1751.読者の声と木村コラム



郵政民営化の錯綜する問題点。 虚風老 

 郵政民営化における五つの視点。

○郵便制度の維持ができるか?
(ユニバーサルサービス)田舎も都会も同一の金額で、同一のサー
ビスが受けられる。というあれじゃな。
○金融民営化で、自己運用能力があるか?
公務員には、誰も、市場での運用能力があるとは思っておらんな。
○民間銀行・民間金融組織等にも本当に運用能力があるのか?
バブルでの金融敗戦。どんどん銀行はじめ、金融機関に不良債権が
積み上げれられ、潰れているのをみれば、(貸し出し先を捜しそこ
ねて、国債購入比率は上がっておる)金融市場での欧米金融資本に
対して、勝てるとは思えぬな。
リスクマネーに追い出された金が、市場に出したとたん、鴨葱で取
られていく気がするがね。その損失は自己責任という名前で正当化
される。だいたい、市場の強弱は、情報の収集、解析、対応の速さ
とともに、巨大さで決まる。どれも劣っていることは明らかじゃし
、近年、金融工学とも呼ばれる、IT・コンピュータ技術によって、
もっと差がついておる。(アマが直に参入したところで、すっから
かんにされて、負け組みに転落するじゃろうな)
○ 財投等、特殊法人などに投ぜられたモノの中身が既に毀損=隠れ
国債化(未来の税の先取り)してはいないか?
○ 世襲公務員・公務員というシステムに無駄はないか?
○ 国債の引き受けと、安定した(国民が、破綻を心配しないですむ
)金融の中核は、必要ないのか?

ありゃ、六つじゃった。

郵政を民営化しなければとうい意図を読み解いてみよう。米国の経
済学からみた視点でみれば、逆に分かり易いの。
日本人が持つ個人資産が、郵便貯金に大量に集まっておる。
銀行(財務省)や、市場にこれらを放出させる目的がある。
これによって、銀行には努力無しで、低利の預金が流れ込み、市場
で運用されることによって、株式相場を上昇させられる。
この目的は、資産をリスクマネー化させることじゃ。

ところで、日本の国民は、金融資産をあまりリスク化させてまで、
運用したいとは考えておらぬようじゃ。もし、金融利息を当てにし
ておるならば、今の0金利に等しい銀行金利に黙っちゃおらんだろう。
もともと、日本人は、利息や、運用益で生活するという気風がない。
生活は、こつこつ働くもんだと考えておるんじゃ。年金にしろ、そ
れがすべてとは思っておらぬが、基盤にはなると考えておる。(第
一、今時の子供等が、年金額位の仕送りをしてくれるとは思えんか
らのう。若年層の給与の伸びが、過去程にならないのは明らかじゃ
しね。これには、グローバル化ちゅうものも影響してくる、途上国
労働者の賃金との格差を考えればあきらかじゃ。労働市場ももはや
ボーダレス化しつつある。だからこそ、労働の質=国際競争力のあ
る製品を国内で生産する体制が必要なのであり、産業構造も変質せ
ざるを得ないわけじゃね。鎖国ができるわけじゃないしの)

話は戻るが、ここに二つの落とし穴がある。
銀行が不良債権を山のように溜め込み(つまり融資規律を失って)
、経済を危機に陥れた事実が厳然としてある。また、日本の金融技
術(財務省の金融知識にしても同じじゃが)アメリカの金融界から
みれば、まだまだ児戯に等しいレベルであるとうい事実もある。
もう少しいえば、法システムや、政治力での政策決定力にも格段の
違いがある。(つまりルールは彼等が作るというのを変えることは
できない)

ところで、もう一つは政府系の金集め集団には、巨額をやすやすと
集めるが、専門の運用能力が無いということだ。(年金資金=厚労
省なども同じじゃ)
そして、みんなが寄ってたかって、拡大「官」の無駄使いや、公共
利権、政策の問題を、ここで粉塗するために使われている。
言うなれば、<税金を食いモノ>にしておるわけじゃ。

