1537.逆転==インターネットという怪物==



  逆転==インターネットという怪物==・・・S子 

▼「地政学」から見えるもの
私は奥山真司氏の「地政学」を読んだ。地政学といってもその時代
に即して様々な要素が絡み、更にそこにその時代を生きる人々の心
理が複雑にあやとなって絡み合い、地政学をよりわかりにくいもの
にしていると私は感じた。

彼は冒頭の部分で孫子の兵法をとりあげ、兵法における国家戦略の
極意は心理作戦を使って勝つことにあると述べている。実は真実の
人を意味するアボリジニ族もまた同様のことを言っている。戦闘に
おいてアボリジニ族は敵の恐怖心理を逆手にとってうまく利用し、
ひとりの人間を複数いるように思い込ませ、敵の恐怖心と視覚に訴
えている。そして、暴力や武器を使用して戦うことはいよいよの最
終段階においてであり、あくまでも基本戦略を心理作戦においてい
ることは大変興味深い。

時代が移り変わり、近代化とともに物質に頼る生き方にどっぷり浸
かっている現代人にはまったく逆転の発想である。特に米国が今日
イラクでおこなっていることは、孫子やアボリジニ族にしてみれば、
品性のない愚行を続けている証拠と映るだろう。

この地政学を読んでいると、米国においての特殊性という例外主義
が浮かび上がってくる。1620年、ピューリタンたちが信仰の自
由を求め、メイフラワー号に乗って新天地米国へやってきたことに
起因する選民思想的な観念が非常に強く、それが米国の根底にある
ことが窺える。

また、米国が建国400年足らずというあまりにも若い歴史でしか
ないために、地政学という国家戦略をたて、そのマニュアルに即し
て生きていかなければならない米国の非情な性が見える。自国の歴
史に学ぶことができないために、常にマニュアルが必要なのである
。

言い換えれば不測の事態に米国が対応できないので、常に米国側か
ら戦略をしかけて歴史をつくってゆく必要があった。そのためには、
情報戦略(心理作戦)だろうが軍事力だろうが利用できるものは全
て利用して生きてきた。

私が意外に思ったのは、米国の大衆メディアである映画には米国政
府の強い政治プロパガンダが含まれており、米国がこれをかなり重
要視していることだった。日本では映画は完全に娯楽産業の域だか
らである。

一時は俳優のアーノルドシュワルツネッガーに代表される筋骨隆々
のたくましい大男がひとり敵陣にのりこみ、ピストルや機関銃、バ
ズーカ砲とあらゆる武器を使って多勢に無勢よろしく味方を救出す
るようなアクション映画が流行った。これなども強い米国を主張す
るものであり、米国のひとり勝ちを容認するものとみることができ
る。

が、最近ではマトリックスのシリーズに見られるように東洋思想を
取り入れ、その精神性を強く打ち出した映画が出てきている。ここ
からも米国の変化を窺い知ることができる。先のアーノルドシュワ
ルツネッガーも寄る年波には勝てず、カリフォルニア州知事として
新たな人生をスタートさせていることからも、米国の強さにかげり
を見い出すこともできる。

▼地経学という新たな国家戦略に潜むもの
ところが、今日のインターネットを介したグローバル化時代には国
家戦略は地政学から地経学へと大きく変わりはじめ、金融体制を支
配するものが世界を制することができるようになってきている。い
つまでも古典地政学にこだわり続けた国家戦略では、今日を生き抜
くことは米国にとって困難になりつつある。古典地政学への異常な
執着心が米国に先見性というものを見失わせ、米国は時代にそぐわ
ない生き方を選択している。

インターネットを介した金融体制のグローバル化は実体なき経済を
大きく飛躍させ、今日では実体経済を上回るほど巨額になっている
。つまり現在の世界的混乱は資本主義の虚構性を極めつつあるとい
うことであり、それは資本主義の終わりの始まりだとも言える。

