このコラムで江田島さんと議論している地政学が、多くのサイト・ メルマガで取り上げられているので、それへの反対・賛成をしたい。 Fより JOG Wing :1)「日米欧三極同盟」で「中露朝」を封じ込めよ EUを滅ぼす『ユーラシア連合』という悪夢 国際戦略研究者 山本英祐 で述べられている中ロが欧米日を分断しているという議論は、おか しい。事実を見ていない。欧米対決で米国と独仏がロシアや中国を 奪い合っている構図であり、ロシアや中国が主体的に欧米を分断し ているわけではない。もちろん、ロシアや中国が欧米対決で漁夫の 利を獲得する可能性があるが、どちらにしても現時点の解析はおか しい。ユーラシア連合は独仏やソラナが計画していることですよ。 米国のドルが基軸通貨を維持するか、欧州のユーロが基軸通貨の位 置を奪い取るかの戦いで、これにより経済支配や世界の支配体制が 大きく違うことになる。グローバル的な現在の経済状況では世界覇 権は、金融制度を制することが世界を制することであるから、基軸 通貨の支配はもっとも重要なことである。この意味では昔の地政学 は時代遅れになっている。冷戦以前の地政学の限界を知るべきであ る。地政学から地経学へ現代は移行している。 地経学では 「基軸通貨を制する者が、世界を制す」−−−国際戦略コラムF ですよ。 そして、この見方を日本はしないために、日本が世界覇権を取れな いし、何の見解も無く、日本は円介入してドル維持に走ってしまう のですね。この重要さも見えない。米国に対して、交渉力ができる のに、それもしていないようである。 この基軸通貨はその流通範囲が重要であり、このため、ロシアと中 国をどちかの通貨圏にできるかを欧米が争っているのですよ。特に ロシアや中東の石油代金の決済をユーロにするかドルのままにする かの戦いですよ。 山本さんは経済的見方ができないために、おかしな見解になってい るように感じる。戦闘能力では断然、米国が欧州や中ロより上です し、その面では、米国は今後当分、軍事覇権(幕府体制)は続くは ずです。欧州とロシア・中国が束になっても米国に軍事的には勝て ない。 純粋に経済面でドルに魅力を感じなくなっているのが問題なのです 。よって米国の問題ですよ。そこを狙って、ソラナやシラクは対米 戦略を練っているように感じる。パウエルやグリーンスパンや米国 金融資本のユダヤ人たちも、欧州との金融戦争を恐れているのです。 このため、シラクが中国で日本非難をした首相に謝罪させたのも、 世界第2位の経済大国日本の動向も、この通貨戦争に大きなインパ クトがあるためですよ。どちらにしてもこのため、日本が欧米の仲 介をできるわけがない。 地政学より地経学をもう少し研究した方がいい。山本さん、近代地 政学を網羅している本物の地政学・国際戦略研究家の奥山さんの本 「地政学」をお読みください。スパイクスマン以降の地政学がわか りますよ。 太田述正コラム#239(2004.1.25)<地政学の不毛性>についても、 意見がある。これは下記サイトに元本があるので見て欲しい。 http://www.ohtan.net/column/200401/20040125.html#0 地政学の見解は、私Fの見解と同じようであるが、新しい地政学が 出てくる可能性があると見ている。エアーパワーや経済的な面を見 た理論であり、主に米国の国際関係学からの地政学議論が面白い。 物資の輸送の安全確保、人を運ぶ航空機の安全確保と経済の根本で ある金融取引の安全確保、インターネットなどの情報網のコントロ ールをだれが行うか、どの通貨で行うかの戦いになるのでしょうね。 この論理構造を明らかにすることが重要なのですが、地理的要素も 大いに関係していると感じる。地経学になるかもしれないが。 太田さんも奥山さんの「地政学」を読むべきです。最新の地政学の 方向が分かるはず。あまりにも日本の地政学のレベルが低すぎるの です。最新動向も知ら無すぎなのですよ。そして議論している。 ここが大間違いである。 地経学の基本は円、ユーロやドル通貨の流通圏の争いである。日本 が東南アジアを円圏にする構想を壊したのは米国ですが、その米国 金融関係者が東南アジアで通貨暴落を仕掛けて、東南アジアはドル 圏から円圏にシフトしようとしている。