1487.東アジアの安全保障について



米軍のアジアからの撤退について、考察しよう。  Fより

米軍のイラクシフトが、だんだん見えてきている。イラクの安定は
サダム・フセインを拘束しても達成できない。それは、イラク人た
ちが、米英の占領を快しと思っていないことに起因している。

しかし、米軍はイラクから撤退しない。撤退すると、テロ戦争とい
う大義を失い、かつ中東の民主化という構想がなくなる。そうする
と、ブッシュ政権の外交・政治の中核が無くなってしまう。このた
めイラクでのゲリラ戦は続く。

しかし、長期のゲリラ戦に米軍の将兵の気力が持つのか?持たない
ことを恐れて、ラムズフェルドは在韓米軍の縮小と沖縄の海兵隊の
縮小のため、韓国と日本に来た。そして、海兵隊の3000名をイ
ラクに増派すると声明。ネオコンはイラクの安定化には米軍の増強
しかないと思っている。

しかし、米国は今、志願兵制度であるために、イラクが混乱してい
ると志願兵が集まらない。よって、既存の軍隊をイラクに回すしか
ない。州兵をイラクに交代要員として、回したがそれでも足りない
。1万人以上の死者、傷病者、逃亡者が出ているようであり、陸軍
の兵隊が不足している。雇用兵も活用している。このため、ブッシ
ュ政権のライズなどは、どうすれば早期にイラクから名誉ある撤退
ができるのかを検討している。

ラムズフェルドも同様にイラクからの出口戦略を模索しているよう
であるが、ウォルフォウィッツはイラクの民主化を目指して、イラ
クへの軍増強もするし、米国を縛る欧州とは手を繋ばないと思って
いる。このように政権内部でも意見が違うし、それが表面化してい
る。

どちらにしても、イラクへ展開している軍の交代要員が不足してい
るために東アジアに在留している10万人の軍隊の要員をイラクへ
シフトする必要があるのです。

これを可能にするのは東アジア情勢であるが、北朝鮮の実情から戦
争はできないと米国は思っているし、食糧援助6万トンを提供して
、北朝鮮の軍が飢餓から南に出てくることがないようにしている。
北朝鮮に戦争遂行能力がないことは、誰が見ても分かる。テロ的な
攻撃を仕掛けると、北朝鮮は絶滅することを知っている。そして、
リビヤの大量兵器破棄を成功させて、北朝鮮への圧力を高めている
。また、北朝鮮も日本の拉致問題が解決しないと経済援助がないこ
とも知っている。このため、次回6ケ国協議では核開発問題と拉致
問題の同時解決のようである。

しかし、それまでは暴発を中国と米国は押さえればいいと考えてい
る。この押さえに在韓米軍の3万はいらないし、沖縄の海兵隊数万
も必要が無いと考えている。北朝鮮問題解決後の東アジアの安定は
中国に任せるような気がする。韓国の自動車会社大宇を中国に任せ
るということは、韓国を諦めたということであろう。

韓国も親中国であり、反米的であるから、米軍が守る必要はない。
日本の海兵隊はグアムに移して、この中国のミサイルからより遠く
にして、中国の暴発に備え移動させるようである。

このように東アジア政策で変化したのは、中国への対応であろう。
米国ブッシュは、台湾の独立運動を認めないと発言して中国重視を
打ち出している。このため、政権浮揚の切り札カードの台湾独立意
思確認の住民投票は中止になった。

このように中国を東アジアのパートナーとして米国は検討している。
中国軍増強での脅威より現実的な戦争になっているイラクのゲリラ
戦争に勝つためには、それ以外の戦争は出来ないと言うことのよう
である。

米国の戦争経費を見るとイラク戦争以外はできそうにない。米国の
経済状況がボロボロで経費的に2つの戦争を切り盛りできないこと
による。アフガンも米軍はあまり駐留(約1万人)していずに、
欧州に任せているし、東アジアの紛争も中国に任せて、中東に専念
するしかないようである。このため、アフガンも捨てるように思う
。最初から米国はアフガンを攻めたいと思っていなかったようだ。
このため、タリバンの復活が近い。