また、イラク戦争でつまずいた米国没落の始まりであり、米国国家
権威の喪失の始まりでもある。そして、それは近代化を通して金融
体制の根幹をなす通貨システムの金利を上手く利用し、庶民には窺
い知ることもできないような巨額の富を手に入れてきた財閥と言わ
れる人々に「財産喪失」を現実問題として浮上させたのである。財
閥にとってはまさに今生きるか死ぬかの死闘をくりひろげている最
中と言えるだろう。

そして、ここに全てを破壊し新たなるものを創造してゆくインター
ネットという怪物が凛然としてその姿を現すのである。

▼意識の代役としてのインターネット
インターネットが私たち人間の意識の代役を果たしているというの
は、もう覆い隠せない事実である。私たちがインターネットに依存
しやすい、または中毒症状に陥りやすいのは、インターネットが私
たち人間の意識の代役である限りは当然のことであると私は思って
いる。人間の意識は休むことなく絶え間なく流れ常に接続状態にあ
る。

私たちはこれまで他人に見せることもなかった意識という人間の内
面に、いきなり直面突入しているということになる。現実世界にお
いて、人との出会いはまず外見という視覚から認識が始まり、出会
いを重ね会話を重ねることで初めてその人の内面を知ることになる
。

ところが、インターネットでは現実世界を逆転させた世界が広がっ
ている。私たちは知らぬ間にこの逆転した世界をインターネットを
通じて体感している。つまり外見はインターネットという物質文明
が生み出したハイテク機器でありながら、内実は人間の意識の代役
という精神的なものに深く入り込み、私たちに無意識のうちに逆転
の発想をもたらしている。

それが今日の常識といわれるものをインターネットが内から破壊し
続けている。私たち人間が産業革命を経て近代化という高度な物質
文明に辿り着いたにもかかわらず、その物質文明を象徴するような
インターネットというハイテク機器が物質文明をどんどん破壊して
いる。

そして、皮肉にもそのハイテク機器が私たち人間に「人間性への回
帰」を促しているという事実は驚きである。そうして、インターネ
ットが私たち人間に大きな意識革命をもたらすという逆転劇をやっ
てのけようとしているのである。

▼国家戦略から意識革命へ
米国は国家戦略を古典地政学にこだわることで没落し、時代は地経
学へと移り変わるように思えた矢先に、資本主義の虚構性という実
体なき経済の肥大化で、資本主義が崩壊寸前にある。やがては地経
学という国家戦略でさえも太刀打ちできなくなる可能性が大きい。

インターネットを介したグローバル化は、ひとつの国家に国家戦略
という概念さえも捨てさせたのである。一体インターネットは私た
ち人間に何を言わんとしているのか。

こうしてみてくると今日の世界的混乱は精神と物質の衝突だともと
れる。もっと突き詰めて言えば、仏、独やヨハネ・パウロ2世に代
表される「愛」と米国や英国、および米国の同盟国でイラク戦争に
加担した国という「暴力」との衝突でもある。

人類の歴史の変遷はもはや時代が変わるなどという小さな変化では
なく、人間の意識革命によってもたらされる人間性への回帰が、ま
ったくの未知の新世界を誕生させるように私は思う。そのはざまに
今世界はあり大きく揺れ動いている。インターネットという怪物が
それを促進させている。

参考文献 「地政学」    奥山真司著  五月書房
     「アメリカの経済支配者たち」 広瀬 隆著 集英社新書
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(Fのコメント)
S子さんの評論は、ある意味で私Fの意識を覚醒させてくれている。
精神的なものと経済物理的な側面を人間は持っているが、その精神
面での影響を人間はより大きく受けているのですが、その精神面に
インターネットは劇的な革命を起こしたことは確かでしょうね。

いろいろな意見や情報が交換できて、精神面での日本国民の発展は
大きいでしょうね。現実に則さない陰謀論や現実を見ない頑なな考
え方は排除されるように思う。

逆に私Fが発言できるのも、昔であれば精神病患者と見なされかね
ないような将来の予測を発言できるのも、このようなインターネッ
トのお陰でしょうね。無名の一個人の情報が流通するのは、今まで
になかったことです。しかし、普段の生活は昔と変わらない一般の
市民であるのです。今も誰からも注目されていない。

