1494.日本経済と日本の岐路



日本の経済を見通そう。   Fより

日本経済は、今デジタル家電系で上昇している。この動向は続くで
しょうが、気になるのは増税で、この増税で消費者がどう判断する
か心配である。どうして、少し経済がよくなると、前例を無視して
増税をするのであろう。財務省は前回失敗の経験を生かしていない
。それと今年からは人口が減少する。

私が住んでいる東京でも都心以外は、土地価格が減少している。こ
れは人口減少を見越した値動きであるが、この傾向が顕著にあわら
れるのが今年である。デフレの要素として出てくる。

デジタル家電も韓国や台湾も日本を追っているし、日本のメーカー
より安価で出してくる。このため、次を目指した製品を作る必要が
ある。デジタル・カメラはとうとう一眼レフのデジタル化まで来て
当分、韓国や中国の心配をする必要が無い。

自動車も燃料電池で先行しているので、トヨタとホンダは心配がな
い。GPSの分野で欧州主導の「ガリレオ」にトヨタやホンダが企
業として加盟しておいて欲しいだけですね。

ドル安も今年は顕著化すると思うが、このドル安で円をどこまで、
維持するかでしょうね。100円以下になる円高を認めるべきでし
ょうね。ドルからユーロに基軸通貨もシフトが明確化するでしょう
から日本も、対ユーロをどうするかの議論が必要である。

地方経済は、一進一退の状況でしょうね。人口が減少しているので
上昇はデジタル家電企業の工場がないと無理でしょうね。高速道路
・新幹線の建設しかない。しかし、次の有機栽培の農業を奨励して
安価ではないが、安心できる農産物を出すことにより、消費者の支
持を勝ち得るしかない。不耕起農業は実験的に行っておく必要があ
る。石油が無くなった時でも日本農業は生き残るためにも必要であ
ろう。EM法のこの線から検討して欲しい。

ということで、日本経済は2003年の続きであるが後半、増税が
効いて経済は下降する可能性もあるでしょうね。
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日本の岐路

我々が、採りうる戦略は、実は今、岐路にある。
米国との関係がそうだ。黒船来襲以来、これが、日本の進路すべて
に関わってきた。この問題は、一つは経済で、もう一つが防衛であ
る。

日本が、この二点のおいて、アメリカの言いなりなのは、これから
の日本の国益にとって大きな問題になるはずだ。

ミサイル防衛を自民党も、民主党も進めるようだが、本質を理解で
きているのだろうか?

これには、二つの利点しかない。一つは、心理的効果だ。
ミサイルを防衛するための方策を講じています。という国民に説明
するものだ。
もう一つは、極点における防衛である。
皇居(と、政治中枢域)・原発・米軍基地がそれであろう。
(それすら、実効性は疑わしい。)
もっとも、効果があるのは、アジア地域から、日本上空を越えて行
く米国へ飛ぶミサイルに対してであろうことは疑いない。まさに、
この楯の位置に日本弧状列島はある。

しかし、これは本質的には、日本国民の税金の、米国産軍複合への
際限のない贈与であるのだ。

ミサイル防衛構想は、システム上、これまで以上に、米国の情報と
判断に国を全面的に委ねることになる。
つまり、このシステムでは、自主運営など、金輪際考えられない。
確かに、現在でも軍事的に独立していない。
兵器体系一つをとっても、重要な個所(たとえば、航空機の攻撃シ
ステムや、イージス艦のコンピュータシステムはブラックボックス
だし、自主的な航空機開発さえ、政治的圧力で潰されている。)

今ですら、防衛をたてに、経済や外交で、従属さしめられている。
これからは、働いても、働いても、奴隷労働のように、アメリカ本
国の不在地主(社会に責任を持たない株主こそが、すべての持ち主
?になる)に捧げ尽くすことになるのだ。
株主への還元が最優先と、労働が切りつめられていく。(リストラ
はその一貫で始まった。当初は、国際競争力という名だったが、金
融を支配することは、すべての企業の死生を制する意味をもつ。)

グローバル企業は、すでに、アメリカ国民・社会全体に対してすら
、責任を持っていない。
かろうじて、「軍」のみを、最終的な力として必要としている。
ドルの背景(おもに、石油の生産・流通支配権)が変わる今、まさ
に、「軍票」として機能させようとしている。

