1640.分断されるアメリカ



分断されるアメリカ
米国の威信が低下して、かつ米国国内でも大きな問題を抱えている
。この現状を見よう。  Fより

米国に移民してくるヒスパニックにより、2つの民族、2つの文化
2つの言語に米国は分断されてきている。メキシコ人やその他のラ
テン系の人たちは、米国主流の文化に同化しない。変わりに自分た
ちの文化や言語を保持している。アメリカン・ドリームを実現した
米国流プロテシタントの価値観を拒否している。しかし、米国は、
この危険を無視している。と最近の本でハンチントンは言う。

ヒスパニックが増えたために、大統領選挙でも共和党、民主党とも
に無視できない存在になっている。このため、ブッシュもマイアミ
ではスペイン語で演説した。フロリダは元来、民主党が強い所であ
ったが、キューバから逃れてきた人たちが住み着き、ヒスパニック
の人口が増えている。

このヒスパニックがブッシュ支持になったので、前回の大統領選挙
では勝てたのです。このようにどんどん政治面でもヒスパニックの
力が増している。まるでローマ帝国のゲルマン人大量移民でローマ
が崩壊したような状態になっている。そういえば、今の米陸軍の下
級層の主流は黒人とヒスパニックであるようですね。イラクの戦死
者にヒスパニック系の人が多く含まれている。

そして、今のグローバル経済の時代には、自国の文化や特徴を強化
して製品・サービスを作り、多くの文化・国家のサービスや商品と
対応する必要があるが、米国は急速に2つの文化に引き裂かれてい
る。こう1つは、この事象と反対に、アジアやイスラム圏からの留
学生や移民を拒否し始めている。アジアからの移民や留学生は、米
国の産業に貢献していたが、米国が長期滞在を拒否するために、自
国に戻ってビジネスをして、米国からアウトソ−シングを受けてい
る。米国を弱くしていると田中宇さんは言う。

そして、アジア・イスラムの留学生は日本や欧州が新しい留学先に
なっているようですね。日本では新設大学の定員の半数を中国人や
アジア系の人が占めているようです。この人たちが自国に戻り、
日本企業のアジア進出先に採用されるようです。また日本に留まる
人も結構多い。この人たちが次の日本の担い手になっていくように
感じる。

しかし、イスラム圏からの来る留学生は少ない。ほとんど欧州に行
くのでしょうね。このため、アルカイダが日本に出先を作ろうとし
たが失敗している。日本企業はイスラム圏で成功していないのが幸
いしている可能性がある。イスラム商人たちがガードしているため
に入り込めない。法律体系もあまりにも違う。

しかし、このために欧州から米国への航空機を米国はいろいろな制
約を付け始めている。イスラム系の人間を米国に侵入させたくない
ようですね。ビザ取得も厳しくなっているようです。このように米
国は内向きになってきている。

チャルマーズ・ジョンソンはブローバックという米国へ憎しみの逆
流を言ったことで有名であるが、最近の本で、民主共和主義から、
産軍体制と官僚の帝国になったと嘆いている。911以降、国民の
基本的人権も蔑ろにされている。この問題がジュネーブ協定違反を
行う下地になっているのでしょうね。

そして、原油の高騰で欧州はドル建てから通貨バスケット制に移行
させるべきであると明言した。これは、数年前には言えなかったこ
とである。米国の逆鱗に触れると恐れていていたはずが、ここまで
言っても大丈夫と欧州は判断したのでしょうね。米国の威信も地に
落ちてきたようですね。

国連の安保理でのイラク決議も中国の修正案が多くの国から支持を
集めて、米英の決議がそのままでは通りそうもない。
また、NATO軍を国連が動いたら出すと言う約束もフッシャー独
外相の反対で反故になりそうである。ここにも米国の威信の陰りが
出てきている。

このような米国の威信の陰りが次の問題を起こすような気がするが。
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原油取引、ドル建てから通貨バスケット制に移行すべき
          =欧州委副委員長

