1567.不文憲法のすすめ2



kazuさんに順次お答え 久保 

ではkazuさんに順次お答えさせていただきます。久保
 
----- Original Message ----- 
 
> ******************************
>     国際戦略コラム    NO.1559         ???
> ******************************
>          成文憲法を提唱する理由
 
> 
> この前投稿した内容は2点です。
> 
> 1)日本には不文憲法は全くあわないこと。
> 
> 2)新憲法を制定するに当たって、現状の憲法から改正し  
>  ていく必要があると思う点について。
>   (趣旨は違いますので、これは今回省略します)
> 
> 要旨を繰り返すことになりますが、前回言い尽くしてない点も
> あるので、重複になる点もありますが下に補足します。
> 
> 1)日本には不文?憲法は全くあわない
> 
> 久保さんの論文は長くて、要旨がわかりにくいのですので、
 
 
 
それは申し訳けありませんでした。
前の「不文憲法のすすめ」は一般の方向けのエッセイで、こういう選
択肢も視野に入れてお考えください、という意味で書かせていただ
きました。
今回の「不文憲法を提唱する理由」は専門家相手の論文のため、
たしかに詳細、かつ専門的でまどろっこしい点が多いと思います。
 
ところで目下、憲法学界では不文憲法の提案者は私と他にお一人
ぐらいでまことに少数派です。たった二人ですから「派」とも言
えない。「一人一学説」が信条学問のの世界であり、はしくれ
学者の存在価値の見せどころですからね。
 

> 反論ではなくて、一部繰り返しになりますが、なぜ、不文憲法
> は日本に全く合わないか自分の意見を述べます。
 
 
反論ではないのですね。不文憲法が日本にはふさわしくないと
いうあなたのご意見なのですね。よくわかりました。
 

> ?歴史からの教訓
 
ただし歴史の見方にはいろいろな視点があり、その教訓の受け取
り方も人それぞれ違いがあります。
 
> 前回の伊藤博文が作った明治憲法には、軍隊の指揮権(統帥権
> )について、重大な欠点を抱えていました。
> 憲法上シビリアンコントロールの原則があいまいなままで、
> 大正末期から統帥権の解釈の拡大がされ、これが敗戦に突き進
> んでしまった大きなひとつの原因になったというのが、定説に
> なっていると思います。
 
確かに、これは学界の大定説、教科書どおりです。
しかしここで気をつけなくてはならないのは「先の戦争で日本が敗
北を喫した」からといって(あなたがそうだというわけではありませ
んが)決して「全」否定すべきではないと思います。戦いの勝敗は
多分に時の運です。「勝者=正義、敗者=悪」、この論理でいけば
善人は史上アメリカとイギリスぐらいしか残りません。
 
 有色人種の日本は、白色人種の欧米列強の植民地支配に抗して
日本精神・武士道精神により、大いに善戦しました。日清・日露・
大東亜戦争を通じ、ダークホースー・日本があれほど頑張るとは
正直どの国も思わなかった。それは日本がすばらしい国民性を伝
統的に有していたからです。
 
先の敗戦を明治憲法(大日本帝国憲法)の責任にしてはあまりに可
哀想です。
敢えて言うと、戦後の日本人の最大の過ちは、たしかに敗戦の反
省は大いにしなければならないが、戦前の歴史、精神、文化をあ
まりにも否定することにあると思います。憲法典の歴史も、それ
が制定された時代背景を考慮しなければばなりません。そしてそ
の時代の「理想(憲法典)」と「社会(政治)」の現実」の乖離も当
然見抜かなければなりません。
 
「日本国憲法第九条」や前文を見て、現在のわが国が軍隊のない
時代であったと後世の何人も思わないでしょう。あなたの言うよ
うに、「国会は国政の最高機関」と憲法典には謳われていても、
実際には「内閣」が動かしているわけです。また政治の原動力
ともいえる「政党」について日本国憲法は何ら語ってくれては
いない。
同様に「大日本帝国憲法」も、西欧風体裁のその条文のみでは
当時の日本の政治実態を正確に表してはいないと見るべきです。
 
