1558.グルジア帰国報告と現地事情レポート



モスクワ経由グルジア帰りのCHOCOより
帰国報告と現地事情レポート。

No1550日本外交の方向への賛同も含め、多少、長くなるが、報
告を兼ねたい。
まったく、世界の動きは恐ろしいほど早い、というか、特にモスク
ワの変化の速度は、すさまじいと、現地に行って、改めて感じた。

とりあえず、表面的なことを言うと、ロシアの首都モスクワに関し
て言えば、この2−3年で、所得はいわゆる、昔の日本の「倍増計
画時代」の如く、たいていの一般人が、給与所得がこれまでの三倍
近くになり、ますます消費社会へと加速している、という印象を受
ける。

卑近な例ですが、私の知人(ロシア人)だけを見ても、皆、「買え
ないものはそれほどなくなった。たいてい、欲しいものは手に入る
ようになった。海外も行こうと思えば、いつでも行ける。」という
ことは言っている。

ただ、ここ十年で大きく変化したかと聞けば、誰もが、「ここ十年
、特に生活が変わったとは思わない。」とも答えており、実際に、
インフラの老朽化など、諸問題がすべて解決したということもなく
、住居などは、新しくどんどん建っていく新築マンションも実は欠
陥住宅が多く、例のプールの屋根のように、何かひとたび起これば
、呆気なく潰れるような代物と、ロシア人自身が思っているような
ところもあるらしい。

ただ、それまで市内の中心部を圧倒的に占めていた韓国企業の宣伝
が、やや影をひそめ、(NG、SUMSON)それに代わって、あらゆると
ころに、どんどん日本企業の(SONY、TOYOTA、CANNON)宣伝広告が
出てきたのにも、かなり驚かされるものがあった。

ただ、地下鉄の爆破事故や、プールの屋根崩壊事故も起こるなど、
その突貫石油成金経済の、底の浅さも浮き彫りにされたし、プーチ
ン大統領の威厳を損なう、外国マスメディアと政府要人の目の前で
の軍事演習での、ミサイル失敗などもあった。

ロシア人はロシア人としか、言いようのない「詰めの甘さ」も全体
に溢れていて、どうも、このまま、アメリカと張り合っても、まだ
まだ、張り合えきれる状態でもないし、とりあえず、チェチェンの
テロ指導者ルスラン・バサーエフの死亡したなど、そういったこと
でも宣伝して、いかに、ロシア軍がチェチェンで善戦しているかと
いうことでも、見せつけねばならないほど、軍事的には”お粗末”
なのが現状というところのようである

そういう一方で、いわゆるKGB的なやり方というか、外人への締め付
けが厳しくなっており、全体的な治安悪化も感じられたが、たまっ
たもんでないのが、無差別暴力で、ロシア人とウクライナ人、ベラ
ルシア人以外を、国外に排除せよという過激派の気狂い集団のロシ
ア国内における、ここ十年での爆発的増加である。
(モスクワに関しては、約10倍になったともいわれる)
ある意味では、所得の上下差拡大による不満層のガス抜きに使われ
ているという可能性もある。

一部の裏話によると、ロシア警察当局が、率先して、外人排除組織
であり、非合法のネオナチ、スキンヘッド組織を演習しているとい
うことまで、ささやかれていた。実際に、連中の無法ぶりはすさま
じく、この被害に日本人留学生の女子までが遭い、一人か二人の方
が入院されたそうで、実際、地下鉄に乗るときでも、相当の注意を
払わねば、特にアジア系の容貌の人間にとっては、危険極まりない
ことになってしまった。
(以前はこれほど酷くなかったので、ショックであったが)

サンクトぺテルブルクでは、出稼ぎ移民のトルクメニスタンか、カ
ザフかどこかの8歳くらいの少女まで、めっためたに刺されて殺さ
れる事件があり、これを起こしたのも十代のネオナチ数人とのこと
。こういう者たちが、相当数国内におり、首都は特に5500人以
上はいると言われるのだから、たまったもんではない。

