1501.ガリレオが導くユーラシアの歩き方



YS/2004.01.06


ガリレオが導くユーラシアの歩き方


■動き始めたアジアハイウエー構想

 国連ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)が主催するアジ
アハイウエー(AH)政府間協定(仮称)に関する政府間会合が2
003年11月17、18の両日、タイのバンコクで開かれ、アジ
ア地域を結ぶ55路線の経過地や標識、道路構造基準などを盛り込
んだ協定文が採択される。アジアハイウエーは、アジア地域の32
カ国、延長約14万キロメートルの路線を計画に位置付け、日本は
これまで専門家の派遣、調査の実施、技術協力等による支援を積極
的に実施してきた。この会合ではアジアの一員としてAH計画に参
加することが日本のプレゼンス向上に寄与するとの観点から、AH
政府間協定に日本国内の路線を掲げることを表明、「東京−福岡」
(−釜山)を路線「AH1(AH1号線)」として掲げることを提
案し、会合において意見の一致を得ることになる。

 この結果AH1号線の主要ルートは、東京〜福岡〜釜山〜北京〜
ハノイ〜バンコク〜ニューデリー〜カブール〜テヘラン〜イスタン
ブールとなり、通過国は、日本、韓国、北朝鮮、中国、ベトナム、
カンボジア、タイ、ミャンマー、バングラディシュ、インド、パキ
スタン、アフガニスタン、イラン、トルコの14カ国に及ぶ。道路
には「AH1」という標識が付く予定となっており、東京・福岡間
は東名や名神、中国縦貫道など既存の高速道路が指定され、「イス
タンブールまで2万キロ」の標識が都心に立てられる可能性もある。

■国連主導のアジアハイウエーとE・ロード・ネットワークとユー
ラシア大陸横断鉄道

 なお重要な点は、この国連ESCAP(アジア太平洋経済社会委
員会)のAH計画は、国連欧州経済委員会(UNECE)の進める
「E・ロード・ネットワーク」と連携しており、中央アジアとコー
カサスで合流することになっている。従ってユーラシア全域に拡大
する可能性を秘めている。この国連と古い欧州が主導するユーラシ
ア道路網に米国の強い警戒心に繋がっている。

 2003年6月14日、韓国と北朝鮮を半世紀ぶりに鉄路で結ぶ
京義線と東海線の鉄道連結式が南北の軍事境界線で行われた。20
00年6月の南北首脳会談三周年を記念する行事となったが、北朝
鮮の核問題が国際的な懸念や金大中前政権の対北送金疑惑の影響に
より3年前の熱気は消え失せ、祝賀行事の参加者も報道関係者を含
め南北各50人という小規模なものとなった。

 この背景には、「太陽だけで乾燥した土地は耕せない」と太陽政
策容認路線のクリントン政権を批判し、一転して北朝鮮を「悪の枢
軸」と呼ぶ強硬路線に切り替えたブッシュ政権の地政戦略が大きく
影響し、それと連動した諜報工作が北朝鮮周辺国一帯で進められて
いるものと考えられる。そして、ブッシュ政権の様々な介入は南北
鉄道連結の中止が決まるまで継続される可能性がある。

 その理由は、朝鮮半島の鉄道網が中国やロシアの鉄道とつながる
ことで、北東アジアと欧州間にまたがるユーラシア大陸横断鉄道が
誕生するからである。そして、アジアハイウエー同様に日本がその
発着地となる可能性も恐れているのである。

 朝鮮半島からヨーロッパへ至る現実的な鉄道ルートには、次の経
路が存在する。 

・中国東北経由、満州横断鉄道(TMR)
新義州―瀋陽―ハルビン―満洲里―シベリア鉄道(TSR)へ

・モンゴル経由、モンゴル横断鉄道(TMGR)
新義州―北京―ウランバートル―ウラン・ウデ―シベリア鉄道(T
SR)へ 

・シベリア横断鉄道(TSR)直行
清津―豆満江―ハサン?ラノフスキー(ウラジオストック北方)
―シベリア鉄道(TSR)へ

・中国西部・中央アジア経由、中国横断鉄道(TCR)
新義州―西安―ウルムチ―アルマトゥイ―シベリア鉄道(TSR)
へ
 
(『朝鮮新報』高成鳳「ユーラシア大陸横断ルートと京義線」を参
考)

