1475.生き急ぐ米国



▼    生き急ぐ米国  S子
ブッシュ政権が誕生してからの米国は、まるで何かにとりつかれたように
生き急いでいる感がある。とりわけ9・11事件以降の米国はテロだ、戦
争だと言って世界を紛争へと煽りたてており、実際そのようになっている
。

イラクへの先制攻撃はその良い例で、米国自らが情報の発信、先取りをす
ることにより世界を米国の情報統制下に置こうとしている。圧倒的な軍事
力のみならずその情報力においても米国は主導権を握り、世界に君臨しつ
つある。

イラクへの先制攻撃もさることながら早々と異例の戦争終結宣言も米国自
らが明言し、事態の収束を画策しているのは世界の周知である。ところが
これ以降、イラクでテロが頻発、激化し、今現在イラクは事実上戦争状態
にある。「いつまでも終わらない戦争」に苛立ちはじめた米国は、「早く
終わらせたい戦争」へと戦略を変更した。

▼    くるくると変わる米国の戦略
9・11事件が引き金となって米国の脅威は、イラクの大量破壊兵器の存
在であることが国際社会に明らかにされた。そしてこの大量破壊兵器をも
つフセイン政権も脅威の対象となり、国際社会の十分な理解を得ることな
く米国は英国とともにイラク先制攻撃という単独行動に出た。

米国のお望みどおりフセイン政権は表面上崩壊したが、最大の脅威である
大量破壊兵器は未だに発見されていない。これについて国際社会からの批
判が米国に集中しはじめると、米国の戦略は「イラクの民主化」へと変わ
っていった。

米国は中東ロードマップを企画、国際社会へ向けて米国の正当性を大きく
アピールしはじめた。が、この企画は頓挫してしまう。イラクでは激化す
るテロの長期化で、米軍兵士の士気低下が広まり自殺者も急増している。
米国内からはブッシュ政権への不満の声があがりはじめた。それにともな
いあれだけ単独行動を貫いていた米国が、今度は国連を利用して国際協調
を強く呼びかけはじめた。

イラクの民主化には国際社会の協力がないと米国単独では限界があると公
言してはばからない。つまり国際社会の反対を押しきってイラク単独先制
攻撃に出た米国が、各国にお金も兵士も出して協力しろと言っているので
ある。あいた口がふさがらないとはこのことだ。

しかし、圧倒的な軍事力を背景に最先端の情報を発信してゆく米国に、国
際社会は大きな反発もできずにいる。先の米国大統領選の演説においてブ
ッシュは同盟国の重要性を強調しており、既に英国・豪州・日本は米国の
忠犬と成り果てている。日増しに激化するテロ戦闘は、米軍兵士のみなら
ず同盟国より派遣された兵士の死者を増加させている。それでも米国は「
イラクの民主化」を声を大にして情報を発信し続ける。

▼    テロという名のグローバル戦争
2003年の年始、ブッシュ大統領は21世紀は戦争の世紀だと言って、
これから世界が戦争に突入してゆくことを宣言した。その後の世界がこの
宣言通りに動いているのは自明であるが、過去の戦争と大きく違うのは国
家に依存しないテロという名のグローバル戦争がはじまったということで
ある。

既に経済面でのグローバル化は世界の繁栄の地図を大きく塗りかえ、中国
は今や世界の工場となっている。経済面でのグローバル化は国家意識の希
薄性と国家経済の危弱性をもたらしたが、米国自らが情報発信したテロと
いう名のグローバル戦争は、皮肉にも薄れゆく各国の国家意識を明確にさ
せ、返って米国の存在を希薄化しているように私は思う。

国家に依存しないテロが、いつ、どこで起こるかわからないということは、
国家の防衛、安全をその国自ら行うことがより一層強く求められる。冷戦
時にはソ連という脅威から欧州は米国に守ってもらう必要があった。日本
もまた同様であるが、敗戦後は国家の防衛も安全も日本は全て米国に委ね
ていた。

冷戦終結により世界は大きく秩序を失った。が、なかでも世界の警察国家
を自認していた米国が見失った方向性は大きい。相対する敵の消滅は、米
国の存在意義を根底から大きく揺さぶった。戦争中毒国家米国にとっては
平和が長く続くことは耐えがたいのである。

▼ 繁栄とは縁遠くなる米国の混乱
ひとつの国家にとって繁栄とは、全ての面において調和がとれている状態
にあることを指す。そうすると、今現在の米国は突出した軍事力と情報発
信者として世界を先導、翻弄しているのはわかるが、経済に関してはかな
り危機的状況にある。

イラクに長期駐留する米軍兵士への維持費も米国にとっては重荷になり始
めている。圧倒的な軍事力ばかりが強調されて全体の調和を失っている米
国は、少なからずも国家が繁栄している状態ではない。
 
こうして見てくると、冷戦終結後の米国は圧倒的な軍事力にまかせ、最先
端の情報を発信してゆくことで世界を意のままにコントロールしようとし
た。米国の圧倒的な存在感を世界に誇示したかった。そのためにはよりハ
イテクな武器を使用した戦争を行い、その軍事力を世界に知らしめる必要
があった。

そこで戦争中毒の米国は、いつどこで起きるやもしれないテロというグロ
ーバル戦争を選択した。しかし、この国家概念のないテロが皮肉にも各国
に強力な国家意識を植えつけてしまい、各国の防衛、安全を自らがより強
化することで、米国の存在感を希薄化させている。

今そのことに米国が気づいたのかどうかは知らないが、米国がイラクとい
う泥沼に足をとられ苦戦しているうちに、長期展望を見失い目先のことし
か見えなくなっているのは確かだ。くるくると変わる米国の戦略はそれを
端的に示している。おまけにブッシュ政権も内紛状態にあり、米国は混乱
を極めている。

米国は情報という生きる力を逆手にとり生き急いでいるが、その背景には
いったい何があるのだろうか。少なくとも米国が繁栄する国家から遠ざか
りつつあるのは確かである。
==============================
世界大戦の真の意味
 
下記は拙著「環太平洋連合」の一部です。国際情勢を読み解くには
ランドパワーとシーパワーの視点が絶対に必要と考えます。
→http://www.boon-gate.com/12/
 
(1)英米対立と日本の孤立化
第一次世界大戦の真の意味ということになるが、結果論ではあれ、
3つの王制が破壊され欧州が困窮し日米が利を得た。ここで忘れて
はいけないのはアメリカはイギリスのため、同盟関係にもないのに
、血を流したという事実である。

しかるに日本は駆逐艦派遣といったお付き合い程度であり、その後
イギリスの信頼が若干揺らいだのは指摘できよう。

英米日ともに「シーパワー」であり、日英間では利害調整ができて
いたのだがそれを快く思わない新興海軍国たるアメリカ主導で日英
同盟破棄が決定されたのが1921年のワシントン会議である。
このことの意味は決定的に重大である。

私は本項の表題を「英米対立」とした。「日米」対立ではないので
ある。

イギリスの統治とは自由貿易を通商面からサポートする海運および
海軍力が前提である。そして日本もしかり。かつ、日英間では利害
の対立はなかった。しかるにアメリカは後発海軍国でイギリス同様
海外に市場を求める以上、両者の利害対立は決定的なのである。
これは第二次大戦後、日本、中東を筆頭にイギリスの影響下にあっ
た国や地域がほとんどアメリカ傘下に下っていることを見れば理解
できよう。アメリカの日英ともに仮想敵とする長期戦略により、両
国ともに同盟を失い漂流した。イギリスは英連邦があったが日本に
はそれすらなかった。肝心な事は、英米ともに「金融資本」が主導
する国であり彼らの関心事は市場と資源という点での世界の分割の
みである。さらに、どちらもシーパワー同士であり、上述の法則に
従いシーパワー同士は市場を巡って利害対立するのである。

騙されてはいけない。民主主義や人権など、金融資本の本当の意図
を粉飾し粉塗するための大義名分にすぎないのである。そのような
観点からみると、両者の利害は対立するに決まっているのである。
アメリカは二度の世界大戦でイギリスを助けたではないかと思われ
る向きもあろうが、それは表面的な見方にすぎず結果として日本を筆
頭にイギリスそのものが米の傘下に下った事実は否定できない。要
は、英米ともに金融資本という「商人」が持ちたる国であり、江戸
期以来今日に至るまで、二本差し(武士)=官僚が経済を差配して
いた国とはまったく社会構造が逆で、マインドが大きく異なるとい
うことを理解する必要がある。次項でアメリカがいかにしてシーパ
ワーとしての「商人」すなわち、イギリスと同じような金融資本の
持ちたる国となったかを見ていくこととする。

(2)アメリカの台頭
第一次大戦を通じアメリカが世界のスーパーパワーとして名乗りを
あげてくる。かの国は孤立主義を国策として欧州への不介入を貫く
はずだったのだがこの戦略転換の背後になにがあったのか?私はア
メリカにおける金融資本家の政策への影響を看過できない。

1929年NYで発生した大恐慌の結果、世界がブロック化してい
く中で日独といった後発資本主義国が武力に訴え生存圏を確保しよ
うとする端緒となったしかし、大恐慌そのものの評価について、世
界経済に与えたインパクト以上にアメリカにおける連邦政府の存在
がクローズアップしてきたことは看過し得ない事実である。もとも
と、合衆国とは州に主権があり各州の主権を制限しない範囲で連邦
に外交や安全保障を委ねてきたのである。そして外交的孤立(モン
ロー主義)を国是としていた。しかるにルーズベルト大統領のとっ
たNewDeal政策は連邦主導の経済政策であり、この時期FBI、
FRBを初めとする連邦諸機関が創建され強化されているのである。ま
さしくアメリカにおける連邦主権の管理国家が完成したのがこの大
恐慌期なのである。建国の父たちの理念、州の連合により中央集権
ではないキリスト教原理主義に基づく理想郷を築くことはこの時期
死んだということが言えよう。ルーズベルト大統領のとった政策は
違憲判決が多数出されていることも忘れてはいけない。

