1663.東アジア共同体構想について



アルルの男・ヒロシさんからの投書から、今の米国戦略を見て、日
本と中国が共同でどのような東アジア戦略ができるか検討する。 
         Fより

この国際戦略コラム仲間内では、このバーネット地政学の第一発見
者は、コバケンさんです。彼の名誉のために書いておきます。
さすが地政学の権威だけはあります。

このバーネットの地政学に合わせたような動きを米国がし始めてい
る。道路や鉄道が繋がり、韓国と北朝鮮との一体化するが、これを
米国は承認していたようだ。反対に北朝鮮・金正日の訪ロ希望をロ
シアが拒否。(核問題を解決しろと、ロシアも怒っていることが分
かる。)

韓国の北朝鮮への傾向に合わせたかのように、米国の在韓米軍を縮
小してイラクに移駐することと、東アジアは中国と日本に任せて、
米国はイスラム諸国の民主化を促進する動きが同時に起きている。
バーネットも中東シフト戦略は米国の石油資源確保のためではない
という。しかし、私も世界も石油のためもあるとも考えている。
世界も私もテロ封じ込め体制にすることには反対していない。

そして、在日米軍もグアムまで前線を下げて、北朝鮮や中国の中距
離戦術ロケットの射程外にする。東アジアの問題は、中国と日本で
何とかしてくれということのようである。

しかし、その裏で日本と中国を敵対的な関係にするため、日中経済
水域ぎりぎりに石油ガス田開発を欧米企業が仕掛けててきた。日本
と中国で相互の反発がないと米国はMD(ミサイル防衛システム)
が売れないし、欧州企業は中国で日本企業に負けることになる。こ
のために、欧米は結託して日中の分断を仕掛けている。たくみだ。

そして、同時にネオコンに中国脅威論を書かせる。欧米エスタブリ
シュメントが集まったビルダーバーグ会議の中で話されたのでしょ
うね。ネオコンが出席していたし、中国人も1人参加している。

このため、日本も中国もこの仕掛けに乗ってはダメだ。日中で平和
的に問題を解決するべきである。日中ともに大人の配慮が必要だ。
反発し合っては日中共にいいことが無い。欧米の悪巧みに乗っては
ダメだ。

そして、日中分断させるためには、バーネットの地政学ではおかし
い。このため、バーネットの地政学自体に疑念を持っている学者や
政治家が反論し始めている。経済界からの要請で反論しているよう
にも感じる。日中が組んで東アジア政治経済共同体ができたら、ア
ジアの経済・政治覇権は、欧米には完全に無くなる。

このため、一方で欧米自体は中国との結びつきを強めている。米中
の航空協定で、相互の航空便を5倍にするとか、欧州の仏は中国と
海軍の共同演習を行うなどである。

バーネット反対の学者は、バーネットの地政学では、米国の政策の
大幅な変更になる。特に米国の世界覇権(グローバル・コップ)が
無くなると。しかし、世界覇権維持は、米国の国力が無いために、
これ以上無理であると、バーネットは反論している。基本的には、
東アジアを中国と日本に任せるしかないと。

とういことは、日本と中国とASEAN+韓国で新しい国際的な組
織や共同体が必要になっていることを意味している。その仕組みが
東アジア共同体構想(EAC)であろう。1990年代にマハディ
ールがEAEGと構想した組織そのままである。今のASEAN+
3の発展系である。昔の大東亜共栄圏構想である。

中国はこの東アジア共同体構想(ASEAN+3)と中央アジア諸
国、ロシアと上海協力機構に参加している。当分、中国を中心に世
界は進む可能性が高くなっている。中国の発展はいいことだけでは
なく、資源の奪い合いなどの問題も起こるために、一層のリサイク
ルや省エネ化を進める必要が出てくる。
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PNACクリソツの「東アジア共同体評議会」サイト 
                    アルルの男・ヒロシ
   
この地図が光っている部分は、大東亜共栄圏に匹敵します。インド
が入っていないのは違っていますが。

これは米国主導・容認の大東亜共栄圏です。
まず、以下に引用する、FTのマーティン・ウルフのコラムの以下
の部分を読んで欲しい。

(引用開始)
What is being demanded here is revolutionary: a reconsideration 
of the basis of the world's political order. 
Acceptance of the sovereignty of governments rests on the assumption 
that they possess a reasonable degree of benevolence and 
competence. The US has decided that it cannot, in the modern age, 
tolerate the survival of malevolent governments. 
But, urges the commission, it should be just as unwilling 
to tolerate failing ones.

