1626.米国のイラク泥沼化



米国の戦略的な失敗になる可能性が出てきた。  Fより

ネオコンのケーガンやクリストルまでが、欧州を引き入れるために
国連を参加させて、早期にイラクでの選挙をするべきであるとネオ
コンの機関誌「ウイクリー・スタンダード」に書いている。

しかし、この虐待問題で、米国の覇権力を大幅に弱めているように
感じる。覇権に必要なパワーは武力だけではなく、ジョセフ・ナイ
が言うようにソフト・パワーとしての大義とか文化などが必要であ
るが、このソフトパワー部分の力が大幅に減退したようだ。

欧州は国連がイラク統治に参加すれば、NATO軍をイラクに派遣
する方向で協議していたが、この虐待問題が出て、イラクでの米国
の大義が完全に失われたとして、当面NATO軍の派遣はしないと
した。
虐待問題も、軍情報部と軍の規律を重視する正規軍の意識の分裂が
引き起こしている。しかし、この裏には宗教的な問題も隠されてい
るようだ。ローマ法王が即座に虐待に対して非難声明を出している
が、プロテスタント・サイドからは非難の声明が出ていない。

そして、とうとうあの狂信的なキリスト教原理主義者で有名なボイ
キン中将が、虐待問題の前面に出てきた。
『異教徒』、つまりキリスト教かユダヤ教を信じる白人以外は殲滅
の対象だと信じているらしいボイキン中将を国防副次官という要職
につけたブッシュ政権が問題である。キスリト教右派の問題がこの
虐待でも、表面化してきている。このため、イラク戦争の正当性を
米国は維持できないことになっている。ブッシュの国内での選挙対
応の人事が、国外での戦争の大義を潰して、自分の再選を危うくし
ている。

そして、ポンジョラスが完全撤退して、今後も撤退する国家が増え
るようである。スペインはナジャフの治安を見ていたが、米軍は事
前の連絡もなしにシーア派との戦闘を開始して、スペイン軍がシー
ア派と築いた信頼を破壊したために撤退したと表明している。この
ように他国の軍隊を追い出すような行動も米軍はしている。

このため、米国は米軍の13万人を当面イラクに駐留させることに
なるようで、経費が年間600億ドル以上になり総計2000億ド
ル以上になると見ている。米国の国力を大幅に消耗する。日本の円
介入という支援策も米国工業会の反対でできないために、米国は長
期金利を大幅に上昇させるしかない状態になっている。これは米国
景気を冷やす方向に作用する。国民世論の方向も変化して、ブッシ
ュの再選の可能性も50%以下と低くなっている。

しかし、不思議と米軍のイラクからの撤退を言わない。撤兵した「
後は野となれ山となれ」と言わない。弱虫と言われたくないためで
しょうが、アメリカのブッシュを含めて保守派は孤立主義の誘惑に
駆られているはずである。
少なくとも、新しい戦争には参加しないでしょうね。イラクの火傷
は当分、米国を臆病にするはずである。

しかし、世界は悲しいかな、国家の崩壊は続くだろうし、世界を脅
かす混乱は絶えないだろう。新しいテロも起こるでしょう。
しかし、米国は紛争に参加しない可能性が高い。

アジア地域の安全保障にも消極的になっている。沖縄からの撤退、
韓国からの撤退も視野に入れている。欧州は米国の弱気を知ってい
るために欧州軍を作り、アフリカの紛争地域に派兵している。統一
のEU軍本部もフランス国防省内に設置している。このように米国
後を見据えている。アフリカやバルカン半島は欧州覇権地域とみな
している。

しかし、アジアでの米国後の安全保障体制の枠組みが見えてこない
。ASEANと日本、中国、韓国との具体的な姿を構築するしかな
い。孤立主義になる米国はグアムまで撤退する可能性が高い。日米
安保は日本にとって効率的な安全保障であったが、日本自体が集団
安保体制を取れる枠組みを早く作り、米国後を模索する必要がある。

親米保守派の米国を頼りにする気持ちは分かるが、日本の米国属国
化が許されない状況になり、そして安保ただ乗りはできないと身構
えて、そろそろ、独自外交を構築し、かつ独自の情報網・判断を必
要とする時代が来たと思うべきでしょうね。小泉さんの訪朝を見る
と米国の弱気が分かる。
==============================
米、対シリア制裁発動へ テロ対策が不十分と

 【ワシントン11日共同】米ホワイトハウス当局者は11日、ブ
ッシュ政権が同日中にシリアに対する経済制裁を発動する方針だと
述べた。
 イラクへ流入する外国人テロリスト対策が不十分だとして、対シ
リア制裁法に基づき、同国への投資禁止やシリアの航空機の米本土
への飛行禁止などを検討している。
 ブッシュ政権はシリア政府に対し、イラク国内へ流入するテロリ
ストの阻止と国境管理の強化を求めていたが、シリア政府が「対テ
ロ戦争」に非協力的だとして今回、制裁発動に踏み切る。
米議会内からも対シリア制裁を求める声が高まっていた。
(共同通信)
[5月12日1時41分更新]
==============================
NATO、イラク派兵当面せず…米紙報道