経済の根幹には、「エネルギー」がある。
しかも、これは、<自前>であることが望ましい。
日本において、原子力も、自前ではない。しかも、核廃棄物の処理
はどんどん袋小路に入っている。巨大設備を巡る利権や、(もしか
したら、燃料の長期密約があるのかと疑うが)
政府エネルギー政策の硬直性が、根本の問題を覆い隠している。

<水素>化エネルギー・周辺技術の整備こそが、日本の戦略の根底
にあるべきものなのだ。(太陽電池・風力と含めた、ネットワーク
発電技術の整備が、大きく構造を変える。)

政治・軍事的に言えば、
北朝鮮が、先制的に攻撃をするメリットはない。
米国も、中国・韓国の関係を考慮するなら、先制攻撃をすることは
ないだろう。どうやら、中東との、核・ミサイルのリンクも消えた。
もちろん、日本に、大規模上陸作戦を敢行する勢力など、皆無だ。
(だいたい、日本を占領して、何の利益が生じるというのだ。)

我々が、必要とするのは、制空権と、コンパクトで、機動性に富ん
だ部隊編制なのだ。以前、シーレーン構想というのがあったが、冷
戦後、必要になったのは、各国共同の運営による、緩やかな海上警
察組織である。
それを、一国でやろうとするのは、制度的にも無理がある。
警察行動というものの基は、「力」では無く、「法」でなくてはな
らない。

日本が、属国的地位にあることは、このコラムでも、繰り返し確認
された。我々が戦略と呼ぶ時それは常に、<アメリカとの距離感の
取り方>である。
今、「親米右派」と呼ばれる人々は、盛んにアメリカのもっと従属
せよという。その果てが、どんな体制、どんな精神をもたらすのか
考えているのだろうか?
彼等は、どうせ、「自立」など、絵に画いた餅といいたいのだろう
が…。そして、二度の敗戦後(原爆で終わった先の大戦と、金融敗
戦)、精神的にレイプされたように、日本のエスタブリッシュメン
トは、漂流に陥っている。

今の日本に、<力>がないことは確かだ。それを認識できない攘夷
派左派には、経済構造・ 権力構造の分析をしてもらいたい。

まず、実体面で強くなること、(エネルギーや、テクノロジーで、
そして、現況の金融混迷をしのぐこと)
もう一つは、精神性の復活である。
あらゆるチャンネルでそれは行われなければならない。特にテレビ
等のマス文化の再生が望まれる。視聴率さえ取れれば、なんでもあ
りじゃ、<人>は生き返らない。

そして、精神文化は、積極的に、外国へ発信されなければならない。
民族の尊厳とは、優越性でなく、独自性にあるのだ。
だから、同様に、我々も他の民族の尊厳を、尊ぶべきことを知らね
ばならないのだ。

眼の前の政策を採用する時、単なる、現状の利益合わせではなく、
それのもたらす構造に注意して欲しい。ここ、十数年、この先見の
力が落ちている。
今、岐路を誤ると、長期にわたり禍根をのこすことになる。

警報をだせる人間は、積極的に広めてほしい。人を集って欲しい。
社会を動かすことができるのは、<合唱>にかかっているのだ。

                     まとり
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■フセイン後の新世界秩序 
  −イラク・中東を巡る3つのシナリオとその後−

日本時間、12月14日の午後9時、イラクのフセイン元大統領が
、ディクリート近郊の村で拘束されたという発表が、暫定占領当局
からなされた。

この拘束により、イラク国民の間に旧フセイン政権復活の恐怖およ
び復活神話が完全に無くなった事は歴史が一駒進んだとは言える。
だが今のところ、フセイン拘束直後にアメリカが期待したようには
テロが沈静化されず、「フセインの残党」以外の手によりむしろ激
化している。

事態の進展については予断を許さないが、今後の各種の議論のため
には、先ずイラク、中東の将来図のシナリオが整理されて提示され
る事が不可欠だろう。
この観点から、筆者は今後考えられるシナリオを、思考実験的な意
味で多少オーバーな形で単純化し、以下の3つに大別してみた。

◆シナリオ1:国際協調・安定化
アメリカ、フランス、ロシア間等の同意に基づく新しい国連安保理
決議により、石油の国連管理とイラクへの主権移譲等を前提とした
、現在の米英占領当局(CPA)の軍政とは、確たる一線を引いた
形のスキームが造られる。
その中に、今まで軍隊等の派遣を見合わせていた国からも、派遣、
復興資金の拠出がなされ、国際協調によりテロは沈静化しイラクは
復興する。
イラクは安定的な民主主義国となり、周辺諸国が影響され中東全体
が緩やかに民主化されて行く。