>日本の使命は、日本の援助で世界を助けることである。支援による
>地域社会の安定や経済発展を促すことである。

非常に共感するところなのであるが、グルジアからの帰国便で隣あ
ったJETROの人にいわせれば、旧ソ連圏の国にどんな支援をしたとこ
ろで、ほとんどすべてが賄賂に消え、日本国民の血税がこんなくだ
らない使われ方をするのが悔しいとのことであった。
それでも、それをなんとかして、やはり血路を開いて欲しいものだ。

ただ、実際にグルジアの道路を走り、人々の住居を見れば分かった
ことであるが、この旧ソ連圏でも、最も貧しいといわれる国は、
まともなインフラが、ここ十年どころか、戦後ほとんど一切行われ
ておらず、非常に国民生活が厳しいものとなっている。

当然、彼らは新政権のサアカシビリ大統領に、期待しているし、ア
メリカ資本が入ることも、それなりには、歓迎しているのだろうが
、やはり、それと引き換えに、グルジアの軍人がイラクに送られた
ことは、苦々しく思っているようだった。

とりあえず、国民の月収平均が3−4ドルとも言われるグルジアで
なぜか、高級車が走り、カジノばかりが派手に建っている様子は
いかにシュワルナゼ政権の時代が酷かったか、物語っており、グル
ジア人に言わせると、「もし、本当にこれから十年、シュワルナゼ
が戻ってこなければ、グルジアは絶対によくなる」と言わせるほど。

ところで、サアカシビリ新大統領の評判は、地元でも大変高く、実
際に、非常に知的で謙虚で情熱的なこの若者は、英語、スペイン語
、ロシア語、ウクライナ語などを自由に操るだけでなく、既にロシ
ア、アメリカの首脳部とも会談を成功させ、それぞれの国で大変評
価されているが、実際には、ファーストクラスもビジネスクラスも
使わずに、普通のエコノミー席の一般飛行機でモスクワ入りし、新
官邸が建つまでは、普通の3部屋ほどのアパートに、同じく才媛の
オランダの薔薇と歌われる婦人とともに、つつましく暮らしている
らしい。

たしかに、この国の文化がいかに古代に渡る、紀元前何世紀も前か
らの偉大なものであっても、生活経済の凄まじい疲弊ぶりは、そう
簡単に復旧できるものではないかもしれぬが、(ゴミの焼却施設す
らなく、首都近郊に放置されているのには俄然とした。ロシアなら
、巨大な土地があるので分かるが、このような狭い国でそういうこ
とをやっていると、本当に環境問題も深刻であろう)

それでも、一人の力だけでは厳しいとも思うが、この新しい力強く
、また有能な大統領の出現で、少なくとも、近隣の独裁的に持続政
権に国家を操られ、好きなようにされている、周辺の旧ソ連諸国と
はまったく異なる方向へと向かっていく、そういう望みは感じられ
た。

>米国は中央アジアに進出して、カスピ海の石油を狙っていることが
>分かる。この目的でグルシアも親米勢力下にしている。
>ソロスの動きも、どうもカスピ海油田の開発に焦点を当てている。

それは、おそらく間違いないことだと思う。ただ、グルジアもただ
利用されるだけの立場ではなく、上手にアメリカを使い、ロシアを
なだめて、周辺諸国やチェチェン、アプハジアでの領土問題や、
ロシアの軍隊撤退問題などを解決していかねばならないので、かな
り軍事的にも、ここの地域は、米露両国にとって、重要な場所とな
っている可能性もある。

>また、割と暇な大学教授がするべきであるが、この教授があまり現
>在の世界情勢を調べていない。どうしようもない状況になっている。

グルジアが、新大統領の出方や、アメリカとの関係によって、おそ
らく、ロシアを刺激し、また、EUも絡んでくるとすれば、カフカス
問題は、ロシア国内問題というだけでなくなってくるであろうし、
現在も既に、かなり東欧もチェチェン問題に絡んでいるので、(実
際、ポーランドはチェチェン難民を受け入れているし、ヨーロッパ
では、チェチェン関係のお尋ね者を人権団体のようなところが、か
くまったりしている)
この辺りの総合的な分析が、日本の評論家や専門家によって、もっ
と深く、慎重になされるべきだと痛感する。

