1747.日本のソフト戦略



件名:日本のソフト戦略   S子  

▼米国のふたつのトラウマ
米国の飽くなき好戦性、攻撃性は一体どこからやてってくるのだろう
かと私たちが考えるとき、米国建国時における先住民のインディアン
虐殺を抜きにしては語れないようである。米国は先住民インディアン
虐殺という史実を直視することなく、それを正当化し、国家建設に際
して自由、民主主義を標榜した。

建国神話はどの国家にもあって当然だが、神話はあくまでも神話であ
り、歴史的事実とは異なる。しかし、米国は建国神話に消化されるほ
どには国家の歴史が至っておらず、その歴史の浅さゆえに先住民のイ
ンディアン虐殺は米国に大きなトラウマとなって残っている。

それは現在少数派に転落してしまった先住民のインディアンを米国社
会の底辺に置き、彼らを蔑み虐げるという社会構造下に抑圧し、その
上に大きな顔をして国家権力を掌握している欧州移民の子孫の姿が歴
然として今現在も米国に続いているからである。

十五年という長期に及ぶベトナム戦争の敗北は、米国にふたつめのト
ラウマをもたらした。米国人にとってアジア人(もちろん日本人もそ
うであるが)というのは容貌からして先住民インディアンと同一視で
きるものらしい。が、私に言わせれば、白人以外の人種は全て先住民
インディアンと同一視するという潜在意識が米国人に刷り込まれてい
るように思えてならない。

現在泥沼化しているイラク戦争においても、大量破壊兵器の存在を充
分確認せずに先制攻撃という手法を米国は取った。イラク国民も先住
民インディアンと何ら変わるものではないという米国独自の正当化さ
れた論理に基づくなら、先制攻撃という傲慢で無謀な米国の手法も納
得がいくものだろう。

米国にとっては戦後の日本支配体制があまりにもうまくゆきすぎたが
ために、ベトナムにおいても「柳の下の二匹目のどじょう」を狙って
いたようだ。だから何としてでもベトナム戦争で米国が勝つ必要があ
り、米国がこの戦争で負けるわけにはいかなかった。米国にとって、
ベトナム戦争の敗北は米国建国神話を崩壊させるに等しかったからだ
。

しかし、米国は負けた。アメリカンドリームをかけたベトナム戦争敗
北というショックは米国にとって非常に大きく、又重要な意味をもち
、歴史の浅い米国が学んだ唯一の教訓というのはこのベトナム戦争だ
けである。ここから米国の好戦性、攻撃性は強固なものになり、その
手法が変化したのは米国にとって当然の成り行きだった。

ベトナム戦争で米国は六万人に近い犠牲者を出している。米国はこの
悲しみから少しでも自国兵士の犠牲者をなくすために、湾岸戦争以降
はハイテク兵器を使用し、米国社会の底辺を生きる有色人種の兵士を
戦場に多く出兵させた。

要するに、純粋な米国白人は死なせたくないというただその思いだけ
である。そして、遂にイラク戦争において日本の自衛隊も米国の同盟
国として戦場に駆り出されたのである。

このように米国は国家における歴史的事実を直視することなく、又自
省することなくして我が身を常に正当化している。ふたつのトラウマ
から脱出、克服できない米国の欺瞞は米国を更なる好戦的、攻撃的国
家に駆り立てているのは否定できないだろう。

▼米国の国家威信とドル基軸通貨体制の危機
強い米国を強調したレーガン政権は、対ソ外交に軍拡強硬路線をとり
、結局そのことがソ連崩壊を早めてしまい冷戦終結へと向かった。し
かし、この冷戦終結が皮肉にも米国軍事費削減、歳出削減へと向かい
米国経済は不況に陥った。

湾岸戦争は米国経済が不況から脱出するための雇用対策だったとも言
われている。確かに湾岸戦争以降の米国経済は好転し、繁栄の10年
を米国は経験している。が、冷戦終結によりソ連の脅威が消滅したこ
とで、世界における米国の国家威信は徐々に低下し、米国の存在意義
が薄れつつあったことも確かだ。