 実際に海上輸送とのコスト差、時間、手続き、治安等の問題から
現状では夢物語のように見えるが、1995年から国連ESCAP
(アジア太平洋経済社会委員会)もアジアとヨーロッパをつなぐ縦
断鉄道建設を推進しており、アジアハイウエーとユーラシア大陸横
断鉄道が連携させることで、ユーラシア一帯の有力な輸送手段の選
択肢のひとつとなる可能性を秘めている。

■日韓海底トンネル構想と麻生太郎

 国連ESCAPのアジアハイウエー協定文には日韓海底トンネル
構想は触れられていない。しかし、自民党のHPに掲載されている
「デイリー自民」の平成15年6月19日付け記事では、外交調査
会がドーバー海峡トンネルの工事に携わった宇賀克夫氏と、民間で
日韓海底トンネル実現に向けて調査などに取り組んでいる「日韓ト
ンネル研究会」の高橋彦治・濱建介両氏からヒアリングを行った結
果、日韓海底トンネルは「技術的には実現可能」との見解を示した
ことを掲載している。この構想について、自民党では麻生太郎総務
大臣が議長を務める「夢実現21世紀会議」の「国づくりの夢実現
検討委員会」が実現に向けた政策提言を発表している。

 この麻生太郎総務大臣は九州を代表する麻生グループの御曹司で
あり、セメント事業を中核に健康・医療・福祉関連事業、教育人材
関連事業、人材派遣関連事業など80社を超えるグループ企業を傘
下に持っており、セメント事業では世界最大のセメントメーカーで
あるフランスのラファージュと資本提携し役員も受け入れている。
ラファージュ本社のベルトラン・コロン会長は、取締役兼任によって
BNPパリバやトタル、そしてフランス・テレコム、カルフール、
ラザード・ブラザーズなどと密接に繋がるフランス株式会社の中核
に位置している。九州とフランスを結び付ける日韓海底トンネルは
この麻生太郎にかかっているのかもしれない。またブッシュ政権に
とっては要注意人物のひとりとなっている可能性が高い。

■ガリレオが導くユーラシアの歩き方

 なお南北が連結に着手することになった京義線は、日露戦争開戦
とともに前線への軍事物資輸送を目的として1906年に日本によ
って開通されたものであり、1911年には南満州鉄道との直通運
転が開始され、日本の中国侵略の先兵となった満州鉄道の経営下に
入った。その当時の日本の傀儡国家である満州国の奉天と釜山を結
ぶ大陸連絡特急の名前は「のぞみ」と「ひかり」である。

 2003年12月9日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は相
次ぐ故障により日本初の惑星探査機「のぞみ」の火星探査を断念し
た。宇宙への「のぞみ」は人工の星屑となって太陽の周りを回り続
けることになる。しっかりと地に足を着けて冷静に歴史を振り返り、
したたかに「のぞみ」を「オリエント急行」に変更すれば、先人達
の夢が実現するかもしれない。オリエント急行には古い欧州を代表
する有力者が集っていることを認識しておくべきだろう。そして、
ここにトヨタに繋がる強力な人脈が存在する。

 20XX年、オリエント急行に併走するトヨタの燃料電池車には、
欧州が計画する衛星利用測位システム「ガリレオ」と繋がったナビ
ゲーションが組み込まれているはずだ。
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件名:EU、憲法草案で不一致  

混乱で終始した昨年後半・大国対小国の構図も ・議長国アイルランドに期待 

 欧州連合(EU)は今年五月、中・東欧および地中海の十カ国が新規加盟する。一方で、
 昨年、合意に至らなかった欧州憲法草案の協議が再開されるが、合意への見通しは明る
 くない。イタリアが議長を務めた昨年後半を振り返りながら、アイルランドが議長国の
 二〇〇四年前半期を占ってみる。
(ベルリン・豊田 剛・世界日報) 

 EUは、イタリアが議長国を務めた二〇〇三年後半期、混乱で始まり混乱で終わった印
 象がある。 

 十二月中旬に行われたEU首脳会議では、EU最大の関心事であるEU憲法草案で各国
 の利害がぶつかり合い、承認されないまま閉幕。加盟国間の不一致ぶりを露呈した。首
 脳会議での決裂は前代未聞で、歴史的スキャンダルといえる。 