財投など特殊法人等に使われた資金が、おそらく空洞化しているだ
ろうということだ(つまり、正確な財務諸表を作成すれば、恐ろし
い額が返済不能であり、ということは、税金(これの呼び名が変わ
ったのが国債=未来分の税金)で埋めなくてはならないということ
じゃ。その部門は、大量に国債を買っている部門でもあるから、二
重に国債漬けになっておるじゃろう。
民営化以前に、特殊法人等、公的金融の貸し出し先を、民間会計レ
ベルで、精査・公表することの方が、先じゃろうな。

いっそのこと国債の名前を変えて、「未来先送り分税」とでもしち
ゃどうかね。
一人一人の納税時に、あなたには、あと一人割りどれだけ借金があ
りますと記しておくとかね。それが、子供達にも借財として相続さ
れるというわけじゃ。
国債の問題が、いかに大変かを肌で感じておいた方がええじゃろう。

公務員に、本当に、郵便貯金・簡易保険の巨大な資金の<運用>が
可能かということじゃ。
銀行すら、融資先より国債にはしっとる現状での。

金融・貨幣の問題でいつも頭の中においておかねばならないことは
、<ドル>が、異常な貨幣であるということじゃ。(これを、基軸
通貨発行益ともいうがね)
そして、<ドル>というのが、他のマネーと同様の規律下にあれば
、別だが、アメリカの「軍票」化しておる今、しかもオフショアー
や、過大な信用創造(レバレッジ)などで巨大な数値化した投機性
のドルは、自らの動きによって、実態経済とは別にトレンドを生み
出し、現実経済をも破壊しながら、不安定化した変動から利鞘を稼
いでいく。

よく、フャンダメンタルや実態経済は大丈夫という言葉が、今や力
を持たないのは、経済の不安が「影」のように実態の何倍もに伸び
縮みする、マネー(ドル)経済に支配からじゃね。
そして、「影」がついに実態の振り付けをするようになってしもう
た。実態と、「影」の乖離は、そのまま、生活と経済の乖離でもあ
る。

社会にとって、重要なのは、「生活」である。
つまり、生活を支える形で、経済(経生済民)は構築されるべきで
ある。郵政の問題は、どういう形態にすれば「生活」をどれだけサ
ポートできるかという視点で構築されるべきじゃないかの。
                      虚風老
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Re:郵政民営化の錯綜する問題点。 堀田大作 
   
 > 日本人が持つ個人資産が、郵便貯金に大量に集まっておる。
> 銀行(財務省)や、市場にこれらを放出させる目的がある。
> これによって、銀行には努力無しで、低利の預金が流れ込み、市
> 場で運用されることによって、株式相場を上昇させられる。
> この目的は、資産をリスクマネー化させることじゃ。

郵貯はもう市場に出ているんだよ。銀行預金だって同じことで、ど
こかのリゾートや株につぎ込まれている。いまさら民営化したって
株は上がらない。むしろ、襤褸株につぎ込みにくくなるんだから、
下がるかもしれないな。

数百兆円の債務を中央政府が抱えているんだから、円はどっちにし
てもリスクマネーだ。箪笥預金を持っていることすら、ポジション
を持っていることになるんだよ。
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http://www.tinyalice.net
10月にイラクから劇団が来日して、東京、名古屋、大阪で
公演するようです。アラビア語のできるボランティアを、劇場が募
集しています。イラクに行かずして、イラクの現状に触れることの
できるボランティア、心あるどなたかいらっしゃらないでしょうか。
得丸
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『亜空間通信』859号(2004/09/06)
【911謀略説脅しブッシュに怯え民放労連メディア総合研究所『放送レポート』虚名
人唖然類型批判】
 
 自分の足元、関係者を抜きにして、一般的な批判をしてみても、覚悟が伝わらない
から、私は、以下のように率直に批判する。
 
 私は、民放労連のOBとしての義務感もあり、年会費として1万円を納め、民放労連
が後ろ盾のメディア総合研究所が発行する今は隔月刊の雑誌、『放送レポート』を郵
送で受けている。
 
 911事件は、メディア、特にテレヴィ放送を利用した戦争挑発の謀略である。とこ
ろが、これほど明確な事実を分析した記事が、『放送レポート』には、この3年間、
まったく掲載されなかった。
 