Other liberal democracies should share a similar view, 
for both moral and security reasons. 
The post-colonial assumption that national sovereignty would 
prove compatible with international stability and widely shared 
prosperity has proved wrong. Where national sovereignty is a label 
for anarchy or predation, it does not deserve to be sacrosanct.

FT2004年6月9日
(引用終わり)

アルルです。
アメリカ・イギリスの「新世界秩序」戦略は、グローバリズムを
世界で徹底させることを通して、アメリカが世界一の軍事力・経済
力を維持しつつ、世界各国がアメリカと経済的相互依存関係を持つ
ようにしていくということである。これは先日転載した、トマス・
バーネットの記事からも明らかであり、地政学と経済戦略を絡めた
、「グローバリゼーションの地政学」戦略である。主権国家の枠を
超えた、多国籍企業がキープレイヤーの中心になる。戦術面では、
イラク戦争のような、軍事的体制変換や、M&Aを通した企業文化
のアメリカ化を中心にした、経済的体制転換というものを採用して
いる事が判ってきた。

日本も、このPNAC主導のネオコン戦略に2003年ころから
ビビビトと反応しはじめている。産経新聞の正論に時々、伊藤憲一
・国際交流フォーラム理事長が書き始めるようになった。それが何
なのかよく分からなかったのだが、最近になって、その答は「東ア
ジア共同体評議会」(CEAC)だということが判ってきた。

この東アジア共同体は、伊藤憲一氏の他、中曽根康弘元首相が会長
を務めており、そのほか、行天豊雄氏や内海孚氏らの通貨マフィア
や田中明彦・東大教授などの学者人脈から構成されている。中西輝
政氏は入っていない。

この東アジア共同体は、以前アメリカの反対でお釈迦になった、
EAEC構想と似ている。しかし、役員・評議員名簿を観ればよく
分かるように、アメリカとの根回しをした形跡が伺える。

このCEACのウェブサイトを観れば判るようにトップ頁のデザイ
ンがマジで、PNACクリソツである。属国論を援用すると、アメ
リカは、「大東亜共栄圏の復活」を、アメリカ主体の世界覇権の元
で日本に行わせようとしているという解釈になる。

それを日本側も政府から財界まで承認しているというのが、この
サイトの役員・評議員名簿を見るとよく分かる。

アメリカが日本にアジアを任せようとしているのは、日本が、バー
ネットの定義や、ウォルフの定義で言うところの「コア」になって
いるからである。このコアはアメリカに戦争を仕掛けない。相互依
存が著しいからだ。軍事的安全保障の脅威にはならない!という大
前提(トマス・フリードマンのMのアーチ理論に近いと思う)があ
る。アメリカは、M&A戦略も使って、FDI(対外直接投資)の
増加で、日本の「民族資本」をはぎ取って、これをグローバルな国
際資本のネットワークの中に位置づけるという、安全保障上の担保
を取っているということである。

よく考えると、UFJの筆頭株主は、ソブリン・アセット・マネジ
メントというモナコの外資だし、三井住友銀行は、正確には、三井
住友ゴールドマン銀行と呼ぶのがより実態に即している。

これは米国側の「日本抜きゲームにはしない。ゲームの参加への熱
意によっては、プレイヤーとして認めてやる」ということだろう。

このように、アメリカは世界新秩序構築に着々とコマを進めている。
このグローバル化の新世界秩序の戦略があまりにも相互依存的であ
る(しかし、対等ではない)ので、日本側もこれから抜けるわけに
はいかないというジレンマを抱えている。

アメリカ・英国の覇権戦略はやっぱり恐ろしいほど怜悧であざとい。

デザインがPNACクリソツだっつーの
http://www.ceac.jp/forceac-3.html

参考
ブルッキングスのサイトデザインがCPAにパクられたという話

Brookings Irked by Web Imitation 
Iraq Authority Takes Think Tank's Online Cues, but Not Views 
By Mark Stencel
Washington Post Staff Writer
Monday, May 24, 2004; Page A21 

http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A50366-2004May23.html?referrer=email
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(6/19)与党の親中派退潮・政府内に慎重論も(日経)
 東シナ海における中国の天然ガス田開発問題の背景には、尖閣諸
島の領有権など同海域での海洋権益の拡大を狙う中国と日本との潜
在的な対立がある。政府内ではこれまで外務省を中心に「中国を刺
激し、外交摩擦に発展するのは得策でない」として問題がクローズ
アップさせるのを避けようとする空気が大勢だった。これに与党の
対中強硬派や経済産業省の資源派などが方針転換を迫ろうとしてい
るのが現状だ。 