◆シナリオ2:アメリカ暴走・ドロ沼化
イラクのテロは収まらず、アメリカは、国際協調でなく一国主義で
武力により一気に中東を民主化、親米化する道を選ぶ。
テロリストの供給源だとして、シリア、ヨルダン、サウジアラビア
を、そして核兵器開発の野望を捨て切っていない事を理由にイラン
を先制攻撃する。
目的としては、これによる民主化と宗教的使命感の充足、イスラエ
ルの安堵、石油・復興利権の独占、軍需産業の利益、石油ドル決済
体制維持、アメリカ一極支配の完成等々を図る事が考えられる。
しかし、テロの激化によりベトナムを上回る解決の糸口のないドロ
沼に入り込む。
アメリカが、中東諸国に対し限定核攻撃を行う可能性もある。
また、国際非難、国内の反戦運動にさらされ、軍事、経済に加え、
威信の面でアメリカは没落する。
世界は、秩序無き多極化となり極度に不安定となる。

◆シナリオ3:アメリカ単独行動・安定化
アメリカが国際協調によらず単独行動をするのはシナリオ2と同じ
だが、暴走とまで行かず、これまでと異なり暫定統治、復興支援を
軍政下ながら巧みに行い、イラクのテロを取り敢えず沈静化させる。
来年6月のイラク国民への統治権移譲も、アメリカの影響力を残す
ような形で行う。
12月19日、リビアのカダフィ大佐が大量破壊兵器開発を放棄す
る発表をしたように、周辺中東諸国はアメリカの軍事力の前に従順
になり親米化され、やがて民主化も進んで行き安定化される。
アメリカの石油利権の独占、軍需産業の利益、石油ドル決済体制維
持等々は成就され、EU等もそれを追認しアメリカ一極支配の完成
を見る。

◆結局どのシナリオか
国際世論が求めているのは、言うまでも無くシナリオ1:国際協調
・安定化である。
アメリカ政府では、ベーカー元国務長官、パウエル国務長官等の
国際協調派が、EU諸国やロシア、中国等に対し復興への協力を取
り付けるために動き始めている。

一方、シナリオ3のようにアメリカが単独行動の形で安定化を狙い
、必要ならシナリオ2の前半部のように周辺諸国への先制攻撃を辞
さないだろうと言う根拠として、アメリカが、石油等のエネルギー
を制する者が今後の世界を制するとして、これを長期的国家戦略化
している事が挙げられる。
また、それに関連し、長期的に石油ドル決済体制が崩れれば、ドル
が裏付けを失い、膨大な財政赤字のための米国債が捌けずドルが紙
切れになり、経済崩壊、国家破産に見舞われるので、簡単には単独
行動から引けないとの見方もある。

軍需産業や復興需要の利益代表のラムズフェルド国防長官やチェイ
ニー副大統領等タカ派は、アメリカの単独行動を推し進める方向に
動いている。
また、ウォルフォウィッツ国防副長官、リチャード・パール国防政
策委員等のユダヤ系のネオコンは、アメリカのイスラエルへの関心
を維持するためには、ドロ沼化を恐れないとの観測もある。

ユダヤロビーの影響を強く受けるマスコミは、それにより報道にバ
イアスが掛かり続ける可能性が高い。
アメリカ国民の一般層は自国外への関心が薄く、イラク、中東問題
では、マスコミの報道を疑う事は少ないだろう。

アメリカと言う国は、国内で様々な勢力が強烈なパワーで拮抗し合
い、多面性があり、その向かう方向が読み難い国である。
従って、アメリカが暴走し始める可能性も捨て切れない。
しかし、常識的に見れば国際協調派と単独行動派が妥協しあって何
とか新しい国連安保理決議にまで漕ぎ着ける可能性が高いのではな
いか。
だが、そのような形での新しい国連安保理決議は、再び骨抜きにさ
れかねず、イラク、中東が安定化する保証はどこにもない。