 私は、この『放送レポート』の前身、タブロイド紙の『おしゃべりアンテナ』の創
始者だった。民放労連の関東甲信越地連の放送問題と共闘の担当執行委員として、折
からのヴェトナム戦争下の言論弾圧との戦いのために、この新聞を、命を削る想いを
しながら、発刊し、関連の集会に出掛けて、自分の手で売った。
 
 その経験から考えると、『放送レポート』の堕落振り、著名人、いや、虚名人らの
実に下らない原稿、座談会、集会の討論の再録記事は、最早、見るに耐えない。
 
 これらの虚名人は、以下のようなブッシュの脅しに怯えているのである。
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http://www.whitehouse.gov/news/releases/2001/11/20011110-3.html
President Bush Speaks to United Nations
Remarks by the President
To United Nations General Assembly
U.N. Headquarters
New York, New York 
 We must speak the truth about terror. Let us never tolerate outrageous
conspiracy theories concerning the attacks of September the 11th; malicious
lies that attempt to shift the blame away from the terrorists, themselves,
away from the guilty. To inflame ethnic hatred is to advance the cause of
terror.
 われわれはテロについて真実を語らなくてはならない。9・11攻撃に関する許し難
い謀略説を断じて容認してはならない。それは、犯罪者、テロリスト、彼ら自身から、
犯罪への非難の矛先をそらすための悪意に満ちた嘘なのだ。民族間の敵意を煽ること
は、テロの目的を推進することに他ならない。
─ジョージ・W・ブッシュ(2001年11月10日、国連総会での大統領演説より) 
------------------------------------------------------------ 

次は、前レバノン大使として、外務省に逆らって、実質的な解雇、一応、まだ、虚名
とは言わない著名人、天木直人への批判である。

 私は、一昨夜、旧知の彼に、「木村愛二です。以下、緊急事態に鑑み、率直な意見
です。」として、以下の阿修羅戦争59掲示板への投稿のやり取りを、送信した。

1)------------------------------------------------------------
天木直人・メディア裏読み 9月4日 ロシアの学校占拠事件の悲劇に思う ほか
http://www.asyura2.com/0406/war59/msg/545.html
投稿者 天木ファン 日時 2004 年 9 月 05 日 09:43:31:2nLReFHhGZ7P6
[中略]
 ロシア軍撤退を要求するチェチェンの武装集団の抵抗とこれを徹底的に押さえつけ
ようとするプーチン政権の強権政治はついにここまでの悲劇を生むことになった。静
止できない残酷さである。あらゆる論調は抵抗組織の愚挙を非難し各国政府もまたプー
チン政権のとった措置に理解を示す。
しかしそれが正しいのか。
私は敢えて異を唱える。
[中略]
フォローアップ:

「天木直人・メディア裏読み」不勉強の裏読み批判  木村愛二 2004/9/05 10:41:55
(2) 
全文を確認せり。やはり「優等生」作文でしかなかった。 木村愛二 2004/9/05
12:22:32 (0) 
Re: 「天木直人・メディア裏読み」不勉強の裏読み批判  天木ファン 2004/9/05
12:20:31 (0) 

2)------------------------------------------------------------
「天木直人・メディア裏読み」不勉強の裏読み批判 
http://www.asyura2.com/0406/war59/msg/547.html
投稿者 木村愛二 日時 2004 年 9 月 05 日 10:41:55:CjMHiEP28ibKM
(回答先: 天木直人・メディア裏読み 9月4日 ロシアの学校占拠事件の悲劇に思
う ほか 投稿者 天木ファン 日時 2004 年 9 月 05 日 09:43:31)
 上記の投稿の「ファン」が本物のファンで、これが全文だとすれば、これは大変に
「不安」な状況である。
 私は、いかに超多忙中でも、「天木直人・メディア裏読み」の不勉強の裏読みをし
て、厳しく批判せざるを得ない。
 旧知の天木直人は、所詮、いわゆる暗記秀才のエリートでしかなかったのか。
 学校でも外務省でも教えていなくても、ここ、阿修羅戦争掲示板を見れば、チェチェ
ン紛争の背後に、アメリカ、CIA、もしくは、その雇い主の石油財閥のカスピ海石油
資源強奪が潜んでいることぐらいは、簡単に分かる。
 なぜ、それが出てこないのか!
------------------------------------------------------------

