1678.読者の声と木村コラム



「年金問題が参院選の最大の争点」

参院選が始まった。

イラク情勢は、主権移譲を挟み鬩ぎ合っており不透明である。
この事もあり、日本国民はイラク問題、自衛隊の多国籍軍化につい
ての判断基準を現時点で持ち難く、日本に直結する大きな事件事故
が起きない限り、これらは今回の参院選の争点にはならない。

参院選の争点は、各社の世論調査も示すように年金問題である。

年金問題の現状こそは、官僚の天下りシステムと前例踏襲主義と保
身体質に、問題先送りの歴代政権がおんぶしてきた事の象徴である。

年金制度はこのままではいずれ破綻する。首相も認めるように抜本
改革が必要である。
政治問題に疎く、ともすれば権力やマスコミ報道に流され易いお人
良しの日本の国民も、さすがに自身の生活や将来保障に直結するこ
の年金問題については、現状をリアルに直視し始めている。

年金問題は、国民生活全般についてのナショナルミニマム(国が提
供する保障)の領域と国民の自助努力による自己責任に属する領域
に関して、どこに線を引くのかを問う象徴的な課題である。
即ち、今後の「この国のかたち」を定める最重要政策となる。

与野党各党もこの年金問題を最大の争点にして参院選を戦う事にな
る。たとえ争点から外したいと考える政党や候補者がいたとしても
、避けられない。

年金問題に対して、より誠実に具体的な処方箋を示し、有権者に訴
え得た政党や候補者が参院選を制する事になるだろう。

参院選を通じ、各党各候補者、そしてなにより国民自身の判断と責
任が問われる。

                           以上
佐藤 鴻全
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(Fのコメント)
年金問題は、いろいろな問題を含んでいるのです。若年人口の減少
をどう増加に変換させるのかとか、若年人口が減少するときに年金
を止めると言う案もあるが、そのとき、霊魂のレベルを上げる環境
として老年層の生活をどうするのかを検討する必要がある。

年金という制度は止められないと私は感じますし、そして一部は、
税金を使うこともしかたがないと思うのですが。
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北海道トイレマップです

はじめまして突然のメール申し訳有りません。
札幌に住む55歳のおじさんです、ドライブ好きで良くドライブし
ますが妻のトイレ探しにはたと困る事がありました。
最近コンビニがあり便利にはなりましたが、峠越えなどを走る場合
ある程度トイレの場所を把握していると何かと便利かと思い作りま
したので活用していただければ嬉しいです。

http://www12.plala.or.jp/ojisan55/chizu/start.htm
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件名:日經新聞までが數字の遊びは止めませう  

 日本經濟新聞の記事は、ちよつとをかしくはありませんか?
 數字は魔物である。この記事は、中國もいよいよ日本とGDPで肩
を並べる經濟大國になるのか、と讀者に思はせるのが意圖だとは思
はないが、さう勘繰りたくもなる。
日本國内で不況の煽りを食らつて呻吟してゐる中小企業の親父さん
たちに、早く行かないとバスに乗り遅れるよ、と囁いてゐるやうな
感じだ、といへば勘繰り過ぎだらうか。
 日本のGDPが、今後16年間成長率ゼロで、且つ中國のGDP成長率が
、2020年まで毎年平均7%の成長を續けた場合に、兩國のGDPが同じ
レベルになる、といふ算術の結果を言つてゐるに過ぎないのではな
いか。それがどんな意味を持つといふのか。このやうな假説が實現
することがあるのかどうか。冷静に考へれば判る事である。否、大
いに有り得ることだ、と信じてゐる方もゐようが、信じる事は自由
である。お笑いだが、中國元を今4倍に切り上げたら、2020年まで
待たなくとも實現は可能である。數字の遊びだ。
 新聞がアンケートの結果を記事にするのは自由であるが、讀む方
は信用しない方がよい。
日高 廣人
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小泉さんのレイプ事件は本当ですか??

このコラムでも登場している木村愛二さんが小泉さんは学生時代に
レイプ事件を犯し、その事件を揉み消すために英国留学をしたとあ
るが、本当なのでしょうか??

どうして、このサイトでは木村さんのそのコラムをのせないのです
か??
へのへのもへじ
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(Fのコメント)
木村さんが主張していることは知っているし、現に原稿も来ている
。しかし、このコラムは個人的な中傷は載せないと投稿規準にある
ため、掲載しませんでした。

事実かどうかは確認できません。しかし、もし本当であるとしたら
、大新聞に報道されたら、自民党が参議院選挙で大敗になるでしょ
うね。
小泉首相には清純な感じを女性は持っているために、その反対なこ
とが出ると女性票が期待できませんからね。
ウソであるなら、名誉毀損で木村愛二さんを訴えるべきです。
もう少しこのレイプ事件の主張に対して大事にするべきですね。
ネットの世界では有名になっているのですから!!!

もし、本当であるなら早く首相を小泉さんは辞めるべきです。
女性の支持が得られないので、今後の政策運営もできないことにな
ります。そして、日本の信用に大きなダメージを与えてしまいます。
ウソであろうとは思いますが、念のために!!!
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『亜空間通信』807号(2004/06/28)
【廃刊・回収・公式には存在しない『マルコポーロ』1995年2月号「松本サリン事件」
緊急特集-1】
 
 以下は、本通信の前号で予告した恐怖の実録、その1である。余りにも長いので、
その2は次号に回す。

『マルコポーロ』1995年2月号-p. 133

「松本サリン事件」以後、霞ヶ関集周辺の地下鉄サリン事件の直前までの江川紹子
「渾身のレポート!」

緊急特集1
松本サリン事件急展開!
オウム真理教に
「毒ガス疑惑」。

松本でサリン事件が起こった直後、山梨でもサリン残留物が土壌から検出された。
自然界には存在せず人為的にしか作れないサリンが何故、山梨の山中で発見されたの
か。
報道の直後、オウム真理教は記者会見を開き、住民の一人などを殺人未遂罪で告訴し
た。
しかし普通の住民がサリンまで入手して、オウムに対して排斥運動をするものなのか?
「自分達毒ガス攻撃を受ける理由」についてのオウム側の主張は、にわかには納得し
がたい。
なにしろ国家権力がオウムに脅威を感じ、ヘリまで便って、ガス攻撃をかけるという
のだ。
一体オウム真理教は、何を考えているのか?
教団を追及しつづける筆者の渾身のレポート!

