1748.アンバンドリング政策



アンバンドリング政策 アルルの男・ヒロシ
   
 ソフトバンクの新聞一面広告。
これはアメリカ大使館の日本政府に対する要求・恫喝と連動してい
る。

(貼り付け開始)

<ソフトバンク>総務省を提訴も 3G携帯周波数割り振りで

 ソフトバンクBBの孫正義社長は3日、総務省が第3世代携帯電
話(3G)用に周波数再編を進めている800メガヘルツ帯で既存
事業者のNTTドコモとKDDIに電波を割り振るとした方針案に
見直しを求める意見書を提出した。ソフトバンクは、方針通りに決
まれば「総務省を相手取った行政訴訟もやむなし」と強調した。
(毎日新聞) - 9月3日21時9分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040903-00000094-mai-bus_all
(貼り付け終わり)

電波有効利用政策研究会による「電波利用料制度の見直しについての
基本的な考え方最終報告書( 案) 」 に対する米国政府のコメント
平成16年8 月24日
http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-20040824-61.html


情報通信審議会による「平成17年度以降の接続料算定の在り方につ
いて 答申(案)」=7月27日発表に対する米国政府のコメント
(仮訳)

平成16年8月27日
http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-j20040831-50.html

(貼り付け終わり)

ソフトバンクの孫正義社長は、立志伝中の人物といわれるが、真実
のところは、アメリカ側のNTT解体論者に上手く取り入って、
パイを分割させているというところだろう。NTTという日本の国
家権力を後ろ盾にした、戦略的産業に対抗するには、世界覇権国で
あるアメリカの意向がバランスとして釣り合う。

それで、このアンバンドリング政策というのは何かというと、一言
で言えば「何でもかんでもバラしてしまえば、競争が促進されて、
産業が確信的発展を遂げる」という、自由主義経済のマントラを体
現しているような政策で、日本では、IT大臣の竹中平蔵、綜合規
制改革会議の宮内義彦らを中心に主張されてきた政策である。

ところがこのアンバンドリング政策というのは非常にくせ者で、ア
メリカでも、安定した国民のライフライン提供という観点ではあま
りうまくいっていないようである。

一例を挙げれば、電力の自由化(送電と発電の垂直分離政策)であ
るが、この政策が孕むリスクは、数年前のカリフォルニア州の大規
模停電やNYでの停電で明らかであろう。電力企業を分割民営化す
ることで、企業が公共ライフラインの責任を考えなくなるというの
は市場原理からすれば当然である。

次にNTTのアンバンドリングについて。これこそまさに孫正義氏
がアメリカの後ろ盾を得て、行おうとしている戦略である。第3世
代携帯でドコモのシェアを奪おうという、ソフトバンク社の意気込
みは正当なものだが、そのやり方が一種の「レントシーキング」的
な政策を要求しているわけで、アメリカの外圧と国内の「安い携帯
電話を望む庶民の声」という内圧を利用して、NTTの競争力を奪
おうという計画に他ならない。

NTTが単なる通信業者であればそれでも構わないのだが、日本の
安全保障上の「いざという時のインフラ」としての性格持っている
から、問題はそれほど単純なものではない。NTT以外の通信会社
が責任を持って、電話のユニバーサルサービスを提供できるのかど
うか。先端的な技術の開発を行えるのかどうか。まず第1に、通信
という国家安全保障上重要な技術を外資にゆだねることが、全体の
観点でみて良いか、悪いかというリスク判断をしなければならない。

国民とて、NTTがあるから、他の通信会社のユーザーになってい
るのであって、NTTがなくなればいいとは誰も思っていないはず
である。これは、NHKの問題に付いても言えることで、災害が起
きれば真っ先にNHKを見る。これはNHKが民間放送会社とは別
の役割を担っているという共通了解事項が国民の間にあるからであ
る。昨今のNHK叩きに何か背後があるのかどうかは知らない。そ
のうち分かってくるだろう。

NTT分割はAT&T分割になぞらえられる。AT&Tは分割した
ことによってもはやボロボロの状態になっている。

(貼り付け開始)

★バンドルサービスで破れたAT&T、個人向け電話事業から撤退
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040726-00000009-cnet-sci

★WSJ-AT&Tが資産評価見直し、多額の評価損計上の可能性も
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040805-00000030-dwj-biz

「AT&T」経営不安 通話料値下げ競争激化…格付け「投資不適格」 
[2004年08月19日 産経新聞] 

 【ワシントン=気仙英郎】米国の長距離通信大手、AT&Tの経
営に対する不安が広がっている。米政府の規制緩和に伴う通話料の
値下げ競争の激化で経営が急速に悪化しているためで、米大手格付
け会社が同社債の格付けを「投資不適格」に引き下げると相次いで
発表した。投資アナリストらの間では、AT&Tが新たな企業買収
の対象として取りざたされ始め、かつて独占企業だったAT&Tの
分割に始まった米通信市場再編の動きは、新たな段階に入ろうとし
ている。
 米大手格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズは今月三日
、AT&Tの上級無担保債の格付けについて、これまでの「BBB
」から「BBプラス」(投資不適格)に引き下げた。同様にフィッ
チ・レーティングスとムーディーズ・インベスターズ・サービスも
引き下げを発表しており、大手格付け三社がAT&Tの社債をジャ
ンク(紙くず)レベルと見なしたことになる。格下げの背景には、
電話会社同士の競争激化に加え、これまで長距離電話会社を優遇し
ていた米政府の方針が変更された事情がある。