こうなると、米国との集団安保上イラクへ出兵した日本は東アジア
での安全保障は撤退する米軍を頼りにできずに、自分の身は自分で
守るしかないのであろう。東アジアの安保を中国に任す米軍を頼る
ことが難しくなっている。特に北朝鮮のミサイルの脅威には、その
ミサイルを防御する仕組みであるMDがそう簡単にできないので、
憲法や法律を変更して、または解釈を変更して、ミサイルが打ち出
される前に叩くしかないが、その前に中国の抑止を使う手がある。

というように、東アジアの安全保障のキーに中国がなる。今後日本
もその体制を受け入れるしかない。実質的な北朝鮮問題解決を中国
が音頭を取って実施した現実がある。そして、米国もそれを認めて
いる。

このように米国の軍事的な世界一の位置はそう長くない将来に主に
、経済的な問題から崩壊するのであろう。今までは米国の保護の元
で世界の安全は確保されていたが、今後その安全を守ることができ
ずに多極化して混乱した状態に世界はなるような気がする。

その時、日本はどうすればいいのであろう。安全保障の枠組みを検
討する必要があるのです。まずは東アジアの安全保障体系であろう。
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件名:追い詰められる北朝鮮  

フセイン拘束、リビア核放棄で・テロ支援国「除外」要請か・強硬
姿勢も米の出方に注目

 イラクのフセイン前大統領拘束とリビアの核開発放棄で、同じく
核の脅威を振り回す北朝鮮の出方に関心が集まっている。北朝鮮核
の平和的解決に向けた六カ国協議の再開の行方が、米朝間の駆け引
きと仲介役の中国の思惑などが絡み見通しが立っていない中、米国
は北朝鮮攻撃の可能性を否定しておらず、北朝鮮は徐々に追い詰め
られようとしている。(佐貝祐介・世界日報)

 リビアの最高指導者カダフィ大佐は二十二日、米CNNテレビの取材に応じ、北朝鮮や
 イランなどもリビアの措置に倣って大量破壊兵器の開発を放棄するよう促した。大佐は、
 「リビアと米国の関係を改善するため」「嫌疑を晴らし大量破壊兵器のための技術を平
 和目的に使うため」などと述べ、米英両国が経済制裁を早急に解除することへの期待も
 表明したという。

 これを受け、リビアが核を含む大量破壊兵器の放棄に応じたことは、米国が指定する
 「ならず者国家」として“共闘”してきた北朝鮮に心理的な圧力を掛けているとの見方
 が広がっている。リビアと親密な外交関係を保ってきた北朝鮮は、リビアから米国との
 秘密交渉に関する情報収集を急いでいるとの観測も出ている。

 これまでに分かっているだけでも、北朝鮮の動揺ぶりは尋常ではない。

 まずインドネシアのメガワティ大統領の特使として今月上旬、北朝鮮を訪問したナナ・
 ストレスナ前駐英大使は二十二日、来月にも北京での開催可能性が指摘されている北朝
 鮮の核問題をめぐる六カ国協議の前提条件として、北朝鮮がテロ支援国リストからの除
 外を求めていることを記者団に語った。金正日総書記が、メガワティ大統領にあてた親
 書で、核問題を交渉と対話によって解決したいと強調していることも明らかにした。

 また二十三日の朝鮮通信によると、平壌で同日開かれた金正日総書記の朝鮮人民軍最高
 指令官選出十二周年を祝賀する中央報告大会で、金永春軍参謀長が「もし米帝国主義者
 たちが戦争の導火線に火を放つなら、われわれは政治思想的な威力と軍事的潜在力を総
 動員し、無慈悲に敵の牙城を徹底的に打ち砕くだろう」と述べるなど、一見、米国との
 対決姿勢を強調しながらも、「フセイン拘束後」「リビア核放棄後」の米国の出方に注
 目していることをうかがわせている。

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の機関紙・朝鮮新報は二十日、平壌発の記事で、平
 壌市民の最大の関心事はイラク事態であることや北朝鮮の万寿台テレビが「最近の国際
 消息」で毎回イラク問題を詳細に報じていることなどを伝えているのも、明らかに北朝
 鮮がフセイン拘束を意識していることを物語っている。