中国はドルリンクであるた め、現状はドル圏ですが、ユーロに靡いている。 ロシアの石油決済をドルからユーロにしようとしているため、米国 パウエルはロシアとの協調外交が破綻すると、警告している。この 議論は来週にしよう。 ============================== ■■■■■■■■ JOG Wing ■ 国際派日本人の情報ファイル ■ 地政学大変動時代: (1)「日米欧三極同盟」で「中露朝」を封じ込めよ EUを滅ぼす『ユーラシア連合』という悪夢 国際戦略研究者 山本英祐 ■『ユーラシア連合』という「日米欧分断」への罠■ イラク戦争によるアメリカの単独行動(ユニラテラリズム)によ り、米欧関係が極度に悪化した。その結果EUが中露に接近してい るがこれはEUにとっても、また日米にとっても地政学的自滅的選 択である。 米欧の対立は民主主義文明と世界安定の破綻である。 もとより『米欧分断』と『NATO体制崩壊』は、共産党やKGB 、軍部が支配する”全体主義独裁体制”のロシアや中国といった” ユーラシア勢力”にとって望むところである。 しかし『ユーラシア連合』という耳障りの良い言葉で、日米欧を 分断させ、中国やロシアへの接近を画策する勢力が日本にも増えて きた。 この背景には中・露全体主義勢力による日本・欧州と米英アング ロサクソン海洋勢力の相互分断工作である。 こうした危険で安易な言論工作に乗ってはならない。 田中宇(元共同通信)や武者小路公秀(政治学者)や酒井新二( 共同通信元社長)などの親中国言論人はこのロシアや中国等のユー ラシア全体主義国による”ユーラシア連合”とか”北東アジア共通 の家”といったプロパガンダにより日米欧分断を進めている。 今回は国際政治経済をベースにEUの中露接近の危険性を分析し たい。 ■「日米欧三極(Trilateral)連合」による地政学的『ユーラシア共 産主義独裁国家群封じ込め政策』が戦後世界平和を維持した■ 戦後世界が安定と発展と平和を教授できたのは「日米欧三極 (Trilateral)」の自由陣営が、旧ソ連・東欧や中国などの共産主義 独裁国家を『封じ込め政策』により軍事的・経済的に封じ込め無力 化させたからである。 欧州は地政学上、ユーラシア中央のハートランドではなく、 ユーラシア大陸外延部に位置する周辺地域「三日月地域(Cresc ent)」である。 ■中露『ユーラシア連合』にEU・インドが組みこまれれば世界の 地政学バランスは崩壊する■ 西ヨーロッパや韓国と言ったユーラシア先端部の外延部(Crescent )国家が中露『ユーラシア連合』のハートランド勢力に接近すれば、 ハートランド勢力が『世界島』を制覇することにより、世界の地政 学バランスは根本的に瓦解する。 そして、日米英などの海洋勢力は決定的に劣勢となり、世界は中国 ・ロシア等のユーラシア全体主義勢力の勢力下に入る。 中国やロシアが画策する『ユーラシア連合』はまさに、「ハーラン ドを制するものは世界島を制し、世界島を制するものは世界を制す る」と主張する、ハルフォード・マッキンダーの「ハートランド理 論」の忠実な実践形態そのものである。 米欧が対立している間に、中露「ハートランド勢力」が外延部の インド、西ヨーロッパ、朝鮮半島を切り崩しが進んでいる。 即ち、「世界島を制し世界を制する」というシナリオ通りに、欧州 、インド・韓国の切り崩しによる「日米海洋勢力逆包囲工作」が行 われているのである。 再度『日米欧三極同盟体制』を再構築し『中露朝』を包囲封じ込め 戦略に向け日本はイニシアチブを発揮すべきである。 米欧和解を『橋渡し』できる勢力は日本しかない。 ■『アジア海洋圏経済共同体』によるリムランド連合でアメリカと ヨーロッパを連結せよ■ 日本は豪州やNZや台湾などのアジアの海洋国と『アジア海洋圏経 済共同体(FTA)』を構築し、アメリカと欧州双方への投資拡大と自由 市場化を提案すべきである。 そして「中国=インド=ロシア枢軸」を分断し、インドを同盟に取 りこみ地政学的同盟国プレーヤーとして登場させるべきである。 