しかし昨今の日本人の憲法意識では、敗戦の元凶は「明治憲法」
だ、「統帥権干犯」こそが敗戦の最大原因だ、とあたかもバブル
に踊り狂った人々が責任回避し、今日の政治制度の責任にしてし
まうように、敗戦責任を「明治憲法」にしてしまっている。
皮肉を言うと、後世のインテリたちは「バブル崩壊」、それに続
き、将来「経済戦争で欧米列強に敗北」することにでもなれば
、経済条項を欠き、非常事態条項が欠落していたからだと、そ
の責任を日本国憲法のせいにするかもしれない。
 
統帥権干犯問題
 
とにかく今も昔も憲法典は「野党による格好の政争の具」で、
あることは確かです。しかしいざというときには政府は常に
「超憲法的手段」に訴える。
これは浜口首相と鳩山一郎のロンドン軍縮会議の統帥権干犯論
争も同様。鳩山は、現在の野党と同様に「反対のための反対」
ばかりして政党政治を潰してしまった。
 

シビリアンコントロールについて
 
> 明治維新の元勲が力を持っていたころは、統帥部(戦時は大本
> 営、海軍軍令部と陸軍参謀本部のこと)と政府と意見が食い違
> った場合、これらの元老たちが現実的には、憲法に書かれてい
> ないが意見の調整を行っていました。大正末期から昭和初期に
> 山縣有朋を最後に元老が力を失うとともに、統帥部(戦時は大
> 本営)の意見を政府が調整することができなくなっているのが
> 、わかっていながら、統帥権について憲法を改正せず、シビリ
> アンコントロールをなし崩しにしたまま、満州事変、日中戦争
> 、大東亜戦争敗戦に突き進んでしまうという情けないことにな
> りました。
> 当然ながら、元老が力を失った時点で、明治憲法を改正し、明
> 確なシビリアンコントロールを憲法上に明確に規定すべきだっ
> たと私は思います。
 
これはもう高校の教科書通りですね。あなたはシビリアンコント
ロールであれば戦争回避できると本気にお思いですか?
シビリアンは平和志向で 軍人は平和志向ではない?
 
そもそも「シビリアン」とは一体何ですか?
1 軍人や高僧などに対して一般の国民を指すのか。
2武官に対して文官を指すのか。
3戦闘員に対して軍属(通訳のような非戦闘員)を指すのか。
 
かつて職業軍人たる経歴の者はどうなのか?
一般人でも軍国主義思想に染まった人間はどうなのか?
 
Tルーズベルト Fルーズベルトはシビリアン(文民)?でしたが戦争を
始めました。歴史的にこの国は戦争ばかりしている。アメリカほ
ど好戦的な国はない。今も世界のあちこちで戦争をはじめては、
マッチ・ポンプで食っている国なのに、日本はその国に身を委ね、
アメリカ白人の「自由と民主主義」の美名に酔わされている。
 
「ヤクザの妾」いや言い過ぎか「遠隔地被扶養者証」を持つ歩き、
まだ日本であるにもかかわらず「世界で唯一、軍隊を持たない国
だわ!」と言って、高額のアルバイト料を稼ぎ、贅沢三昧にふけっ
ている状態ではないでしょうか? アメリカからの真の独立宣言を
待ち望みます。
 
イギリスも同様、ダウニング十番街に言って御覧なさい。戦時内
閣(WAR CABINET)の建物が常設されていますよ。
 
また憲法典というものは平時には有効ですが、戦時体制になれ
ばどの国も憲法典を吹っ飛ばしてしまうのが常です。超憲法的に、
国家総動員し、挙国一致で国民を動かしますよ。 Fルーズベルト
が好例です。ポパイやミッキーマウスなどの漫画、有名映画俳優
・芸能人も戦争キャンペーンに総動員されている。
日本は米英ほど苦労せず、挙国一致できる。国家総動員をかけら
れる。日本はほぼ単一民族ですから、阿吽の呼吸ですね。
 
