第1次・第2次世界大戦となる。このとき、
  米国は積極的に英国を助け、第2次世界大戦後、覇権を英国か
  ら引き継いだのです。覇権国の味方が覇権を引き継ぐ可能性が
  高いようですね。

・今後の覇権移行
 米国の経済がだんだん欠陥を表してきて、絶好調な軍事力で、他
 国を圧倒しているだけの状態になっている。ソフトパワーも落ち
 ている。今の米国は累積債務が世界最大で、資金の流出が起こる
 とどうなるか分からないためです。米国の影響力は世界的ですの
 で日本の景気にも多大な悪影響を及ぼすはずです。

 日本が気がつかずにいたのですが、防衛費では世界で米国に次ぎ
 多いのです。このため、日米同盟、NATO、米韓同盟では日本
 だけが在米経費のほとんどを拠出している。在日米国軍は米国で
 一番安い軍隊なっている。

 日本の地政的にも、横須賀は海外米国軍で唯一空母を修理できる
 乾ドックがある空母基地ですし、米国と正反対のアジアにあり、
 政権も安定している民主主義国ですので安心です。

 英国等の欧州中軸国は安定していますが、EC全体というと疑問
 です。米国の言う通りにならないし、NATOに軍を出していな
 い仏国がある。イラク侵略戦争でも反対している。
 しかし、この米国が覇権維持できなくなったとき、日本か欧州し
 か覇権は維持できないと思う。しかし、欧州は米国と協調的では
 なく、覇権移行ができない。

 米国は中国を重要視している。日本の覇権国としての体制が出来
 ていない。世界的な支配の構図も持っていない。ただ、米国に追
 従しているだけであり、日本が覇権を取る意思がないと見ている。

 中国は、日本と違って世界支配の意思を持っている。反中主義の
 弱いのは、覇権意思を中華思想と言って、悪いこととしているが
 その意思を持たない日本は、その中国より頼りないと思われてい
 る。

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