1593.暴走する資本主義と多国籍企業



件名:暴走する資本主義と多国籍企業    S子 

 冷戦終結により世界秩序が大きく損なわれたことは、今や誰もが実
感していることである。世界の覇権国として君臨した米国が、イラ
ク戦争から対テロへと立ち向かおうとするその好戦性に、世界は恐
怖と不安の中にいる。

共産主義の崩壊という一方の「タガ」が外れたことで、資本主義と
の経済二極化構造が崩れ、米国が突出した軍事力で単独暴走してい
るように、資本主義勝利の歓喜が今大きく資本主義を暴走させてい
る。東西対立という境界線の消滅は、世界における暗黙の規律を喪
失させた。

それに伴い資本主義に内包している経済のグローバル化がより顕著
になり、資本主義の自由競争による利潤追求をさらに優先、増幅さ
せた。これにより世界市場に多国籍企業という巨大企業が参入する
ようになり、彼らは市場支配から経済支配へと向かい世界の政治を
も支配、牛耳るようになった。冷戦終結後の新たな世界秩序構築は
、グローバル資本主義のもとで、これら巨大化してゆく多国籍企業
に委ねられていると言っても過言ではない。

彼らは異業種企業との合併を繰り返すことでコングロマリットとい
うひとつの帝国企業を形成し、世界市場を手中にしてゆく。彼らの
飽くなき利潤追求はこの地球上にある全てのものが対象となり、売
り物として商品化されてゆく。

私たち人間のからだの60%を占めている水でさえ今や商品化され、
ペットボトルで販売されているのは今日当たり前の風景になったが、
一昔前では水の商品化など誰も考えはしなかった。

2000年3月、オランダのハーグで開催された「世界水フォーラ
ム」で話し合われたのは、水が「ニーズ」と「権利」のどちらかと
いう議論だった。つまり水は全ての生きとし生けるものの共有財産
でも権利でもなく、私たち人間が欲し必要としているものであるこ
とを世界に容認、認識してもらうのである。要は自分たちのやって
いる行為を正当化したい。それだけなのだ。

水道企業の民営化は彼らにとって更に利潤を生むものとなる。天然
資源である水の独占化により彼らは巨額の利益を得ている。今や水
は彼らにとってブルーゴールド(青い黄金)となり、20世紀にお
ける石油と同様、もしくはそれ以上の価値を彼らは21世紀の水に
期待している。

彼らは水のあるところならどこにでも進出する。表層地下水、深層
帯水層、湖沼、湿地帯等。まずは利潤ありきの彼ら独自の倫理観が
彼らを強奪者へと駆り立てる。ものを奪うことには長けていても、
ものを育てる気長さは彼らにはない。そんな間があれば人のものを
盗んだほうが手っ取り早い。彼らにとってはこういうのを合理的と
いうのだろう。

しかし、こんな無謀なことをしていればやがて地球上の全ての資源
は彼らによって食い尽くされてしまう。2020年には石油の枯渇
が言われ、2025年には地球人口の爆発的な増加により世界の大
半の人々が水ストレスの危機にさらされるようだ。

そして、この石油や水の需要に拍車をかけるのが中国の民主化であ
る。都市化の波と各種産業の勃興で石油や水の需要はもっと勢いず
くだろう。現に中国では地下水の汲み上げは深刻で地盤沈下を起こ
しているところもある。

そして更に追い討ちをかけるようだが、今日の近代社会を支えてい
る石油や水という天然資源がある日を境にして突然になくなること
である。これら天然資源が徐々になくなるのであれば、時間的余裕
から私たちに何らかの対策も可能だが、彼ら多国籍企業がグローバ
ル資本主義のもとでの優位性を利潤だけに求めるならば、ものに対
する本質さえ私たちに見失わせるだろう。

お金を出しさえすれば、全てのものは無尽蔵に手にいれることがで
きると私たちは勘違いしている。地球上の資源には限りがあること
などとっくの昔に私たちは忘れている。というか忘れさせられてい
る。

私たちはどうやら資本主義に馴染みすぎて本質を見ることなどでき
なくなっている。お金に翻弄され感覚が麻痺しているのだ。資本主
義の自由競争という言葉に踊らされてきたが、要は争い合って優劣
をつけ勝つか負けるかのどちらかしかない、非情な世界を私たちは
生きている。

市場支配から経済支配を経て世界の政治を支配する権力を手に入れ
た多国籍企業にとって青い地球という惑星の存在よりも、今ある我
が世の春を謳歌できればそれでよいのだ。彼らのこの近視眼的な行
為がやがてこの人類を地球を滅亡へと追いやることは間違いなさそ
うだ。私たちはグローバル資本主義に生きるこれら多国籍企業へ人
類と地球の危機をどのようにして警鐘することができるのだろうか
。

参考文献  「水」戦争の世紀  モード・バーロウ
                トニー・クラーク
                鈴木 主税 訳
                      集英社新書
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(Fのコメント)
資本主義の限界を米国が一番感じているように思う。それは、中国
での生産コストが米国で製造するより30分の1になり、米国から
中国に製造業がシフトしている。米国企業が元気なのは、映画産業
や製薬会社ですから、本当に米国の経済は空洞化してきている。

このため、米国内の二分化が進んでいる。貧しいスラム化した都市
中心部と豊かな都市郊外ですね。このような米国がなぜ出来たかと
いうと、工業生産の場である工場がなくなって、労働人口が減って
いることによる。米国の産業は映画、ラスベガスのようなギャンブ
ルや観光業や金融などになってきた。その金融も金融工学が世界に
知れ渡り、優位な差を形成できない。

この二分化した貧富の階層の会話も無くなっている。貧困層は生活
保護で生きている。この生活保護費用を捻出するために、富裕層の
税金が高くなる。このため富裕層は都市から逃げていくことになる
。都市部は発展途上国の都市より汚いし、危険である。貧富の二階
級の民族の住む世界が違う。

米国は世界的に優れている物は軍隊と兵器しかないのかもしれない。
この比較優位な軍を使って、米国経済を立て直すしか米国のリーダ
はできないと思っているようだ。それで、今後エネルギー問題が起
こることが確実であるために、中東の石油を押さえようとしている
のでしょうね。

国際的な企業も、それぞれの企業が世界的な展開をしているために
、日本や米国の利益ではなく企業利益を優先している。これがもう
1つの問題なのでしょうね。企業も優位の差がないために水などの
資源を企業化する際どい商売になるのでしょうね。自動車も飛行機
もAVもPCも米国では製造していない。


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