 イタリア議長就任当初は、ベルルスコーニ・イタリア首相がドイツ人欧州議員に対して
 ナチス呼ばわりするなど過激な発言が目立ち、まとまりに欠けた。 

 昨年は、イラク戦争をめぐってEU内が二分した。ラムズフェルド米国防長官が、スペ
 インやポーランドなど親米の戦争参加国を“新しい欧州”、戦争に反対した独仏などを
 “古い欧州”と分類した。戦後復興でも、積極的に関与している戦争勝ち組と不参加組
 で明暗が分かれている。 

 EUは一九五一年、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)として第一歩を踏み出した。その
 後、欧州経済共同体(EEC)、欧州共同体(EC)として発展してきた。EUは今年
 五月、現在の十五カ国から二十五カ国にする。一方で加盟国が増えるにつれ、意見の調
 整が困難になっている。 

 EU憲法草案では、中規模国のスペインとポーランドが〇一年調印のニース条約にこだ
 わり、新意思決定方式に反対した。英仏独伊の二十九票に次ぐ二十七票の維持を主張、
 「加盟国の過半数および人口の60%」という二重決定方式を退けた。 

 独仏などEU草創期からの六カ国は、プローディ委員長あてに書簡を送りつけ、「拡大
 後も域内総生産の1%を超える欧州予算の増額はあってはならない」と警告した。六カ
 国はEUの主な拠出国である一方、憲法草案を阻止したスペインとポーランドは受益国
 だ。独仏らは「脅し」とも見える手法で両国に揺さぶりを掛けている。 

 EU内には仏独が中心になっての大国主導の流れに警戒心が強く、「大国対小国」とい
 う構図が出来上がっている。国家財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以下に抑える
 とするEU財政安定協定では、仏独が三年連続で違反したものの、経済成長優先を盾に
 制裁を免れ、小国の反発を買った。 

 EU議長でアイルランドのアハーン首相はスペイン総選挙が行われる三月までは憲法草
 案に関する協議を開かないと明言。「(憲法問題は)長期的な戦いで避けられないプロ
 セス」とし、〇四年前半中に合意を得る決意を表明した。実際は、五月一日のEU拡大
 や六月の欧州議会選挙前の合意は難しい情勢だ。 

 イラク戦争を機に欧米間の信頼が揺らぎ始めたが、親米国アイルランドが仲裁役として
 期待される。アハーン首相はまた、域内経済の改善、人権や難民受け入れの問題、アフ
 リカ支援を優先事項とみなしている。 

 年末には、トルコの加盟交渉を開始するかどうかの決定が下される。現在はキリスト教
 国家クラブの様相を呈している欧州にとって、イスラム教国家の加盟は大きな挑戦だ。 

 欧州では全般的に、イスラム系移民との融合が課題となっている。女子生徒のスカーフ
 着用拒否の法制化への動きはその一例。拡大EUが、それに見合った包容力を保持でき
 るかどうかが注目されるところだ。 △掲載許可済み

2004年のEUの主なスケジュール
1月1日 アイルランドがEU議長国に就任
5月1日 10カ国がEUに新規加盟
6月1日 西欧同盟(WEU)がパリで会合
6月8日 米国で主要8カ国首脳会議、EUも参加
6月13日 欧州議会選挙を実施
7月1日 オランダがEU議長国に就任
11月1日 欧州委員会の委員25人が交代
12月   トルコのEU加盟交渉の是非を決定
Kenzo Yamaoka
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件名:国連の表決にみる欧米対立の実態  

EU諸国の投票内容は米国と乖離/「新しい欧州」の動向に注目
在仏米コラムニスト ウィリアム・ファフ
EU多数派と食い違う英仏

 二〇〇三年は、米欧対立、欧州内の分裂が際立った年だった。これらの現象の真相を明
 らかにしてくれた研究結果が公表された。オーストリア国際問題研究所のポール・ルイ
 フ氏によるもので、欧州連合(EU)安全保障問題研究所が発表した。

 ルイフ氏は国連総会の表決で欧州諸国がどのような票を投じてきたかを調査した。総会
 は、国連憲章の範囲内ならどのようなことも取り上げることができる。総会での平和と
 安全保障に関する表決は、法的拘束力を持たない(これは安全保障理事会の仕事だ)。
 しかし、総会参加国が世界中を網羅していることを考えれば、総会の表決が国際世論を
 ある程度反映したものとみることはできる。