1999年のユーロ誕生はそんな米国に追い討ちをかけるものだった。戦
後一貫していたドル基軸通貨体制が初めて揺らぎ、米国の危機が浮き
彫りになってきたのである。2001年の9・11事件は米国が対テ
ロ戦争へと向かうための格好の契機となり、米国の国家威信を世界に
再び印象づけるものとなった。

しかし、9・11事件は当初より米政府の自作自演ではないのかという様
々な陰謀論が沸き起こるほどあまりにも出来すぎた事件であり、それが
返って米国の国家威信を傷つける結果となってしまった。

イラク戦争は、結局米国の国家威信とドル基軸通貨体制維持を死守する
ための米国の戦いであり、米国建国神話を揺るぎないものにするための
戦いでもあると、私は思っている。イラク戦争の長期泥沼化をブッシュ
大統領は予想外だと言っているが、これは米国の計算通りではないのか
。

ベトナム戦争の二の舞だけは米国にとっては許されないのである。イラ
ク戦争で負けることは、米国建国時の先住民インディアン虐殺を正当化
してきた米国の歴史に直面し、今日までの米国の歴史の自己欺瞞を認め
ざるを得なくなり、米国自らを否定しなければならなくなるということ
を意味する。

そうすれば米国の国家威信もドル基軸通貨体制も崩壊の危機に立たされ
る。だからイラク戦争で米国は何が何でも戦い抜く。しかし、双子の赤
字増大による米国の経済危機からイラク戦争での米国軍事維持余力はな
い。自国で補えない軍事維持費は他国から調達することを湾岸戦争で知
った米国は、同盟国であり、経済大国である日本を手放すことはできな
い。小泉傀儡政権を使って米国は日本を意のままに扱う気でおり、米国
戦争経済維持のために米国は日本より戦費調達をする気でいる。

▼米国が日本に固執する理由
先住民インディアンの虐殺を繰り返し、彼らを米国社会にそれ以上立ち
上がれないよう少数派に落としいれたように、米国は終戦まぎわに日本
に原爆を落とし、日本を叩き潰した。そして、戦勝国米国による一方的
な東京裁判で米国は日本に最後の止めを刺した。

これ以降日本の精神性は死んでしまい米国による日本支配がはじまった
。が、日本に原爆を落としたことはさすがに米国の良心もうずいたらし
く、その支配は従来のものよりも緩やかであったようだ。米国の寛大な
措置が幸いしたのと、日本人が戦後の焼け野原から未来を展望すること
もできない状況にあり、「今」を生きることで精一杯だったことが幸い
して、米国が予想できないほどの経済大国へと日本は成長した。

米国はこれによりことさら先住民インディアンを否定するが、日本人と
先住民インディアンの立場の相違は、米国外と米国内にあるという間接
支配(属国)と直接支配の違いだけである。どうやら米国はこの認識を
明確にもっていないようで、だからこそ、戦後経済大国へと成長した日
本の姿が、米国による先住民インディアン虐殺を正当化しうる唯一の物
的証拠として、米国は日本に固執せざるを得ない。米国は日本を手放せ
ないというわけだ。

戦争経済でしか生き残れないことを確信した米国は、これからもひたす
ら暴力という力に依存して生きてゆくのだろう。彼らの頭の中は暴力だ
けが正義であり、米国の象徴であり、米国にとって暴力で世界をねじ伏
せることだけが世界を理解できる唯一なのである。そうやって暴力を正
当化してゆかないことには「先住民インディアン虐殺」というトラウマ
から抜け出せず、「ベトナム戦争の悪夢」に再びさいなまされるからで
ある。

小泉傀儡政権による米国の日本潰しは一体どこまでゆくのか。このまま
では日本経済という生き血を米国に吸われてしまい、日本は本当に立ち
上がることなく死んでしまう。私たち日本国民は一体どうすればいいの
だろうか。