とりあえず、グルジアの黒海も日本で活躍していることもあって、
日本に対する、グルジア人の期待感は非常に大きいものがあるし、
この新生グルジア政権との、上手な外交によって、日本もできるだ
け早い段階に、ロシアやアメリカを通さない、独自の外交ルートを
グルジアと持つべきではないか。

現地のグルジア人には、「日本は世界大戦のときも、二度とも遅れ
てきてややこしくなったんだから、今度は出遅れないようにしてく
れよ!」と冗談めかして言われたが、まあ、私如きに何ができるわ
けでもないとは思いながらも、この冗談を笑ってかわせないところ
が、なにか悲しい気がした。
なんとか、この日本では未知の魅力的なグルジアと、将来的にもっ
ともっと素晴らしい関係を持てれば、どんなによいかと思う。

もちろん、経済的には、グルジアが援助を受ける側であることは
間違いない事実だが、彼らの文化、歴史は非常に高度で、洗練され
たものをロシアなどより、ずっと早い紀元前から獲得した民族だけ
あって、非常に誇り高い。今も、どんな貧困の中にあっても、その
誇りを捨てず、家父長を中心とした、伝統的な家族の中で、信仰を
大切に受け継ぎ、慎ましくも、非常に精神的には豊かに暮らす姿を
見て、まさに、ここから、今の日本人として、学ぶものがあると感
じた。
相互の交流が、今後とも実りあるものであるために、単なる民間人
ではあるが、自分なりに、彼らの恩義に報いることを考え、実行し
ていきたいと、強く思ったグルジア滞在であった。

CHOCO
http://www.myprofile.ne.jp/yaponchuka
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(Fのコメント)
グルシアに簡単に来けるその行動力が羨ましい。こちらは日本で
ほとんど居て評論しているだけで、中国や米国以外の海外にあまり
行っていない。

グルシアの実情を知らないで、親米派が政権になったということを
言っているが、実情はグルシアの社会・経済状況が逼迫して、ロシ
アから米国に乗り換えたのでしょうね。米国に期待するのは、それ
なりの理由があるということでしょうか??

私FもCHOCOさんと同じで、カフカス地域に日本が経済的な貢献が
できれば、将来的な石油争奪戦に参加しなくても、お互いに役に立
つことができるように感じるが、経済発展するためには、国民の勤
労態度や習慣的なことも関係するので、経済発展が直ぐにできると
は思わないが、インフラ整備はするべきでしょうね。月4ドルの収
入は少ない。
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件名:プーチン大統領、フラトコフ氏を新首相に指名  

EU特使でユダヤ人―欧米から好感
“シロビキ”起用でエリツィン政権色排除の実務内閣へ
 ロシアのプーチン大統領は一日、電撃解任したミハイル・カシヤ
ノフ前首相の後任としてミハイル・フラトコフ欧州連合(EU)特
使(53)を指名し、下院は五日、賛成多数で承認した。対外経済関
係のプロフェッショナルである一方、シロビキ(軍、内務省、 連
邦保安局などの出身者)でもあるフラトコフ氏の首相指名の背景に
は、プーチン大統領の綿密な計算がある。
(モスクワ・大川佳宏・世界日報)

 大統領選期間中のカシヤノフ首相電撃解任に続き、まったく下馬
評に上がっていなかったフラトコフ氏の首相指名は、ロシアの政界
やメディアに大きな驚きをもって迎えられた。今回の人事でプーチ
ン大統領が見せた「予測不可能さ」は、政権末期に次々と首相のク
ビをすげ替えたエリツィン前大統領を超えたものと評されている。

 次期首相候補としてマスコミに名が挙がっていたイワノフ国防相
代行やコザク大統領府副長官らではなく、なぜフラトコフ氏を指名
したのか――。この首相人事からは、プーチン大統領の綿密な計算
が透けて見える。

 フラトコフ氏の首相指名を受け、大きく反発したのが共産党だ。
その理由は、フラトコフ氏がユダヤ人だからである。首相は国家の
ナンバー2であり、大統領が職務を遂行できなくなった場合に代行
を務める。このためプーチン大統領に何かあった場合、歴史上初め
てロシアのトップにユダヤ人が立つ可能性があるわけであり、反ユ
ダヤ感情の強い共産党などロシアの愛国派、民族派はフラトコフ氏
の首相指名に大きく憤った。