◆日本の現状
国際協調により作られるスキームの形が、現在の米英主導の軍政か
ら一線を引いた形になる程、テロが沈静化しイラクの復興が早まる
と見るべきだろう。
またそれは、イラク戦争を開始した米英と距離を取る事によって、
各国にとって大義とも称される道徳的優位性を保つ事に繋がる。
道徳的優位性は、その後の外交プロパティーとなり得、長期的国益
の前提条件の一つとなる。
とまれ、日本はどうなるか。
小泉首相は、少なくとも形式的には国際協調路線への努力を並行し
て続けつつも、アメリカが単独行動を続ける場合にも着いて行く事
により、アメリカと心中する腹を決めた。
泥沼か安定かは分からないが、後者になる事を信じ己の政治生命と
日本の運命をそれに掛けた。
外れれば、退陣引退する事により責任を取るつもりだ。
現在国民多数は、イラク派兵に反対しながらもそれとは矛盾して、
アメリカと心中するつもりの小泉首相を最高責任者として認め、永
田町にも今のところ倒閣の具体的動きはない。
その現状を踏まえれば、民主主義国家である日本の国民は、小泉首
相の判断のもたらす様々なものを吉凶に拘わらず甘んじて受容れざ
るを得まい。

◆新世界秩序
冷戦後、経済でも一人勝ちして全能感に支配されるアメリカは、
いわば自分の姿を映し出す鏡のない世界にいる。
しかし、それが永続的なものでない事に気付いたエリート層は、あ
るいは国際協調派となり、片や一国主義をより強固にし一極支配の
完成を目論む勢力となった。

アメリカの衰退、と言うよりもEU、中国、アジア、ロシア、やが
ては中東等がそれぞれ分裂の可能性や各種の問題を抱えながらも全
体としては長期的に成長して行く事による、アメリカの相対的衰退
は避けられない。
また、アメリカの動きはともかく、中国、アジア、ロシア、中東等
は歴史の流れに沿って紆余曲折しながら民主化して行く方向に進む
だろう。
アメリカの一極支配の目論みは、時計の針を逆に回す行為であるが
故に失敗する。

従って、新世界秩序とは、即ち「秩序ある多極化への移行」の事で
ある。これは、アメリカの唯一の超大国からの緩やかな退位を意味
する。

世界秩序には、一国家の統治と同様に、権威と権力(パワーバラン
ス)の2つが必要である。
また、権力には、軍事力、経済力、文化・文明力(ソフトパワー)
の3つがある。

これらを踏まえ、新世界秩序に関しての長期的なシナリオとして、
今のところ筆者に考え得るのは、次のようなものである。
(1)国連改革を進める事により、その機能と正統性を高め権威の主
   体とする。また、各国からの数%程度の軍事力供出により国連常
   設部隊等を創り、権威を一定の実力により裏打ちする。
(2)アメリカが国力の低下と共にアジアから軍隊を引き始める事に
   対し、その空白を埋めるために、アジアの安全保障機構を組むと
   共に、中心的役割は経済力等に応じて主に日本が担うべきである。
(3)イギリス、オーストラリア、シンガポール、台湾、日本等の同
   じ海洋国家が連合する事により、中国、ロシア、インド、EU諸
   国等の押さえとし、パワーバランスを図ると共にシーレーンを確
   保する。
(4)アメリカは、唯一の超大国からの緩やかな退位はするが、相当
   期間、文化・文明力(ソフトパワー)の基軸国としての影響力と
   名誉を保ち続ける。また、基軸通貨からのドルの退位は、国際協
   調の中で受け皿が用意された上で行なわれるべきである。
(5)秩序ある多極化への移行は、正当な過程を経ての新たなリーダ
   ーの出現を否定するものではない。

これらが成り立つためには、アメリカが先ずイラク、中東で、国際協
調路線を取る事が前提となる。
単独行動、暴走を許せば、ドロ沼化から世界がカオス状態になりかね
ない。特に大国と言われる各国は、国益を確保しながらも、アメリカ
という巨大なリヴァイアサンを国際社会の善き住人たらしむべく誘導
しなければならない。
世界は今、その運命を左右する歴史の岐路に立つ。
佐藤鴻全 @佐藤総研
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F様、T様、
ことしもよろしくお願いします

めでたさや心をつなぐ掲示板

だんだん世の中への関心が薄れてきている自分がいます
時勢の変わり方と、現実の人間の意識の変わらなさ、
このコントラストの激しさにもんもんとしています

日本人は、人類文明の問題と、大東亜戦争敗戦後のトラウマや去勢
教育の、ふたつの難問を乗り越えなければならないと思う。
でも、どちらも、問題が大きくて複雑すぎて、問題の存在に気づく
ことすらままならないのが今。