ところで広島・長崎に原爆投下したトルーマン大統領は勿論、ア
イゼンハワーも軍人出身です。最高司令長官の大統領は一人で勝
手に戦争を開始する権限を持っています。戦争になれば大統領の
独壇場ですね。選挙近くになると戦争を始め、人気投票のポイント
稼ぎをしがちです。
 
またイギリスのチャーチルも勿論軍人ですね。統帥大権は女王だ
けが有するにもかかわらず、彼は戦時内閣を造って、なりふり構
わず、独断的に戦争を遂行しました。彼は性来、戦争坊や(オタク
)で、戦争が何よりも好きでした。
 
> また、戦後の現在の憲法も戦力の保持を9条第1項で禁止して
> いながら、自衛隊を持ち、また、今回のイラクにまで派兵まで
> なし崩しに行っています。
 
現在はシビリアンコントロールではないのですか? 現行憲法は
ほんとうに無力ですね。なぜ改憲しないのですか? 改憲する必要
がないからですか?180度反対の解釈をしても憲法の存在意義は
あるのですか。もともと憲法典がなければどういうことになるで
しょうね。]d\ より慎重な論議が行われる必要が生まれると思われ
ませんか?
 
> 当たり前のことながら、憲法は不磨の大典ではなく、一国の理
> 想に基づいた法律です。現実に合わなくなったら、法律をタブ
> ー視せず改正すればいいだけですよね。
> 何でこれを改正せずに上に上げたようななし崩しで、軍部や内
> 閣法制局が解釈を拡大してしまったりするのでしょうか。
 
「拡張」解釈の域をはるかに超えていますね。
 

> これらの事実は日本は成文憲法があっても、軍部とか法制局が
> 勝手に解釈を変更拡大してしまうという日本の民族あるいは国
> の行動パターンといえると思います。歴史にはある程度の再現
> 性があります。
 
憲法典のなかったどの時代の「再現」なのかかわかりませんが、
わたしの主張はこの辺から出ているのですよ。改正しないで無茶
苦茶な解釈改憲している今日の状況私を憂えているのですよ。現
行憲法制定いらい一度も護られたことのない憲法典に何の価値が
ありますか?ふだんは妙な入り口論争ばかり繰り返している日本
の国会を外国人はどう見るのでしょうね。
 
> まして成文憲法がなければおやです。もし、明確な成文の規定
> がなければ、
> それこそ、なし崩しどころか、その場その場で政府が勝手に制
> 限なく行動することに歯止めがかからなくなります。
> 「現行の憲法に弊害が多いので、成文憲法をやめる」久保さん
> の主張は考えられませんね。
> 不文?憲法なんて歴史からレッスンを学ぶ能力のある人には日
> 本に合っているはずがないのがわかるはずです。
 
守られようが守られなかろうが憲法典(条文)があれば、とにかく
安心される「現代人」ですね。あなたはどうやら英米をはじめと
する外国は信頼できるが、自国をあまり信用していらっしゃらな
いようです。イギリスよりも磐石な日本の「広義の憲法」すなわ
ち日本の道徳規範や伝統、国民性にもう少し誇りを持たれてはど
うですか?ただし、私は法律は不要とは一口も言っていません。
 
 
 
> 憲法を含め、政治家が
> 政策を決定する際に一番重要なことは、歴史哲学だと私は思い
> ます。自国の歴史から、失敗したこと、成功したことをレッス
> ンとして学び取り、日本が歴史的に前進する政策を決定するこ
> とです。
 
同感。私の意見と異なりますか?
 
> 局面乗り切り的な政策ではその場では、とおりはよくても、そ
> の場限りのことになってしまい、結果的に過去の失敗を繰り返
> すこと担ってしまうかもしれません。また、同時に自国の歴史
> を縦軸に、海外の事情を横軸に自国の現在の状況をつかんで、
> 自国と外国との違いを認識して、政策を決めていくことが重要
> だと思います。
 
憲法典自身の問題ですか? それともその運用の問題ですか?
> 
> ?外国と日本との違いを認識すべき
 
同感。明治以来の「共通項探し」より、「内外(華夷)の弁別」こ
そ我々には重要です。これが私の学問をはじめた動機です。
あなたのご主張はとてもわかりますが、やはり前の私のエッセイ
、論文をお読みになっていらっしゃらないようですね。これが
大テーマです。したがって以下は論評を省かせていただきます。
 