 [ブリュッセル 26日 ロイター] 欧州委員会のデパラシオ
副委員長(運輸・エネルギー担当)は26日、世界の原油取引を、
現在のようなドル建てのみではなく、ユーロを含む通貨バスケット
制に移行させるべきだ、との考えを示した。 
 同副委員長は、「原油価格を価値に関連させる必要があるなら、
主要原油消費国が絡んだ通貨バスケットに結びつけるべきだ。これ
により、原油価格の影響の実態が明らかになる」と述べた。 
 同副委員長のスポークスマンは、現在全てドル建てで行われてい
る原油取引を通貨バスケット制にすることは、世界の原油市場の安
定化につながる、との見方を示した。(ロイター)
[5月26日20時59分更新]
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NATOイラク派兵に反対 独外相、調整難航も

 【フランクフルト28日共同】ドイツのフィッシャー外相は28
日、連邦議会(下院)の答弁で、北大西洋条約機構(NATO)軍
のイラク派兵に反対する考えを示した。理由について「西欧の軍隊
はイラクで『占領軍』とみなされる」と述べた。
 NATOは主権移譲後のイラク暫定政権の要請と国連の決議があ
った場合、部隊を派遣する方針を示している。6月下旬にイスタン
ブールで開催する首脳会議で派兵問題を討議するが、調整の難航も
予想される。
 一方で外相は「イラクの平和は、国連安全保障理事会に提出され
たイラク新決議案がうまくいった場合のみ達成される」とも指摘し
た。
 ドイツは軍のイラク派兵を拒否。ただ外相はこれまで、NATO
がイラク派兵を決定する際には「ドイツはこれを阻止しない」とし
てきた。(共同通信)
[5月29日0時29分更新]
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イラク新決議で中国が修正案提示 主権完全移譲盛り込む (ASAHI)

 国連安全保障理事会は26日午後、非公式会合を開き、米英が提
案したイラク新決議の草案を協議した。常任理事国の中国が、イラ
ク暫定政府への完全な主権移譲や、多国籍軍の駐留期限を移行政府
が樹立される来年1月までと明記することを盛り込んだ修正案を提
示。フランス、ロシア、ドイツを含む大半の理事国が同調して米英
に修正を要求した。 

 ドイツのプロイガー国連大使は協議後、中国の修正案について記
者団に「安保理内で非常に広い支持を得た」と語った。 

 中国が示した主な修正点は(1)政治、経済、治安維持、司法を
はじめ、石油など天然資源の取り扱いを含む主権を暫定政府に完全
移譲する(2)多国籍軍の駐留期限は来年1月までとし、延長の場
合は暫定政府の合意を得て安保理が決める――など。 

 米英案は多国籍軍の期限を「12カ月後に見直す」としている。
もともと米英と独仏の主張に隔たりのあった部分で、多国籍軍の駐
留に対するイラク暫定政府の権限をどう規定するかが、今後の協議
の大きな焦点になると見られている。 

 プロイガー大使は協議後、「外国軍の駐留の可否を決めるのは主
権を持つ政府の権利。大切なのは新決議によって駐留期限を明確に
し、駐留がいつまでも続かないことをイラク国民に明示することだ
」と語った。 

 一方、米のネグロポンテ国連大使は安保理で、草案を修正する必
要はないと強調した。協議後、同大使は記者団に「米英案は駐留延
長の場合には移行政府の合意と承認が必要という認識だ。具体的な
ことは、その時点になって現地で調整されるべきだ」と語った。
 (05/27 12:13) 
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米主導の「テロとの戦い」、構想破たんで原則失う=人権団体

 [ロンドン 26日 ロイター] 国際的人権団体のアムネステ
ィ・インターナショナルは26日、年次報告のなかで、米政府の世
界的な反テロ政策は、治安をやみくもに追求した結果、人権が犠牲
になっているとして、「構想が破たんし原則を失っている」と指摘
した。
 さらに、米国が唱える「テロとの戦い」に賛同する国も、容疑者
を不法に投獄し、政治的・宗教的な反対意見を弾圧するなどしてい
るとして、非難した。
 また、「米軍がイラク一般市民を殺害し、イラクやアフガニスタ
ンなどで不当に逮捕や虐待を行い、国際法廷の設置にも反対してい
る」と糾弾している。(ロイター)
[5月26日21時44分更新]
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英国際戦略研「イラクの安定、50万人の兵力必要」(nikkei)