この視点は決定的に重要である。その後アメリカは連邦政府に引き
連られモンロー主義という伝統的孤立主義の国策を捨て、世界に市
場を求め、干渉していくのである。戦後の海外への米軍展開、駐留
は合衆国憲法になんの根拠もない。そして、本来根拠がない事項は
州に留保されるとの憲法上の規定(修正第10(州と人民の留保す
る権利)本憲法によって合衆国に委任されず州に対して禁止されな
かった権利は、各州と人民に留保される。)があるが、米軍の海外
駐留展開に対して州が同意を与えた形跡はない。はっきりいえば、
海外市場獲得のため、NYの金融資本家がワシントンを通じて、ア
メリカを操作する契機を与えたのが大恐慌なのである。そして、彼
らの究極の目的は中東と中国である。

(3)第二次世界大戦
大恐慌後のブロック経済化、市場獲得競争は武力進攻という形をと
り、結果日独は敗戦した。今日、第二次大戦というと日独VS連合国
としての史観しかない。しかし私が見るにこの大戦の本筋は世界の
市場獲得における英米のデスマッチというのが真相であり、日独は
単なるバイプレーヤーに過ぎず世界史的観点から見れば本当の意味
は、イギリス金融資本(City)からアメリカ金融資本(NY)
への覇権移行であると考えられる。

今日、日本人の大部分はこの歴史の真相を理解しているのであろう
か?戦後チャーチルが吉田茂に日英同盟を破棄したのは失敗だった
と告げたのはこのことを指しているのである。

(4)太平洋戦争
太平洋戦争の歴史的意義についても、ランドパワーとシーパワーの
観点から読み解く必要がある。上述のように、日本は明治以来、陸
軍はドイツに学び海軍はイギリスに学んだ。両者の戦略はそもそも
大陸志向か海洋志向か大きく異なっており、相互の調整や連絡、あ
えて言えば国家戦略は全くなかった。それでも日露戦争の頃までは
明治維新第一世代、いわゆる元老(伊藤博文や山縣有朋など)が実
質的な陸海軍ひいては日本国家のオーナーとしてイギリスにお伺い
を立てながら国家戦略を策定していた。日英同盟(1902年)締
結にともなう日露戦争はその最たる例である。

しかし大正昭和と時代が下がるにつれ、元老という「オーナー」を
失い官僚国家となっていく過程で陸海軍両者の意識あわせ、利害調
整はできなくなってしまった。いわば官僚制度の弊害が極度に現れ
たのである。このような流れの中で、私は太平洋戦争開戦を決した
のは2.26事件であったと考えている。

2.26事件(1936年、昭和11年2月26日、東京は30年ぶ
りの大雪だった。早朝、午前5時頃1400名の将兵が岡田首相官邸、斎
藤内大臣私邸、渡辺教育総監私邸を襲撃し、夫れ夫れを殺害、高橋
大蔵大臣私邸、鈴木侍従長官邸等も同時に襲って夫れ夫れに負傷を
負わせた。朝日新聞など報道機関も占拠され、午後3時第一師団管下
、戦時警備下令なった旨の軍師令部発表が放送されたのが午後7時、
以上の概要が陸軍省から発表になったのは午後8時15分で一般には翌
日の朝刊でヤット報道されたのであった。3日程後、岡田首相は生
きていて、殺されたのは義弟の松尾大佐だった旨、号外が出た。表
面的には一部の青年将校たちが起こしたクーデターで3日後には無
血で鎮圧され、スピード裁判で首謀者17名が処刑されて収まった。
)の史的意義についてであるが、表面的には陸軍皇道派青年将校の
決起と鎮圧とされている。しかし、より重大な意義は、それが陸軍
上層部が意図していたことではなかったにせよ、客観的には陸軍が
海軍に戦争を仕掛け、昭和天皇が鎮圧を決しなかったなら、陸海は
内戦に陥っていた可能性があったということである。青年将校の決
起直後、陸軍上層はこれを黙認あるいは追認する素振りをみせた。
また、海軍は重鎮を殺されたため、戦艦長門を東京湾に入れ、陸戦
隊を上陸させたのである。

結果として、昭和天皇の決断により暴徒として鎮圧され、内戦の事
態は回避されたが、以後海軍は陸軍によるテロを恐れるようになり
主導権を陸軍に握られていく。

その後の展開は、昭和14年にノモンハンで陸軍は仮想敵のロシア
に大敗を喫し、中国戦線も膠着すると、全ての問題解決を海軍に振
った。即ち三国同盟+日ソ不可侵条約(陸軍主導のランドパワー連
合)から対英米(シーパワー)開戦である。当初海軍はアメリカと
の開戦に反対であった。彼我の工業力の差から勝ち目がないし、石
油をはじめとする戦略資源を英米に依存していたことを熟知してい
たからである。しかし、対英米戦を想定し、予算や人員を取ってい
たため、開戦できませんとは言えず、山本の近衛に対する五相会議
での有名な発言「半年や一年は暴れて見せる」に繋がるのである。
これは裏を返せば「半年や一年しかもたないから開戦するな」とい
うメッセージを官僚的な保身と修辞でいっただけである。陸軍に押
し切られてしまったのである。仮に2.26事件がなく、何らかの
形で海軍主導が確立していたら、英米と連合しソ連と開戦していた
であろう。実際、関特演(関東軍特別演習1941(昭和16)年7月7日
独ソ開戦のとき日本陸軍が行なった動員。通称、関特演。6月に独ソ
が開戦すると日本は対ソ参戦を想定し、7月7日関東軍を動員。兵力
を戦時定員に充実するほか、多数の部隊、弾薬・資材を満州(中国東
北)に輸送した。この結果、関東軍は70万を越す大兵力となった。)
はこの可能性を如実に示す。図らずもこの構図は戦後冷戦という形
で実現する。上述の日露戦争と同じく、太平洋戦争の本質とはその
ようなものなのである。

注意していただきたい。日米対立の原因を作ったのは陸軍が満州事
変からシナ事変へ至る、大陸派遣軍の独走を中央が事後的に追認す
る形でいたずらに戦線を拡大し、膠着状態に陥った、いわば、大陸
政策の破綻である。そのツケを彼らは自ら払う(中国本土からの段
階的撤兵=責任問題発生)ことなく、全て海軍に振ったのである(
対米開戦)これは我々がいやというほど見せ付けられてきた霞ヶ関
の保身と問題先送り、無責任体制と全く同じではないか。薬害エイ
ズ、BSE、不良債権処理と全く同じ官僚の保身と問題先送りが戦争の
原因で300万の戦没者はその犠牲者即ち薬害エイズの犠牲者やBSE
の農家、貸し剥がしにあう中小企業と変わるところはない。上述の
ところと矛盾するようであるが、ランドパワーやシーパワーなどと
いうまでもなく、官僚の保身と問題先送りによって太平洋戦争の真
の意味は語ることができ、さらにはその結果責任を誰も取らされて
いない!ことに気づくべきである。わが国政府は今日もA級戦犯はす
べて戦没者として扱ってるのであり、今日に至るまで、先の大戦を
総括できてない。よって、不良債権処理も全く同じ結果に終わるで
あろうと考える。即ち誰も責任取らず、犠牲は国民へと。

2.26事件以降陸軍というランドパワーに牛耳られてきた日本で
あるが、戦後はアメリカというシーパワーによって武装解除され、
外交的には、再度シーパワーの一員になった。しかし、日本内部に
は陸軍の残党およびで、シベリアから渡来した北方モンゴロイドの
DNAを受け継ぐランドパワー(主に東日本に住む)が根強く、これが
結実しシーパワーに反旗を翻したのが田中角栄以降の田中派、中川
一郎、金丸信などであり、鈴木宗男につらなる系譜である。田中に
よる日中国交回復はその白眉であり、彼がロッキード事件により潰
された事は、シーパワーたるアメリカが彼の政策(日中国交回復、
資源外交)をどう見ていたかを物語る。

反対にシーパワーは吉田茂、岸信介、佐藤栄作から中曽根康弘に連
なる流れである。現在の清和会に代表されるいわゆる台湾派である
。田中角栄以来のランドパワーの総本山である橋本派の影響力が落
ち、こうみてくるとシーパワーにとって、「好ましからざる」ラン
ドパワーが駆逐されていることが理解できよう。2000年10月
に発表された、「米国と日本:成熟したパートナーシップに向けて
」(‘The United States and Japan: Advancing toward a Mature 
Partnership’)と題する報告は、ブッシュ政権の国務副長官に就任
したアーミテージが深く関わったもの)。いわゆるアーミテージレ
ポートにおいて、高速道路や橋といった彼らの利権に基づく社会イ
ンフラ整備の中止を求めていることは興味深い。彼らは現在ではマ
スコミによって「抵抗勢力」という呼称が与えられているが、その
本質はランドパワーである。ランドパワーにも使い道はある。韓国
や台湾には帝国陸軍出身者がかなりの層でおり、かれらとのチャネ
リングをやらせればいいのだ。アメリカには気づかれない程度で。
余談ではあるが北朝鮮は大日本帝国陸軍の鬼っ子であるという気が
する。

(1)冷戦
戦後、アメリカ傘下のシーパワー国家として復興への道を歩む日本
であるが、ここで冷戦と中国の共産化という神風が吹いた。また、
戦前のブロック経済が戦争を惹起したことへの反省から自由貿易体
制が模索され、伝統的に保護貿易を取ってきたアメリカでさえ市場
を開放し、あまつさえ360円という復興レートでもって日本の経
済復興を支援してくれた。かつ、中国市場を争って対日戦に勝利し
たアメリカであるが、肝心の中国市場を失った結果セカンドベスト
としての日本市場を育成する方針を打ち出した。   