 こうした状況の中で、関心が集まるのは、六カ国協議の再開の行方だろう。

 「核開発完全放棄」を求める米国と「安全の保証」を盾にする北朝鮮が互いの主張を譲
 らずに平行線をたどったため、今月開催が決まっていた第二回協議が先送りされて以降
 も、米朝間の仲介役を続けている中国は、依然として早期開催に向けた努力をする姿勢
 を崩していない。

 中国の胡錦濤国家主席は二十日、ブッシュ米大統領と電話協議し、次回六カ国協議の早
 期開催に向けて努力する意向を表明したと伝えられている。ただ二十二日の日中外交当
 局者協議の場で、中国の王毅外務次官は、「これまでは各国が会うことに意義があった
 が、次回は共通の認識に立った具体的成果が必要だ」などと発言し、来年一月の開催に
 慎重な見方を示している。

 さらに一部報道によると、中国政府が次回六カ国協議の早期開催のために、北朝鮮に対
 し二億元(約二十六億円)規模の無償援助を決定し、北朝鮮国内にガラス工場を建設す
 ると伝えていたことが明らかになり、今後も北朝鮮が協議再開の見返りとして中国に経
 済援助を求めてくる可能性が高いことから、北朝鮮を六カ国協議の場に呼んでくるため
 の中国の仲介的役割自体に反対する声が中国国内で高まることも予想される展開となっ
 ている。

 いずれにしろ、北朝鮮はイラク、リビアの情勢を受け「次は自分たちの番」と身構えて
 いる。

 韓国紙・中央日報は社説で次のように指摘している。

 「これで米国によって『ならず者国家』または大量破壊兵器拡散国に名指しされた国の
 うち、事実上、北朝鮮だけが残された。米国も次の目標は北朝鮮との点を隠さずにいる。
 (中略)金正日総書記はフセイン氏の虚勢がもたらしたものが、結局、自身の破滅と体
 制の崩壊だった点を認識しなければならない。またプライド高い『緑色革命』の主唱者
 カダフィ大佐が、自身を直接殺害しようとした敵国・米国の要求を全面的に受け入れ、
 平和的解決の道を選ぶ勇気をみせることによって、体制保障と国際社会の支援の扉を開
 いたこと点に、北朝鮮は注目すべきだ」▽掲載許可済です
Kenzo Yamaoka
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件名:新防衛政策/在外米軍の再編に対応せよ  

 ブッシュ米大統領は先月、世界に展開する米軍の規模と編成を抜本的に改変するとの方
 針を打ち出したが、当然のことながら、この改変はわが国にも少なからぬ影響を与えよ
 う。
新たな脅威への戦略転換

 ブッシュ大統領によれば、二十一世紀に入ってテロ攻撃など新たな脅威への対応に迫ら
 れ、旧来型の国家対国家またはそれに準じる形での戦争は過去のものになりつつあると
 の認識が強まった。

 このため、米国と同盟国、友好国が直面する脅威は通常の対応では予測し難いものとな
 り、この新たな脅威に対処するには、世界に配置する米軍の再編成が必要となるという
 ことだ。

 イラク戦争前には、米軍は約百四十万人の常備軍のうちドイツを中心に欧州に約十万人、
 日本、韓国などアジア・太平洋地域に約十万人など海外に計約二十三万人を常駐させて
 いた。これは、冷戦終結後、米国が「世界の警察官」として取ってきた政策に基づいて
 いる。すなわち「二正面作戦」だ。

 この構想は、クリントン前政権下で国防次官補(国家安全保障担当)だったジョセフ・
 ナイ氏(現ハーバード大学ケネディ・スクール学院長)によるもので、一九九五年二月
 に「東アジア戦略報告」(通称ナイ・リポート)として発表された。

 アジア・太平洋には常時兵力十万人体制を維持し、その中核として在日米軍約四万人、
 在韓米軍約三万七千人を置き、これに第五空軍、第七艦隊を加えた編成で、ここ十年間
 はこのナイ・リポートの線に沿って米国のアジア戦略は展開されてきたのである。

 この体制を一気に覆したのが、9・11テロだった。米国はテロの撲滅を究極の目的に、
 その後アフガニスタンに兵を出し、さらにイラク戦争をも敢行した。イラク戦争の場合、
 イラク周辺に二十万人以上の兵力を展開しているため、十万人体制の「二正面作戦」は
 既に破綻(はたん)していたといえる。