 【ロンドン=横田一成】英国の国際戦略研究所(IISS)は25
日、世界の安全保障情勢をまとめた年鑑「戦略概観」を発表した。
会見したラントン研究員は「当面、イラクの治安を回復させるには
50万人近くの兵力が必要だ」と指摘、多国籍軍の増派かイラク軍の
大幅な増強が重要との見方を示した。 

 現在、イラクには米軍約13万8000人、英軍約8000人などが駐留し
ている。イラク軍・警察を合わせても35万人程度の兵力にとどまる。
戦略概観は「マドリードでの列車爆破テロは(国際テロ組織の)ア
ルカイダが組織を再編し、活動を再開したことを示した」と強調、
欧米主要都市でテロ発生の可能性が高まっていると警告した。アル
カイダの下で訓練を受けたテロリスト予備軍は1万8000人にのぼると
想定。イラク国内には1000人以上のテロ活動家が侵入しているとみ
ている。 (23:33) 
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参考資料
http://fuku41.hp.infoseek.co.jp/160526.htm
http://bbs8.otd.co.jp/881368/bbs_plain?base=2744&range=1
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混迷深めるイラク情勢
米の占領政策不在に起因/現地で期待度高い自衛隊
 一カ月後に迫る六月三十日のイラクへの主権移譲を控え、イラク
国内でのテロが激化している。首都バグダッドに近いファルージャ
での反米武装勢力との戦闘は沈静化しそうにない。

 そうした中で、日本人ジャーナリストらが武装勢力によって人質
となった事件は、NGO活動家やジャーナリストのあり方とともに
、改めて自衛隊派遣論議に火を付ける形となった。今月の論壇でも
、人質被害者などの「自己責任」論や、混迷を深めるイラク情勢に
伴い自衛隊の駐留意義をめぐる特集が組まれたのも当然といえる。

 「文藝春秋」六月号では池内恵、金子貴一、江畑謙介の三氏によ
る「緊急討議 自衛隊撤退は誰も望まない」が、そうした事態を受
けて冷静な分析をしており、わが国のとるべき対応として妥当な内
容になっている。

 現在のイラク情勢の混迷について、金子氏は「米占領軍の質」を
指摘している。イラク駐留米軍十三万五千人のうち約四万五千人が
最近まで日常の生活を送っていた州兵の予備役であり、突然送り込
まれた彼らがイラク人暴動に過剰に反応したりして、かえって反米
感情をあおるといった面があるという。

 江畑氏も、兵員不足に加え、占領政策の不在を挙げている。ラム
ズフェルド国防長官の「ハイテク化と効率化」による少数精鋭主義
はフセイン政権打倒までの戦いでは圧倒的な強みを見せたが、その
後の占領統治では、そのための組織、ノウハウ、政策がなきに等し
かった。いわば、大規模戦闘用ではあるが、治安維持など統治的な
役割を担う態勢に欠けていたのである。

 この点は重要で、今問題になっている米兵によるイラク人捕虜へ
の虐待問題とも大きく関係していよう。この時点では虐待問題は明
るみになっていないが、こうした背景を示唆する分析といえる。

 さらに占領政策の不在が、国境警備のザル穴という形でツケが回
っている。フセイン政権時代には国境監視に百万人が動員されたも
のの、今では二万人足らず。これでは武器も人(武装勢力)、カネ
(活動資金)が入り放題というわけだ。

 そういう状況下では、問題は多いにせよ、米軍以外に国家再建す
なわち国境監視による武装勢力の流入阻止、国内治安回復、“刀狩
り”をやれる組織は米軍以外にない(江畑氏)といえよう。