▼ 文化交流による意識の共有
2004年7月17日〜25日まで、ニューヨークのリンカーンセンタ
ーで平成中村座の歌舞伎公演がおこなわれた。今から400年前、江戸
時代の芝居小屋を再現しておこなわれたこの大掛かりな歌舞伎公演は、
ニューヨークに江戸時代の芝居小屋という異空間を作り出し、そこに日
本の歌舞伎という異文化を披露、国籍さまざまの異邦人が集い、摩訶不
思議な魅惑世界を人々は共有しあった。

テロの脅威を煽りハード戦略を生きるブッシュ政権下にあって、日本の
民間人による歌舞伎交流というソフト戦略は効を奏し、ニューヨーカー
たちを魅了してやまなかったようである。歌舞伎はその字の通り、歌(
ソング)舞(ダンス)技(プレイ)のまさに三位一体となった日本の伝
統的総合芸術である。小泉首相の提唱する三位一体改革とは違い余程わ
かりやすかったらしく、日本の歌舞伎は米国に受け入れられ、彼らのか
たくなな心を解きほぐした。

現在米国には歌舞伎だけでなく日本のアニメやテレビゲーム等の文化が
流入浸透しはじめ、米国民に容認されつつある状況を生んでいる。米国
は対テロというハード戦略しか頭にないが、米国民が本当に求めている
のは心の底から癒される文化面というソフト戦略である。

今米国民の心は戦時体制下で萎縮してしまい、文化面において質の低下
劣化が起こり、真に米国民が求める癒しが米国内から出てきにくい状況
にある。ヨガや瞑想といったものも静かなブームになっていることを知
れば、彼らが強い米国という暴力世界に生きるのではなく、精神世界に
生きる光明を見出しはじめているのがわかる。米国民の心が強い緊張感
の継続で疲弊しきっているのだ。

小泉傀儡政権に象徴されるように日本の政治家は米国のあやつり人形と
化し、今や日本は日本でなくなりつつあり、日本独自の政治や経済をお
こなうことが不可能になりつつある。小さいものは叩き潰され、大きい
ものだけが救済され生き残る。その生き残った大きいものさえ外資の標
的にされ奪われる。小泉傀儡政権の下では国民の声はまったく届かない
と言っていいだろう。

しかし、いやだからこそ日本国民が日本の精神性に立ち返らざるを得な
い状況が生み出されてきたと言える。日本の政治家が米国のあやつり人
形となっているなら、私たち民間人は文化交流というソフト面で米国民
の心を懐柔、溶かせばいいのである。米国がハード戦略でくるならこち
らは民間人によるソフト戦略で対抗すればいい。ハード面ばかりに米国
が気をとられている間に、日本のソフト戦略を静かに米国に浸透させて
も米国政府からは何のおとがめもないだろう。

米国はひたすら暴力で世界を理解しようとしているが、所詮暴力は殺人
と否定だけでしかない。私たち人間の意識が認識論であるなら、国籍の
違ったもの同士が空間的、時間的にもより多くを共有し合うことで、は
じめて互いを理解し合うことができる。暴力という一方通行では意識を
共有し合うことなど不可能だ。

私たちが習うのは英語や米語ではなくて、日本語を含めた日本文化を世
界に広め、地球に生きる全てのものと共存してゆく世界を創ることであ
る。

参考文献 「日本がアメリカを赦す日」   岸田 秀著  文春文庫
     「帝国アメリカと日本 武力依存の構造」
            チャルマーズ・ジョンソン著  集英社新書

     永井俊哉ドットコム「ブッシュはなぜ戦争を始めたのか」
    http://www.nagaitosiya.com./lecture/0163.htm

増田俊男の時事直言 「クリントンの遺産 アメリカ国家存亡の危機」
http://www.chokugen.com/opinion/backnumber/h16/jiji040802_260.htm

平成中村座
http://www.heiseinakamuraza.jp/index.htm
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ドルという、キツネの葉っぱ。 虚風老 
   
 経生済民→経世済民じゃったな。経世会も、これから採ったんじゃ
ろう。それがガタガタになっとるのは、皮肉じゃね。
自己の権益・利益のみに走れば、長くはもたぬ。奢れるもの久から
ずじゃな。