江川紹子●文
text by Shoto Egawa
ヤマグチゲン●写真
photo by Gen Yamaguchi

 富士山の麓、富士五湖から青木ヶ原樹海までに広がる山梨県上九一一色(かみくい
つしき)村。その最も静岡県寄りに位置する富士ケ嶺地区に次々に異様な建物が造ら
れている。大型の空気清浄機が取り付けられたり、最近では窓一つない建物もできた。
いずれもオウム真理教やその関連会社の施設だ。この富士ケ嶺地区には、正月早々か
ら多数の報道陣が押し掛けた。元日付読売新聞に、衝撃的なスクープ記事が掲載され
たからだ。

 〈サリン残留物を検出/山梨の山ろく「松本事件」直後/関連解明急ぐ/長野・山
梨県警合同で〉
 上九一色村で昨年七月悪臭が発生する騒ぎがあり、山梨県警がににおいの発生源と
みられる一帯の土壌などを調べたところ、サリンを生成した際の残留物質である有機
リン系化合物が検出された、という内容だった。

 地元の人の話では悪臭騒ぎがあったのは昨年七月九日未明と同月十五日夕方の二回。
汚物や動物などの臭いではなく「カーバイドをぶちまけたような化学的な臭い」「ビ
ニールを燃やしたような感じ」「目がチカチカする」「胸が苦しく吐き気がする」な
どといった訴えが警察や保健所に寄せられた。オウム真理教の施設第七サティアンビ
ルに近い人ほど臭いを強く感じている。
 松本の事件とは違って、治療が必要なほどの人的被害はなかったものの、近くのブ
ナなどの葉が褐色に変色するなどの異常も起きた。教団側は否定しているが、地元の
人々は悪臭の発生源はオウム真理教だと確信している。

 ただ、当初の記事ではその現場が富士ケ嶺地区であることも、隣接してオウム真理
教の施設があることも一切伏せられていた。マスコミのこうした自主規制を打ち破っ
たのは、むしろオウム側だった。
 一月四日、オウム真理教は記者会見を開き、上九一色村住民が結成しているオウム
対策委員会副委員長で産業廃棄物処理業を営むAさんと「氏名不詳」を殺人未遂罪で
甲府地検に告訴した、と発表した。

 告訴状によると、オウム側の主張する「事実」は次のようなものである。

 (1)Aさんは平成六年三月頃から同年十二月にかけて、産廃物処理を偽装し、上九
一色村富士ヶ嶺のオウム関連の建物のうち通称「第
一上九」と呼ばれる施設に対し、サリン、ソマン、VXガス等の有機リン系化合物を
噴霧した。
 (2)「氏名不詳」は平成六年四月頃から同年十二月にかけて、ヘリコプター、セス
ナ機、軍用機等に搭乗し、上九一色村富士ケ嶺地区や富士宮市のオウム真理教施設上
空を旋回飛行し、ヘリからサリン等の毒ガスを教団施設に向けて連日噴霧した。

 いずれも教団側が自衛予防措置をとったため、信者たちに「息が苦しい」「嘔吐す
る」「湿疹ができる」「鼻血が出る」「目の刺激痛、充血」「血痰が出る」など毒ガ
ス中毒症の傷害を負わせるにとどまり、殺害の目的を遂げなかったもの、としている。
建物に取り付けられた異様な巨大清浄機は、オウム側が開発した、濃硫酸と苛性ソー
ダを利用して毒ガスを無毒化する装置だという。こうした設備が彼らの言う「自衛予
防措置」なのだろう。

 しかし信者らが被害に遭ったという教団施設のすぐ近くには民家や家畜小屋なども
ある。連日のようにオウム施設に対し毒ガス攻撃があったというわりに、住民にも牛
や豚にも全く被害が出ていない。あったのは、七月の二回の悪臭騒ぎだけだ。
 訴えられたAさんは昨年秋、オウム真理教に反対する住民の自宅などから盗聴器が
発見された事件の被害者の一人でもある。

 「うちはオウムがここにやってくるずっと前から産業廃棄物を発酵させて堆肥にす
る仕事をしている。堆肥を作る過程で水蒸気とアンモニアが発生するが、そのことを
とらえてイチャモンをつけられたのだろう。化学薬品は一切使っていないどころか、
そういうモノが混じらないように注意を払っている。オウムの主張はほとんどマンガ
みたいなものだが、ふりかかってきた火の粉は払わなきゃならん。闘います」

 Aさんは弁護士と相談し、誣告(ぶこく)罪や名誉毀損で逆告訴することも考えた
いとしている。
 とにもかくにも、オウム側がこのような会見を開いたために、オウム真理教とサリ
ンの関係を公然と論評するマスコミも出てきた。

 実は、松本事件の後も、オウム真理教の名前は一部で囁かれていた。現場から車で
十五分ほどの所にオウム真理教松本支部がある。この土地はオウムが教団の名前を秘
して地主から買ったことなどから、土地の返還を求める裁判が起こり、現在長野地裁
松本支部で係争中だ。サリン事件の現場の近くにこの裁判を担当している裁判官が住
む官舎があることもあって、住民側の弁護士の所に長野県警の捜査員がオウムに関す
る情報を聞きにやってきたこともあった。

 オウムにはCSIと称する科学班があったり、これまでも東京・亀戸で悪臭を発生
させたり、石鹸水に見せかけて塩酸を持ち込もうとしてオーストラリア当局から罰金
刑を受けるなどの事件を起こしている。また、可燃性溶剤のシクロヘキサンを積んだ
オウムのトラックが対向車線を走る車に衝突し炎上、相手方が死亡するという事故も
起こしている。

 そのうえ、松本事件が起きる前から、麻原彰晃教祖は信者に向けての説法の中で
「サリン」という言葉を何度か口にしており、オウムの機関誌にもその語が掲載され
ていた。そのいくつかを紹介しよう。
 〈急の法というのは即座の現象を現し、例えば、相手を直接的に射殺したりあるい
は一撃で殺すような、例えば第二次世界大戦中に研究されたVXガスとか、あるいは
ソマンとかサリンとか、そういうもの、あるいは原爆などによる瞬間的な、その対象
の生命を断つ方法、これを急の法則であると説きました〉(三月十四日、高知支部)

 〈質間者B 最近、東京都内で原因不明の異臭が発生するという事件が五、六回に
わたって起こっているそうです。これは、環境庁や東京ガスが調べても原因不明とい
うことだったのですが、オウムだけでなく、一般大衆にもJCIA(引用者注・日本
のCIAの意か。内閣調査室、国家公安委員会、警察などを指すようである)の毒ガ
ス作戦というのはあるのでしょうか。
 尊師(引用者注・麻原教祖のこと)可能性はあるね、可能性は。つまり、いかに電
波によって、あるいはいかに毒ガスによってコントロールするかということがCIA
の一つの至上課題だから、それを日本に対して実験することは、要するに日本人は属
国だからどれだけ死んでもいいんだよ。だから、テストパターンとしては、「あり得
る」というよりも「ある」と考えていいと思います〉(三月十五目、杉並道場)

 なぜオウム真理教サイドは、被害の医学的データを公表しないのか?