 日中のパイプ役だった竹下登元首相が死去して19日でまる4年。
昨年の衆院選では野中広務氏が引退するなど、自民党内の親中勢力
はじわじわと退潮している。 

 一方で、経済成長に不可欠な資源確保に血眼となる中国への反発
は強まるばかりだ。自民党の武見敬三、舛添要一両参院議員ら若手
、中堅の外交通でつくるワーキングチームがこのほど「東シナ海で
の試掘実施」「尖閣諸島での施政権強化」などを求める政府への提
言書をまとめたのも、この象徴といえる。 
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件名:アジア経済共同体への期待  

東京電機大学教授、阿部一知氏に聞く
経済が文化の違いを超える 
日本がまとめ役に/最後に残るのは日中交渉 

米国含めた自由貿易圏へ/アジアハイウエー構想も浮上 

 欧州連合(EU)が二十五カ国体制となり、アジアでも経済共同
体への期待が膨らんでいる。文化的に多様で、しかも経済格差の大
きなアジアで、共同体づくりはどのように進んでいくのか。この分
野の専門家で、日本と韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)と
の自由貿易協定(FTA)にも詳しい阿部一知・東京電機大学教授
に展望を聞いた。

 (聞き手=フリージャーナリスト・多田則明)

 ――キリスト教の共通基盤があるEUに比べ、文化が多様なアジ
アの経済共同体は障害が大きいといわれるが。

 確かにそうした見方もあるが、近年は経済の統合が政治の統合を
牽引(けんいん)している。EUと比較してアジアは宗教や文化が
多様だが、やはり経済主導で進んでいくのではないか。EUのスタ
ートは一九五三年の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)、EU統合は
九二年なので、四十年かけてじっくりやってきた。アジアの場合は
まだ歴史が短い。
 アジア太平洋経済協力会議(APEC)が結成されたのは八九年
で、それ以前にあったのは六七年に設立されたASEANくらい。
アジアでの経済統合の動きはまだ十年余りなので、それからすれば
遅くはないと思う。

 近年、アジア各国では米国や日本に留学したビジネスマンや技術
者が分厚い層を形成し、新しい仲間意識が芽生えてきている。戦前
のように相手国を不当に収奪していたのでは、利益は得られない。
むしろ、直接投資で相手国を富ませることが、互いの利益につなが
る。工場進出に反発する人もいるが、構造的にはそこで技術を習得
することが工業化の裾野(すその)になり、自立性を高めることに
なる、という考えが主流になりつつある。

 ――最近、世界貿易機関(WTO)の交渉が行き詰まり、FTA
が主流になってきたのは。

 国際的な経済ルールづくりにおいて、二国間で交渉するのは例外
的だったが、最近はWTO的な手法があまりうまくいかなくなった
。その理由の一つは、途上国に課す義務が次第にきつくなったこと
。そのため交渉が進まないというのがウルグアイ・ラウンド以降の
構造的な問題だ。もう一つは、貿易や投資だけの議論ではなく、環
境保護や反グローバリズムなど、WTOそのものに対するイデオロ
ギー的な反対が強くなった。WTOが総会を開こうとすると反対す
るNGO(非政府組織)が押し掛ける。ところが、二国間だとグロ
ーバリズム反対など言えない。

 ――ASEANとのFTAでは日本が中国に出遅れたといわれて
いるが。

 確かに出遅れ論はあったが、日本の場合、公式のコミットメント
をするのはかなりしっかりした基盤ができてからだ。政治的なリー
ダーシップとともに、相手国との行政的な詰めを非常に重んじる。
それができるまでは、うかつな約束はしない。逆に、ある程度の基
盤ができると、非常に速い。最近は、ASEAN各国との個別交渉
が進展し、目に見える形でも中国にかなり追い付いてきている。

 中国の場合、二〇一〇年までにASEANとFTAを締結すると
いうのはスローガン的な意味合いが強い。WTOの授権条項という
のがあり、途上国同士のFTAは非常に要件が軽く、かなりの項目
を除外することが認められているので、「仲良しになろう」という
程度でもFTAを結べる。先進国はそれができず、細目まで詰めた
質の高いFTAになる。