3)------------------------------------------------------------
全文を確認せり。やはり「優等生」作文でしかなかった。
http://www.asyura2.com/0406/war59/msg/555.html
投稿者 木村愛二 日時 2004 年 9 月 05 日 12:22:32:CjMHiEP28ibKM
(回答先: 「天木直人・メディア裏読み」不勉強の裏読み批判  投稿者 木村愛二 日
時 2004 年 9 月 05 日 10:41:55)
 一応、チェチェン関係の記事を調べた。至極残念だが、がっかりすることもない。
たいていは、こんなものである。
------------------------------------------------------------

4)------------------------------------------------------------
Re: 「天木直人・メディア裏読み」不勉強の裏読み批判 
http://www.asyura2.com/0406/war59/msg/553.html
投稿者 天木ファン 日時 2004 年 9 月 05 日 12:20:31:2nLReFHhGZ7P6
(回答先: 「天木直人・メディア裏読み」不勉強の裏読み批判  投稿者 木村愛二 日
時 2004 年 9 月 05 日 10:41:55)
 木村愛二さん、私の投稿に対しご批判、ありがとうございます。
 わたくしが、天木氏のメディア裏読みをここに転載させていただいている意味をお
察し下さい。天木氏と旧知でいらっしゃる愛二さん、どんどん直接、天木氏に愛二さ
んの見解、批判をお伝え下さい。
 失礼ですが、メール先は、下記のホームページに載っております。
http://www.amaki.info/
------------------------------------------------------------

5)------------------------------------------------------------
天木直人さんには率直な批判を送ります。彼の位置付けは重要です。
http://www.asyura2.com/0406/war59/msg/558.html
投稿者 木村愛二 日時 2004 年 9 月 05 日 12:51:29:CjMHiEP28ibKM
(回答先: Re: 「天木直人・メディア裏読み」不勉強の裏読み批判  投稿者 天木ファ
ン 日時 2004 年 9 月 05 日 12:20:31)
 天木直人さんには率直な批判を送ります。
 彼の位置付けは重要です。
 私が、67歳で、季刊『真相の深層』創刊を決意したのは、こういうことが、実に頻
繁に起きるからである。
 似非紳士、朝日新聞の記事や、国営放送、NHKのスペシャル何とか程度の知識で、
国際政治を論評し、CIA謀略を見逃す「論客」は、他にも沢山いる。
 新聞通信界の「重鎮」、「大御所」、原寿雄、しかり。その他大勢である。
------------------------------------------------------------

 この元共同通信社長、原寿雄も、『放送レポート』が珍重する虚名人の代表格であ
る。
 
 だから、もちろんのこと、『放送レポート』も、チェチェンの背後のアメリカ、
CIAのことなどは、知らぬ存ぜぬ、触れもしない。
 
 ところが、私は、今から5年前のユーゴ戦争に際して、以下の記事を発表している
のである。
 
 端的に言えば、『放送レポート』も、天木記事も、「ヘアも掲載」の週刊誌、『週
刊プレイボーイ』に劣るのである。どうじゃ。
 
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 http://www.jca.apc.org/?altmedka/play-s2.html
 (総括編2.最終回)「空爆」は世界に何をもたらしたのか?

 今回で『週刊プレイボーイ』のユーゴ戦争連載は終了となるが、この間、Web雑誌
『憎まれ愚痴』で百本ほどのユーゴ戦争特集を執筆し続けた私でさえも、主に日本の
若者を読者対象とするこの「ヘアも掲載」の週刊誌が、総計で15回もの連載の力作を
続け得るとは予想していなかった。プロの商業雑誌編集者がやっている仕事なのだか
ら、読者の期待があってのことと思う。「出版社系の週刊誌までが牙を抜かれた」と
言われ始めて久しい今、そして、心情左翼の読者を対象とする自称「総合雑誌」がま
すます薄味、調査不足、発表報道のオタク記事でごまかし続ける白痴的現状の中で、
まだまだ日本人も捨てたものではないと思い直すための唯一の手がかりをえた気分で
ある。