 〈八八年以来続いている毒ガス攻撃によって、特に近ごろは頻繋に、例えばわたし
の行く先々でヘリコプター、飛行機等からの噴霧が行われるわけだが(中略)、ここ
ではっきり現れたのがサリンなどの毒ガス現象であったということである〉(四月二
十七日、南青山東京総本部道場)

 多くの普通の市民は、「サリン」という言葉は、松本の事件が起こり、警察が「サ
リンと推定される」と発表して、初めて耳にしたはず。にもかかわらず、事件の起き
る前に教祖の口から何度もこの言葉が発せられ、一般市民に害が及ぶことも「ある」
とはっきり言っていたのである。
 可能性としては、(1)麻原氏の「予言」が当たった(2)単なる偶然(3)事件とオウム
に何らかの関連がある――の三つ。信者であれば(1)を強く主張するだろうが、普通
に考えれば(2)か(3)のどちらかと思うのが自然だろう。

 しかし、(3)を主張する証拠はない。今回の山梨の有機リン系化合物の検出は、(3)
説を一歩進めるものではあるが、これだけでオウムの犯行と決めつけられるものでも
ない。もし(3)説を展開すれば、まっとうな批判であってもすぐさま裁判に持ち込む
オウム真理教のこと、民事裁判の提訴もしくは刑事告訴がなされることは容易に予想
された。
 そのため、読売にしても、他紙あるいは週刊誌でも極めて慎重に記事にした結果、
奥歯にモノのはさまったような表現にとどまり、一般の読者には分かりにくい内容に
なっていた。おそらくピンときたのはオウム信者とオウム被害者などの関係者くらい
のものだったろう。そのモヤモヤを一気に拭いさってくれたのが、オウム真理教側の
記者会見だったのである。現にこの後に発売された「週刊朝日」は〈山梨サリン事件
とオウム真理教の関係/松本市の7人死亡から2週間後……〉というそれまでの報道
にないストレートな見出しを掲げている(もっともその後同誌はオウム側に名誉毀損
で訴えられた)。
 しかし、告訴状や新聞・雑誌の記事を読んでも、なぜオウムが毒ガス攻撃の標的と
されなければならないのかさっぱり分からない。いったい誰が何のためにオウムに毒
ガス攻撃をしかけるというのか。オウム側の機関誌、布教用ビデオなどによれば、彼
らの主張は概ね次のようなものだ。

(1)日本人はマスコミを通じて日常的にマインドコントロールされている
 食べ物やスポーツ、セックスに関する低俗でかつ楽しい情報のみが与えられる。そ
れによって日本人は無知化され、そこにさらに大量の悪いデータが叩き込まれる。そ
うして日本人は情報によって誘導されている。

(2)日本の滅亡の道は始まっている
 日本に氾濫しているハンバーガーなどのファーストフードやポテトチップスなどの
ジャンクフード、インスタント食品によって日本人は寿命を縮め、思考能力を奪われ
ている。おまけに副作用の多い薬を大量に飲まされ、ほとんど企業利益のために毒を
飲まされている状態である。アメリカの圧力によって食糧自給率は年々落ち込み、さ
らにやはりアメリカの言いがかりによる市場開放によってバブル崩壊後の経済復興は
不可能に近くなっている。こうした状況にある日本を滅亡させるのは簡単である。

(3)アメリカが日本を滅ぼそうとしている
 (1)(2)のような状態にしているのは、アメリカの戦略である。その裏には秘
密結社フリーメーソンなど世界制覇を狙うユダヤ人組織の存在がある。天皇もすでに
彼らの傀儡となっている。情報操作によって思考は歪められ、経済も行き詰まり、食
糧もなくなったところで、日本を攻撃しようとしている。
 在日米軍の存在で明らかなように日本はすでにアメリカの属国となっている。自衛
隊も日本を守るための組織ではなく、完全に米軍の言いなり、むしろ米軍を守るため
の属国部隊にすぎない。さらに、核弾頭搭載のICBMが日本に向けてセットされて
いる。
 何らかの方法によって日本を悪役に仕立てて戦争の口実を作り日本攻撃を開始、在
日米軍は地下の要塞に潜り、ICBM、化学兵器、生物兵器、プラズマ兵器を利用し
て日本を徹底的に壊滅に追い込む。その後地下に隠れていた米兵が現れて日本を完全
に征服する。こうして日本はアメリカに滅ぼされるのである。

(4)真の宗教であるオウムは、アメリカ及び日本の国家権力にとって脅威である
 オウム真理教は物質的豊かさよりも、精神的豊かさを求めることに価値を置く。こ
のオウムの教義は、煩悩を肯定し、むしろ人々の煩悩をかき立てることによって成り
立っている現体制にとってはとうてい受けいれられるものではない。オウムの教えが
浸透するほど、個々の人間は幸福になるものの、国としては困る。このままオウムが
急遠に拡大していけば、将来現体制にとって好ましくない勢力になる。危険な存在だ
と判断した権力側が、オウム真理教を弾圧している。

 自分たちに対するこの誇大評価。多く見てもたかだか一万人のこの小さな宗教団体
を、アメリカ、日本の国家権力、それにマスコミが総掛かりで叩かねばならない必要
が本当にあると麻原氏は本気で考えているのだろうか。

 オウム側が「権力のお先棒をかつぐ自称ジャーナリスト」と呼ぶ私にしても、オウ
ムが真に精神の豊かさを求める宗教団体であれば、何ら問題にするつもりはない。し
かし、オウムを巡る様々な被害を見聞きし、相談が持ち込まれ、放っておくわけにい
かずに問題にしているというのが実態だ。
 また、被害者たちが警察に駆け込んでも、オウムが宗教法人であり、並々ならぬ強
い権利意識を持つために、警察の腰は重いのがこれまでの常だった。

 「オウム真理教こそが被害者である」――オウムが何らかの事件との関わりを取り
ざたされる度に、彼らはそう繰り返してきた。

 五年前の坂本弁護士一家失踪事件の時もそうだった。坂本弁護士の自宅にオウム真
理教のバッジが落ちていたのは、オウムに反感を持つ者がオウムの犯行に見せかける
ために坂本弁護士一家を拉致し、バッジを置いていったという主張を展開。坂本弁護
士の身内や坂本弁護士に相談していた「オウム真理教被害者の会」が疑わしいと宣伝
した。

 昨年秋に発覚した上九一色村の盗聴事件の際にも、同様の主張がなされた。オウム
を陥れるための住民らの自作自演であるというのがオウムの言い分。さらに、昨年九
月、私の家に深夜二人組がやってきて、ドアの新聞受け用の穴から室内に向けて異臭
のする気体を噴射する事件があった時も、オウム側のコメントは「これは当教団を陥
れるための謀略であるとしか考えられません」というものであった。
 こうした「オウムこそ被害者」という論法も、前述の権力による弾圧という筋書き
に則ったものである。私たちにとっては荒唐無稽の主張としか言いようがないが、信
者たちはこの教えを頭から信じ込まされている。

 最近「オウムから脱落した」という元信者から私の家に電話があった。その人は
「オウムの成就者はすごいんですよ。私にはとてもできないようなことができる」と
語った。だから超能力がある、と今でも信じているのである。