あきらめずに頑張りましょう
天沢履助
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(Fのコメント)
米国からの独立をドイツはイラク戦争反対で実現している。ドイツ
が独立したような行動を日本はできないでいる。

しかし、日本は戦後教育で去勢されているので、この部分は修正し
た方がいいでしょうね。
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件名:非宗教原則にこだわるフランス  

米、信教の自由侵害を懸念・イスラム諸国は決定撤回要求
 フランスのシラク大統領が、公立学校からイスラム教女生徒のスカーフ着用など、信仰
 を表す印(しるし)を排除する法律制定を支持したことに、国内のみならず、諸外国か
 らの反応が出ている。異なる宗教への理解促進と、公教育からの完全な宗教排除という
 矛盾する決断を行ったことで、フランスにおける共和国の理念と宗教の関係が改めて問
 い直されている。(パリ・安倍雅信・世界日報)

 フランスの旧植民地である中東のレバノンでは二十日、駐フランス大使館前で数十人の
 イスラム教女子学生が集まり、シラク大統領への抗議の声を上げた。公立学校でのイス
 ラムのスカーフ着用を禁じる法律を支持する決定を下した同大統領に対して、「差別的
 決定」として、撤回を求める抗議デモを行った。

 レバノン・イスラム学生同盟に所属する女子学生らは、シラク大統領にあてた公開書簡
 の中で、「非宗教主義はヒジャブ(スカーフ)への攻撃であり、フランスの本音を表し
 たもの」として、仏政府がイスラム教徒を直接標的としていると批判した。一方、レバ
 ノンのシーア派指導者ファルララ師も「イスラム教徒の人権への攻撃」と反発している。

 中東カタールのイスラム教指導者アルカラダウウィ師は十九日、シラク大統領の決断に
 驚きを表明し、「フランスは大革命で自由と人権を最も重んじる国であるはずなのに、
 イスラムのスカーフを攻撃している。スカーフはキリスト教徒のロザリオ(十字架)の
 ような信仰者の印ではなく、ただ、神に近づくためのものだ」と語った。

 シラク大統領は十七日、演説を行い、国内でイスラム教女性のスカーフなど、信仰を強
 調する印を公教育の場に持ち込むことを禁止する法制化を支持する公式見解を示した。
 演説の中で同大統領は、公教育の場には宗教を一切持ち込まない「非宗教原則」を堅持
 すべきという考えを示すことで、「共和国の価値観」の下で国民が結束することを求め
 た。

 その一方で近年、懸念されている反ユダヤ主義の台頭や、イスラム教徒への差別をなく
 すべく、「多様性の受容」への取り組みを強化することも約束した。これは、今年七月
 から同問題を検討していた政府諮問委員会の答申に沿うものでもあった。

 フランスはアラブ移民の急増で、イスラム教がカトリックに次ぐ第二の宗教勢力となっ
 ており、現在、五百五十万人に上る信者を抱えている。また、ユダヤ教徒も六十五万人
 存在するといわれ、フランスの文化を根底から揺り動かしている。今回の決定は、異な
 った文化や宗教への理解を打ち出す一方で、あくまで「共和国の価値」の下にすべての
 国民が結束することを呼び掛けるものでもあった。

 公教育機関における非宗教原則の徹底を目指す法制化は、イスラム教女子学生のスカー
 フはもとより、ユダヤ教徒がかぶるキッパと呼ばれる円形の小さな帽子、カトリック教
 徒が首から下げる十字架などの着用禁止にも及んでいる。しかし、十字架などは、小さ
 い物であれば問題にしないとも言っており、明らかにイスラム教徒やユダヤ教徒が対象
 になっている。

 米国ジョン・ハンフォード信教自由全州代表大使は十八日、シラク大統領の非宗教原則
 の法制化支持に、即座に懸念を表明した。同大使は「米政府は、信仰の誠実で平和的な
 表現に干渉するいかなる法律にも反対する」と述べ、「信教の自由の基本原則は、すべ
 ての人々が政府の干渉なしに、社会に対する挑発や脅威を与えない平和的な態度で、彼
 らの信仰実践を行えることだ」とも語り、今後の成り行きを注意深く見守りたいとして
 いる。