合わせて「アジア太平洋警察軍」としての共同安全保障体制を構 築しながら米欧と連携して国際秩序の維持を図りシーレーンを確保 すべきである。 米欧と連携をしながらシンガポール・マレーシア・豪州・インド などとFTA交渉等を通じ、アジアにおける日米欧やASEANの経済的 影響力を保持する努力が必要である。 そうすることにより中国やロシアに集中している経済投資を阻止し 、ASEANやインド等への日本企業進出を促し、中国経済の包囲殲滅を 徹底的に図って行く必要がある。 徹底的かつ迅速に中国市場からの企業の撤退と投資の引き上げを図 るべきである。 ■米欧の『調停者・仲介者』日本■ 中東でのアメリカの戦争介入がアメリカとEUとの外交関係を悪 化させ、放置しておけば、米欧分断と『NATO体制崩壊』により中国 とロシアの外交地位と経済地位の強大化を招き、一方で自由世界で ある欧米の崩壊をもたらせる。 日本こそが双方のニュートラルな『調停者・仲介者』となりうる 相応しい理由をあげよう。 1)日本はハートランドを牽制するリムランド(Rimland)に位置する 地政学上極めて重要な位置付けを持つ。米英アングロサクソンのみ ならず、ユーラシア西端の欧州にとってもロシア等の牽制上重要な 位置にある。 2)日本は世界第二位のGNPを誇る経済大国であり、アメリカと欧州 の双方にとって重要な経済的関係を持つ。 3)日本は米欧双方との間に大きな外交的対立要因を持たない 4)日本は欧州と米国双方から文化を受容し、双方との文化的コミ ュニケーションが可能。 5)日本政府は外交防衛で米国と強力なパイプを持つ一方、皇室外 交は欧州王室や貴族と密接な関係を持つ。 ■文明的橋渡し役としての日本の歴史■ 明治維新以降の日本はアングロサクソンと大陸欧州の2つの文明 をうまく両立して吸収してきた。 日本海軍は大海洋国家イギリスに学び、陸軍はフランスやドイツ に範を取った。 日本の法体系や会計制度はドイツ・フランス型の大陸法の影響を 強く受ける一方で、貿易体制はアングロサクソン型の自由貿易体制 を国是としてきた。 このように米欧の文化のそれぞれ良い面をバランス良く吸収して きたのが日本なのだ。(しかし最近は小泉=竹中構造改革などのよ うに一方的にアメリカシステムのみを無批判に礼賛し受け入れる勢 力も台頭してきたが。) 日本は安全保障面では英国の後継者である一大海洋国家アメリカ に強く依存し、中国やロシアなどの強大なユーラシア大陸軍事国家 と対峙してきた。 日米同盟と安全保障体制は間違い無く戦後日本を安全に発展させ てきた最大の要因であり最大限評価されても良いだろう。 その一方では文化面では、フランスやイタリアの洗練された文化 や哲学やデザインやファッションが日本文化に受け入れられ日本文 化をより洗練されたものにしてきた。 こうした米欧の中間に位置し、米欧双方と深刻な対立問題を持た ない日本こそ第三勢力として米欧のニュートラルな橋渡しを行える 重要な勢力である。 アメリカ一辺倒の小泉外交を軌道修正し、米欧の利害調整役を日 本は積極的に引きうけるべきであろう。 ■ヨーロッパとアメリカ双方に影響力を持つ『皇室外交』カードを 活用せよ■ 欧州と日本の皇室外交は切っても切れない深い関係にある。日本 は政府としては外交的経済的にアメリカとの関係が密接だが皇室は 欧州とより深い関係にある。 また、立憲君主型制度の欧州王室と日本の皇室の社会システムの 親和性と近似性を考えればなお更日本という国家がEUと米国の橋 渡し役に相応しいかが分かるだろう。 今一度、アメリカのエスタブリッシュメントと欧州エスタブリッ シュメントそして日本のエスタブリッシュメントが連携し、日米欧 の歴史的同盟関係を再建させねばならないのだ。 地政学大変動時代:「日米欧三極同盟」で「中露朝」を封じ込め よ(2)へつづく ============================== 件名:米露関係見るに有効な墨絵的視点 ■白か黒かの極論では判断を誤る≪9・11後の蜜月も終わる≫ アメリカとロシアは、新時代に入ろうとしている。その新時代を、 ある者は「蜜月の終わり」、別のある者は「コールド・ピース(冷 たい平和)」、また別のある者は「新しい冷戦」と呼ぶ。