> 日本とアングロサクソンの国とは明らかに違うことを認識すべ
> きと思います。冷徹なアングロサクソンは情報や戦略に優れて
> います。それに対して、日本は一億総なんとかとか、熱しやす
> く冷めやすい、武士道の影響がのこり規律や名誉を重んじます
> から、組織作り物作りには長けていますが、情報戦や外交、戦
> 略、交渉は戦前戦後共通して、非常に弱いのはご存知のとおり
> です。
> 法律の体系も、日本とアングロサクソンとはかなり違います。
> また、日本は憲法はアメリカが草案を作っていますが、法律は
> 基本的には大陸法です。
> アングロサクソン法はご存知とおり、イギリスの憲法など典型
> ですが、法律を細かな条文にはせず、裁判の判例によって、そ
> の場で決めていきます。大陸法はあらかじめ細かな条文を決め
> ておきます。
> 
> 憲法はひとつの大きな国の理想になりうるし、その憲法を実現
> するにはどういう戦略計画を日本は持つべきかという課題を戦
> 略を作ることを苦手とする国には非常にいい思考環境を常に与
> えることになります。
> 
 

> ?日本は憲法制定力を持った国
 
そうであればいいのですが、残念ながら、日本は外圧で動く傾向
が強いように思います。日本の歴史が教えてくれています。
 
また戦後日本人は「植民地根性」「奴隷根性」が浸透し、独立心
を剥ぎ取られた。とくにマスコミを中心に占領体制の「自己呪縛」
にかけられてしまっている感があります。なかなかあなたのいう
ようには行かないでしょう。あなたのいうようになればそれに越
したことはないが。私も悩む必要がありません。
 
> 毎日新聞に松本憲法草案がスクープされ、マッカーサーが余り
> にも松本草案が保守的だと考えたために
> GHQの20代の若者に10日余りで草案を作らせた現行の憲法より
> 、日本はよりよい成文憲法を制定する憲法制定力を持った国だ
> と思います。(ただし、これまた歴史からのレッスンで、明治
> 憲法、現行憲法が必要時に改正することをタブー視したために
> 、問題がおきたことを考慮し、改正した憲法には「本憲法は不
> 磨の大典ではなく、必要に応じて改正する」旨唱っておくべき
> と思います)
> 
> これらの歴史、国民性、法律体系などを考慮せず、「日本には
> 不文?憲法」というのはいかがなものですか?久保さん。
 
 
 

ということで結論的に読売改悪憲法試案以下に改悪(アメリカ化)
されるよりは、いっそのこと現行憲法廃棄を選び、現行憲法を
伝統の一部に、歴史的重要文書のひとつにしてしまいたいのです。
勇気をもって一歩踏み出し、歴史・伝統・文化に即し、それらの
重みを体した「遵守される憲法」に戻しましょう。
憲法は「遵られてこそよい憲法」真の憲法といえるのです。
決して学校の「年間目標」「学級目標」ではないのです。 
 
私はこの問題についてはひとまずこれで終わりにしたいと思いま
す。これ以上のお答えは他の方に委ねることとし、もし必要なら
以下の書物をご覧ください。
 
「現代アメリカ大統領」平成4年5月、嵯峨野書院
「現代イギリス首相」平成8年10月、嵯峨野書院
「学者神主 水廼舎の日本学」平成14年11月、国民新聞社
 
「国際化日本の諸断面」(共編著)平成6年11月、文眞堂
「概説 国民と政治」(共著)平成6年4月、学術図書出版社
「比較政治学の視座」(共著)平成10年5月、新評論
 
「憲法と市民生活」(共著)平成4年4月、嵯峨野書院
「論考 憲法学T」(共著)平成8年3月、嵯峨野書院
「現代における憲法問題の諸相」(共著)平成6年2月、国書刊行会
「憲法講義」(共著)平成11月4月、中央経済社
「二十一世紀の法・福祉・医療」(共著)平成14年、中央経済社


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