 フランスは二〇〇一年に、世界でもまれな新興宗教団体の活動を大幅に規制するヨーロ
 ッパで最も厳しい新規制法を成立させた。この規制法の下、米国系のサイエントロジー
 や、ものみの塔などの宗教団体が係争中で、最も厳しい処置の場合、国外退去命令もあ
 り得ることになっており、すでに米国から信教の自由を侵す法律と批判を受けている。

 一方、今回のシラク大統領の決断に対して、フランスの一般的世論は、一部の宗教関係
 者を除き、支持している。ヨーロッパで最も教会に通う実質的なキリスト教人口が少な
 いといわれるフランスでは、もはや、宗教そのものが社会の隅を追いやられている感は
 否めない。政治的にも与野党を問わず、法制化は別にしても、公教育の場での非宗教原
 則の徹底には賛成する政治家が多い。

 在仏イスラム教代表組織、仏イスラム教評議会(CFCM)のブバクル会長も、「フラ
 ンスのイスラム教徒は、賢明とも言える(大統領の)メッセージを受け入れなければな
 らない」と、肯定的な反応を示している。同会長はスカーフ着用禁止問題よりも、イス
 ラム教への理解に努力する政府の態度を評価すべきだという。

 一方、仏ユダヤ協会代表評議会(CRIF)は、大統領の演説について、「フランスに
 住むすべての人々は、仏社会の法原則と慣習を受け入れなければならないという必要不
 可欠の原則を述べただけ」として、基本的には支持する考えを示した。

 問題は、多くのフランス人がイスラムのスカーフ着用姿を見ただけで脅威を感じている
 ことだ。スカーフを「信仰の主張」と受け止めるフランス人は八割に上ると言われてい
 る。逆にイスラム教徒たちは、「スカーフは他への主張ではなく、あくまでイスラム教
 徒の個人的信仰の信念によるもの」と平行線をたどっている。

 政府は来年九月からの施行を目指して法制化を行っていく構えだが、「イスラム教徒を
 公教育から遠ざければ、無教養で根本主義的なイスラム教徒を増やすだけ」という意見
 も出ている。同時にユダヤ人学校のようにイスラム教徒が独自の私立学校を設立し、社
 会への同化の弊害になるという批判もある。▽掲載許可済です
Kenzo Yamaoka
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件名:国連が直面する課題  

国連が直面する課題−元国連事務次長補 ジア・リズビ氏に聞く
紛争予防へ早期警戒態勢を/解決には精神的側面が不可欠
決定プロセスの改善必要/タイムリーなIIPC設立
 ――イラク戦争を契機として、国連改革を求める声が高まっている。元国連幹部として
 組織の内外を熟知している立場で、国連の現実の姿、主な問題点がどんなところにある
 と考えるか。

 国連の組織は、第二次世界大戦直後に創設されたそのままだ。人々がまだ世界大戦のト
 ラウマ(心的外傷)を持っていた時期で、それは安保理常任理事国への拒否権付与など
 に表れている。国連は、常任理事国五カ国による不完全な民主主義によって運営されて
 きた。

 安保理の構成、また安保理と総会との関係の在り方をどうすべきか。総会は“国会”、
 安保理は(企業の)“重役会”のようなものだ。民主主義では国会がトップだが、国連
 では違う。決定のプロセスと実施が、国連のその部分のみで行われている。

 「国連は失敗した」「国連の力は低下した」という場合、それは(横的に)巨大なシス
 テムになった国連を縦的な側面から見た結果だ。背景には、パワーポリティクスがある。
 スーパーパワーとその他の国々との関係を改善していくことが課題だ。過去三十年の間
 に、人類はどんどん新たな試練に直面してきたが、国連はそれらに対応できなくなって
 いる。

 例えば、難民問題は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、子供はユニセフ(U
 NICEF)がそれぞれ対応するが、ストリートチルドレンや人口爆発などに対処する
 機関は国連にはない。これらの問題は一九四〇、五〇年代には知られていなかったが、
 現在は多くの人が憂慮している。国連は、新たなチャレンジに対応できるように、再構
 築する必要がある。

 私のオフィスが取り組んでいるのは、新たな人道支援を普及・促進することだ。つまり、
 既存の組織、法律を新たなチャレンジに向けて適応させなければならない。過去の解決
 方法では、新たな問題に対処することはできない

 また、国連は平和の造成にさらに多大なエネルギーを注ぐべきだ。紛争予防が最善であ
 るとの原則に従って、紛争を未然に回避することを重視すべきだ。早期警戒システムを
 つくり、何が起こっているかを早急に知ることが必要だ。