現実の社会は別の論理で動いているようです。感情でしょうね。
日本の未来を暗く暗示すると、いろいろな所からクレームめいた文
句が来るし、北朝鮮拉致事件で時の権力者を批判すると、ビジネス
に大きく響くことになるのです。いろいろな人の欲や得の感情が交
差して、それの集合体が行動になるのでしょうね。私Fは無私の位
置にいないと神との会話が出来ないため、どうしてもこの感情に手
を焼くことになるのです。そして、残念ながら自分のことになると
自分も感情に支配されているのです。

このような個人的な感情があるために、米国の行動が感情面から出
ていることも分かるのです。自分の身の安全に対しては感情的な恐
怖心が起こり、他者を悪者にする可能性が高くなる。過剰反応を起
こしやすいようです。

特に日本は、山本七平のいうように「空気」の支配を受け易いため
に、誰かが水を差す必要があると思っています。この水にこのコラ
ムはなりたいですね。しかし、このコラムが空気の要素になってい
る可能性もあります。特にこの頃、社会に対する影響力が増してい
るため危険を感じています。このコラムに対する水がS子さんの評
論であろうと思いますね。今後もお叱りの評論をお願いします。
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件名:(^_^)こう言うとき、サアあなたはドウスル?^^??  
dfj12912
”理路整然””長大論文”を掲げても「詭弁」や「強弁」を弄ぶ
指導者をしかも しかも ”民主主義”の”多数決”で
選ぶこともある。選ぶことも出来ることをどう考えるのか??

『戦略コラム』の数々のハイハイ+ハイ レベルの提言も無視、
蹂躙 フミクチャにしてしまう =現有システム=にも
一言 言及して欲しいなぁ〜〜

「独裁専断」と「民主合意」の有利点と不利点は ウラとオモテ
シーソの関係に思えてならないのでずーー
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件名:fuku41さまへ(~o~)  
dfj12912
理路整然とした長大論文の論考も「ワンフレーズ・ポリティクス」
で逆転してしまう可能性もある”現実”を『fuku41』さまは
本音のところで どう お考えなのか 知りたく思います^^

^^^
国民や個別個人が「理性」を選択しても 指導者が「感性」や「直
感」を選択してしまう場合です。

^^^
投票率×得票率=支持率が過半数に満たないまま”指導者”が選ば
れた場合の個別個人の自分の運命や進路の選択です。

「合理」と「合法」の乖離を 個別個人はどう向き合えば良いので
しょうか?
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(Fのコメント)
すいません。解はないです。国民が目覚めて、次の選挙で結果を作
るしかないでしょうね。

私は、長いスパンで日本の将来を見ていますので、このコラムを5
年前始めた時の孤立無援な状態で時の権力者に抗議した北朝鮮拉致
問題と同様に、このコラムで米国の保守派の内部分裂の真実を訴え
ていくしかないと思っています。
そして、時の権力者に「感性」や「直感」ではいけないと思っても
らうしかない。

このコラムと同様な情報収集と研究を継続していく必要にあると思
います。政府が私達に資金援助していただけたら、貧乏生活をしな
くても研究できるのにと思うこともあります。ここのコラムニスト
の多くは海外生活が長く、日本企業は雇いませんから貧乏です。

本当は日本の学者達がしっかりとしないといけないのに、ネオコン
を支持するバカ国際政治学者が大手を振るっている現状に危機感を
持っています。米国のことを何も調査しないでかつ知らないで評論
している不勉強な学者たちです。なぜ、Fのアンテナで紹介したサ
イトを見ないのであろうか??リアリストたちの情報を入手しない
のであろうかと激憤しているし、今後も日本の学者は信用できない。

私Fは右で親米派ですが、親米派の学者がネオコンを支持するのが
、いかに危険かをこのサイトは訴えていたのです。反戦のサイトで
はないですよ。やっと、このコラムで訴えたことと同様な緒方さん
の案を採用して欧州戦略を再構築して、日本は事なきを得たのです
よ。緒方さんがいなければ、日本は大恥をかく所であった。
緒方さんに感謝、感謝。


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