それを何 と呼ぶにせよ、今や米露関係は「重大な岐路に立っている」(マー ク・ブジェジンスキー)との見方が、急速に勢いを得つつある。 とくにワシントンとモスクワの多くの専門家たちの間で、そうであ る。 9・11後に生まれた米露間の蜜月が、現在ではほぼ完全に消滅し ている−。この事実それ自体に関しては、私も同意する。まず、対 イラク武力行使の是非をめぐる対立が、米露関係に冷水を浴びせか けた。そのギクシャクが十分修復されない間に、追い打ちをかける かのように二〇〇三年のロシアでは、次に述べるような一連の事件 が発生した。 その結果、米露間の亀裂はさらに拡大したのである。 まずロシア国内では、ホドルコフスキー氏の逮捕。下院選挙におけ る民族主義、愛国主義、否、国粋主義の色彩すら濃厚な与党三党の 圧勝。加えて、プーチン政権は、マスメディアの抑圧やチェチェン 共和国の弾圧を依然として続行中。これらすべては、ロシアにおけ る自由と民主主義の進展に逆行し、米国人が嫌悪感をおぼえる事柄 である。 たとえどのような不快感をいだこうとも、ロシア国内の動きに対し ては、米国はさして介入しえない。だが対外的な問題となると、話 は変わってくる。 二〇〇三年のプーチン政権の対外行動のなかには、米国の反発を招 く類のものが多い。独立国家共同体(CIS)諸国にたいする露骨 な干渉を矯正しないどころか、強化しているからである。 ≪極論述べ始めた両国識者≫ たとえば、グルジアやモルドバにおけるロシア軍基地を撤退させ る気配を一向にしめさない。グルジア国内のアブハジア、南オセチ ア、アジャリアなどにおける民族分離主義勢力にたいする支援も停 止しようとしない。キルギス共和国のカント基地へのロシア兵派遣 も決定した…等々。 以上のような展開に反発して、米国の評論家や政治家たちは、極論 を述べ始めた。それに対しては、私は違和感をいだく。米露間で戦 略的パートナーシップ関係の維持すら困難となったと説くからであ る。 たとえば、マイケル・マックフォール(スタンフォード大)は説く 。「プーチンについての〔米国の〕仮説は、いまや再点検されつつ ある」。ジョン・マケイン議員も述べる。「ソビエト時代や帝政時 代との間に日増しに共通性を示しつつある国〔ロシア〕とは、米国 は正常な関係、ましてやパートナーシップなどもちえないのだ」 モスクワでも、ほぼ同様の見方がささやかれるようになった。ロシ アの評論家たちは、米露間の戦略的パートナーシップが今や風前の 灯の状態にあるとみなす。 たとえば、アンドレイ・ピオントコフスキーは記す。「米露関係は 日増しに悪化の一路をたどっている。最早や米露は戦略パートナー である振りをすることすらむずかしい」。またセルゲイ・ストロー カンは、「戦略的パートナーシップは、たんなる戦略的ポーズへと 変質しつつある」と評する。ニコライ・ズロービンは、次のように 反省する。もともと米露間の「戦略的パートナーシップは、時期尚 早の概念であった」、と。 ≪日本人的見方に自信持て≫ 米露両首都における以上のような見解の表明をみて、私自身は「ま たか」の感想を抱く。私にいわせれば、彼らはもともと希望的観測 を混入し、勝手に米露関係を楽観していたのだ。その後現実が自ら に都合のよい程度にまで動かないのを見て、今度は極端な悲観論に 走ろうとしている。今日「冷たい平和」到来に大騒ぎしている人々 は、9・11事件以後自らが陥ったユーフォリア(陶酔感)の間違 いをまず反省すべきだろう。 米露関係は、他の二国間関係がそうであるように、二つのC、すな わち「協調」(cooperation)のCと「対立」 (confrontation)のCの混合物である。9・11直 後は前者のCが、二〇〇三年には後者のCがそれぞれ相対的に増大 したにすぎない。 要するに、米露関係は、白か黒かのどちらかと断定してはならない 。白黒両色の混じり合ったミックス、その濃淡の程度は時と状況次 第で変化するものととらえるべきである。墨絵の灰色世界に慣れた 日本人は、国際関係やロシア研究の場において、もっと自信をもっ て発言してよい。(【正論】拓殖大学海外事情研究所教授・木村汎 [2004年01月30日 産経朝刊] Kenzo Yamaoka