 東アジアでも、北朝鮮をめぐる複雑な事情が「二正面作戦」の変更を余儀なくさせた。

 在日米軍については、昨年夏ごろから沖縄の基地縮小に関する話し合いが持たれてはい
 るが、米側の見解は今のところ、「微調整」の域を出ず、沖縄県側の強い返還ないし縮
 小要求にもかかわらず、ほとんど見直しの対象にはなっていない。むしろ、東アジアで
 の米軍再配置の主眼は在韓米軍にあることは確実である。

 日米間の最大の問題は、北朝鮮の核とミサイルの脅威をいかに防止するかの問題である。
 現在、六カ国協議は北の暴発を防止する案を検討中だが、北の妨害もあって遅々として
 進まない。

 このため、日本としては米国が二〇〇四年から実戦配備するミサイル防衛(MD)シス
 テムの導入を決定した。敵ミサイルを大気圏外で迎撃するイージス艦搭載のSM3ミサ
 イルと、大気圏再突入後の着弾前で撃ち落とす地対空誘導弾パトリオット(PAC3)
 を組み合わせた二層防衛だ。これに伴い、武器輸出三原則の見直しも検討されている。

比重占めるミサイル防衛

 こうしたミサイル防衛の比重が大きくなるにつれて、地上軍の上陸を想定した戦車、護
 衛艦、航空機を主体とした装備の大幅な改定が必須となる。従って、来年度予算では戦
 車や護衛艦の縮小なども図られる見込みだ。

 米国の在外米軍の再編成は、このようにわが国にも大きな影響を与えずにはおかない。
 国防の意味が今ほど問われている時はない。(世界日報)▽掲載許可済です
Kenzo Yamaoka
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件名:ミサイル防衛導入/防衛政策の抜本的転換を図れ  

 政府は安全保障会議と閣議でミサイル防衛(MD)システムの導入を決定したが、これ
 は「新たな脅威」からわが国の平和と安全を守るために不可欠な選択といえる。
 だが、MDを効果的に運用するには従来の防衛政策の根本的転換も必要だ。このことも
 視野に入れて、政府はミサイル防衛導入を機に新たな防衛政策の構築に取り掛かるべき
 だろう。

武器輸出三原則の見直し

 ポスト冷戦時代の今日、大国同士が対峙(たいじ)して緊張が高まることよりも、国際
 テロ集団や「ならず者国家」が世界の平和を脅かす可能性の方がはるかに高い。これを
 平成十五年版防衛白書は「新たな脅威」と呼んでいる。

 例えば北朝鮮だ。核開発を公然と推進し、日本全土を射程に入れるノドン・ミサイルを
 百三十基以上も配備するなど、日本の安全を著しく脅かしている。

 これまでの抑止概念では、日米安保条約によって米国が持つ核抑止力が有効に機能し、
 他国は日本にミサイルを撃ち込めないというものだった。だが、この概念はもはや通用
 しないと米国自身が言明し、MDの促進を同盟国に呼び掛けている。だから「抑止が効
 かない冒険主義国に対してはミサイル防衛は一つの選択肢」(石破茂防衛庁長官)にな
 らざるを得ない。

 ミサイル防衛は早期警戒衛星で弾道ミサイルの発射を探知し、これを迎撃ミサイルなど
 で撃ち落とそうというもので、極めて専守防衛的である。だが、これを実効性あるもの
 にするには克服すべき課題が残されている。

 第一は武器輸出三原則の見直しだ。飛来するミサイルを完ぺきに撃破する上で技術力向
 上が不可欠で、このため日米両国はミサイル防衛の共同研究を行っている。MDに日本
 の高度技術を生かし、研究から早急に具体的配備へと移行させる必要があるが、そうし
 た行為が、「部品」を米国に輸出したとして武器輸出三原則に抵触する恐れがある。

 もちろん、武器輸出三原則はMDなどを想定していない。すなわち、六七年に佐藤内閣
 が打ち出した三原則は@共産圏A国連決議による輸出禁止国B紛争当事国や恐れのある
 国――への輸出を禁じたもので、日本の平和と安全を守るための武器輸出は想定外であ
 る。