 ――アジア経済共同体に向けて、どんなステップが考えられるか。

 中国はASEANとの間で二〇一〇年までに緩やかなFTAを結
ぶ。日本は今、ASEANや韓国との間でFTAの交渉を進めてい
て、韓国とは〇五年末までに、それと前後してASEANの中でも
進んだ国との間でまとまる。そうなると、中国に先んじて日本が東
アジアのハブのようになり、経済共同体への取りまとめ役になるの
ではないか。そうなると、中国とASEAN、日本とASEAN、
最後に残るのが日本と中国との関係だ。一〇年ごろにそれが一番大
きな交渉になるだろう。

 望ましいのは、中国が貿易を自由化することだ。そのころまでに
は日本企業がかなり中国に進出し、両国にはそれぞれの製品があふ
れるようになっているので、互いの利益としてハードルを下げるの
ではないか。一〇年を越したころに、それが起こるだろう。

 ――韓国とのFTA交渉は。

 盧武鉉大統領が弾劾されていたため、大統領の判断が必要な事項
がストップしていた。一番問題になっているのは石油化学製品や自
動車など製造業で、補償措置を求めている。
 部品輸入には有利だが、それに対する理解ができてないようだ。

 サムスンなどのIT企業は通貨危機でかなり構造改革が進んでい
るので、心配していない。鉄鋼やセメント、造船なども強く、まだ
ら模様になっている。

 一次産業では、水産業で日本が打撃を受けるだろう。コメなどの
基幹産品は互いにクローズドしているので、農民が抗議集会をする
ようなことはない。むしろチリとのFTAでは、主に果物をめぐっ
て反対する農民が国会に押し掛けた。

 ――ASEANとのFTAでは何が課題になるのか。

 シンガポールとの間では既に締結されている。タイは穀物を中国
に大量に輸出するなど農業が強いので、この交渉がヤマになる。少
し前まで私は、日本が農産品の自由化を拒んで交渉が延びると思っ
ていたが、タイ側が農業はかなり譲歩してもいいと言っている。
 やはり、日本とのFTAを急ぎたいのだろう。

 フィリピンとの間で問題なのは人間のサービス、とりわけ看護師
が働けるよう要求している。外国人が多くなり過ぎると管理できな
くなるので、日本は否定的だ。旧西ドイツでは、トルコ人労働者が
定住し、教育や社会保障が高い負担になったので、私も慎重にした
方がいいと思う。

 ――競争力の弱い日本の農業はどうなるのか。

 コメなど数品目は大議論になる。しかし、農業の構造改革は避け
られない。農業政策の分かれ目が保護から所得保障への転換と株式
会社に農地の所有を認めることだ。そうしないと日本農業は立ち行
かない。

 EUは共通農業政策で、全体で農家に所得保障をしている。日本
は韓国と共通農業政策をしてもいい。韓国の農家は日本よりも零細
で専業率が高く、打撃は韓国の方が大きい。

 ――いずれアジアの共通通貨が必要になるのか。

 通貨統合は金融レベルの統合で、アジアは遅れている。資本の移
動が自由で、相手国の株や債券が買えるようになり、銀行を開いて
預金を集められるようになるには、もう少し時間がかかる。貿易の
決済機能だけであれば、円建てかドル決済かは、貿易の中の安定性
の問題だ。

 政府間のスワップ(債券、債務交換)など金融上の協力は進んで
いる。それに資本の自由化が追いついて、例えば日本にアジアの銀
行が開かれ、預金を集め与信もするとなって、その次に出てくるの
が一つの通貨だ。

 金融統合が進むと、円にペッグ(連動)する通貨の割合が多くな
るだろう。いずれ円を共通通貨にしてもいいが、各国が独自の金融
政策ができなくなるのが問題だ。特に中国は困るので、まだその段
階ではない。

 ――アジア経済共同体と米国との関係はどうなるのか。

 米国はアジア独自の経済圏を好ましく思っていない。そこで
APECは太平洋の両岸を含めた経済圏を目指している。日本の自
由貿易圏が韓国からASEANとの間で進むと、それに対して米国
は黙ってはおらず、同様にFTAを結ぼうとするであろう。米国は
弱い品目が少ないので、決めると速い。そうなると、米国も含めた
自由貿易圏になる。ASEANも中国に輸出したいが、政治的、軍
事的な圧力は避けたいとの考えから、米国のプレゼンスを求めてい
る。

 ――貿易のインフラ整備は。

 今、アジアは貿易量の急増で港が混雑している。とりわけ、中国
では港湾機能が不足しているので、上海や大連などに大規模なコン
テナ埠頭(ふとう)を建設している。日本では中国向けの出荷が年
に三割も増え、船賃が上昇しているほどだ。