 私は「オリンピックに出る体操選手やマラソン選手のようなことをあなたはできる
か。あなたのできないことをやる選手たちは、超能力者か」と間うてみた。オウムは
もともとはヨガサークルが出発点であり、まじめに修行を続けている人ならば、私の
ように鍛えていない人間よりはるかに体も柔らかいだろうし、私にできない動作をやっ
てのけることもあるだろう。だがそれは彼らの鍛錬の結果であり、超能力とは異なる。

 その元信者は私の問いや説明に耳を傾け、「そういう考え方もあるんですね」と驚
きの声をあげたが、このやりとりで彼らが自分の頭で考えることを放棄し、麻原教祖
や教団幹部の言うことを鵜呑みにする思考パターンにさせられていることを改めて実
感した。これこそがマインドコントロールではないか。

 一連の毒ガス攻撃によって、一般信者だけでなく麻原氏自身やその長男にも健康に
異変が生じているという。

 〈今、わたしのこの左のこめかみのところに水疱ができている。私の口の中には水
疱があり、そして私の長男である鏡暉(あきてる)の皮膚はまさにガサガサ、一般に
は「アレルギー反応」と呼ばれる症状を呈している。しかし実際、これはアレルギー
反応ではない〉(三月十一日、仙台支部)

 一般の信者の健康状態にしても、オウム側が発表するのは医師の資格を持った信者
のコメントだけで、詳しいデータは秘されたままだ。ただ、オウムの施設内に起居す
る「出家信者」たちが不健康な状態であることは容易に想像できる。私がオウムの施
設に近寄ると見張りの信者が排除に出てきたが、いずれも顔色が悪く、唇も手足も荒
れていた。その原因を考える時、見過ごすことができないのは、オウム内部での栄養
状態の悪さと不衛生な環境、睡眠不足など信者の置かれた状態である。

 オウム真理教は殺生を禁じるとして、ゴキブリやネズミの類も殺さないようにと信
者に教えている。そのため医療機関であるオウム真理教医院内でもゴキブリが徘徊し
たり、ネズミが出たりする。

 一九九〇年八月、人身保護請求事件を審理する大阪地裁に選任され、内部の調査に
入った弁護士たちの報告書でも「事情聴取中、足下をゴギブリが徘徊していたが、衛
生面においても問題があると思う」と記されている。上九一色村の施設の敷地にも粗
大ゴミがゴロゴロしており、はっきり言ってとても汚い。食べ物も、最近では野菜の
水煮を中心とするオウム食すらもほとんど出なくなり、「お供物」と称する饅頭やパ
ン、果物などが中心のようである。カップラーメンの容器がゴミ捨て場にたくさん出
ていたという地元住民の証言もある。

 ある大学病院の内科医師はオウム側の主張に「皮膚炎にはいろんな原因があります
から」と釘をさす。

 「接触性、アレルギー性、虫や植物など結構複雑です。毒ガスでも起こりうるでしょ
うが、その場合は他の原因と違って、医師に見せれば断定しやすい。診断書と血液検
査の結果を公開すれば、すぐ分かる。何なら、私が教祖とその長男を診てもいいです
よ。


 特に子供の場合、アレルギーは食物の偏りでも起こりうるし、環境が悪くても起こ
る。報道でみる限り、オウムの施設は子供にとって食物、環境、植物など皮膚炎が起
こりやすい状況です。案外そちらの方が原因なのではないでしょうか」

 住民を告訴した以上は、捜査には全面協力すべきではないか。
 麻原氏親子は一度、オウムとは無関係の医師の検診を受けてみたらどうか。必要で
あればこちらで医師を紹介することもできる。この親子が本当に毒ガスの被害を受け
ているのかきちんと調べ、その結果を公表する義務が麻原氏にはある。第三者を告訴
したり、その名前を公表したりする根拠にしているのだから、プライバシーを云々す
る資格はこの場合ない。オウム真理教は、本気でこの提案を検討してもらいたいもの
だ。

 オウム側はAさんらを告訴した後、報道によって「社会的評価が著しく下がった」
として、立て続けにマスコミを名誉毀損で訴えた。
?TBS1=一月五日の朝の情報番組『ザ・フレッシュ』.
?『週刊SPA!』&漫画家小林よしのり氏=同誌に連載中の「ゴーマニズム宣言」
 そして?『週刊朝日』=前掲の記事
 オウム真理教は、これまでも外に敵を作り、戦闘的な姿勢を明示することによって
内部の結束をはかってきた。一連の毒ガス攻撃宣伝も信者の引き締めに一役買ってい
る。昨年四月には麻原教祖から信者宛に、こんな手紙が送られている。
 〈わたしの身体は毒ガス攻撃からの一時的逃避によって小康状態を保ち続けていま
す。わたしは、毎日毎夜、信徒の皆さんの今抱えている問題に対する憂いと、皆さん
の輪廻転生に対して心を痛めています。これからいつまで一緒に皆さんと生きられる
かわからない〉
 今回もAさんらに対する告訴によって信者の疑問を封じ込めると同時に引き締めを
図り、マスコミヘの連続提訴で批判的な論調を抑えようという意図が見え隠れする。
 しかし、捜査当局もマスコミもこのような教団内部の事情に囚われることなく、事
件とオウムとの関連の有無について、徹底的に事実を究明する必要がある。坂本弁護
士一家失踪事件では、オウムは警察の捜査に対して非協力的な姿勢を貫いた。しかし、
今度はそうはいくまい。上九一色村の事件では、オウムの方から告訴したのだから、
地元住民が不安を抱いている第七サティアンビルの内部の検証を含め、真相解明には
当然のことながら全面的に協力すべきだろう。そうすることがマスコミ相手に訴訟を
乱発するより、教団の求めてやまない「社会的評価」向上への近道にもなると思うが、
どうだろうか。
[中略]
次号で、その2。

 以上。
木村愛二:国際電網空間総合雑誌『憎まれ愚痴』編集長
==============================
『亜空間通信』808号(2004/06/29)
【封印『マルコポーロ』1995.2松本サリン緊急特集-2「テロリスト犯行」米専門家予
言次の舞台的中】

 前号に引き続き、1994年6月27日に起きた松本サリン事件の10周年に寄せて、発売
直後に廃刊・回収・公式には存在しない『マルコポーロ』(1995.2)の緊急特集-2を再
録する。
 
 冒頭のゴシック・リードの最後、「事件はもう一度起こる。これをやった人間は
『次はもっと大きな舞台でやってみせる』とほくそえんでいる」の予言は、発売日、
1994年1月17日の3日後、都心、霞ヶ関周辺の地下鉄サリン事件として、恐るべき的中
となったのである。
 