 ――あなたは現在、NGO代表の立場で人道問題に取り組んでいるが、国連とNGOと
 のかかわりについてどのように考えるか。

 最も重要な点は、政府や国際機関は、NGOや宗教グループほど一般の人々との距離が
 近くはないということだ。NGOは、人々と接した直接の体験から物事を判断するので、
 問題の認識・対処方法が政府と異なる。国連のシステムは、NGO活動で補完されるこ
 とによって、適切で洞察に満ちた問題対処が可能になってくる。

 現在、国連プロジェクトの70−80%は、NGOの力を借りて行われている。好むと
 好まざるとにかかわらず、NGOなしでは国連は正常に機能しないようになった。

 各国政府がNGOの役割を重視するようになった結果、世界各国政府の支援の50%以
 上が、国連ではなくNGOに行くようになっている。

 一方、NGOも新たな試練に直面している。一部には、特定の国の道具として利用され
 たり、ビジネスとして金を目的にNGO活動を行っているものもある。NGOサイドも、
 規律ある行動が求められている。

 ――超宗教超国家平和協議会(IIPC)設立の意義についてどう考えるか。

 この時期の設立はタイムリーだと思う。

 戦争は人々の心の中から端を発するのであり、確固とした平和の礎はそこに築いていか
 なければならない。そういうことはNGOを通してのみ可能である。IIPCは“非政
 府”の立場で、単に紛争を非難するのではなく、むしろ紛争の根源に焦点を当てて解決
 を目指している。それは紛争予防になくてはならないことだ。

 実際に起こっている紛争に対処するためには、政府組織が必要だ。しかし、NGOは、
 平和のメッセージを直接的に紛争当事者に送ることができる。そういう意味で、IIP
 Cは重要な役割を果たすだろう。

 特にIIPCは、文化的、宗教的な側面を重視している。これらは国連が常に無視して
 きた分野だ。

 平和を達成するためには、文化的、宗教的な側面が不可欠だ。IIPCは、政治・経済
 的な分野を主に取り扱う国連に、精神的次元をもたらすことになる。世界のあらゆる宗
 教は平和を求め、暴力に反対している。宗教指導者が集い、声を大にして「暴力は解決
 策ではない」と叫ぶならば、テロや宗派間の闘争の抑止に大きな影響を与えるだろう。

 つまり、IIPCの活動は、現在の国連の機能を補完することになる。もし、IIPC
 が具体的な成果を上げることができれば、国連改革のモデルとなるだろう。

 宗教間の闘争は決して新しいものではなく、第三世界だけに限ったものでもない。北部
 アイルランドでは、二百年以上にわたりカトリックとプロテスタントが闘争してきた。
 英国は交渉で問題解決を図っているが、いまだに実現していない。宗派間の争いの解決
 には国際的な支援が必要だが、国連は内政干渉となるため国内問題に介入できない。そ
 れゆえに、NGOの役割が重要になる。

 例えば、国連はイスラム教スンニ派とシーア派の一方が正しい、といった判断をするこ
 とはできない。人々の問題は人々が解決する。つまり、NGOが主体となって解決する
 ことが重要だ。

 ――国連のアナン事務総長をはじめ、さまざまな人が「国連改革」の必要性を唱えてい
 る。宗教的、精神的な側面の改革についてはどのように考えられているか。

 アナン事務総長を含め、国連職員は皆事務官であり、国連組織への奉仕者だ。自らの仕
 事を維持することは大切であり、彼ら自身が改革の中心になることはできない。従って、
 国連加盟国の声に耳を傾けなければならない。

 精神的側面の強化については、アナン事務総長なども慎重にならざるを得ない。問題は、
 国際的政府組織である国連に非政府的なものを導入するのは非常に困難な点だ。

 政府組織の多くは、宗教的、精神的コンセプトを導入することに慣れていない。宗教者
 グループを国連に受け入れるならば、「自分たちが非難されるかもしれない」などと警
 戒する。

 政治・経済的な観点に加え、宗教、文化、社会的観点などを総合することで、包括的な
 解決策が得られる。重要なことは、IIPCによって国連システムが脅威にさらされる
 のではなく、その役割を強化することができるということを訴えていくことだ。