さらに、ソ連の台頭、海洋への進出を封じ込めるための戦略拠点、
いわゆるリムランドの位置に日本が存在したことも見逃せない。ア
メリカとしてはソ連の海洋への進出を封じ込めるために日本を支え
る以外の選択肢はなかったのである。戦後の復興、繁栄とはこれら
所与の条件の産物であり、日本人はそのことを決して忘れるべきで
はない。決して「勤勉」だからという理由のみでここまで来ること
ができたのではないのである。さらに大事な点を再度強調したい。
冷戦とは資本主義VS共産主義ではない。シーパワーたるアメリカが
ユーラシア大陸外延部(スパイクスマンの用語で言えばリムランド
)の日本、イギリスを基地にして大ランドパワーたるソ連の大西洋
、太平洋といった海洋への進出を封じ込めたのである。このことは
冷戦期のNATO(実質米英)の戦略によって、証明される。冷戦とは
主に欧州を舞台に戦われた。NATOの戦略はこうだ。

もし、東欧から、ソ連およびワルシャワ条約機構の機甲師団が西独
に進出してきたら、西独奥地に戦車部隊を引き込んで戦線が延びき
った時点で反撃する。万一通常戦力による反撃が不首尾に終わった
場合、西独、フランスを見捨てて限定核攻撃(中短距離核)でワル
シャワ条約軍、及び東欧を攻撃し、反撃にソ連はSS20(中距離核
)を仏独に打ち込むということである。どちらに転んでも、アメリ
カは仏独といった資本主義国を守ろうとしていた訳ではないのであ
る。仏独もそれは十分承知しており、フランスのNATO脱退時のドゴ
ールの有名な言葉「アメリカ人はニューヨークを犠牲にしてもパリ
を守るわけはない」に繋がり、西独はGSG9という特殊部隊を結成し
、もし、西独駐留米陸軍が西独政府の許可なく、パーシング(短距
離核)を発射しようとしたら、突入して阻止する使命を帯びていた
のでる。この、独仏を犠牲にして、イギリスを守るというのが、冷
戦期、アメリカの戦略であり、リムランドの重要性を物語る。パー
シングがイギリスではなく、西独に配備された真の理由をお分かり
いただけたであろうか。 冷戦といっても単純ではないのである。
このことは、近い将来、極東有事の際、リムランドたる日本を防衛
線にして、韓国を見捨てる可能性を示す。在韓米軍撤退はこの文脈
で考えるべきである。

冷戦期に登場した核兵器と戦略ミサイルの登場は地政学を無用の長
物にしたという意見がある。しかし、相互確証破壊(MAD(Mutual 
Assured Destruction)のことであり、冷戦期に米ソで採られた核戦
略である。米ソともに相手の第一撃に生き残り、相手を確実に破壊
しうる第二撃能力を持つことによって、相互に核兵器を使用できな
い状態とした。そのために、防衛兵器を制限する必要も認められ、
ABM条約が締結された。第二撃能力は主としてSLBMによって維持され
るSLBMは潜水艦発射型の弾道ミサイルであり、射程に特に定義はな
い。潜水艦は隠密性を有しているため、これに搭載した核ミサイル
は核戦争が起きて、先にICBM発射基地を破壊されても、報復攻撃を
実施できる「第2撃能力」としての効果を発揮する。現在、アメリ
カ、ロシア、イギリス、フランス、中国が保有しており、このうち
、イギリスとフランスは核抑止力をSLBMのみとする戦略を採ってい
る。)が達成され、核が実質的に「使えない」兵器となり、大国間
の戦争を抑止したことが、結果として地政学的観点からの「封じ込
め」政策を生んだといえる。核ミサイルの登場はむしろ、地政学の
必要性を高めたのである。

(2)プラザ合意
1980年代まで、上記の冷戦構造の中、日本に対する保護育成方
針をとってきたアメリカではあるが、ベトナム戦争以後、財政的に
もたなくなり、大幅な戦略の変更に踏み切った。

これが製造業をあきらめ、金融業により利益を上げるということで
あり、さらに国債を発行しその大部分を日系機関投資家が買うとい
う構図つまり、日本の資本でアメリカを運営するということである。
日本経済がおかしくなったのは1985年9月のプラザ合意以降で
ある。プラザ合意とは、1985年9月にニ ューヨークのプラザホテル
で開催されたG5(先進5カ国蔵相中央銀行総裁会議)における「ドル
高是正のための協調介入」に関する合意である。プラザ合意後、円
相場は「1ドル=260円台」から「1ドル=120円台」に急騰した。要
するに、当時の「円安ドル高」を「円高ドル安」に誘導しようとい
うのがプラザ合意であった。 

 昭和59年末に、円、ドルレートは1ドル=251円のドル高円
安であった。これは第二次オイルショックによって国際資金をアメ
リカに集中させた結果である。1985年(昭和60年)に五カ国
蔵相・中央銀行総裁会議(G5)がニューヨークのプラザホテルで開
かれ、

(@)経済政策の協調をいっそう進める。
(A)為替レートの適正化のため、より密接に協力する。 
(B)保護主義に反対する。

で意見の一致をみた。というよりも押し付けられたというのが真相
であろう。この、「為替レートの適正化のため、より密接に協力す
る」、が問題であり、特にドル高を是正するため、アメリカを含め
て各国は協調してドルを売り、円とマルクを買うという「協調介入
」をするという趣旨の共同声明を発表した。日銀は大量のドルを売
って円を買うという操作を行って、前日比11円90銭高の1ドル
=230円10銭となり円は急騰した。昭和61年1月には1ドル
=200円となったがこれまでは各国が合意したドル高修正である。
その後、アメリカ政府高官のドル安容認発言の「口先介入」でドル
安は進み昭和62年2月には1ドル=150円台となり、「誘導さ
れたドル安」が「勝手に下がるドル」へと変質した。そして、パリ
G7はつぎの骨子の共同声明(ルーブル合意)を行った。

(@)各国は現行水準程度で為替相場を安定させるため、緊密に協
   力する。
(A)これ以上の急激な為替相場の変動は、各国の経済成長と構造
   調整を阻害する。
(B)現在の為替相場は各国経済の基礎的条件とおおむね合致した
   範囲内ある。

政策協調の一環として、日本は内需拡大対外黒字削減のための財政
金融政策を続け、アメリカはGNPに対する財政赤字比率を圧縮し、西
ドイツは減税規模を拡大するこのルーブル合意によって、円・ドル
レートはしばらく安定し、1ドル=140円台が厚い壁とみられて
いた。しかし1987年のブラックマンデー後、ドロールEC委員長
の「アメリカは1ドル=1.60マルクを切るドル安を検討してい
る」とアメリカのニスカネン前経済諮問委員長代理の「ルーブル為
替安定合意の明確な中断が望ましい」の発言から、ルーブル合意に
よる国際協調体制の足並みの乱れを読み取り、ドルは売られ、
1ドル=140円の壁はいとも簡単に破られ、昭和63年には東京
市場は1ドル=121円となり、1ドル=100円時代の到来が、
にわかに現実化した. 

プラザ合意によって、ドルの切り下げによりアメリカは自国の借金
の負担を軽減することに成功し、日本は大幅な円高を選択し製造業
における競争力を放棄することを余儀なくされた。そのことにより
日本は国際的に生産コストがドルベースで倍増することとなり企業
は国際競争力を維持するため生産拠点を海外に移すしかない状態と
なり産業の空洞化が進んだ。(日本の製造業は優秀だったため1ドル
240円ではアメリカは太刀打ちできなかった。1ドル120円になり24万
円の商品が1000ドルから2000ドルになりようやく太刀打ちできるよ
うになった。この結果、日本製品は100%の関税をかけられたのと同
様の事態になった。)また一方で日本が数百兆円の公共投資を行い
国として大幅な債務を負うことを約束した。(これは後に1990年の
公共投資基本計画でより一層具現化する。) 

このプラザ合意以降、日本の経済政策は完全にアメリカに対し従属
を続けている。そして、不自然な円高を続けることによって内外価
格差は拡大したままとなり果てしないデフレ不況に陥る遠因となっ
た。デフレの理由はもちろん為替だけではない。しかし、このプラ
ザ合意により為替を実質的に「放棄」した(させられた)ことが響
いていることは間違いない。プラザ合意に続いて協調利下げがあっ
たことも見逃せない。実際はアメリカ内でインフレによりバブルを
起こそうとしたFRBが金利差があると資金が日本へ流出することを恐
れ、利下げを日本に強要したものと推定される。これが現在にいた
る日本経済の根幹的破壊たるバブルを生み、不良債権を発生させた
のである。当時のアメリカはランドパワーソ連との冷戦の真っ最中
であり、アメリカに安全保障を依存している日本としてはアメリカ
の為替、金利圧力受け入れは安全保障コストであるという認識であ
ったのであろうか。当事者はその意味を後世に明確に伝えるべきで
ある。

(4)冷戦の終了
 ソ連はアメリカとの経済力の差から軍拡に耐え切れず内部崩壊し
た。米ソ冷戦の終結により、世界は平和に向かうと思われた。しか
し、実際は地域紛争、民族紛争が頻発した。これは冷戦時代は米ソ
により押さえ込まれていた、別に言えば管理されていたランドパワ
ー相互の歴史的対立が再燃しただけである。

 より重要な視点は、ソ連という大ランドパワーを失い、結果とし
てアメリカ一国でユーラシア大陸のランドパワーを直接間接に支配
し秩序を維持する必要がでてきたことである。具体的に言うとイス
ラム諸国と中国、北朝鮮である。例としてサウジアラビア、パキス
タン、アフガニスタン、CIS諸国に対するアメリカのアプローチが挙
げられる。

海外における米軍の展開も、冷戦の終結とともに再編成が迫られる
。在日米軍はアメリカの最大の関心が寄せられる中東への戦力投射
能力を担保するものであり、削減はあっても、撤退はありえない。
大国間の大規模戦争はなくなったが、テロ、地域紛争といった低強
度戦争への対応が急務となった。低強度紛争(Low Intensity 
Conflict ; LIC)は以下のように定義される。