 物流が増えるのを見越して、アジアハイウエーの構想が国連アジ
ア太平洋経済社会委員会(ESCAP)で議論されている。日本政
府も国土交通省が窓口で昨年十一月に議論に加わり、今年四月には
上海で開催されたESCAP総会で、日本を含む三十二カ国が「ア
ジアハイウエー多国間政府協定」に署名した。イスタンブールから
バンコク、北京、釜山と来たアジアハイウエー1号線の起点は東京
になるとされている。

 その間には対馬海峡があるので、物流インフラがボトルネックに
なるという理解が行き渡れば、日韓トンネルも検討の可能性がある
。あるいは日本が大陸と陸続きになるというシンボル的な意味合い
も考えられよう。

 あべ・かずとも 昭和55年(1980年)東京大学法学部卒業。経
済企画庁入庁。ハワイ大学経済学博士課程修了。アジア開発銀行エ
コノミストとしてミクロネシア、中国など担当。平成8年(1996年)
経済企画庁調整局国際地域協力推進室長。同11年内閣参事官を経
て、同13年より東京電機大学工学部教授。総合研究開発機構
(NIRA)客員研究員。著書は『中国のWTO加盟と日中韓貿易
の将来』『日中韓直接投資の進展』など。
 世界日報 △掲載許可済み
Kenzo Yamaoka
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中ロ、中央アジアの地域協力機構 [現代中国ライブラリィ] 
http://www.panda.hello-net.info/keyword/sa/kyouryoku.htm
上海協力機構 

 1996年4月、上海に中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン
、タジキスタンの5カ国首脳が集まった。国境地帯における軍事分
野における信頼強化を目的としたものだった。翌97には「国境地区
軍事力相互削減協定」に調印、以後、持ち回りによる首脳会議が定
例化した。
 当初は「上海ファイブ」と呼ばれたが、2000年にウズベキスタン
がオブザーバーとして加わり、翌2001年6月14日に正式加盟。これ
に伴い上海ファイブは常設機関「上海協力機構」として出発するこ
とになった。
 加盟6カ国で世界の人口の4分の1、面積の5分の1を占める巨
大な地域機構である。02年6月のペテルブルクの第2回首脳会議で
は加盟6カ国首脳が「上海協力機構憲章」に調印し、秘書処(事務局
)を北京に置き、キルギスに地域反テロ機構総本部を設置すること
を採択した。現在、インド、パキスタン、モンゴルなども加盟を希
望している。
 上海協力機構は加盟各国にとって、@新疆の東トルキスタン独立
運動、ロシア・チェチェンの分離運動などのイスラム原理主義を押
さえ込む、A経済、貿易、交通、技術、教育、電力・エネルギー、
環境などの分野での協力促進による相互発展、B唯一の超大国とな
った米国への牽制、などの意味がある。
 もっとも米国への牽制という意味では、近年のロシア・プーチン
政権の対米協調への転換で、当初の中ロの思惑とはズレが目立って
きたともいえるが、イラク問題にみられるように、米国が超大国と
して単独行動主義に固執するかぎり、上海協力機構は中ロ両国を結
びつける絆となるだろう。
 2003年5月27日、モスクワで第3回首脳会議を開催。胡錦涛主席
が初めて参加。反テロ協調や国連重視をうたった共同声明に調印。
正式の国際機関への格上げを最終的に決定した。そのために必要な
意思決定機関や予算などの規定を承認し、初代事務局長に張徳広・
駐露中国大使を任命した。2004年1月から活動を開始する。
 また、ウズベキスタンを除く5カ国は、反テロ合同軍事演習の実
施に関する覚書に調印。2003年8月6日から、合計1000人以上の実
戦部隊を派遣、上海協力機構による初の多国間合同反テロ軍事演習
がカザフスタン東部の中国国境付近で行われた。 
 2003年9月23日には、首相会議が北京で開かれ、経済貿易協力や
機構の機能強化を盛り込んだ文書を採択。共同コミュニケでは「貿
易と投資を利便化をはかることが現段階での上海協力機構の主要な
任務」との認識で一致。域内の貿易、投資環境の改善などを盛り込
んだ「多国間経貿綱要」など一連の合意文書に調印した。
 2004年1月15日、外相会議を北京で開き、オブザーバーや対話パー
トナー制度を設け、メンバー拡大の方針を決めるとともに、北京に
秘書処を設立した。(2004年1月15日更新)

2004年6月16日から18日でタシケントで会議を開催してい
る。


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