 調査結果によれば、EU加盟国の投票の内容は、欧州の共通外交・安全保障政策の動向
 と軌を一にする傾向を強めている。しかし、英国とフランスの振る舞いは、EUの多数
 派とは著しく食い違っている。

 一九九五年から二〇〇二年の間、安全保障と軍備縮小の問題について、ベルギーとルク
 センブルクが欧州の大勢と食い違う表決を行ったのは、0から100までのスケールで
 測ってわずか1。この方法で測定可能な最低の数値だ。イタリアとオランダはわずかに
 大勢から外れ3。

 ところがフランスは、同じ期間に毎年欧州の大勢から逸脱している。欧州諸国(このグ
 ループを「基準」として偏差を測定する)の過半数を占める票からどの程度「離れて」
 いるかを計算すると、フランスは一九九七年の7から一九九九年の24まで、毎年のよう
 に多数派から逸脱している。

 同じ問題に対する英国の逸脱の程度は、毎年平均約12となっている。

加盟候補国はEUと共同歩調

 中東に関して欧州諸国は、総会の表決ではほぼ一致している。大勢からの逸脱は最大で
 も3、スペイン、ギリシャ、アイルランド、フランスがそれぞれ一度ずつだった。

 測定に使用した安全保障、中東、自治・独立問題、人権の四つのテーマすべてで、欧州
 と米国を比較すると、国連総会での米国の票が、EU諸国の大勢とどの程度食い違って
 いたかを示す数値は50以上となっている。ここでも、フランスと英国だけは、例外的な
 振る舞いをしている。米国とフランスの食い違いは46、英国とは45だ(米国との食い違
 いが最も著しかったのは、アイルランドで57)。

 ただ、米国と欧州の間のギャップは、米国と世界の他のほぼすべての諸国との間のギャ
 ップほど大きくはない。

 二〇〇二年十二月に閉幕した国連総会で、米国とオーストラリア間の投票での食い違い
 は上記の四つのテーマすべてについて51、カナダ、ポーランドとの間では53、メキシコ
 とは73、中でもロシアと中国はそれぞれ64と78と大きな数値を示している。

 ルイフ氏は調査結果について、EUがイスラエル・パレスチナ問題で非常に高いレベル
 で一致し、人権でも広範なコンセンサスを得ている、と指摘した。安全保障問題ではコ
 ンセンサスの程度は低くなるが、共通安全保障政策の深化とともにこの傾向は弱まった。
 これらは、総会ではそれほど重要でなく、通常は安保理で扱われるテーマだ。

 EU加盟候補国(ラムズフェルド米国防長官の言う「新しい欧州」)はどの国も、総会
 でEUと共同歩調を取り、ラトビア、キプロス、マルタは自国に特に関係する個別の問
 題で他の欧州諸国に反対する票を投じた。トルコは、EU諸国の投票とは一致しないも
 のの、EUのコンセンサスとはそれほど外れていない。

 クリントン政権時代、米国とEUの国連総会での票は、安全保障と人権ではそれほど乖
 離(かいり)していなかったが、今ではそのギャップは拡大した。それでも、フランス
 と英国は表決で米国に最も近いEU加盟国だ。それは、これらの諸国が核保有国であり、
 安保理の常任理事国であるなどの共通点を持つことが一因となっている。

行き着く先は分裂した欧州か

 この調査が行われて以来、米国と「古い欧州」の間の関係は険悪になり、米国は、スペ
 インとポーランドが古い欧州に代わる米国の同盟国としての新しい欧州を代表する国と
 なる、という考えを強めていった。ブルガリアとルーマニアが、スペインとポーランド
 に続いている。

 EUと加盟候補国が国連での表決で接近してきたことを見れば、米国の描くこのシナリ
 オが現実の世界でどれだけ有効に機能し得るものなのかに疑念を持たざるを得ない。国
 力の差を見れば、この米国の同盟国としての新しい欧州はそれほど重要とは思えないが、
 それを割り引いたとしても、なお疑念は残る。

 昨年十二月にブリュッセルで開催されたEU首脳会議で、古い欧州がEUの新規加盟国
 を手なずけていくことは今後も難しいことが明らかになった。その行き着く先は、間違
 いなく、分裂した欧州、事実上二つ以上に分かれた欧州だ。欧州と米国の間の距離に関
 してこの調査は、両者の不一致が以前から存在し、広範にわたっていることを示してい
 る点で興味深い。今後の両者の関係は、米国が十一月の選挙で誰に票を投じるかでほと
 んど決まってしまうことは間違いない。(世界日報)△掲載許可済み
Kenzo Yamaoka
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件名:改革に燃える親米派(グルジア大統領選)  