 この最終回では、ロシアの年末年始にかけての政変、エリツィンの辞任、チェチェ
ン攻撃で支持率を高めつつあるプーチン首相の大統領への道、などの事態急変の裏の
裏を解明してくれるかのような、実に興味深い情報と分析が示されている。多くの読
者が驚くのは、このところアメリカが「テロリスト」として指名手配の筆頭に挙げ続
けているオサマ・ビン・ラディンが、実は陰でアメリカ秘密情報筋と繋がっていると
の観測であろう。私はすでに、アフリカの2カ国のアメリカ大使館が爆破された事件
に際して、疑惑を投げ掛けておいたのだが、その時のmailの処理先を探し出せない。
要旨は、事件を解く鍵は常に利益を得た者は誰かにあり、あの爆破とそれに次ぐアメ
リカの「報復爆撃」で一番得をしたのは、当時国際的に窮地に追い込まれていたイス
ラエルだという分析だった。カスピ海石油をめぐる「イスラム原理主義者」の動きに
ついても、石油の買い手がなければ、説明が付かないという説を、昨年夏には、ユー
ゴ問題の運動関係者に話していた。それらの疑問への回答が、ここで示されているの
かもしれない。

 ともかく、ユーゴ戦争は、ベルリンの壁崩潰、湾岸戦争などの継続として見る時、
初めて、その歴史的意味が理解できるのである。
…………………………………………………………………………………………
『週刊プレイボーイ』(1999.11.21/28)
《迷走のアメリカ》総括編・最終回
「空爆」は世界になにをもたらしたのか?

イラクもユーゴも結局、なにひとつ問題は解決していないのではないか…。

クリントン政権の〈戦略なき世界支配〉を総括する!
[中略]
カスピ海周辺の天然資源をめぐる戦い

 そのきっかけとなったのがユーゴ空爆だった。エリツィンはIMFからの融資と引き
換えに、いとも簡単に友邦国であるユーゴを見捨てた。これが彼らの面子を著しく傷
つける結果となった。さらに追い打ちをかけるように空爆終了後のNATO軍によるコソ
ボ進駐ではロシアは完全に無視され、強引にプリシュティナの空港を占拠することで
やっとロシア軍はKFOR(コソボ平和維持部隊)に加わることができた。

 そして、軍部がこの屈辱から立ち直る前に今度はチェチェン紛争が再燃。首相のス
テパーシンはまったく有効な対応策をとることができず、紛争はダゲスタンに飛び火
する。ステパーシンの無能さもさることながら、この紛争は軍部と諜報部にとって絶
対に見過ごしにできないものだった。なぜなら、チェチェン・ゲリラの背後にはアメ
リカがいたからである。

 説明しよう。

 北カフカス地方、またウズベキスタンやキルギスタンといった中央アジア諸国のイ
スラム原理主義者たちはアフガニスタンのタリバンに支援され、訓練もアフガニスタ
ンで受けてきた。そして、彼らに資金援助を与えてきたのはタリバンのスポンサーで
あるサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)だった。

 サウジとUAEは、アフガン戦争の時にはアメリカの意向を受けでムジャヒディン・
ゲリラに、そしてソ連軍撤退後はタリバンに姿金援助してきた国である。これまでの
やり方が踏襲されたわけだ。このオペレーションを統括してきたのは他でもない、ア
メリカから世界最悪のテロリストとして指名手配されているあのウサマ・ビン・ラディ
ンだった。先月、彼の身柄引渡しに応じないタリバン政権に対して経済制裁が加えら
れたが、それは表の世界の話である。裏ではまだ彼はサウジ情報部を通じてアメリカ
とつながっているのだ。

 ビン・ラディンはこの夏、数ヵ月間にわたってチェチェンに潜入した。しかし、指
名手配されているはずの彼がアフガニスタンを出国してもアメリカはなんのアグショ
ンもとらなかったことからも、それがわかる。それどころかアメリカは、チェチェン
入りした彼へのインタビューに成功したヨーロッパのジャーナリストが執筆した記事
をもみ消してまでいるのだ。

 80年代、サウジ情報部のアフガニスタンにおける現地責任者としてCIAのオペレー
ションを援助してきた彼の持っているゲリラ支援のノウハウと経験をアメリカはまだ
まだ必要としているということだ。