 低強度紛争とは、通常戦争よりも下であるが、国家間の日常的で
平和的な競争関係よりも上の、対立する国家または集団間における
政治的・軍事的紛争である。それにおいてはしばしば、対立する主
義及びイデオロギー間の争いが長期化する。低強度紛争の範囲は破
壊活動から軍隊の使用にまでわたる。それは政治、経済、情報、そ
して軍事諸機関を通じ、様々な手段を複合的に用いて行使される。
低強度紛争は一般的に第三世界地域に局地化されるが、地域的およ
び国際的安全保障に密接な関係を有している。

 また、低強度紛争戦略の目標は以下のように記述されている。
低強度紛争戦略の成功は、アメリカの利益及び法と一致し、なおか
つそれによって自由、民主主義制度、そして自由市場経済の発展と
いうアメリカの国際的目標が促進される。

すなわち、低強度紛争戦略とは、アメリカを中心とする、シーパワ
ー連合諸国を維持する戦略であるということである。また、「低強
度」とは世界一の軍事力を有するアメリカにとっての「低強度」で
あるので、アメリカに対する反抗を「低強度」すなわち未然に処理
してしまおうという戦略だと言うことが出来る。先制攻撃オプショ
ンの採用もこの文脈で理解するべきである。

冷戦後の、より重要な視点は欧州の枠組みの変容である。ソ連の脅
威が無くなった今日、独仏といったランドパワーがアメリカに対ソ
安全保障のため服従する必要も無くなった。これが、EU統合、ユー
ロ導入、国連安保理での反米行動に繋がる。フランスは冷戦期を通
じて社会主義に寛容な政策をとり、ドイツは東西ドイツ統合により
2000万人の社会主義者を国内に抱えた。より根本的には両国と
もランドパワーの閉鎖的経済システムを採用していたのであり、こ
の点でも英米シーパワーとは大きく異なる。結果として組合の力が
非常に強くなり、反米傾向を後押しすることになる。イスラム系住
民の増大もこのことに拍車をかける。両国のイラク戦反対の背景に
はこれらの状況すなわち、独仏のランドパワー化があるのである。

この一連の動きは、地政学的にみた場合、シーパワーたるアメリカ
が防衛線をリムランドたるイギリスに置き、独仏は防衛圏外(いざ
という時は見捨てる)とする、二度の世界大戦から、冷戦期を貫く
戦略をとっていたことに対する独仏からの回答なのである。アメリ
カは第二次大戦において、フランスを解放したではないかという向
きもあろうが、44年6月という時期は、既に東部戦線で決着が着
いていたのであり、ノルマンディー上陸はナチスを打倒するのに必
要であったとはいえない。遅すぎたのである。この対米不信感は戦
後のスランス人の深層心理に深く刻まれた。           

裏を返せば、イギリスは二度の世界大戦、さらに冷戦期を通じて、
リムランドとしてアメリカの欧州関与の最前線となることを受け入
れ、代償としてアメリカに安全保障を依存したということである。
これが、アメリカの軍事戦略にイギリスが全面的に付き合う、付き
合わざるを得ない本当の理由である。単なる共通の利権があるとか
同じアングロサクソンだからといった次元の低い話では全くないの
である。そして、我々はこのイギリスの立場は日本のそれと同じで
あることを自覚せねばならない。2000年10月に発表された、
上述のアーミテージレポートは日本に対して、明確にイギリスと同
じような軍事的コミットメントを求めている。はっきり言えば、小
泉政権とはこのアーミテージレポートを実現することを目的とした
政権である。

アジアを見ると、ケ小平が進めた改革開放により市場経済を取り入
れた中国。

これらは冷戦後の世界秩序を大きく変えたが、日本経済にとって意
味があるのは中国の開放である。これにより労働市場として低賃金
な中国が世界の工場の座を日本から奪うことになった。
==============================
アメリカの衰退に備える
 
下記は拙著「環太平洋連合」の一部です。国際情勢を読み解くには
ランドパワーとシーパワーの視点が絶対に必要と考えます。
→http://www.boon-gate.com/12/

徳川家康がウイリアム・アダムス、ヤン・ヨーステンを外交顧問に
迎えて以来、2.26から敗戦にいたる期間を除き、日本は外交的
にシーパワー、内政はランドパワーであったことをご理解いただけ
たと思う。 近代において、明治維新を主導した薩長がシーパワー
であったために欧米の技術を導入し、発展できたのである。日本を
除くアジア諸国が近代化に失敗したのはとどのつまり、ランドパワ
ーであったからである。ランドパワーは上述のように、閉鎖的な精
神社会構造により、外部の技術や知識の導入には保守的で否定的で
ある。ここで、次の命題を提起したい。 

「国家や文明をアジアだ欧州だ、東洋だ西洋だと地理的な位置だけ
で分類するのは意味をなさない。」

余談だが、私は「アジア」と聞くと失笑を禁じえない。「アジア」
とは何か。古代ギリシャ人がエーゲ海を挟んだ対岸を「アジア」と
呼んだのである。元の意味は古代トルコの沿岸部である。近代以降
、ユーラシア大陸からヨーロッパを除いた地域を一まとめにした地
域を指すことになる。この呼称は、ヨーロッパ人の「アジア」に対
する無知を物語る。さらに許しがたいのは、近代以降、日本を含む
「アジア」諸国が何の批判もせず、この枠組みを受け入れてきたこ
とである。このパラダイムがいかに「アジア」および日本の近代を
阻害し、機会損失を生んできたことか。

「アジアは一つ」、「大陸の王道楽土」、「シナにゃ四億の民が待
つ」、「38度線の北は花園」等の軽薄な論調にいくらの日本人が
騙され、大陸に渡り、結果として大陸諸国民共々苦しんだか。全て
の前提はこの明治以降の間違ったパラダイムなのであり、真のパラ
ダイム、区分はこのシーパワーかランドパワーかという区分けなの
である。そして、何よりも重要なことは、この両者はお互いの違い
を認識し、相互不干渉を貫くべきで、両者の関与の度合いは必要最
小限に留めるべきである。両者が必要以上に関わりを持つと、不幸
な結果しかもたらさない。これは歴史を貫く黄金律である。もっと
言えば、今までの世界史は人類にこの教訓を与えるために存在した
と考える。

この観点から、日本は朝鮮半島や華北政権とは相容れないことがわ
かる。マインドが違うのである。このような視点から、鎖国につい
て考えてみたい。江戸幕府が鎖国(選択的開国)を選んだ理由はい
くつかあるが、一つには、明という華南シーパワー政権が滅び、清
というランドパワー政権が大陸に樹立したためであろうと考える。
華北政権と華南政権マインドの違いを何よりも理解していたのであ
る。さらに進んで、鎌倉幕府が大ランドパワーたる、元(モンゴル
)と外交関係を持たなかった点も評価したい。元の本質が狼(大ラ
ンドパワー)であり、外交関係を持つということがとりもなおさず
、支配従属関係に陥ることを幕府執権平時宗(北条時宗)をはじめ
、当時の鎌倉幕府御家人は正確に理解していたため、国書受け入れ
を拒否し、文永、弘安の二度にわたり、撃退した。よく言われる台
風(神風)のおかげのみで撃退できたのではない。鎌倉武士団が良
く戦い、蒙古、高麗兵の上陸を許さなかったことが大きいのである。 

では結ぶべき相手はどこか。アメリカは別として、台湾と上海(華
南)である。日本の古代から現代にいたる歴代政権は華南の政権と
良好な関係を構築していたことを、歴史に造詣が深い読者諸兄なら
ご理解いただけるであろう。

読者諸兄には、自分がランドパワーかシーパワーかを自問していた
だきたい。そして日本のとるべき道はシーパワー優位の構造を取り
、実権を握り、ランドパワーを下部構造に組み込み包摂していく以
外にないことをご理解いただきたい。追い詰められたランドパワー
はシーパワーに対するテロを起こすであろう。しかしそれに負ける
とまたかっての道を辿ることになってしまう。冷戦期、ソ連との核
に関する大幅な軍縮に応じたアメリカであるが、海軍力に関しては
決して削減交渉をしなかったことはシーパワーの重要性を物語る。
そしてそのことが結局は世界経済の発展および冷戦の勝利につなが
るのである。また、ユーラシア大陸内部は今後の環境破壊によって
人類の生存に相応しくない地域が大部分となることが予想され、
その外縁部のみが生存できるのである。すなわち環境的にもシーパ
ワーが有利である。この観点から、現在小泉政権が押し進めている
日朝交渉やロシアと組んでのシベリア開発、さらに中国西部開発へ
の資金提供に私は反対である。シーパワーは大陸奥地に嘴をつっこ
むべきではないことは歴史が証明している。いいように鴨にされる
のは目にみえている。

(1)国内経済
デフレがいわれ、株価が急落し、金融をはじめいくつかの産業が破
綻の危機に瀕している。デフレ回復のためにインフレターゲット論
まで飛び出している。とんでもない論点のすり替えである。競争の
結果商品の価格が下がることが何が悪いのか。 中国をはじめ、人
件費の安い地域へ生産拠点が移転しており、この流れが価格下げ圧
力になるのは変えられない流れである。要は、金融機関が、バブル
の最中に土地神話を信じて、不動産に過剰融資をし、それが不良債
権化したからなんとかしてくれという状況を「デフレ」と呼んで自
己正当化しているだけである。借金が返せない政府と、不良債権を
目減りさせたい金融機関の思惑が一致してインフレを起こそうと考
えているだけだ。このままでは、金利生活者その他、弱者は犠牲に
なる。解決策を次章に提示したい。

(2)世界経済
近未来を眺望するに、インターネット、安価な移動、輸送手段の出
現により、国家という枠組みを超えて、今以上の速度で人、物、金
、情報の流通、移動は行われるだろう。多国籍企業やNPO、NGOのよ
うに国境を超越するグローバル組織がさらに台頭してくる。