 【ワシントン支局】9日付米ロサンゼルス・タイムズ紙は、北大
西洋条約機構(NATO)が、イラクに当面、派兵しない方針に傾
いていると報じた。

 米政府は、6月のNATO首脳会議で、NATOがイラク南部の
治安を担当することで合意することを期待していたが、加盟国の多
くは、少なくとも11月の米大統領選挙の前に、大規模な派兵を確
約することに反対しているという。

 米政府は、駐イラク米軍を順次、削減したい考えで、NATOに
よる“肩代わり”を強く希望している。(読売新聞)
[5月9日23時29分更新]
==============================
米軍のイラクなどでの活動予算、05年度は600億ドルも(日経)

 【ワシントン=森安健】米国のウルフォウィッツ国防副長官は13
日、上院軍事委員会の公聴会で、イラクとアフガニスタンで米軍の
活動を継続するための来年度分の予算が当初見積もりの500億ドル
(約5兆7000億円)を「確実に超える」と明言し、600億ドルに上る
可能性があることを示唆した。

 これまでの2度にわたる補正予算と合わせればイラク関連の作戦経
費の累計は2000億ドルを超える見通しで、米財政を一段と圧迫する
のは必至だ。

 副長官は両国での米軍の駐留コストが月50億ドルに迫っていると
指摘。2005会計年度(2004年10月―05年9月末)の経費総額は「500億
ドルから600億ドル」との見通しを示した。

 米政府は当初、来年度分のイラク、アフガニスタン予算は500億ド
ルと想定。大統領選前にイラク予算が争点となることを避ける狙い
もあって、あえて2005年度本予算の要求には盛り込まず、2005年1月
に補正予算として要求することを視野に入れていた。 (5/14ー10:14) 
==============================
<イラク人虐待>「神に対する罪」 ローマ法王庁非難

 ローマ法王庁(バチカン)のラヨロ外務局長(外相に相当)は7
日、米兵によるイラク人収容者虐待事件を「神に対する罪」と呼ん
で強く非難し、「関係者は裁判により法的に処罰されるべきだ」と
述べた。局長は、虐待事件にキリスト教徒が事件に関与したことに
深い遺憾の念を示した。(毎日新聞)
[5月8日10時34分更新]
==============================
 非公式情報

再び浮上したボイキン中将の名前
By StrangeLove

狂信的なキリスト教原理主義者(聖書根本主義派)として有名な
ウィリアム・ボイキン陸軍中将の名前が再び出てきた。アブ・グレ
イブ刑務所の拷問に関してである。

昨年6月、国防副次官に指名されたが、その直後に国防総省の文民幹
部に対し、拘束したイラク人に対して性的な、あるいは肉体的な拷
問を行うことを進言したとする報道があったのだ。情報の収集が容
易になると説明したという。写真を材料にして保釈後も情報提供を
強要していたのかもしれない。

さて、国防副次官に就任する前、ボイキン中将はフォート・ブラッ
グにいた。SOF(特殊作戦部隊)の拠点基地である。1952年6月、こ
の基地でSOFは創設されたのだが、そのメンバーの大半はOSS(第2次
世界大戦の際にアメリカが設置した情報機関)の破壊工作部隊やレ
ンジャー部隊の出身者だった。

こうした背景があるため、SOFは正規軍よりもCIA(OSSの流れをくむ
アメリカの情報機関)と近い関係にある。ベトナム戦争中、SOFとCIA
は正規軍と別の戦争を展開したが、その象徴的なものがフェニック
ス・プログラムである。ベトナムの村民を虐殺したソンミ村事件も
この作戦の一環だ。

現在、ボイキン中将の下で行われている掃討作戦は121機動部隊が実
行しているが、これもCIAとSOFの混成チーム。ベトナムで皆殺し作
戦を展開したコンビがイラクで復活したわけで、似たことが行われ
ると警告する人は少なくなかった。そして、懸念したとおりになっ
た。

もうひとつ、忘れてならないのは『民間人』の問題である。護衛や
警備のために多くの民間人がイラクで活動しているが、その大半は
特殊作戦部隊やそれに準ずる経歴の持ち主である。軍や情報機関で
はできないようなダーティな仕事をしている疑いもあるのだ。

『異教徒』、つまりキリスト教かユダヤ教を信じる白人以外は殲滅
の対象だと信じているらしいボイキン中将を要職につけたブッシュ
政権も同類ということだろう。小泉政権がこうした事態に気づいて
いなかったとは考えられない。よほど無能な人間の集まりでないか
ぎり、わかっていたはずである。


コラム目次に戻る
トップページに戻る