 むしろ、この記事の出現が、かねて企画されてた作戦の発動を早めたのかしれない
のである。背後の闇は、いまだに探索されていない。
 
p. 156
緊急特集2
米化学兵器研副所長が松本で徹底検証。
松本サリン事件は、テロリストの犯行だ。

死者七名を出した松本のサリン事件は、半年を経た現在も解決をみず警察の捜査は難
航している。それというのも、日本にはサリンを実際に扱える専門家がいないからで
ある。警察は完全に初動捜査を誤り、事件はうやむやのうちに忘れられようとしてい
る。そこでついに、米国生物化学兵器研究所副所長のオルソン氏が事件の解明に乗り
出した。事件現場を徹底して歩き、第一通報者河野義行氏との会見は二時間半にも及
んだ。オルソン氏は警告する。「事件はもう一度起こる。これをやった人間は『次は
もっと大きな舞台でやってみせる』とほくそえんでいる」と。

カイル・オタン●文
text by Kyle B. Olson
丹 英直●写真
Photographs by Hidenao Tan

1954年、米国モンタナ州生まれ。1977年ウエスト・バージニア大学院198
0年モンタナ州立大学院修了。1985年米国化学製造者協会安全及び運営担当研究
員として化学分野の実績を積み、1990年ジュネーブ国際平和会議メンバー、19
91年対イラク化学兵器処理活動コンサルタントを歴任。1992隼には米国政府の
生物化学兵器処理などに協力する非営利団体「米国生物化学兵器研究所の設立メンバー
として副所長就任。

 松本のサリン毒ガス事件の知らせを聞いたとき、私はまず、「起こるべくして起こっ
てしまった」と、思いました。

 日本では、第一発見者の河野義行さんが、ほとんど容疑者として扱われているよう
ですが、この事件の本質はそんなに単純なものではありません。これがアメリカであ
れば、すぐに軍が現場を封鎖するとか、CIAやFBIが事件の解明に乗り出すこと
になる。あるいは、一週間以内に私のような専門家が派遣されているはずです。これ
は国家安金保障上の重大な失敗と言わざるをえません。

 日本から送ってもらった報道記事の内容を子細に検討しても、疑問の点がたくさん
あります。このレポートで私はその疑問点を詳述して、事実の解明に少しでも役に立
ちたいと願っています。

 さて、事実の解明を始める前に、サリンがいかに危険な物質であるかをお話ししま
しょう。

 サリンは一九三〇年代にドイツで開発されました。すでに一九二五年のジュネーブ
協定で化学兵器の使用は禁止されていましたが、その開発と備蓄には何の規制もなく、
また、報復としてのみ使用することが許されていたのです。

 一九六〇〜八○年代NATOドクトリンでは、ヨーロッパで対ソ連戦が起きた場合、
一日に最大一万トンの化学兵器を使用する計画がありました。

 もしもこの計画が実行に移されれば、東ヨーロッパは数日のうちに存在しなくなっ
てしまう。化学兵器というのは、それくらい危険なものなのです。

 そこで七〇年代末から再交渉を行ない、化学兵器の開発、研究を禁止し、貯蔵量を
なくそうと努力していますが、未だに締結されていません。現在においてもサリンを
始めとする化学兵器がアメリカに四万トン、旧ソ連に四万五千トン存在しています。

 アメリカの化学兵器のうち最も危険なのは、ケンタッキーやアーカンソーに備蓄さ
れている二十万発のサリンを積んだミサイルです。当時つくられたサリンの質が悪く、
腐食が進んでいるため、これらの処分を巡ってアメリカでは大変なツケを払わされて
います。なにしろサリンの分解は簡単なものではありませんし、それ以上に、少しで
も人体に触れれば死に至らしめてしまう危険なものだからです。

 結局、完金に密閉された部屋で、ロボットを使って遠隔操作で裁断しますが、その
時にミサイルが爆発しても大丈夫なように、かなり頑丈な建物が必要になるのです。

 太平洋のジョンストン島に唯一の処理場がありますが、とても間に合いません。そ
のためアメリカ本土にあと八力所の処理場を建設する計画はあるのですが、そんな危
険なものを、どこが喜んで引き受けるでしょうか。地元住民の反対で頓挫しています。

 すでにアメリカはこのミサイル処理に百二十億ドルを投じていますが、これは最初
にミサイルを作った予算の、なんと十倍以上です。

 それだけではない。太平洋沿岸の各国などに置き去りにしたミサイルの処理のため
に、さらに二百五十億ドルの予算が必要です。

 そもそも、サリンが戦場で使用された例は、歴史上一度もないのです。湾岸戦争で
使用したと言われるイラクのケースでさえも、実際に使用したかどうか、確認はでき
ていません。

 その理由は二つあります。

 よく、化学兵器はA液とB液をミサイルに積んで、爆発時に混合させるといわれま
す。バイナリー・ウェポンと呼ばれるものです。しかし、サリンは化学反応に時間が
かかるので、この方法は適当ではありません。

 となると、非常に危険な物質を戦場に持ち込まなくてはなりません。そのためには
設備が大がかりなものになって、すぐ敵の目についてしまう。

 仮に首尾よく敵に打ち込んだとしても、風によって思わぬ方向に拡散します。ドイ
ツが第一次世界大戦で学んだ教訓は、風が毒ガスの向きを変えてしまうということで
した。それでも使用しようとする場合には、防毒マスクと防護服で全身を覆う必要が
あるわけで、そんな恰好で戦闘を行うことは、あまりにも非現実的です。

 無理にサリンを使用する実例を想像するならば、戦術上どうしても必要な町を落と
す前に無人化しておきたいような場合。しかし、それも賢明な方法とはいえません。
あとは、抑止力としての存在。その程度です。
私は幾つかの疑問を解くために、まず第一通報者の河野義行さんのお宅を訪ね、二時
間半にわたって事件当夜の現場を案内していただき、また詳しいお話を聞きました。


河野さん、あなたと家族の皆さんはモルモットにされたんです。


オルソン いろんな資料読んだときに、なぜ、誰がやったのかに非常に興味をもちま
した。今回お話があったとき、ああ、やっとこのいくつかの疑問を自分が解けるチャ
ンスが出来たと、正直言って興奮しました。
 河野さんご自身はどんなふうにお考えだったんですか。

河野 私はまったく何がなんだか分からないという状態です。人為的ということが、
警察のほうで言われてるわけなんですけど、いままでのマスコミの報道をいろいろ見
てると百パーセント、それも信用してるのかどラなのか疑問です。

オルソン サリンというのは絶対、偶然には出釆ません。つまり、非常に明確な意図
を持った人物が作ったものだと私は思っています。
 ご自身、いちばん初めに普通じゃないと感じられた症状は何だったんですか。

河野 まず目のほうで、見える像が非常に歪んで釆ました。

オルソン 呼吸困難とか、あとはのどがごくっと詰まるとか、呼吸器官でそういうこ
とが何かおありになったですか。

河野 そういうふうには感じなかった。

オルソン 耳鳴りとか……。

河野 幻聴というんですか、ドドドドドというような音がしました。そのときは幻聴
と思ってなかったんですが、娘のほうもやはりそういうような音を聞いたようです。

オルソン たとえば唾液が出るというようなことありませんでしたか。

河野 唾液はかなり出ましたし、救急車の中でかなり吐きました。


オルソン ああ、そうですか。日本ではあまり注目されていないようですが、これは
非常に重要なことなんです。いわゆる神経に障害を与えるある種のガスの非常に典型
的な症状なんですよ。
 あの夜は、具体的に皆さん、どうしていらしたんですか。