 しかし、不毛な論議を封じ込めるために三原則を見直し、自国の安全保障のための輸出
 は可としておくべきだろう。

 第二に集団的自衛権行使を違憲とする政府解釈を改めることだ。

 北朝鮮からミサイルが飛来する場合、ミサイル発射を探知し迎撃するまでの時間はわず
 か数分しかない。そのミサイルが米国向けか日本向けかの判断は極めて難しいとされ、
 従って目標に関係なく日本列島に向けてミサイルが発射されれば、即座に迎撃できる態
 勢をつくっておく必要がある。

 それにMDは日本単独で運用されるのではない。米国は世界的規模で展開しようとして
 おり、当然日米同盟としての運用も視野に入れておかねばならない。日米同盟下のMD
 を想定しない限り、効果的な運用はおぼつかない。それゆえ国際法の見解に基づき、集
 団的自衛権行使を合憲とする明確な政府解釈を提示しておくべきだ。 

旧弊廃して新しい革袋に 

 「新しいぶどう酒は新しい革袋に」と言われる。まさに今、「新しい脅威」に「新しい
 防衛態勢」で臨むべき時だろう。政府は来年末をめどに新たな「防衛計画の大綱」を策
 定するとしているが、その際、旧弊を廃して抜本的改革を目指すべきである。
 (世界日報)▽掲載許可済です
Kenzo Yamaoka
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件名:リビアが大量破壊兵器廃棄に同意―米英首脳が発表  

 【ワシントン19日三笘義雄・世界日報】ブッシュ米大統領は十九日、ホワイトハウスで
 緊急会見し、リビアのカダフィ大佐が、同国が開発してきた大量破壊兵器(WMD)の
 情報開示と廃棄に同意したとを発表した。英国のブレア首相も同日、同様の発表を行っ
 た。
 米英両国とリビアは、過去九カ月間にわたって交渉を継続。リビアはすでに、これまで
 進めてきた核・生物化学兵器開発と弾道ミサイル開発に関する資料を米英側に提供して
 いるという。

 ブッシュ大統領は、会見の中で、リビアが「早急かつ無条件に国際機関からの査察団の
 受け入れに同意した」ことを明らかにした上で、同国のWMD完全廃棄が実現すれば、
 「米国がより安全になり、世界がより平和になるだろう」と語った。

 また、9・11米同時テロを引き合いに出しながら、WMDがテロリストの手に渡れば
 「数十万の人々が無慈悲に殺されるだろう」と指摘。「(WMD)拡散反対は、対テロ
 戦争の最優先事項だ」と訴えた。

 その上で、国連決議を無視して武装解除しなかったイラクの旧フセイン政権に対し、米
 国と同盟国が「断固たる行動」をとったことに言及。核兵器開発を進める北朝鮮やイラ
 ンを念頭に、「(イラク戦争は)WMD保持を追求している政権への明白なメッセージ
 だ。WMDは孤立か、さもなければありがたくない結果をもたらすだけだ」と警告した。

 その一方で、WMDや弾道ミサイルの開発を進める国々がそれらを放棄すれば、「米国
 やその他の自由主義国とより良い関係を構築できる道が開かれるだろう」と言明。北朝
 鮮などに対し「リビアを手本」とするように呼び掛けた。

▽米政府が十九日、大量破壊兵器開発計画の放棄に向けたリビアの誓約事項として発表し
たのは以下の通り。
 一、化学・核兵器開発計画の完全放棄

 一、国際原子力機関(IAEA)に核開発に関する全活動を報告

 一、射程三百キロを超え、搭載能力五百キロ以上の弾道ミサイル廃棄

 一、核拡散防止条約(NPT)の完全履行を確認するための国際的査察の受け入れおよ
 び(IAEAによる抜き打ち査察を認める保障措置協定の)追加議定書への署名

 一、化学兵器とその材料すべての廃棄と化学兵器禁止条約への加盟

 一、これらすべてを検証するための査察と監視の即時受け入れ

▲北朝鮮とイランに波及効果も
リビアの大量破壊兵器放棄決断
 ブッシュ米大統領が十九日夕、突然発表したリビアによる大量破壊兵器計画の放棄確約
 は、同じ大量破壊兵器問題を抱える北朝鮮とイランの今後の出方に波及効果をもたらす
 可能性がある。
 リビアは一昨年九月に米国を襲った同時テロの後、これを非難し、一九八八年に起きた
 米パンナム機爆破事件でも、九九年にオランダでの裁判に二人のリビア人容疑者を引き
 渡すなど、米政府が「テロ支援国家」に指定している国とは思えない反応を示してきた。