 米連邦通信委員会(FCC)は今年六月、一九九六年の通信規制
緩和の際、地域電話会社に対して低い接続料で長距離電話会社に回
線を貸すよう義務付けた規則の変更を決めた。ケーブルテレビ会社
と高速ネットワークサービスの競争を繰り広げる地域電話会社は、
この規則で不利益を被っているとして、米政府や議会に対するロビ
ー活動を展開。連邦高裁が「現行規則は無効」とする判断を示した
ことで、FCCとしても方針を変更せざるを得なくなった。 

(貼り付け終わり)

ところが、最近、元日経新聞記者の町田徹氏はこのボロボロのAT
&T改革をべた褒めする非常に奇妙な本を出版している。(「巨大
独占/NTTの宿罪」新潮社 2004年)この本は、見るからに外資
の意向を受けて書かれた本で、出版時期が、上に示した米大使館の
要望書の好評と、ソフトバンクの全面広告の時期とピタリ重なって
おり、このことを考えてもその意図は明らかであろう。どうも町田
氏は、日経新聞時代から、NTTではなく新電電、外資側の視点で
記事を書いてきたらしく、今回の本もその取材の成果ということに
なっている。新聞記者というのは公正中立というのは大嘘でクラブ
に寄生している記者もいれば、このように外資系のお抱え(本人は
正義を実行していると思っているが、半ば自分が外資に利用されて
いることも気づいている)の記者がいるということだろう。

とりあえず、一言で要約すると、アメリカの日本に対する規制緩和
・撤廃要求のかなりのものが、本国で失敗して見直されている、新
自由主義的な政策である。司法分野でも、外弁法が昨年改正された
が、この外弁優遇政策もアメリカでは一部の州で実施されているだ
けで、日本のようにお上の判断ひとつでがらっと変わってしまうも
のではない。外弁法改正については、鈴木仁志氏の『司法占領』を
お読み頂きたい。

そういう危なっかしい政策を推進しようとしているのが、外資の代
弁とされる人々なのだろう。 
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国際金融資本と日本原理主義者 アルルの男・ヒロシ

 書評
『神々の軍隊−三島由紀夫と国際金融資本の闇』(浜田政彦 著)
三五館
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4883202119/kokusaisenrya-22


ああ、この本を読まなければよかった。この本には、途轍もない「
真実」が書かれている。

第1次大戦終結後から第2次大戦の勃発までの日本史の動きを「国
際金融資本」という補助線を引っ張って読み解いている。この補助
線なしには、日本が突入したシナ事変と大東亜戦争(太平洋戦争)
の泥沼はいかなる世界史的意味を持っていたのか理解できないだろ
う。政治家の動きだけを見ていては絶対に分からない。

当時(第1次大戦後)の日本には大略、3つの勢力がいた。一つ目
は「皇道派=新興財閥連合」、「統制派=大財閥(ロックフェラー
、ロスチャイルド系)連合」、「日本原理主義者(大本教、日蓮教
、浄土宗、国柱会など)」である。

「2.26事件」は、日本原理主義者と皇道派=新興財閥連によっ
て起こされた、反財閥、反国際金融資本のクーデタだったのである
。この大きな視点が、これまでの日本史解説書では全く欠けている。

皇道派の幹部たちも、本当に国体明徴による天皇の神権国家を作ろ
うという考えの人々は僅かで多くは、大財閥との利権争いの一環と
して、政治闘争を仕掛けただけであった。

ところが、大本教、日蓮教などの宗教的熱情から、天皇中心の国体
の明徴を実現しようとした「ラディカル」な、ある意味では純粋な
、日本原理主義者たちは、あくまで純粋に自らの志に従って散った
。筆者はここに三島由紀夫の自決と重なり合うものを見ているのだ
が、現代の日本人の視点から見れば、このあまりにも純粋な日本原
理主義者の姿は、イスラム原理主義のアルカイーダやタリバンとも
重なっていく。

原理主義はそれが「狂気」であるが故に、現実妥当性を持たず、金
と権力を握った者たちによって覆滅せしめられるのだ。原理主義者
の、武器は狂気だけであり、戦略を欠いていた。これが、日本があ
の戦争に負けた最大の原因であろう。

私は彼らの崇高な理念には共感はするが、これは危険なアイデアリ
ズムであり、リアリズムの観点からすれば、唾棄すべき「国際金融
資本」につながりながら、日本の独立をなんとか維持しようとした
政治家たちの立場を取る。

この本は、一方に2.26事件に連座した若い日本原理主義者たち
に視点を置き、彼らの姿に徹頭徹尾共感した形で筆を進めている。
その一方で、数々の文献を渉猟した筆者は、ロックフェラー、モル
ガン、ロスチャイルド、サッスーン財閥などの国際金融資本の中国
政策と、元々「国際金融資本」(判りやすく言えば、ユダヤ金融資
本)のひも付きであり、その限りに置いて自主性を許されていた、
日本の三井・三菱などの大財閥たちが、欲を見せて、「彼らの虎の
尾を踏む」さまを存分に描き出している。

昔も今も日本が国際金融資本の強い影響下にあるということは変わ
らない。昔は英国の属国として、今はアメリカの属国として。

この本の時代背景は妙に現在に重なっている。三井・三菱は「死の
商人」でもあった。今、アメリカの要求で、武器輸出三原則の見直
し、憲法9条の「改正」が行われようとしている。歴史はくりかえ
すのか。

本文の内容もさることながら、巻末に乗せられた文献録と人名辞典
の資料性を一段と高めている。天皇家は初めから、日本原理主義者
の抱くような理想を体現していなかった、というあまりに悲惨な現
実を、海外の文献まで調べながら立証している。天皇家のキリスト
教改宗運動を進めた、クウェーカー・コネクションについては最近
、YS氏が詳しく調べているが、本書でもYS氏の観点からとは全
く正反対の立場から検討が加えられている。 


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