アメリカさんにも言っておきたい言葉じゃね。
                     虚風老
九月は色々起こるようじゃ。結界を張れるモノは、はった方がよか
ろう。
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件名:二極分化のなかの米大統領選挙  

民主と共和、米政治潮流の変化/ブッシュ氏再選は日本にプラス
外交評論家 井上 茂信
保守対リベラルの一騎打ちに

 十一月二日の米大統領選挙は共和党のブッシュ、民主党のケリー両候補の間で戦われる
 ことになった。激戦が予想される。ブッシュ候補は宗教右派の支持をも受けた保守のな
 かの保守派候補。ケリー候補は民主党の最もリベラルな候補であり、保守対リベラルの
 一騎討ちという点で米社会の二極分化を象徴する選挙でもある。米国の二大政党、共和、
 民主両党の相違点は何か。どちらの候補の勝利が日本の国益にとりプラスだろうか。

 注目されるのは一九八〇年以降、米国の政治潮流に劇的な変化が生じたことだ。その変
 化は日米関係の今後を考える点でも重要だ。米国のシンクタンクAEIの評議員ジェー
 ムズ・グラスマン氏は「たとえケリー氏が勝利しても、この潮流が逆転することはない
 だろう」と断言している。その変化とは何か。

 これまで米政治を支配してきたのは民主党優位の潮流だった。同党のフランクリン・ル
 ーズベルト氏が共和党のハーバード・フーバー氏を大統領選挙で破ったのは一九三二年。
 共和党のレーガン氏が民主党のカーター氏を破ったのは一九八〇年だ。この間の四十八
 年間を見ると、三分の二にあたる三十二年間ホワイトハウスを支配したのは民主党だっ
 た。またこのうち、四十四年間を民主党が大差で上下両院を制した。民主党のゴールデ
 ン・イヤー(黄金時代)が続いたのだ。

 一九八〇年の選挙から風向きは変わった。インフレ阻止と減税さらに共産主義への巻き
 返しを掲げたレーガン氏がカーター氏に圧勝した。レーガン氏の思想的基盤は米国の伝
 統に復帰することを求める保守主義だが、彼の先駆けはゴールドウォーター上院議員だ
 った。そして彼の後継者がブッシュ現大統領だ。ゴールドウォーター氏は六四年の共和
 党全国大会で大統領候補に指名されたが、民主党のリンドン・ジョンソン氏に大敗した。

抵抗運動の混乱で民主党退潮

 だが、同氏の最大の功績は、大学や保守系のシンクタンクを中心に強烈な反共思想とと
 もに、信仰や家庭第一主義を中心とする保守派のイデオロギーを構築し、“サロン的”
 とされた同党を“戦う党”へと変身させたことだ。

 米国の政治史を一変させたレーガン氏は、ゴールドウォーター氏の応援演説を行った。
 この演説が名演説であったところからレーガン氏の知名度が一挙に高まり、六六年のカ
 リフォルニア州知事選出馬のきっかけになった。

 八〇年から二〇〇四年までの二十四年間のうちの三分の二の十六年間、共和党がホワイ
 トハウスを制した。この間の十四年間上院を、十年間下院を同党が支配した。現在五十
 州の知事のうち三十州が共和党員である。大きな政治潮流の変化だ。

 民主、共和両党の基本的な政策面の相違は、民主党が政府の介入による富の再分配で社
 会の公正化を目指すのに対して、共和党は介入をできるだけ排して国民の自助努力と発
 意で富の創出をはかろうとする。ルーズベルト大統領のニューディール政策、ジョンソ
 ン大統領の「偉大な社会計画」が同党の政策の典型だ。さらに公民権拡張、少数民族や
 組織されない人々の支援も同党の政策の特色だ。