相互依存関係の進行から国家の枠組み、役割についても見直しが必
要でる。

しかし、国民の生存に対して最後の責任を持つのは、現時点では国
家しかない。そこで、近未来ではこの両者の調和点すなわち、国家
間で経済提携することによって自立した経済圏を形成し、圏内の国
家同志の産業と国民の利益を保護しようとするしかない。この顕著
な例がヨーロッパ連合である。

アメリカについては、メキシコを含めた北米でNAFTを形成し、経済
圏としている。ここで注意しなければならない点として、90年代か
ら現在にいたるまで、世界を席捲した「グローバリズム」は世界を
同質的なものと見做し、一つの価値基準で統合できると考えた点に
根本的問題がある。アメリカ人の世界史に対する無知が根底にある
と思えるのだが、国連をはじめとする国際機関が実効性を有しない
点についても同じことが言え、世界は均一ではなく、ランドパワー
、シーパワーの観点から国家、民族を分類し、その域内での価値基
準はそれぞれ異なるのである。そして両者の関与は「必要最小限」
に留め、棲み分けなければ不幸な結果を招く、というのが聖書、古
史古伝の時代から現在にいたるまでの人類史の鉄則なのだ。グロー
バリズムのご本尊のシーパワーアメリカがこの鉄則を破り、サウジ
アラビアへの軍事駐留以来、ランドパワーたるイスラム諸国からの
人の流入、攻撃に右往左往しているのはこのことを如実に物語る。

アメリカ合衆国衰退に備える 
アメリカ市民の貯蓄率がマイナスを示し、NYダウも八千ドル割れが
現実化している。これは何を示しているのだろうか。これはアメリ
カからの資本逃避の兆し、つまり経済、社会運営の条件が失われ、
ビジネスを行う上での基盤が失われつつあることを表してはいない
か。過去の歴史をみると、戦争勃発や大統領暗殺などの外因性によ
るマーケットの衝撃は比較的短期間で終結している。しかし、今回
は911のショックでパニックになって、その後、弱気市場が終焉し
たというわけではなさそうである。現に、2002年7月23日に
はダウ工業株30種平均が7702ドルまで下がり、テロ直後9月21日
の底値を6.5%も下回った。その裏には、米国の構造的諸問題、すな
わち、恒常的な貿易赤字、異常に割高な株価の維持、貯蓄率の低さ
、そして軍事支出増加による財政赤字が横たわっている。これは短
期間で調整し、解決できる問題ではない。

具体的には、911事件以降のテロの脅威、治安悪化、治安対策に
伴う保険、物流といったコスト増大、株価低迷による消費冷え込み
、さらには移民の増大による社会の不安定化、人種、宗教、階級闘
争の激化、疫病の流布、国際的孤立、戦争の恒常化、訴訟費用増大
、経済の保護主義化といった兆候はかなり見られるのである。
EnronやWorldComの不正会計問題は米国の資本主義に対する信頼を決
定的に失墜させ、株式市場が虚飾と不正に満ちていることを表して
いる。有事に際してもドルが買われずに金相場が高騰していること
もこの見方を裏付けている。穿った見方をすれば米国の金融市場主
導の経済は全てこの虚飾の上に成り立っており、実態経済として、
軍事航空通信産業など一部を除いて製造業については当の昔に崩壊
しているといえないか。巨額の貿易赤字は雄弁にこのことを物語る。
もっと言えば不正な手段でしか資本市場から利益を得られないとい
うことは取りも直さず、資本市場はすでに利益を上げることができ
ない、つまり、吸い尽くされたのではなかろうか。さらに米国で最
大の問題は社会インフラとしての「人」にある。単純作業従事者は
英語もろくにできない移民パートタイマーに頼り、工場の生産ライ
ンもしかり。これで社会の運営が可能か疑問なしとしない。しかも
白人は近い将来マイノリティーになることが確実である。今でさえ
都市部では移民の増大を嫌って白人中産階級の離脱、移民増加傾向
がはなはだしい。一部富裕層は塀で囲った要塞町に住んでいる。全
米で白人がマイノリティーになった暁には彼らの米国からの脱出が
現実化するであろう。米議会予算局(CBO)は6月9日、最新の
財政予想の中で、03会計年度(02年10月〜03年9月)の財
政赤字が4000億ドルを超す見通しであることを明らかにした。
米国のこれまでの最大の財政赤字は92年度の2900億ドルだが
、これを一気に1000億ドル以上塗り替えることになる。さらに
、最近の「双子の赤字」(家計も入れて三つ子の赤字という人もい
る。)について、急速に膨れ上がっている。2002年の貿易赤字
は前年比21.5%増の4352億ドル(約51兆円)で過去最高
であった。アメリカの負債が増え続けるのは国民の貯蓄がないため
であり、借金は全て外国の資金で賄われている。しかし、このよう
な借金体質でいながら、国民の投資は増えている。貯蓄がないため
に外国から借金して投資を行っている。更に、有事でありながら、
ドルは円に対してもユーロに対しても安い。原油の決済にもユーロ
が使われ出した。サウジがアメリカを見限ったということであろう
か。このことはドルの信用を大きく毀損させる。やはり、経済面で
のドル機軸体制の「終わりの始まり」であろう。現在の有事であり
ながらの円高ドル安の進行の裏には、米景気の立ち直りの遅れや
Enron破たんなどを嫌った欧州や中東の資本が米国から流出し始めた
事情がある。一般に過大評価された通貨は過小評価された通貨と比
べると、一国の経済発展のスピードに鈍くなる傾向がある。米国の
貿易赤字はドル安を招く要因となっているが、それ以上に景気回復
を急ぐ米国がドル高を肯定し続ける理由はあまりない。加えて、割
高な米国株式や資産に対してグローバル投資家(米国外の投資家、
主に欧州中東投資家)が売り圧力を高めている。2000年の米連邦準
備理事会(FRB)統計によれば、米国の証券の65%は米国外の投
資家が保有している。この保有率は1989年の49%から大幅に上昇して
いる。米国におけるグローバル投資家の動きは為替のみならず、マ
ーケット全体に大きな影響を及ぼすようになっている。以下は
2002年8月の英紙フィナンシャル・タイムズ記事である。「サ
ウジアラビアの対米個人投資資金のうち1000億―2000億ド
ル(約12兆―24兆円)が欧州に流出していると報じた。米同時
テロでは実行犯19人のうち15人がサウジ国籍だったため米国と
サウジの関係が緊張している。サウジ資金の流出は、サウジ側が米
国内での資産運用の安全性に懸念を抱き始めたためという。」

同紙によると、ある識者は「米国内のサウジ資産凍結を求める米国
のタカ派の主張が原因」と指摘。さらに、 同時テロ犠牲者遺族がサ
ウジ王子などを相手取り、テロ組織に資金援助していたとして15
日に起こした約1兆ドルの損害賠償訴訟で、資金流出が加速する可
能性も指摘している。

金融アナリストによると、王室を含むサウジの対米個人投資資金は
株式、不動産など推計4000億―6000 億ドルである。これら
の指標は米国の実体経済は大部分が外国人の資本によって賄われて
いることを示している。このために、貿易赤字を増大させつつ、ド
ル高政策を取らざるを得ないのだ。逆に言えば、産業競争力の観点
からは弱いドルが適正であるが、そうするとドル建て資産の流出か
ら、海外資本引き上げに繋がるのである。この矛盾の連鎖を断たな
い限り、アメリカ経済に未来はない。

米国の抱える地政学的リスクを考えてみたい。対イラク戦を主導し
ているブッシュ政権を支えるNeo Conservative(ラムズフェルド国
防長官、チェイニー副大統領等、米国の理想、国益追求のため軍事
力行使を厭わない高官達)とは何か。彼らの根底にはWASPの宗教観
たる、キリスト教原理主義(ピューリタン)に基づいた、単純な善
悪二元論がある。孫子を例にとるまでもなく、戦争が外交を含む、
国家戦略の最大の失敗であるという考えをとらず、軍事力行使に積
極的である。ブッシュ政権はテキサスの石油資本をバックにする、
アングロサクソン政権なのだ。この政権の特色は、政権内にパウエ
ル国務長官やライス補佐官といった黒人は入れても、ユダヤ人を入
れていないことだ。上述のように、ユダヤ人はかってはイギリス、
そして戦後のアメリカの外交政策に影響を与え、金融資本主導のシ
ーパワーの根幹をなした。そして19世紀以来、中国を巨大マーケ
ットと捉え、提携しようと試みる。
 彼らにとって外交というのは、言ってみれば国家と国家のビジネ
スである。自分に有利な条件で契約を結びつつ、相手にもそれなり
の実利を与えて、今後の付き合いに備えるという発想をする。つま
りビジネスでの交渉術に長けた者は、外交交渉術にも優れているこ
とになる。決定的な違いは、それぞれの交渉に関わる情報の中身が
違うということだけである。
 ユダヤ人が生んだ最高の外交官といえば、キッシンジャーであろ
う。もともと政治学者であった彼は、自らを巧みに売り込んで大統
領補佐官、国務長官を務め、その期間において米中和平とベトナム
戦争終結を実現した。度々秘密外交と言われた彼の手腕は、情報を
一手に集約しつつ、全ての分析を担当し、エッセンスだけを大統領
に提供して最小努力で最大効果を生み出す外交スタイルに特徴があ
った。彼は数々の成果を上げながらも、全ての花は大統領に持たせ
、なおかつ情報を独占して自己保身も図るなど、優れた人物であっ
た。

このキッシンジャーを生んだ米国外交は、以後、共和党のWASP主導
政権における非キッシンジャー時代においては、常にカウボーイ的
外交を展開している。現在のブッシュ政権がその最たるものである
ことは言うまでもない。始めから武力行使を辞さない姿勢を強調し
、ハードなアプローチによって交渉相手を屈服させ、それでも従わ
なければ武力行使をするというものである。こうした単純な外交が
成立している背景には、歴史と伝統のあるヨーロッパ諸国が二度の
世界大戦により分割され、疲弊してしまったことに起因しており、
米国には不幸なことに対等以上の外交交渉を行う相手が存在しなか
ったことにある。冷戦後、この傾向は益々強くなった。