河野 まず八時から九時のあいだ私、長男、妻の三人が居間でテレビを見ながら食事
をしておりました。長女がこの家の二階にいました。次女は離れにいました。長男は
九時から十時頃までこの部屋で寝まして、それ以後起きて、離れの自分の部屋に戻っ
てるんです。
 私は九時から十時頃まで新聞等読んでおりまして、妻は台所と居間を行ったり来た
りしながら、洗い物とか片付けとか、そういうことをしておりました。

オルソン 最初に犬の異変にお気付きになったということを聞いてますけども、それ
まで奥様はべつに何でもなかったですか。

河野 十時から十時四十分、NHKの歌謡番組を妻と一緒に見ておりました。その番
組が終わってしばらくしてから、妻がちょっと気持ちが悪いと言い出しまして、この
ときはまだ異変とか異常とかいうふうに感じてませんでした。それで、私が居間のほ
うで横になったら、ということで横たえました。それとほぼ同じ時間に犬小屋のほう
から音がしたわけなんです。

 私はなぜかなと思って、犬小屋を見ましたら、親犬が横になっておりましたもんで
すから、外に出ていったんですよ。親犬は白い泡を吹いていました。
 玄関のところに緑の車があるんですけど、その前においた漬物桶に水が張ってあり
ます。それで泡を拭いてやろうと恩いまして、その桶を犬のところへ運びました。

 それから、同じ車の中に軍手がありましたもんですから、もう一度、車のほうへ戻
りました。それで犬を拭いたんですけど、とても助かりそうもないと判断して犬小屋
の前の簀子の上へ親犬を横たえたんです。
 そのときには子犬はもう横たわって、ぜんぜん動かないような状況でした。
 同時に二匹が具合が悪くなるというのは、普通では考えられませんから、外から毒
物かなんかを投げ込まれたんじゃないかなと思いました。それで、中にいる妻に対し
て、警察のほうへ連絡したほうがいいんしゃないかと声を掛けた。ところが返事がな
かった。それで、居間のほうヘ戻りましたところ、もう妻が非常に痙攣を起こして苦
しんでいた。そんな状況ですね。

オルソン そのときに救急車を?

河野 妻が非常に苦しがってまして、衣服をちょっと緩めたんですけれども、痙攣と
か異常な状態だったもんですから、まず救急車が先だと思い、一一九番しました。
 私に具体的な変調が現れたのはその時です。先程言ったように、ドドドドッという
音がしました。また、非常に画像が歪んだというか、テレビの垂直同調が合わないと
きのようにバタバタバタと見えて、非常に驚きました。また、ライトが暗く感じたん
ですけど、うちはいつもわりと暗いもんですから、それはちょっと判断がつきません
でした。
 それから私はみんな集まれというようなことで、子供を呼んだんです。
その後は、一秒でも早く救急隊員を呼ぼうと歩きだしましたが、玄関で座り込んでし
まいました。その時に次女とすれ違っています。長男には「ちょっと駄目かもしれな
い。駄目だったら後を頼むよ」というようなことを話しました。
 それからサイレンの音が聞こえてきたので、フラフラと歩きながら外へ出て、救急
車の中で倒れたわけです。

オルソン いちばん初めに第一容疑者として扱われたときに、河野さんはどのように
リアクションなさったんですか。

河野 警察のほうは容疑者という一言い方はしてないはずです。あくまでも被害者と
いう言い方で一貫しております。

オルソン ただし、いろいろ私が読ませていただいた報道だと、かならずしもそうい
う扱いではなかったような……。

河野 ですから警察は被害者というスタンスの中で、容疑者的扱いをしたということ
です。


オルソン じゃ、河野さんが薬学的な知識をお持ちである。ただし私に言わせれば、
サリンとぜんぜん関係ない薬学だと思いますけど、とにかく知識をお持ちになってる。
それから日本の非常に保守的な社会の中で、職を転々とする生き方が少し変わってい
らっしゃるとかということから、一+一=二ではなく三も四もという形になったこと
をどう思われますか。

河野 捜査員自身が薬品に対する知識というものがおそらくなかったと思います。た
とえば硝酸銀という薬品がありますんですが、これがAgNO3という化学記号になるん
ですが、Agって書いてナンバー3というような押収リストになってるんですよね。化
学的知識がかなり低い方だと思うんです。

オルソン 県警以外にどなたかいわゆる専門家と話をなさいましたか。

河野 まず私のほうで、七月十五日の日に独自検証ということで、有機化学の田坂興
亜先生(国際基督教大学)をお呼びしまして、私のほうの自宅でそういうものが出来
るかどうかというような検証をしております。そのときにサリンのつくり方、第一段
階物質、それから第二段階物質に対して、サリンがどういうふうにつくられるかとい
うような説明は聞いております。
 サリンの作り方は八通り以上ある。大学生なら理解できる程度の知識。

オルソン なぜ私がこのような質問をするかと言いますと、犠牲者と呼んでも容疑者
と呼んでも何でもいいんですが、河野さんに対する警察側の態度みたいなものですね。
それは私としてはどうしても確かめたかったんで、こんな質問をしました。
 そもそも、はっきりとした知識に基づいてあのような危険な物質をつくり出した人
間が、自らも被害を蒙るような場所に戻るということが、論理的に全く考えられない
ことだからです。
 実はこれは私自身の見解であって、なおかつ自分と一緒にこの仕事に関わっている
プロフェッサーも含めた意見なんですが、今回の事件を、いわゆる中央官庁が一切調
査してないというのは、たいへんな驚きです。これはテロリストがつくったのかもし
れない。こういうものをテロリストが手にλれればどうなるか。
 つまりあなたを含めてご家族、かなりの人がモルモットだったと思います。まず松
本で一応使ってみてどんな反応になるか。将釆、たとえば都会のど真ん中で使うとい
うことでの、テロリスト集団による一種のトライアルだったということをなぜ考えな
いのかと私は不思議に思います。
私に言わせれば、誰か個人が自分を含めて近所、家族も危険にさらすようなことをす
るという可能性よりも、このテロリスト説のほうがよっぼど信懸性がある。
 私どもの見解に関して河野さんにあえて、どういうふうに思いますかなんてことは
聞きません。ただ実際に政府の中央機関がなんら関心を持たず、なおかつ世界的なレ
ベルでの一連のテロリスト、海外で活躍しているテロリストとの関係みたいな形から
の視点でものを見ないということを、私は危倶します。
 ところで、事件当時にお撮りになった写真を見せていただけますか。