 北カフカスでアメリカがゲリラを支援する目的は、莫大な石油と天然ガスを埋蔵す
るカスピ海周辺からロシアの影響力を削ぐことである。ロシアとしてはユーゴでやり
たい放題にやられた上、自分の裏庭まで引っ掻き回されたのではたまったものではな
い。すでにエリツィン派はアメリカに対して強硬な態度をとるつもりも、その能力が
ないことも証明されていた。そして、この現状を打破するために軍と諜報部を代表し
て政権内部に送り込まれたのがプーチンだったのだ。アメリカの迷走を止めるのはア
メリカしかない…

 順を追って説明しよう。

 エリツィンがステパーシン首相を解任し、その後任にプーチンを指名したのは8月9
日である。その数日後、ステパーシンは記者会見で、解任を申し渡された時、その場
にエリツィン以外の人間がいたと述べ、暗に自分の解任は何者かの意向が働いていた
ことを示唆した。

 次にプーチンの首相指名が議会で承認された直後から、IMFからの融資金も含まれ
るといわれる100億ドルのマネー・ロンダリング事件、スイスの建築会社マベテック
スからの収賄事件、また、アエロフロート社の資金横領事件など、それまで下火になっ
ていたエリツィン派のスキャンダルが一気に再燃する。

 これはプーチンがエリツィンとボリス・ペレゾフスキーに代表される取り巻きの新
興財閥勢力を無力化するために仕掛けたものだった。そして、検察の捜査によって彼
らを身動きのとれない状況に追い込んだ後、プーチンは時間をかけて各地から精鋭部
隊を集結させ、チェチェン進攻に打って出たのだ。

 ロシアのアメリカに対する態度が180度転換したのが明らかになったのは、先月初
旬に開かれたオスロ会議の場においてだった。そこでプーチンはロシア軍によるチェ
チェン進攻に警告を発したクリントンを、アメリカには関係のないことだと突っぱね
たのである。これは、もうお前たちの好きにはさせないというロシア側の宣言だった。

 これに慌てたのはエリツィンである。彼は急遽、休暇を返上して帰国したプーチン
と会見した。が、彼にはもう軍部をバックにしたプーチンを抑える力はなかった。翌
日、プーチンのチェチェン政策を支持する声明を出し、チェチェン進攻作戦を指揮し
ている軍人たちに「ロシアの英堆」という国家勲章を授与したのである。

 軍と諜報部による静かなるクーデターが完了した瞬間だった。

 ソ連崩壊以来、アメリカは旧ソ連諸国の資本主義化を外交政策の要として推進して
きた。だが、これが無惨な失敗に終わったのは、すでに衆目の一致するところだ。結
局、資本主義化政策はロシア経済をマフィア化させただけだった。世紀末を迎え、ア
メリカの外交政策は今、大きな転換を迫られているのだ。

 問題は、現在のアメリカに、この混沌とした世界の現状をよりよい方向に牽引して
いく能力はあるのかということである。この連載では90年代にアメリカが軍事力を行
使したイラクとユーゴ情勢を検証してきた。が、イラクでは行き当たりばったりの政
策しかとれず、問題を引き延ばしていくアメリカの姿しか浮かび上がってこなかった
し、ユーゴでは目的を達成するためなら手段を選ばない凶暴なアメリカの素顔が曝け
出されただけだった。

 アメリカのポリシー・メーカーたちを弁護するとすれば、冷戦時代の二極間構造と
は違い、外交戦略の目標を立てる際、いたって不明僚なピクチャーしか描けないとい
うことだろう。これはどの国がアメリカの立場に立たされても同じである。

 今のアメリカに長期戦略があるとすれば、それは世界唯一の超大国というポジショ
ンを維持し続けるということだけである。が、その長期戦略から出てきたものがイラ
クやユーゴで行なわれたことであるならば、今後、世界はさらに不安定化していくの
は必至だろう。

 アメリカの迷走を止めるのはアメリカにしかできない。もしそれができなければ、
21世紀に入るとともに世界は血で血を洗う文明の衝突の時代に突入していくことにな
るのだ。(了)

●長い間のご愛読ありがとうございました
------------------------------------------------------------
 以上。
木村愛二:国際電網空間総合雑誌『憎まれ愚痴』編集長


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