1654.ボブ・ウッドワード記者



セイモア・ハーシュ記者を紹介したので、彼より有名なボブ・ウッ
ドワード記者を見よう。      Fより

ボブ・ウッドワードは1943年3月26日に生まれた。イェール大学卒の
海軍将校でワシントン・ポスト紙記者、現編集局次長である。ワシ
ントン・ポストに33年勤務している。

アメリカ随一のジャーナリストであり、今から32年前、同僚の記
者カール・バーンスタインと「ウォーターゲート事件」をスクープ
し、その経緯を書いた「大統領の陰謀」の著者でもあり、時の大統
領ニクソンを退陣に追い込んだことで知れられている。ボブ、ウッ
ドワードは徹底的な取材に基づいた事実を浮かび上がらせる調査報
道というスタイルを確立した。そしてウォーターゲート事件以降、
報道の主流スタイルとなった。

彼がその手法を用いて、イラク戦争に関しては「Bush at War:ブッ
シュの戦争」という本を書いている。そして、つい最近、
『Plan of Attack(攻撃の計画)』という本を書き、開戦直前に焦
点をあてた。そこには衝撃の事実が綴られている。

2001年9月11日の同時多発テロの2カ月後、2001年11
月にアメリカ軍がアルカイダと手を結んでいるタリバン政権を倒す
ためにアフガニスタンに総攻撃をかける。その時に既にフセイン打
倒の計画を立てられたというものだ。

 つまり、その本によれば、ブッシュ大統領は大量破壊兵器の査察
の結果なんてどうでもよくて、"フセイン打倒"の戦争を起そうとし
ていたというのだ。「父ブッシュの仇」であるフセインへ911と
関係なくとも、攻撃することになったわけだ。

ブッシュ大統領は同時多発テロのおよそ2ヶ月後2001年11月
21日に、ラムズフェルド国防長官を呼び出し、イラクへの攻撃計
画立案を指示した。彼は、テロの"主犯"であるアルカイダより、
フセインの方を打倒したかったのだ。チェイニー副大統領は、ブッ
シュよりさらにフセインを倒す戦争に意気込んでいた。

さらにブッシュはフランクス米中央軍司令官には、「必要に応じて
サダム・フセインを倒し、アメリカを守る方法を検討するように」
と命じたのだという。

しかし、ライス大統領補佐官やテネットCIA長官、パウエル国務
長官には、決定の詳細が明らかにしなかった。
2002年7月、ブッシュはアフガニスタンで行っている戦争のた
めの補正予算のうち、7億ドルを秘密裏にイラク戦争の計画作成に
費やすことを認めていた。
2002年も終わろうとしているとき、ブッシュはテネット長官に
イラクでの大量破壊兵器の存在について尋ねるのだが、テネットは
「大丈夫。確実にみつかりますよ」と答えたという。

2003年1月始め、ブッシュは最終段階としてライス大統領補佐
官にイラクへの攻撃を相談。そこで、イラク開戦の最終決断を下し
たのである。そして、サウジの駐米大使がホワイトハウスに直々に
呼ばれ、イラクの戦争計画についてチェイニーとラムズフェルドか
ら詳細な報告を受けた。また、サウジ王家は、ブッシュ再選のため
、選挙直前に石油生産量を増加することにより、価格を下げてアメ
リカ経済を助けることを約束した。

その後、ライス大統領補佐官が「パウエル長官にも知らせたほうが
いい」とブッシュに助言、大統領は2日後にパウエルを呼び、決断
を伝えた。するとパウエルは、イラク戦争が困難なものになること
を指摘した。「どういう結果を引き起こすかわかっていますか。
(陶器店と同じで)自分で壊したものは引き取らなければならない
んですよ」「イラク国民2500万人分の希望と悩みの全てをあな
た責任で行うことになるわけですよ、大統領」と、異議を述べた。

しかし、ブッシュの決意が変わる事はなかったが、最終的には「良
き兵卒」としてブッシュ氏を支えることを約束した。いったん開戦
が決定すると、その遂行にわきめもふらず邁進するという「兵士の
規律」を持っているのも軍人であるのです。

欧米の将軍クラスになるような軍人というものは相当な勉強をして
いるし、経験的にも戦争の悲惨な中身をよく知るだけに、一般的に
開戦には消極的な例が多い。死んでいく人は、全部、自分の部下な
ので、開戦に消極的なのは、ある意味で納得できるものです。

その後、戦争反対のパウエル国務と推進派のチェイニー副大統領と
は対立していたのだという。
大衆の多くが大量破壊兵器の査察の結果をはらはらして待っている
そのとき、実はイラクへの攻撃はすでに既成事実になっていた。

これだけ政権にとって不都合な事実が次々と暴露されたにもかかわ
らず、大統領のホームページ上で推薦書リストに紹介すらされてい
る。2003年12月10、11日にブッシュ大統領がジャーナリ
ストと3時間半ものインタビューを承諾したということ自体、異例
中の異例である。秘密は「ウッドワード・マジック」にあるようだ。 