河野 七月四日ですね。私の友だちが警察の方と一緒に並んで撮った写真なんですけ
ど。

オルソン 縁側の前には何かありましたか。

河野 ドラム缶が置いてあるだけで……。

オルソン 家屋の犬小屋に面した壁の、床下にあたる部分が格子になってましたよね。
縁側の下が通風口になっていて、その吹き出し口が犬小屋のところなのです。この縁
側の下は、警察は調べましたか。

河野 さあ、私にははっきりとわかりません。

オルソン これは重要だと思いますよ。つまり、池で発生したサリンはまず縁側の下
を通って犬小屋を襲った。遅れて、台所や縁側のガラス戸の隙間、あるいは床板の間
からサリンが拡散して来て、奥さんや河野さんを襲ったと考えることができるからで
す。

河野 たとえばですね、先ほど居間のところのガラスが割れたところを見ていただき
ましたよね。いわゆる浸透性というんですか、そういう性質に対してはどんなかなと。

オルソン 少量でもたいへん大きな影響を与えるということをまず言いたいと思いま
す。つまりサリンというのは、雫が肌に触れただけでその人を殺す。そのぐらいの毒
性のあるものだということを理解していただくとすると、たとえばさっきの床の裂け
目で充分ですね。
 特にこういう日本的な家屋ですから、普通のところよりは当然、浸透性は高いでしょ
う。
 今回の場合は、マンションで亡くなった皆さんは窓を開けていらっしゃった。逆に、
河野さんは風の通りがいいから閉めていらっしゃったというのがあるわけで、どっち
が幸運だったかということです。

河野 サリンは重い物質で、しかも草木を枯らすことはないということのようですけ
れど……。

オルソン その通りです。つまりサリンをつくる過程で副作用としてガスが発生して、
樹木や下草を枯らしたんだと思います。
 サリンのつくり方は、使ってる装置によって、それこそ八通り以上あるんですね。
もちろん最終的なデータがないのでこういう結論を出すのは怖いんだけれども、かな
り可能性があるのは、アルコールを最後にたすことによってそれが完成するわけです
けど、それ以前の二つぐらいのステップをここでやったのではないかということは言
えます。
 最初に聞いたとき思ったのは、フッ化水素ですか、それとあと……。

河野 塩化水素と、東京大学の森謙次先生もそラいうふうなことをおっしゃってます。


オルソン 私もそう思います。木が枯れたのは、そのガスによる影響だと思います。
フッ化水素はガラスのエッチングにも使うような非常に危険な物質です。質量の違い
や、発生した時間の違いから、拡散したガスの層が違っていたのでしょう。
 入院した直後はどのような処置を受けられましたか。

河野 薬品名は分かりませんけれども、入院した当初というのは、かなり吐き気がひ
どくて、それから熱も三十八度五分から九度近く出まして、注射、座薬なんかを入れ
ても全く効かなかったです。それから、ずっと点滴というような形で一日四本とか五
本とかいうような量の点滴をやってます。下痢が一カ月ずーっと続きまして、体重が
十キロ以上減りました。
 妻に関しては、いわゆる血液透析というんですかね、毒物を活性炭に吸着させると
いうような処理を施したそうです。
 被害にあわれた方のほとんどが、中性脂肪が減っていると、病院の先生から聞きま
した。

オルソン 最近の症状はいかがですか。
河野 微熱ですね。三十七度二分ぐらいまで上がるんです。それから朝起きたときが
六度八分ぐらい。その間で振れてます。それから頭痛と不眠が残ってますね。
 仕事は一応長期欠勤という形をとっています。九四年中の職場復帰をめざしていた
んですけど、今の筋肉の状態ではまだ無理です。落ち葉をかき集めて燃やしたりとか、
軽い運動をするようにしています。

オルソン 奥さんをはじめ、他のお子さま方の病状というのはいかがなんですか。

河野 妻のほうは、依然として意識不明の状態です。それから視神経のほうがやられ
てるということです。目は開いてるんですけど、見えてない。刺激与えても脳波に変
化がないというような状況が確認されています。
 現在、自分の診察も兼ねて週に二回見舞いに行っています。本当はもっと行ってや
りたいのですが、まだちょっと無理です。
 子供については、たまに微熱が出ることがありますんですけど、まあそれが後遺症
なのか、ちょっと断定出来ません。
 先ほどおっしゃったように第二、第三の事故というか事件が、可能性あるわけです
から、ほんとに全容を解明していただかないと安心出来ないですね。

 その後、幾人かの被害者や、河野さんの主治医を始め、治療に当たった医師に話を
ききました。
 たとえば明治生命寮に住んでいた大西英夫さん(50)は、当夜の状況を次のように
証言してくれました。

「わが家は一階で、池とは反対側の部屋でした。暑いので南と北の窓を開けてありま
した。

 十時半頃、頭が痛くなって、鼻水、くしゃみが出ました。そして、その後に吐いて
しまいました。横になったのですが、眉間のところが痛くて寝るどころではありませ
ん。

 妻は十一時半まで長電話をしていましたが、途中から息苦しさを感じています。ま
た、電灯が暗い感じがして二人でつけたり消したりしていました。妻には下痢の症状
が出ました。

 十二時頃、救急車のサイレンの音がしましたが、近くの大学生が騒いでいるんだと
思ったんです。それが裁判官舎にも赤色灯が見えたんで妻が聞きにいきまして、『ガ
ス漏れじゃないか』と消防署の人に言われました。

 ところがしばらくして警察の人が、『明治生命寮は無事か』と聞いてきましたので、
驚いて各部屋を回ったんです。

 三階の榎田さんの部屋から返事がなく、マスターキーで開けて部屋に入ると、風呂
の中で死んでました。肌の色が異様な黒っぽい感じだったのを党えています。同じ三
階の稲田さんは突然意識不明になったそうです。発見された時は口から血が流れてい
ました。それに比べれば、うちは軽症でした。榎田さんを相沢病院に運んだのは午前
一時すぎ。ご臨終が二時十八分です。

 報道陣に、『あなたも見てもらったほうがいいよ』と言われてたんですが、すでに
相沢病院は一杯で城西病院に行きました。そうしたら先生が『帰ってはいけません』
と。亡くなった方の次に酷い検査結果が出たそうです」

 城西病院の薄井尚介副院長は、当夜の様子を語るとき今も興奮を抑えられない様子
でした。

 「その夜は救急担当病院ではなかったのですが、ほかの病院に収容しきれなくなっ
た患者さんが続々とやってきました。救急担当病院では、ベッドに収容しきれず、一
時は患者を待合室のソファに横たえていたようです。

 患者に共通して見られた症状は目がピンホールのように暗くて見えない状況でした。
それとコリンエステラーゼ(神経の伝達をスムーズに行うために不可欠な酵素)の著
しい低下です。

 うちの病院で亡くなられた患者さんは一人だけですが、電気ショックみたいにベッ
ドから飛び上がって手が付けられない状態で、この人の命を救うのに手一杯でした。
抗痙攣剤を致死量に近いくらい使いましたが、全く駄目でした。