この傾向を端的に示すのが、ブッシュ大統領がレーガン元大統領が
ソ連を指して”Evil Empire”と呼んだことに倣い、イラク、イラン
、北朝鮮を”Axis of Evil”と呼んだ事だ。日本のマスコミはこれ
を「悪の枢軸」と訳したが、全くの誤訳である。キリスト教原理主
義者にとって、Evil とはDevilであり、神の敵、悪魔を指す。善悪
二元論に立ち、どんな手段をもってしても、殲滅しなければ神の意
思にそむくということなのだ。つまり、「交渉の余地の全くない、
どんな手段を用いても殲滅すべき神の敵たる悪魔連合」というのが
正しい訳である。彼らの本音は上述の二度の世界大戦からニューヨ
ークの金融資本主導の米国をキリスト教原理主義、州権主義、孤立
主義に基づく建国の理念に戻すことだ。ブッシュ政権が国連やWall 
Streetと疎遠なのはこの文脈で考えるべきである。世界大戦以来シ
ーパワーであったアメリカをランドパワーに引き戻そうとしている
のである。

このような保守政権が成立している時に起きた、建国以来三度目の
本土に対する攻撃(一八一二年の英米戦争、太平洋戦争時の風船爆
弾)はアメリカの諸矛盾に火をつけ、国家政策を大転換させた。す
なわち、対テロの脅威を事前に排除するための海外への米軍展開よ
り本土防衛の優先、そして米国にとって危険と認定した国家への先
制攻撃オプションの採用である(ブッシュ政権は2002年9月20
日、大量破壊兵器を持つ敵への先制攻撃を正当化し、他国の追随を
許さない軍事力の圧倒的な優位を堅持することを打ち出した政策文
書「米国の国家安全保障戦略」を発表した)。この実現のため、
米国防省は総額3799億ドル(45兆6千億円)の2004年
国防予算を発表した。さらに05年から09年までの5年間に、毎
年年間200億ドル増額する中期計画も提示した。米国の国防費は
2001年の実績で見ると、世界最高額ばかりか、2位〜11位ま
での合計した国防費に等しい。またミサイル防衛では地上発射の迎
撃ミサイル10基を配備するとしているが、これは北朝鮮の弾道ミ
サイルに対抗する狙いがあると明記した。今回の国防予算が掲げて
いるのは、対テロ戦の勝利、米軍の変革、部隊と兵員の質の維持の
三本柱である。このため特殊部隊予算は、15億ドル増の45億ド
ルになった。また無人偵察機や戦闘用無人機(UCAV)なども
14億ドル計上した。なお、今回の予算には約1000億ドルとい
われている対イラク戦費は含まれていない。このような軍事費増大
は、テロ支援の疑いがあるといった国家にはアメリカが先に攻撃す
る、すなわち西部劇を実現するためである。元々そのような傾向が
非常に強い国家ではあったが、911はそれに火をつけてしまった
のである。上記のような環境でビジネスができるかといえば私は悲
観的にしか考えられない。資本逃避は現実に始まっていると考える。
そうするとますます、米国が世界において唯一競争力を有している
分野である軍事力で国際政治を左右する。これは無限地獄しか生ま
ない(一説にはアメリカのイラク攻撃の真の理由は石油利権確保に
あるとされる。しかし、原油利権でコスト回収できるか不明であり
、その優先順位は低いであろう)。現在本土防衛省を新設して国土
防衛に躍起だが、これもコストがかかるだけで無駄に終わる可能性
が高い。なぜなら、世界に冠たる米軍は大規模紛争には対応できて
も、テロのような低緊張紛争についての対応は難しいのである。
さらに、CIAもクリントン政権下で予算が削減され、組織を維持でき
なくなっている。又、国内に「有色人種」という潜在的反米主義者
を多数かかえている点も問題である。国土防衛に追われると海外の
米軍も縮小されるだろう。欧州、韓国ではすでにその動きが顕在化
している。又、「先制核攻撃ドクトリン」は要するに疑わしいと判
断したら玉石ともに破壊するということでこれは理論上全世界を破
壊しないとアメリカの防衛ができないというジレンマに陥いる。
アメリカは、ソ連脅威論から解放された後、とくに湾岸戦争を契機
に、常識的理解を超える対外脅威認識を育みつつある。すなわち、
アメリカの国際経済支配を万全なものにすることを目標とし、この
目標実現に妨害要因となる要素をすべて脅威と見なす発想である。
911以降この傾向は加速された。その結果アメリカは、自国の国
益に影響を及ぼしうるあらゆる要素に対処する戦略を追求し始めた。
特にアメリカが警戒するのは、アメリカの言うがままにならない国
家(「ごろつき国家」)と、アメリカの途上国支配に反発するグル
ープ(「国際テロリズム」)である。

こうした脅威に対抗する手段としてアメリカは、欧州諸国及び日本
に対し、元来は対ソ防衛型軍事同盟だったNATO(北大西洋条約機構
)及び日米安保を、「域外適用」(NATO)、「周辺事態」及び「対
テロ特別措置」対処(日米安保)を重点とする攻撃型軍事同盟へと
変質強化する方針を呑ませた。またアメリカは、「ごろつき国家」
の核ミサイル奇襲攻撃に対処するためとして、NMD(国家ミサイル防
衛)及びTMD(地域ミサイル防衛)構想を推進する構えだ。更に、湾
岸戦争からイラク戦まで米国が推し進め、実験を繰り返してきた「
軍事における革命」(RMA=Revolution in Military Affairs)
は最小の犠牲と補給で最大の効果を挙げるという点で軍事行動の敷
居を非常に低くした。これはITや衛星と歩兵や戦車、飛行機などを
総合的に組み合わせ、情報の共有をし、ネットワークにより軍を指
揮し、精密誘導兵器でピンポイント攻撃を可能にするのである。
このシステムは現在米軍にしか存在しない。裏を返せばNATOや自衛
隊などと情報共有ができなければ、同盟の意味がかなり失われ、単
独行動にならざるを得ないのである。

このような世界最強の軍事力を誇るアメリカが、他国に対する軍事
干渉に最も積極的である。アメリカが21世紀国際社会の紛争の根
本原因となる可能性は大きい。仮にある国家がアメリカに1発や2
発のミサイルを撃ち込んでも、次の瞬間には、アメリカと同盟国
(NATO・日本その他)の反撃で壊滅させられる。その可能性を脅威
として、これを先制して軍事的に攻撃する戦略を採用したアメリカ
こそが、国際社会の平和と安定に対する重大な脅威となること可能
性が高い。

まさしくこのままでは全世界に対する宣戦布告しか残されてない。
これは理論的に破綻している戦略である。さらに「シーパワーは大
陸内部に嘴を突っ込んではならない」というのは歴史を貫く大鉄則
である。大英帝国はその最盛期にも欧州内部に進出しなかったし、
逆に古代ローマ帝国は地中海のシーパワーであったが、欧州内陸部
(ガリア、ゲルマニア)に手を出して崩壊を招いた。大日本帝国の
朝鮮半島および大陸経営もコストがかかり、中ロ米との対立を招き
、破局の根源となっただけであった。戦後日本の発展はこれら大陸
部における植民地、占領地といった負債を一掃したところから始ま
ったのである。戦後の欧州は植民地問題に悩まされ、移民問題をい
まだに解決できないでいる。これに対して、日本は敗戦というハー
ドランディングにより、強制的に海外植民地のリストラができた。
半島や満州など利益をもたらすより持ち出しが多くかつ、安全保障
上の問題も惹起したため、当の昔に不良債権化していたのである。
バブルを経験した我々は土地支配が容易に不良債権化することを学
んだ。 

上述の、古来、シーパワーは大陸内部に手を出してはならないとい
う鉄則の観点から現在、米国が推し進めているユーラシア大陸内部
への進出(アフガン、パキスタン、CIS諸国そしてイラク)は、崩壊
への第一歩といえないか。逆に言えば、ブッシュ政権下、ランドパ
ワーとなったため、このような国策を採用したのだ。一説によると
アメリカはイラク戦争後の占領について、GHQによる戦後の日本占領
をモデルに考えているという。とんでもない思い違いである。島国
である日本と大陸国であるイラクの地政学的条件の差、更に日本に
は敗戦当時友好国は存在しなかったが、イラクには50カ国以上の
イスラム諸国という友好国がいる、叉、重要な点としてイスラエル
の存在等条件が違いすぎる。戦費の問題もある。アメリカは戦費の
ための補正予算を組む方針であるが、その額は直接戦費と関連経費
(周辺国への支払いなども含む)だけで600〜950億ドルに達すると
される。これは湾岸戦争時の760億ドルを上回るものである。これま
で短期決戦の場合に想定されていた300億ドル程度をはるかに上回る
金額である。今回は湾岸戦の時と異なり日本を始め友好国が戦費負
担に応じるか否かは不透明である。   

さらに、戦争後の軍政による米軍直接イラク統治が、かえってイラ
ク国内や周辺国との関係を不安定にさせる恐れが大きいことから、
戦後長期間に渡り発生すると考えられるイラク占領や復興、防衛関
連のコストが見込まれる。その費用は5年間で最低でも数百億ドル
、イラク国内設備の崩壊程度によっては数千億ドルに達する可能性
も見込まれる。この様な出費に悪化した財政(03年度4000億
ドルの赤字)が耐えられるのかどうか疑念無しとしない。イラクの
原油利権を手にしたところで、回収できるかどうか不明である。バ
グダットが短期に陥落した事はアメリカの増長を産み、周辺国との
政治的不安定要因となり、対米テロ激発も想定される。真の戦争は
これから始まるのである。むしろ、イラクとしては米軍を駐留させ
小規模な一般市民を巻き込んだテロを続発させていく戦術であろう。
米軍の過剰反応から市民の犠牲も避けられない。