グルジア大統領選当確のサーカシビリ氏
 故ケネディ米大統領を尊敬し、「わたしは米国の民主主義に育てられた」と語る根っか
 らの親米派。改革と汚職一掃を唱え、変化を求める国民の支持を集めた。独立国家共同
 体(CIS)では初の親米派大統領の誕生となる。
 ウクライナの名門、キエフ国際関係大学を卒業後、フランス、イタリアを経て米国に渡
 り、ジョージ・ワシントン大学で人権法を学んだ。コロンビア大学法科大学院を修了、
 ニューヨークの法律事務所で働いた経験もある。

 シェワルナゼ前大統領に請われて一九九五年に帰国し、二○○○年には法相に就任。閣
 議で政府高官の腐敗を追及したため、反発に遭い、○一年辞任に追い込まれた。

 完ぺきな英語を操る。三十六歳という若さはグルジア政界ではマイナスと評価されがち。
 歯に衣を着せぬ言動で敵も多いが、街頭でデモ隊を率い、「ベルベット革命」を成功に
 導いた大胆な行動力には定評がある。

 留学時代に知り合ったオランダ人のサンドラ夫人との間に一男。アメリカンフットボー
 ルのファン。(トビリシ時事)

米ロ確執の最前線に−グルジア
CIS初の親米派大統領誕生
 グルジア大統領選挙は、シェワルナゼ前政権を打倒した無血政変の指導者サーカシビリ
 氏の圧勝が確実になり、旧ソ連からの独立以来、民族紛争と経済停滞に苦しんできたグ
 ルジアに本格的な民主改革の時代が到来した。しかし、独立国家共同体(CIS)で初
 となる親米派大統領の誕生に伴い、グルジアは米ロ確執の「最前線」となり、新政権の
 進路に影を落としそうだ。

 ◇影響力強化の舞台
 グルジアは小国ながら、カスピ海原油の「出口」として建設中の石油パイプラインの通
 過ルートに当たる戦略的要衝。北部にはチェチェン独立派武装勢力の出撃拠点とされる
 パンキシ渓谷があり、米ロが影響力強化を図ってきた。

 「米同時テロ後の反テロ同盟結成当時の高揚感は完全に消えた。三月のロシア大統領選
 以降は関係がぎくしゃくしだす」−。外交筋は今後の米ロ関係をこう予測する。ロシア
 は世界的な米軍再編の中で、ポーランドやアゼルバイジャンなどへの米軍基地移転の動
 きに神経をとがらす。米国側では、石油大手ユコスなど新興財閥への締め付けを強める
 プーチン政権への不信感が募っている。

 ◇ロシアは硬軟両様の構え

 こうした中でのグルジアでの親米政権の誕生に、ロシアが警戒感を強めるのは必至だ。
 ロシア側は、グルジアからの分離志向を強めるアブハジア、アジャリア両自治共和国な
 どとの関係と電力供給をカードに、硬軟両様でグルジアへの影響力確保を目指すとみら
 れる。
 ロシアはこれまで、アブハジア住民には外国旅行用パスポートを発給、ロシアへの渡航
 に便宜を図ってきた。昨年十二月には、アジャリア住民へのビザ(査証)発給を一方的
 に簡略化した。

 十二月にグルジアを訪問したラムズフェルド米国防長官は、アブハジアとアジャリアに
 あるロシア軍基地の早期撤退を促し、ロシア側が猛反発。イワノフ国防相は訪ロしたグ
 ルジアのブルジャナゼ暫定大統領に「引き揚げる軍人の住宅を建設するための予算が不
 足している。撤退には十一年かかる」と言い放った。

 一方で、グルジアはロシアに電力供給をほぼ全面的に依存しており、新政権にとって最
 大の課題となる経済再建を進めるには、ロシアの協力が不可欠。サーカシビリ氏は大統
 領選後にロシアを訪問する意向を表明、対ロ重視の姿勢を示すとみられるが、本格的な
 関係修復の道のりは険しそうだ。世界日報 △掲載許可済み
Kenzo Yamaoka


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