 硫酸アトロピン(縮瞳・唾液・嘔吐・尿失禁等に効果がある)をどんどん打ちまし
たが、効果がない。一人のために外来用の硫酸アトロピンを金部使いました。ほかに
も、なんとか呼吸をさせようと気管切開までしたんですが……、結局一時間ほどで、
なす術もなく亡くなりました。

 大西さんご夫妻が入院されたのは明け方の六時五十分。それまで同僚の命を救おう
と必死だったようです。

 ご主人の場合、正常値が百から二百五十といわれるコリンエステラーゼがわずかに
三十九。亡くなった患者さんが十とか二十という値で、その次に深刻だったんです」

 また、河野義行さんの担当医、松本共立病院の鈴木順氏は次のように語っています。

 「この事件の被害者は二百名。うち死者が七名。当院入院患者は十八名です。

 その夜はドクター五人と看護婦十人が緊急に呼び出されました。

 興味深いのは警察官や救急隊員、医師や看護婦に頭痛や呼吸苦、目がチカチカする
といった二次汚染があったことです。特に患者と同じ部屋で長時間接している看護婦
に症状が現れました。手袋などはしていたんですが患者の吐き方が酷いので、手につ
いてしまったんでしょう。

 最初は心理的な問題かという意見もありましたが、サリンと分かる前から訴えがあっ
たし、やはり患者と長く接した人間に顕著に現れています。

 原因がサリンと分かってからは、日本医師会から『有毒化学剤等障害者に対する処
置・治療に関する参考資料』というのが送られてきました。そこに書かれている症状
はいちいち納得できるものでしたね。

 呼吸器官の組織のただれですか? なかったと思います。

 自衛隊やその他中央からの情報提供や実態調査もありませんでした」

 私は二次汚染の原因は、衣服に付着したサリンだと思います。いずれにしても、恐
るべき威力というしかありません。

 これらの人物へのインタビューで得た最も重要な情報はすべての患者において、コ
リンエステラーゼの数値低下が見られることです。これは、全く新聞の報道では知る
ことができませんでした。現地へ来て初めて分かったことですが、疑いなく、サリン
中毒にみられる顕著な症状です。

 また、呼吸器官の組織がただれていないということは、多くの患者に塩素やフッ化
水素の被害が少いことを示しています。

 私は松本を訪れる前まで、サリンはかなり純度の低いものではないかという漠然と
したイメージを持っていました。それは、サリンが、一滴でも体に触れれば死に至ら
しめる劇薬であるにもかかわらず、一命を取り留めた人達がたくさんいたからです。

 しかし、それは間違いだったようです。むしろ犯人はきわめて純度の高いサリンを
作っています。このことに、あらためて背筋の凍る思いがしています。

 百六十ページの表を見てください。ここに示しただけでもサリンの作り方は八通り
あります。余談ですが、この図を掲載した私の本の共著者は大学院生です。つまり、
それほど簡単な知識なのです。大学で化学を勉強した程度で充分理解できるでしょう。

 このうち松本で作られたサリンの製法は、最も低い百度で生成するルートをたどっ
たと思われます。一番最後にフッ素化合物と五塩化リンとアルコールを混合するとで
き上がりです。

 この結果生じるものは、サリンと塩化水素、また化合しなかったフッ化水素が気化
することもあるでしょう。サリンは重たい気体ですから、河野家の庭木が高いところ
まで枯れていたのは塩化水素やフッ化水素によるものと考えられます。

 サリンは植物を枯らすことはありません。また、池から風下に行くに従って樹木の
上のほうが被害が大きくなっています。

 犯人たちは、サリンの精製という手順を省いただけで、実験自体は非常に上手くいっ
たと、今頃ほくそえんでいることでしょう。

最終段階の薬剤を混ぜるだけなら犯はたったの二、三分だ。

 もう一つの疑問は、サリンが重たい物質であるにもかかわらずアパートの住人には、
上の階に深刻な被害者が多かったことです。現場を見てみてわかりましたが、河野家
の付近は昔のお屋敷があったところで一軒一軒の敷地が大きく、最近ではそれを取り
壊してマンションを建てているとのことでした。

 鉄筋コンクリートの建物と木造家屋が混在する点は、サンプルとしても興味深いも
のです。

 辺りにはそれほど高い建物はなく、サリンの発生現場からみて風下はコの字形の吹
き溜まりになっています。こういった地形では一種のビル風のようなものが吹きあがっ
たり、風が巻いたりします。重いといっても、あくまで気体ですから、風に乗って思
わぬ広がり方をすることは当然です。テレビのシミュレーションでやっていたように
じわじわとは広がらないのです。

 ただ、もしもこの何棟かのアパートが無かったら、被害は付近の多くの家に広がっ
ていたでしょう。そのことを考えるとさらにゾッとします。

 私の感覚では作られたサリンの量は約一キログラムです。これはあくまで仮定です
が、アルコールとフッ化水素を加える前の液体はまだ安全ですから、これを氷ででき
た容器に入れて最後の作業を現場で行なったとしたら、私ならわずか二、三分で現場
を立ち去ることができるでしょう。そして、氷製の容器はサリンの化学反応で起きた
熱によって溶けてしまうのです。化学反応が起きるまでには、最短で二十分、最長で
二時間。無事に逃げるまでには充分な時間があります。

 いずれにしても、サリンは現地で最終段階の作業を行なったのです。決して純粋な
アンプルなどを用いたわけではありません。つまり、犯人は作ろうと思えば何度でも
作ることができる。

 松本という街は、来年長野オリンピックの舞台の一つになるそうですが、私にはテ
ロリスト達が実験をするのにふさわしい場所だと思えました。

 つまり、通りすがりの人はほとんどいない。結果は必ずマスコミが伝えてくれる。
そして、地方の警察がオタオタするだけで、やがてうやむやのうちに忘れ去られてし
まう。

 もちろん、それがなぜ松本なのかは、犯人に土地カンがあったとか、何らかの理由
があったには違いありませんが。

 サリンの実験に適した気象条件は、気温が高く、湿度が低く、直後に雨が降って痕
跡を消してくれることです。

 事件の起こった六月二十七日は、梅雨の合間でした。前日までシトシト降り続いた
雨がやみ、初めて気温が三十度に達して、部屋の窓を開けている家がたくさんありま
した。しかも、その後に雨が降る確率は非常に高かった。湿度が高いことを除けば、
非常に適した条件だったのです。
いずれにしても私には犯人のほくそえむ顔が見えるようです。もしもこれが、新宿の
地下街で起こったら。あるいは大阪の繁華街で起こったら。いや、ニューヨークやロ
ンドンかもしれない。
 犯人たちは、次はもっと大きな舞台で、大きな悲劇を起こそうとしているのです。
(取材協力・大野和基)
以上。
木村愛二:国際電網空間総合雑誌『憎まれ愚痴』編集長


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