 プーチン大統領は常に「社会の結集」を呼び掛けており、昨年末
の下院選で大統領を支持する民族主義政党が躍進する中での今回の
人事は、矛盾しているかに見える。が、このフラトコフ氏の首相指
名は欧米諸国などに対し、プーチン大統領が愛国派・民族派になび
かず、ロシアの改革路線を推し進めると示す何よりも強力なメッセ
ージだ。欧米諸国のエスタブリッシュメント層には多くのユダヤ人
がおり、フラトコフ氏の首相指名を大きく歓迎した。

 EUの東方拡大に関連しEU・ロシア関係がギクシャクしている
が、EU特使として欧州との太いパイプを持ち、事情に精通した
フラトコフ氏の首相就任により、EU・ロシア関係の改善も進むと
みられる。フラトコフ氏の首相指名を市場は好感し、ロシアの株式
相場は大幅に上昇。代表的な株価指数のRTS指数は一日に
六八八・七二と過去最高値を更新した。

 しかし、フラトコフ氏は対外経済のプロフェッショナルとしての
横顔を持つ一方で、徴税警察長官を務めたシロビキでもある。モス
クワ工作機械大学を一九七二年に卒業した後の一年間、同氏の履歴
書は空白になっており、ソ連国家保安委員会(KGB)養成学校に
いたとの見方が濃厚だ。プーチン大統領の支持基盤であるシロビキ
からの首相登用は、大統領の意向に忠実な実務型内閣を形成し、エ
リツィン前政権の影響力を完全に排除するプーチン大統領の意向が
読み取れる。

 すでにフラトコフ氏は今後の組閣で、閣僚ポストを現在の二十九
から十九程度に減らす方針を示しており、プーチン大統領はこの
“改革”を通じてカシヤノフ前首相に続き、エリツィン前大統領の
息のかかった閣僚を更迭する構えだ。

 一方、今回の首相指名をめぐってプーチン大統領の後継者問題が
大きくクローズアップされ、首相候補としてイワノフ国防相代行な
どの名が取りざたされたが、後継者とはみなされていないフラトコ
フ氏が指名される結果となった。後継者問題に明確な回答を示さな
かったことは、プーチン大統領が憲法改正を通じて任期延長に進む
可能性を示している――との見方も強まっている。

●ロシアの首相に指名されたミハイル・フラトコフEU特使
 解任されたカシヤノフ前首相の後任として、ロシアの首相に指名
された。誰もが予想し得なかった人事であり、ロシアの政界やマス
コミはこのニュースに大きく揺れた。
 ソ連時代から対外経済関係省に勤務し、ソ連解体後は関税貿易一
般協定(GATT)など国際機関でのロシア代表を務め、対外経済
関係・貿易相などを歴任。対外経済分野のプロフェッショナルとし
て知られている。

 丸顔で頭髪も薄く、“人当たりのいいおじさん”のような風貌。
が、その一方でプーチン大統領を支える権力省(国防省、内務省、
連邦保安局など)出身者、シロビキの一人であり、ソ連国家保安委
員会(KGB)との関係も指摘される。

 クイビシェフ生まれ。モスクワ工作機械大学、海外貿易アカデミ
ー卒。一九七三年からソ連対外経済関係省に勤務し、海外勤務を経
て九七年に対外経済関係・貿易相に就任。
 九九年に貿易相、二〇〇〇年に安全保障会議第一副書記、〇一年
に徴税警察長官。〇三年から欧州連合(EU)特使。

 ところで、対外経済関係・貿易省、貿易省、徴税警察はフラトコ
フ氏を最後の大臣・長官として廃止されている。ロシアのマスコミ
は冗談で「三つの省庁を葬った男」と呼び、「次は政府を葬るか?
」とも。英語、スペイン語が堪能。妻と子供が二人。五十三歳
  ▽掲載許可済み 
Kenzo Yamaoka


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