この秘密はウッドワードのワシントンにおける人脈の広さである。
インタビューを拒否すれば、政権に批判的な人物からの情報が中心
となることを、政権が危惧したであろうことは疑いの余地がない。
実際、嫌がるチェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官にウッ
ドワードとのインタビューを受け入れるよう、強く勧めたのはブッ
シュ大統領であったという。 

ウッドワードの下調べ、準備の入念さである。ブッシュ大統領への
インタビュー申し込みに際して、調査結果に基づく主要点を提示し
た21ページにもわたるメモを提出している。一種、観念して、イ
ンタビューを反論の機会に利用しようという意図も政権側にはあっ
たかもしれない。良くも悪くも、事実をしつこいまでに重ねて主観
を述べないというウッドワード記者の以前からの手法であるために
政権サイドも、会見を受け入れるしかなかったのでしょうね。

このウッドワードによって、いまや本がニュースをすっぱ抜き、新
聞が本をニュースとして扱うという新現象が起こっている。本の一
部をワシントンポストのサイトで、5回にわたり連載した。

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イラク戦争立案は同時テロ直後…新刊でウッドワード氏(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040417-00000102-yom-int

【ワシントン=寺田正臣】ブッシュ米大統領が対イラク戦争の計画
立案を、同時テロ後間もない2001年11月に側近に命じていた
ことが、来週発売される新刊「Plan of Attack(戦
争計画)」の中で明らかになった。

 著者はウォーターゲート事件のスクープで有名なワシントンポス
ト紙記者のボブ・ウッドワード氏。ブッシュ政権がかなり早い段階
からイラクに的を絞っていたことが浮き彫りになっており、米マス
コミは16日、この問題を一斉に報じた。

 ワシントンポスト紙などの報道によると、同時テロへの報復とし
てアフガニスタンで軍事作戦展開中の2001年11月21日、大
統領はラムズフェルド国防長官に対イラク戦の計画を練るよう命じ
た。この秘密計画は、国防総省と米軍のごく一部の幹部にしか伝え
られず、当初はライス国家安全保障担当補佐官やテネット中央情報
局(CIA)長官にも詳細は知らされなかったという。

 またイラク戦争開始の3か月前の2002年末に、イラクの大量
破壊兵器の存在を示す証拠について尋ねる大統領に対し、テネット
長官が「大丈夫。これはスラムダンク(100%間違いないこと)
ですよ」と答えたことも明らかにされている。これらの情報をもと
に、大統領は2003年1月には軍事作戦を実行する決意を固めて
いたという。

 ブッシュ大統領は16日、ブレア英首相との首脳会談後の記者会
見で「同時テロの4日後の安保会議でイラク問題が取り上げられた
が、私はアフガンに専念しようと言った」と語った。またラムズフ
ェルド長官との会談については「覚えていない」と述べたが、マク
レラン大統領報道官は同日、会談が行われたことを認めた。

 同書はまた、ブッシュ政権がイラク戦争に突き進む過程で、チェ
イニー副大統領が戦争を最も強硬に主張したことや、盟友のブレア
英首相が離脱するのではないかと大統領が懸念していたことなども
記した。

 同書は、大統領やラムズフェルド長官など75人以上の政府、軍
関係者などとのインタビューに基づいて書かれた。(読売新聞)
[4月17日17時15分更新]
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極秘でイラク攻撃計画指示 
 アフガン戦争中に米大統領 
 【ワシントン16日共同】ブッシュ米大統領が2001年11月
、米中枢同時テロを受けた対アフガニスタン戦争の最中に、イラク
攻撃計画を極秘で作成するようラムズフェルド国防長官に指示して
いた、とする内幕本が来週発売されることが16日、明らかになっ
た。

 ワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード記者の著書「攻撃計
画」で、フセイン大統領殺害を狙った空爆をめぐる経緯、チェイニ
ー副大統領らネオコン(新保守主義)とパウエル国務長官の確執な
ども描かれており、話題を呼びそうだ。

 同書を事前入手したAP通信によると、ブッシュ大統領は攻撃計
画作成を指示した際、テネット中央情報局(CIA)長官に計画を
漏らさないよう命じ、国家安全保障担当のライス大統領補佐官にも
詳細は教えなかったとしている。

 大統領はウッドワード氏に対し、攻撃計画が発覚すれば「国際的
な不安と憶測を呼ぶ」と秘密保持に腐心した経緯を語ったという。
(4/16)

ブッシュの戦争
Plan of Attack(攻撃の計画)ーブッシュのイラク戦争(7月15日発売予定)
Plan of Attackの原書
グリーンスパン 日経ビジネス人文庫
大統領執務室―裸のクリントン政権

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