 それでも、かつてはアラブ急進派の急先ぽうとして知られ、八六年には当時のレーガン
 政権がテロ行為を理由に首都トリポリなどに空爆を行ったほどだ。

 ブッシュ大統領は記者会見の中で、リビアから接触があったのは九カ月前だと述べた。
 ちょうど、イラク戦争が始まった前後である。対テロ戦争の一環として、大量破壊兵器
 を保持する国には武力行使も辞さないとの米英の強い姿勢が、カダフィ大佐の方向転換
 を促したとみられる。

 イランは十八日に国際原子力機関(IAEA)による抜き打ち査察を認める追加議定書
 に調印。核開発問題で、徐々に譲歩する姿勢を見せている。一方、北朝鮮は六カ国協議
 の枠組みに同意しながらも、核計画放棄と米国による「安全の保証」で一括合意するよ
 う要求して、米国と対立姿勢を続けている。

 リビアが約束通りに無条件査察に協力すれば、国際社会との関係は着実に改善に向かう。
 それは、動き始めたイランの核疑惑解明と除去に好影響を与えると期待できる。また、
 孤立化の深まる北朝鮮にとっても、核計画放棄の選択肢を真剣に考慮するきっかけにな
 るだろう。

▽北朝鮮がミサイル開発に協力・リビアで遠心分離機確認−米高官
 米政府高官は十九日、北朝鮮がリビアのミサイル開発に協力していたことを明らかにし
 た。また、英国と国連の大量破壊兵器専門家の調査団が今年十月と十二月にリビアを訪
 れた際、遠心分離機およびその部品を発見したという。
 同高官は「リビアは北朝鮮から長年にわたりミサイル開発の支援を受け、その協力の実
 態が明らかになった」と述べた。リビアはミサイルの射程延長を図っていたが、今後は、
 射程を三百キロ以下に制限することに同意した。

 同高官はまた、リビアが化学兵器保有の計画を持ち、生物兵器獲得にも関心があったこ
 とを認めたと強調した。リビアの核開発は欧米諸国が考えていた以上に進んでいたこと
 が明らかになったという。

 同高官は、リビアの大量破壊兵器開発計画の放棄を確実なものとするための査察・検証
 措置に国際原子力機関(IAEA)だけでなく、米英中仏ロの核保有五カ国が参加する
 可能性があると述べた。

▽仏外相がリビアの大量破壊兵器開発放棄を高く評価
 【パリ20日安倍雅信・世界日報】フランスのドビルパン外相は二十日、北アフリカのリ
 ビアが公式に大量破壊兵器の開発を放棄したことについて、「国際社会にとっての成功」
 と高く評価する発言を行った。同時に米英がこの問題で外交努力を重ねてきたことにも
 敬意を表明した。また、リビアは、この決断で国際社会に復帰する重要な一歩を踏み出
 したとも語った。
 一九八八年に英国上空で起きた米パンナム機爆破事件とともに、フランスは、リビアが
 関与した翌年の西アフリカ上空で起きたUTAフランス航空機爆破事件の被害国でもあ
 る。
▽大量破壊兵器開発計画放棄は「勇気ある措置」―カダフィ大佐
 【カイロ20日鈴木眞吉・世界日報】リビアの最高指導者カダフィ大佐は一九日深夜、同
 国の国営通信を通じて声明を発表し、大量破壊兵器の開発計画を放棄する決定は、「賢
 明で勇気ある措置」だったと述べるとともに、国際的に禁止された兵器の製造や使用計
 画が存在しないことを証明するため、国際的査察を受け入れると語った。
 さらに「リビアは大量破壊兵器の完全廃棄と、テロの根絶に向け、国際的な役割を演じ
 る」ことを表明、特に中東及びアフリカ地域でその役割を果たすと述べた。▽掲載許可
 済
Kenzo Yamaoka


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