 IIPCにも課題がある。まず宗教指導者は、一般的に互いに対立していることだ。問
 題があまりなかったところに、新たな火種をつくらないようにしなければならない。さ
 らに宗教指導者は、自らの宗教・宗派を広げようと考える傾向がある。宗教拡大が目的
 ではなく、平和実現が最大の目的であることを常に念頭に置いておく必要がある。

(聞き手=三笘義雄)

 ジア・リズビ氏 パキスタン出身。大学で教鞭を執った後、国連職員に。約20年間の
 在職中、カンボジアやアフガニスタンの難民問題などに携わる。元国連事務次長補。1
 993年、人道問題に専念するため国連を退職。現在、非政府組織(NGO)「インデ
 ィペンデント・ビューロー・フォー・ヒューマニタリアン・イシューズ(IBHI)」
 事務局長。IBHIは、国連決議を受けて83年に設置された国際人道問題独立委員会
 (ICIHI)の後継として88年、スイスのジュネーブに設立。国連専門機関などと
 連携し、バルカン半島や中央アジアをはじめ世界各地で、人道問題に関する調査・研究、
 指導などを行っている。ICIHIの創設メンバーには、緒方貞子・元難民高等弁務官
 などが名を連ねている。世界日報 △掲載許可済み
Kenzo Yamaoka
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件名:日本と国連−貢献に見合う地位確保を  

「神聖視」脱却し改革へ取り組め
中ロの10倍以上の分担金/安保理改革のめど立たず
 日本は二〇〇六年に国連加盟五十周年を迎える。これまで日本人が国連に抱いてきた期
 待は過剰なほど強く、「神聖な存在」と錯覚する傾向さえある。だが、実際の国連は加
 盟国の利害が激しくぶつかり合う場所であり、イラク問題では完全に機能不全に陥った。
 日本もそろそろ「国連信仰」から脱却し、国連予算の二割を負担する大国として、国連
 改革に向けてリーダーシップを発揮することが求められている。
(政治部・早川俊行)

 「代表なくして課税なし」──。これは十八世紀、イギリス植民地からの独立を目指す
 米国のスローガンになった言葉だ。議会に議席を持たないのに課税されるのはおかしい
 という意味である。これこそ民主主義の基本原則のはずだが、国連における日本の立場
 はこの原則が適用されていないように見える。

 国連で特権的地位にあるのは、安全保障理事会の常任理事国五カ国。米英仏ロ中は「拒
 否権」を保有し、一国でも反対すれば決議案を否決できる。全加盟国からなる総会も、
 安保理の付属機関と化しているのが実情だ。

 これに対し日本は、常任理事国になってもおかしくない財政的貢献をしている。二〇〇
 三年の日本の通常予算分担率約19・5%は、米国を除いた常任理事国四カ国の合計よ
 りもはるかに多い。中国(約1・5%)やロシア(1・2%)と比べると、実に十倍以
 上の差だ。日本の国連諸機関への支出は、任意拠出金なども含めると約八億四千四百万
 ドル(〇一年)に達する。

 こうした多大な貢献をしていながら、日本はそれにふさわしい地位と発言権が与えられ
 ていない。日本は非常任理事国を過去八回、計十六年務めているが、拒否権はなく、そ
 れ以外の時は平の加盟国でしかない。

 昨年、安保理ではイラクへの武力行使や復興支援をめぐる決議案が大きな焦点になった。
 しかし、日本はこの国際秩序にかかわる重大問題に関与できなかった。その一方で、非
 常任理事国として決議案の行方を左右したのは、分担金がごくわずかのアンゴラ(分担
 率0・002%)、ギニア(同0・003%)、カメルーン(同0・009%)などだ
 った。

 貢献に見合う地位を得るべく、日本は安保理常任理事国入りを求めている。一九九三年
 に安保理改革作業部会が設置されてから十年が経過したが、各国の利害対立から議論は
 まとまらず、常任理事国入りのめどは立っていない。

 分担率の引き下げも重大なテーマだ。小泉首相の私的助言機関「対外関係タスクフォー
 ス」(座長・岡本行夫首相補佐官)が二〇〇二年十一月に発表した提言では、「日本の
 高額の国連分担金はどのような理屈をもってしても説明がつかない。米国、中国、ロシ
 アが払うべき分を日本とドイツが肩代わりさせられている」として、15%程度まで引
 き下げることを求めている。世界日報 △掲載許可済み
Kenzo Yamaoka


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