これは市民によるテロを呼ぶ。まさしくベトナム戦争と同じ惨状が
繰り返される。更に重要な点として、イラクは近代的意味の国家で
はなく、各部族をバース党が強権支配していただけである。それぞ
れの部族は外国勢力と結びついている。よって、イラン、シリアを
始め、他のイスラム諸国についても、戦線拡大して直接管理下に置
くという方針もあり得る。むしろ、イラクを占領、統治する以上、
そうしなければならなくなるだろう。すなわち、大陸内部への際限
のない防衛線拡大が必要になるのであり、この場合のコスト、リス
クは計り知れない。まさしく、大日本帝国陸軍やナチス・ドイツを
始め、歴史的にランドパワーが陥って崩壊を招いた罠に嵌る可能性
が高いのだ。上述のNeo Conservative達が、キリスト教原理主義の
理想に則って中東全域を民主主義の理想郷とすることは神の意思で
あると考えているとしたら、これは絶対に失敗に終わる。軍事や地
政学の常識を無視し、理想や大義だけで戦線拡大すると失敗するの
は十字軍の頃から、ベトナム戦争に至るまで、歴史の鉄則だ。私が
、アメリカの衰退を予想するのは、彼らがこの宗教的理想に支配さ
れていることが明白であるからだ。非常に危険である。

付言するならば、アメリカの今日のユーラシア大陸ハートランド地
域への進駐の契機は、場当たり的で破綻した中東政策を補うための
サウジアラビアへの軍事駐留であった。これが911のテロを呼び
さらなる軍事介入へと連鎖が続いている。私にはまるで、戦前の日
本陸軍の行動を見ているようにしか見えない。サウジ駐留米軍は関
東軍であり安全保障理事会に”Good Bye”を言おうとしている
Neo Conservativeという人たちは陸軍皇道派と変わるところはない
。差し詰めCISやパキスタン、アフガニスタン駐留は盧溝橋事件であ
り、イラク戦争はシナ事変である。上述のシーパワーとランドパワ
ーは相互不干渉を貫くべきという黄金律に従い、アメリカがサウジ
への駐留米軍を引き上げるならこのような事態は招かなかったので
あるが。

アメリカが懸念する「大量破壊兵器拡散」についてであるが、イラ
クを叩いたところで、その製造方法、材料が他の国にある以上、も
ぐら叩きにしかならない。このままでは全世界に対して先制攻撃し
ないと、テロはなくならないのである。まさしく、自家撞着である
。世界最初の核爆弾を作り使用したその報いであろうか、このまま
ではアメリカに対する核テロは避けられない。因果応報というしか
ない。

私は、歴史を学んだ立場から、過去の世界帝国が繁栄の絶頂から崩
壊まで以外に早く推移していることを確信した。アレクサンダー、
ローマ、元、大英帝国しかりである。日本人は戦後アメリカ中心の
世界観をもつようになったが、必ずしもアメリカは絶対ではなく、
むしろ破綻の危機が内外に山積していることに気づくべきである。
そしてアメリカが国際社会から退場し保護主義、モンロー主義(建
国の理念)に立ち入ったときにどうすべきか真剣に考慮すべきであ
る。この場合の保護主義はかっての孤立主義ではなく、アメリカに
忠誠を誓う国家を従えた上での単独行動である。更に言えば、老婆
心ながら、イラク戦の終結はシーパワーとランドパワーの最終戦争
の始まりではなかろうか。アメリカによるイラク戦争は、上述の旧
約聖書にある、リバイアサン(シーパワー)とビヒモス(ランドパ
ワー)の最終戦争の予兆ではないか。国連安全保障理事会の議論を
見ていると、米英(シーパワー)VS中露独仏イスラム諸国(ランド
パワー)の対立の構図が浮き彫りであることは明白である。黙示録
のアルマゲドンとは中東の地名であるという。この分析が誤りであ
ることを願うばかりである。

私見であるが、米国を主導している金融資本は現時点ではアメリカ
に本拠を置いてるが、本質的には国境を有しない。Neo Conservative
の暴走を含む上記の状況に鑑みてアメリカを見捨てる可能性は十分
にある。ここに、日本と金融資本との提携の可能性があるのである
。考えてみれば米国人の貯蓄率がマイナスを示し、不正手段を使っ
てしか資本市場から利益を得られないというのはすでに金融資本が
米国から利益を吸い尽くしたことを示していると言っていいであろ
う。一般の米国人はこのことにどれほど気づいているのであろうか。
彼らこそ金融資本によって収奪され続けたのである。年金すらもら
えず、財産を株ですってしまった中産階級のなんと多いことか。

現時点でアメリカの将来を悲観視する声はまだあまりないし、私も
将来の衰退を断言するだけの情報を持ち合わせていない。しかし、
最悪のシナリオとしてアメリカが国際社会から退場し保護主義、モ
ンロー主義(建国の理念)に立ち入ったときどうすべきかを想定し
て対策を練る必要はある。今回のモンロー主義において、単純な孤
立主義ではなく、ブッシュ政権下でのアメリカが世界との関わりは
経済は二の次でありイラク戦で露呈されたように国際協調はありえ
ず、米国の単独行動に賛同する国家のみを従えた上での対テロ戦争
が中心になるだろう。

ニクソンショック(1971年年8月15日に発表されたニクソン
米大統領の金とドルの兌換を停止するドル防衛策。これ以降、変動
相場制に移行した。)以降、ドルが金とのリンクを切られても世界
の基軸通貨であったのは、アメリカの軍事力を核とする総合的な国
力が信用を得ていたためである。いわば、アメリカ軍事力本位制と
でもいうべき体制であった。イラク戦争の表面上の終結は実は対テ
ロ、対イスラム諸国との長期戦の始まりであると考えると、今、あ
らゆる指標はその国力(軍事力)が衰退しており、戦後の国際秩序
たるパックスアメリカーナ  (アメリカの支配による国際秩序安
定:ラテン語のPaxはPeaceの語源であるが、平和という意味ではな
く、「強者による弱者併呑により達成された安定」が正しい訳であ
る。)はあらゆる面で危機に瀕していると見るべきである。この観
点から、欧州統合は米国以後の世界を見越しての動きと見られる。
==============================
地域経済圏、安全保障の枠組み 
 
下記は拙著「環太平洋連合」の一部です。国際情勢を読み解くには
ランドパワーとシーパワーの視点が絶対に必要と考えます。
→http://www.boon-gate.com/12/

世界経済は第二次大戦の反省から保護主義を廃して、WTOに代表され
る多国間協議の枠組みを構築した。この枠組みは今後も当然維持さ
れるべきではあるが、より「共通利益」を有する国家、地域間の結
びつきが強くなり、重層的な構造となっていくであろう。

近未来において、日本も独自の経済圏を早急に構築する必要がある
。前提としてアメリカとの軍事同盟、さらに現在アメリカに本拠を
置く、国際金融資本との関係は維持することとする。地域経済圏は
この国際金融資本との合意の下あるいは、共同で行うことが肝要で
ある。さもなくば、かってのEAEC(マレーシアのマハティール首相
が提唱した緩やかな地域共存構想である東アジア経済協議体)のよ
うに掛け声だけで終わる。     

ここで、地域経済圏を構築する上で農産物の輸入が常に問題になる
。農家は自民党の支持基盤であり、特に上述の「抵抗勢力=ランド
パワー」の票田であるから、話は簡単には進まない。抵抗勢力を駆
逐できたという前提で話を進めたい。なお、抵抗勢力を駆逐するに
は、一票の格差をゼロにすることが必須である。難しいことではな
い。最高裁が「一票の格差がある選挙制度は違憲」と判断すればい
いだけである。これにより、主に農村部を地盤とする抵抗勢力は半
減することになる。

現在の国際経済の枠組みを見ていきたい。

「多国間の貿易自由化が困難を来している一方で、それを補完する
ように二国間ないし地域的枠組での自由化があらためて脚光を浴び
、また実際に新たな自由貿易協定が次々と交渉され締結されている
。多国間自由化の重要性は引き続き変わらないものの、21世紀序盤
は、多国間自由化を二国間・地域間自由化が補完する時代、あるい
は後者が前者をリードする時代になるものと思われる」(日本貿易
振興会「世界の主要な自由貿易協定の概要整理調査報告書」
2001年7月)。

現在、自由貿易協定(FTA)をめぐる動きが加速している。日本は
2002年1月、シンガポールとの間に初のFTAを締結し、メキシコとの
間でも、産学官による共同研究会がFTAの可能性について検討してい
る。また、韓国との間で、FTAの具体的内容を議論する産学官の共同
研究会が発足し、2年以内を目途に報告書をまとめ、それを受けて政
府間交渉に入るかどうかを判断する予定である。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)との間では、2002年1月の小泉総理訪
ASEANの際に、「日・ASEAN包括的経済連携構想」を提案し、「日ASEAN
経済連携強化専門家グループ」等の場を通じて、構想を具体化する
ための作業を行っており、ASEAN+3の「東アジアスタディグループ
」でも、東アジア自由貿易圏の可能性も含め検討中である。しかし
そこには、日本の農産物をはじめとして幾つもの障壁がある。

 一方、中国は日本に先駆けてASEANとFTAを締結する見通しである。

 昨年報告された「平成14年版通商白書」では、対外経済政策推進
の枠組みは、WTOにおける多国間の取組みを中心としつつ、これを補
完するものとして、自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)の
ような地域、二国間の取組みも活用した多層的なものとなっている
として、「我が国が自由貿易の利益を最大限に享受し、経済の活性
化に結びつけていくためには、多層的な枠組みを戦略的かつ柔軟に
活用していくことが必要である」と分析した。

 通商政策を発展、維持する中で、WTOにおける多国間の取組みを維
持しつつ、これを補完するものとして、FTAのような地域、二国間の
取組みも活用した多層的なものとなっている。