 一方、自衛隊だが、今月二十五日に自衛隊が駐留するサマワの宗
教指導者が来日し、自衛隊の活動に謝意と期待を示すとともに陸自
の増派を要請した。イラク派遣自衛隊の受け止め方が現地と日本国
内での議論とギャップがある、と金子氏が指摘する通りだ。まさに
、「自衛隊が今後なすべきことは、撤退どころか、こうした現地の
期待に真摯(しんし)に応えていくこと以外ない」のである。


自衛隊「海外任務」の位置付け
「雑則」でなく準「本来任務」で 

 ところで、湾岸戦争後の海上自衛隊掃海部隊の派遣を皮切りに、
国連平和維持活動(PKO)から今回のイラク派遣など、自衛隊の
海外における活動の機会は増え、また定着してきた。

 が、ここで改めて問われなければならないのは、こうした自衛隊
の「海外任務」の法的取り扱いだ。「Voice」六月号で佐瀬昌
盛氏が「自衛隊『海外任務』改造論」と題して、この問題にメスを
入れている。今脚光を浴びている「海外任務」は、災害派遣や民生
協力などとともに自衛隊がとるべき行動には挙げられているが、本
来「主たる任務」とは位置付けられていない。「国防」が主たる任
務なのだ。

 「海外任務」(国際緊急援助活動、在外邦人等の輸送、PKO業
務などを含む)は「自衛隊法」第八章の「雑則」で扱われている。
「テロ特措法」「イラク特措法」も法制上、自衛隊の本来任務とさ
れていないがゆえに、「自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度に
おいて」との制約がつくのである。

 佐瀬氏はこうした「雑則」や特措法といったその場しのぎの弥縫
(びほう)策ではなく、自衛隊の海外任務を「主たる任務に準ずる
任務」あるいは「本来任務の一つ」という形で位置付けるべきだと
している。同感だ。

 この問題は、派遣自衛隊の武器使用や装備に影響してくるだけで
なく、派遣体制の見積もりやローテーションなどといった円滑な運
用にもかかわってくる。防衛庁・自衛隊はこの問題を積極的に訴え
ていくべきだろう。


「NGO性善説の落とし穴」
「能動的リスク」見落とすな 

 イラクでフォト・ジャーナリストやNGO活動家らが人質になっ
た事件では、各種メディアで「自己責任」論が沸騰した。が、ここ
は冷静な視点でこの一連の彼らの行動を論ずべきであろう。その点
で「中央公論」六月号の岡本浩一氏「NGO性善説の落とし穴」は
、リスク心理学者としての斬新な視点から分析した興味深い論考だ。

 例えば、リスクの評価基準として、受動的リスクと能動的リスク
がある。前者は、自分に選択の余地や回避手段がない、後者のリス
クより深刻視される。同じ飛行機事故でも、旅客機事故の方が自家
用機事故よりはるかに深刻視されるが、これは旅客機事故が受動的
リスクで自家用機事故が能動的リスクだからという。登山とか冒険
などは「能動的」の典型で、戦争や伝染病などは「受動的」の典型
だろう。

 そこで、例の人質事件の場合だが、岡本氏によれば、「戦争や誘
拐という最も受動的な要素に目が奪われやすく、渡航しない自由度
があったという能動的要素が注意から漏れたのが特徴」だという。

 つまり、当初、同情を買っていたのは、人質になった経緯がすべ
て受動的な要素だけで報道されたため、退避勧告をおしてイラクに
能動的に乗り込んだという側面が抜け落ちていたからだ。

 「自己責任」論で当初、人質被害者と北朝鮮に拉致された被害者
を同列視して論ずる意見があったが、たちまち否定されたのもそう
した理由からだろう。

 NPOとかNGOというと、「善意」「ボランティア」といった
受動的イメージが強いが、冷静に「能動的」行為にまつわる厳しさ
を認識すべきといえる。
  世界日報編集委員 黒木正博  ▽掲載許可済み
Kenzo Yamaoka


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