 共和党の基本的な主張は民主党のニューディール的イデオロギーに対抗して、米社会の
 古き良き伝統、地域社会の復活、信仰や家庭第一主義に置かれている。同党が長い冬の
 時代から脱却することができた一因は、六〇年代後半から七〇年代初期に起こったベト
 ナム反戦を起爆剤とする固定的な価値観に異議を申し立てる「カウンター・カルチャー」
 運動への反動だ。同運動により伝統的価値に対するリベラル派の反乱、黒人解放運動の
 拡大、さらに社会から差別されてきた同性愛者の権利主張が一挙に高まり、米社会はか
 つてない大動乱期を迎えた。共和党がこの大変動に保守的イデオロギーで対抗したこと
 で、民主党支持者を含む多くの人々が共和党支持へ回った。ネオコンと呼ばれる人々も
 その一部だ。

 民主党を退潮に向かわせたいま一つの原因は、同党を不況克服の“救世主”とみなして
 いた世代が去ったことだ。国民一般の生活水準も上がり、多くが株の保有者となり、同
 党を頼りとする労働者や被圧迫者意識も薄れた。

日米同盟重視を継続する共和

 最も重要なのは米社会の保守化だ。民主党のイデオロギーの特色の一つは、絶対的な道
 徳的規範よりもヒューマニズム(人間中心主義)の強調だ。クリントン前大統領が述べ
 たように「多様性」こそ米国の力であるとして、万人の価値観を平等に尊重する寛容さ
 を訴える。だからこそ同党は同性愛者間の結婚や堕胎問題で明確な反対を打ち出せない。

 日本の国益からいえば、北朝鮮の核や中国の軍事脅威下にあるわが国にとり、米国が引
 き続き「世界の警察官」の役割を引き受けてくれる方がありがたい。今度の選挙での共
 和党政策綱領は日本を「米国にとってのキーパートナー」と位置づけ、民主党綱領より
 も日本重視を強調している。クリントン政権は価値多元論の立場から、中国を「戦略パ
 ートナー」と位置づけたが、ブッシュ政権はイデオロギーの相違を重視して中国を「戦
 略的競争相手」とみなしている。「自由の大義は神の大義」(世界の人々の自由のため
 につくすことは神につくすこと=レーガン大統領)という信念が共和党の政策のバック
 ボーンにある。この信念が世界の警察官としての米国を支えている。ブッシュ、ケリー
 どちらの勝利が日本の国益か明白であろう。(世界日報)掲載許可済み
Kenzo Yamaoka
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件名:北朝鮮のミサイルの脅威  

北朝鮮のミサイルの脅威
 アジアの軍事問題専門家、リチャード・フィッシャー氏は、北朝鮮の長距離ミサイルは
 「米国と日本にとって非常に大きな脅威となっている」と指摘した。
 同氏によると、このミサイルは、旧ソ連が開発した最初の潜水艦発射弾道弾、SSN6
 の派生型。

 米中央情報局(CIA)は、北朝鮮が昨年九月のパレードで新型ミサイルを公表するも
 のとみていたが、それは実行されなかった。

 北は、十発のミサイルと五基の移動式発射台を平壌近くの美林に持っているとみられて
 いる。

 「射程の長いこのミサイルが北朝鮮から発射されれば、沖縄とグアムに到達し得る。誤
 差は一マイル(一・六キロ)で、北にとっては十分な精度だ。規模の大きな米軍基地、
 ホノルルやロサンゼルスのような都市を脅かすには十分だからだ」とフィッシャー氏は
 語った。

 北にとって「最も取りやすい方法」は、自国の商船のコンテナに隠したミサイルを使う
 ことだろう、と同氏は警告した。

 先週のこのコラムで指摘したように、ラムズフェルド国防長官は最近行った演説で、海
 上発射の短射程ミサイルの脅威について警告した。長官は、九〇年代の終わりに商船か
 らのミサイルの試射を行った中東の国があった、と指摘。それは、ミサイルの分野で北
 朝鮮とつながりを持つイランだった。

 ラルフ・エバーハート米北方軍司令官(空軍大将)も最近、海上発射のミサイルの脅威
 が高まっていると指摘している。

 「テロリストが海上から攻撃を仕掛けてくるようになるのは、時間の問題だと思ってい
 る。船を港の中まで入れるような方法で行われるのではないか。船に載せられているの
 は、強力な爆発物であったり、大量破壊兵器であるかもしれない」とエバーハート司令
 官は語っている。

 フィッシャー氏は、「北朝鮮がこの戦略を実施するとすれば、カナダ、中米に侵入し、
 ミサイルをあらかじめ持ち込むことになるだろう。米国本土に持ち込むこともあり得る。
 米国の現在のミサイル防衛では、五十州の南または内側からの攻撃に対応することはで
 きない」と強調した。
(ビル・ガーツ&ロワン・スカーボロー)世界日報 掲載許可済み
Kenzo Yamaoka

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件名:2007年問題/「人材開国」へ本格的な対応を  

 わが国では、人口の急激な減少という戦後最大の環境変化を迎える間口に差し掛かって
 いる。国連の人口推計によれば、今後三十年間で生産年齢人口が明確に減少するのは日
 本とドイツだけであり、しかも日本の減少率はドイツをはるかに上回る。
近づく大量の退職者の時期

 とりわけ、第一次ベビーブーム世代が現役から退く二〇〇七年以降が深刻だ。敗戦の年
 から二年後の一九四七年から四九年までに生まれた「団塊の世代」約五百万人が、〇七
 年から還暦を迎えることで、一〇年までに大量の定年退職の時期を迎える。

 これらの「団塊の世代」は、文字通り「激動の時代」を生き抜いてきた人々だ。高度成
 長期後半に社会人入りし、間もなく「石油ショック」を体験、技術技能を先輩諸氏から
 継承し、その後の経済再建の牽引(けんいん)役となった「技術立国」の立役者でもあ
 った。

 だが、次の世代にそうした技術技能を継承させることが十分でなかった世代でもある。
 ちょうど、バブルが弾けて九〇年代不況の最中、早期退職募集ということで、社外に去
 った人々も多いからだ。

 今年の三月期決算では、多くの企業で高決算が出たものの、リストラ効果によるところ
 が大きい。経営者としては労働力過剰時代という認識があったわけだが、「二〇〇七年
 問題」は深刻な問題であるにもかかわらず、長期的視点で対応していないのが現状だ。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の総人口は〇四年から一五年の間に、
 百三十六万人減少する。人口のピークは〇六年となる見込みだ。しかし、この間、十六
 歳から六十四歳までの生産年齢人口は八百八十万人も減少する。つまり生産年齢人口の
 減少幅が総人口の減少幅を大きく上回り、〇七年から生産年齢人口が急速に減少する。

 不足する労働力をどう埋めるのか。まず高齢者と女性の活用、それでも足りなければ外
 国人労働者を招き入れるというのが常識的な選択肢だろう。

 東アジアとの自由貿易協定(FTA)交渉では、日本側が検討している労働市場開放問
 題で各国が不満を募らせている。外国人労働者受け入れに対する消極姿勢が、アジア各
 国の目にも鮮明に見えてきたためだ。対立点が浮き彫りになっているのは、看護師や介
 護士など医療分野で日本への人材派遣を目指すフィリピンや、マッサージ師を日本に送
 り込みたいタイとの交渉である。両国はそれぞれの国内で資格を持つ者が日本でも日本
 人と同等の条件で働けるよう求めている。日本の労働市場に参加し、市場原理に基づき
 技能や賃金コストなどを公正に競い合おうというものだ。

 だが、事なかれ主義で旧態依然の外国人労働者アレルギーを持つようでは、「二〇〇七
 年問題」をクリアできないばかりか、経済の活力を根底から失いかねない。

 ヒト、モノ、カネが自由に動くグローバル化は、冷戦終結と情報技術(IT)の発達で
 加速し、後戻りできない潮流になっている。だが、米国やシンガポールのような移民国
 家でないわが国は、とりわけヒトの移動に関して神経質になり過ぎてきたきらいがある。

経済的蘇生の息吹き込め

 東南アジア諸国連合(ASEAN)とのFTA交渉で、経済的連携の柱の一つとなる
 「人材開国」は、単に「二〇〇七年問題」をクリアするためのものだけではなく、「経
 済的蘇生の息」を吹き込むためにも、小手先の対応で済ませてはならない。
 世界日報 掲載許可済み
Kenzo Yamaoka


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