従来日本は、世界経済が保護主義に走り、第二次大戦に至った反省
から、WTOを中心とした多国間協議による対外通商政策を推進してき
た。自由貿易はシーパワーの生命線であり、新世紀を迎えた今日に
おいても、日本にとってWTOの役割が重要であることは言うまでもな
い。

しかしながら、WTOでは加盟国数が増加し、交渉項目も多様化した結
果、機動的な交渉や合意形成が困難なものとなる傾向が見られる。
また他方において、日本の対外経済政策を取り巻く環境は、近年著
しい変化を遂げている。そうした環境変化の1つとして、経済連携強
化に向けた諸外国の積極的な取組みを挙げることができる。

国際経済の動きを見ると、米ソの冷戦構造崩壊以後、欧米諸国は新
たな国際経済システムを模索する中で、「より共通利益」を有する
国家を束ね地域経済統合の動きを推進させた。EUの単一市場化
(1992年)、NAFTA発足(1994年)を中心に、欧米諸国は、より高度
な貿易投資の自由化・円滑化、域内の制度調和により市場の確保と
構造改革の加速を通じ、人物金の往来自由達成から、域内及び自国
の利益を極大化しようと努力してきた。1999年のWTOシアトル閣僚会
議の決裂は、多国間での自由貿易推進の難しさを白日の下にさらし
、世界的な地域経済連携強化の流れをさらに加速化させた。こうし
た中、従来経済連携の動きに関心がなかった日本周辺地域において
も、経済連携推進への動きが加速されつつある。

バブルの後遺症にあえぐ日本経済を再活性化させるためには、成長
分野や比較優位にある分野において国内市場と海外市場におけるビ
ジネス環境を整備していくことが不可欠であり、こうした観点から
常に最適な対外経済政策を選択し、立案・実施していく必要がある。

ここで、上述の国際経済環境の変化を踏まえれば、日本がWTOという
場にのみ依存することは、自由貿易維持という国家の生存基盤を維
持する上での十分条件ではなくなりつつあることは確かである。
よって、WTOは今後も対外通商政策の主要な窓口、交渉の場であるこ
とは当然であるが、これを補完するものとして、地域あるいは二国
間における枠組み、協定等を、柔軟かつ長期的観点から大局的にも
FTAを活用した多層的なシステムとすることが必要だ。この達成によ
り、日本の主要な関心事である輸出先、輸入先へのアクセスが良く
なり、域内での人物金の往来自由から新たなビジネスチャンスが生
まれる。さらに、これらの国々との通商関係を深めることにより、
WTOの場(多角的貿易交渉)においても味方を多くし、発言力の増大
に寄与する。

地域経済圏を構築するに際して、安全保障の枠組みとしての観点か
らの検討も重要である。以下に、提携先を地域別に検討してみたい。

@中国
 中国と日本は過去の歴史認識をめぐり対立がある。これは「共通
利益」の観点からは大問題である。しかも、中国は、日本近隣諸国
の中で、最大のランドパワーであり、この地域に権益を確保しよう
とした日本の古代から近代にいたる苦闘は全て悲惨な結果を生んで
いる。また中国については経済成長を過大視する向きもあるが、内
陸部や華北の後進地域、環境汚染と沿岸部の相対的発展は今後、危
機的なまでの地域対立を生むと考える。その結果沿岸部が今のよう
な形で発展を続けることができるかについて、私は悲観的にしか考
えられない。上述のごとく、ソ連やドイツといったランドパワーが
最終的にアメリカやイギリスといったシーパワーに破れたごとく、
日中の経済発展も究極的にはシーパワー日本が優位に立つと考える。
この地域との人物金の往来自由を達成した場合何が起きるか。現時
点ですら、上述の人の流入が犯罪の温床となり、治安悪化を加速し
ている点も看過できない。よって私はこの地域との自由貿易は反対
である。

さらに、中国との提携はアメリカの反発が有り得るので、十分な注
意が必要である。

アメリカは建国以来の理念(Manifest Destiny)として西方向への進
行は神の恩寵、意思と考えており、中国大陸はその究極的な目標で
ある。ペリー来航も、太平洋戦争の遠因も中国大陸が目的であった
ことを忘れてはいけない。付言するならば、アメリカは自らがシー
パワーであり、中国がランドパワーであることに気づいていない。
マインドが根本的に相違し、19世紀から現代にいたるまで、アメ
リカはパールバックの「大地」に描かれた中国に幻想を抱き過剰な
支援をし、全て裏切られているのである。アメリカがこのシーパワ
ーとランドパワーは相互不干渉を貫くべしとする旧約聖書の教えに
気づくなら、アメリカにとっての戦略的パートナーは日本と台湾で
あることが容易に理解されるのであるが。この点、歴代民主党政権
は中国重視をとる傾向が強く、現在の共和党ブッシュ政権は中国の
本質をよく見抜いているといえる。

中国との間には、安全保障上の問題もある。日本の今後の国家戦略
を考察する場合、隣国であるランドパワー大国中国の国家としての
性格や体質を理解することが不可欠である。中国との関係を考慮す
べき場合、最も重要なことは歴史的にみて、中国がどのような国際
関係観を持っているかを明確にすることであるが、中国の国際関係
観は自らを世界の中心と考え、周囲の文化的に遅れた民族を「東夷
」、「西戒」、「南蛮」、「北狄」と位置付ける中華秩序の国際関
係である。この伝統的な国際関係観から、中国は周囲の国々と対等
の国際関係や貿易関係を維持したことはなく、周囲の国々を力で押
さえ込み、半独立国としてしか認めず、「臣下の礼」をとらせる中
国を中心とするピラミッド型の従属的な世界観であった。このため
貿易も「貢ぎ物」をもって朝貢し、それに対して返礼として「貢ぎ
物」の価値に応じて品物が返される朝貢貿易しか認めなかった。
この体質は共産革命後も何ら変化していない。否、共産革命と呼ば
れたものは、残忍、獰猛なランドパワーにつきものの武力革命と粛
清にすぎず、本質はなんら変わっていないのである。

また、注目すべきことは中国が伝統的華夷体制に基づく世界観によ
り、自国の文化的優越感から「国家の領域は文化の浸透とともに拡
大する。自国の文化を他国の領域内に広めると、その領域が自国の
領域に加わる」や、「国境は同化作用の境界線である。国境は国家
の膨張に応じて変動すべきものであり、その膨張がこれを阻止する
境界線に出合うと、打破しようとして戦争が起こる」という、上述
のハウスフォーファーの主張に沿った行動様式を、現代に至っても
維持していることである。中国の領土に対する執着はランドパワー
独特のものであるが、さらに、中国の場合は中華思想に裏付けられ
たものであるところに問題がある。中華思想を奉じる中国から見れ
ば、進んだ文化を周囲の文化的に遅れた異民族に浸透させて、自国
の文化に同化させ、中国的生活圏を拡大することが中国の使命であ
り、周辺の文化的に劣る異民族はこれを歓迎するはずであると考え
てきた。国名の中華とは世界の中心という意味であり、中国こそが
世界であるという表明にほかならない。このため、中国には近世に
至るまで国境の概念がなく、中国が最初に国境を認めたのは1689年
に締結されたネルチンクス条約であった。この中国の国境に対する
概念は、第2次大戦後に至っても不明確で、1949年に中華人民共和国
が成立し、国境画定が問題となると、中国はアヘン戦争以後に失っ
た領域を国境再検討の原点とすると回答したが、さらに1952年には
、中学校の教科書『近代中国小歴』に、かって朝貢貿易を行ってい
た朝鮮半島、沖縄、台湾、シンガポール、マレー半島、ベトナム、
タイ、ビルマ、ネパール、チベット、蒙古などを中国領土とし、
これらの国々が「旧民主主義時代(1840-1919年)に帝国主義によって
奪われた中国の領土」と学校で教え、「チベットは中華人民共和国
の神聖な領土の一部である」と武力を用いて併合した。

現在の中国は経済発展が主要課題であり、オリンピックも控え、諸
外国から円滑な資金や技術を導入するためにも、軍事行動は当分は
控えるであろう。しかし、経済発展が軌道に乗った場合、その本性
を露にする可能性は十分ある。日本の親中派はこのことを分かって
いるのであろうか。分かっているとしたら問題の根は深い。

現在、中国は陸上の国境線について歴史的に定まっているため、チ
ベットを支配下に置いているに過ぎないが、海洋権益拡大を目指し
ており、さらに1992年2月には「中華人民共和国領海・接続水域法」
を定め、「中国大陸及び沿岸諸島、台湾及び魚釣島を含む付属島嶼
、膨湖列島、東沙群島、西沙群島、南汰群島、その台湾の中国に属
する島嶼が含まれる」と、一方的にこれら海域の領有及び船舶の通
過に関する規定を宣言するなど(1996年5月の第8期全国人民代表会議
では尖閣列島と南沙群島は外した)、中国は海洋資源へのあくなき獲
得欲を見せている。ここで特に見落とせないのが、ベトナムが既に
実効支配していた西沙群島や南沙群島への進攻を「自衛反撃作戦」
、チベットへの進攻を「上層反動集団が反革命武装反乱を起こした
ので、鎮圧した」として、「反乱平定作戦」とし、さらに、70年
代の中越戦争で、当時の華国鋒国家主席は「懲罰戦争」と呼んで、
正当化する等の、武力行使を躊躇しない体質である。ランドパワー
の面目躍如といったところである。更には海軍力強化のため、空母
の保有に関心を示している。

以下は2002年2月22日の毎日新聞記事である。引用をお許し
いただきたい。

「活動範囲広げる中国海軍 
 ◇新たな緊張生む「空母保有」論 
 2月21日午前10時すぎ、西表島北西45キロの海域をタグボ
ートに引かれてゆっくりと北北東に進む巨艦を海上自衛隊のP3C
対潜哨戒機が見つけた。旧ソ連軍の未完成空母「ワリヤーグ」(5
万8500トン)。黒海艦隊に配属されるはずだった全長280メ
ートルの空母は、エンジン、武器などすべての装備を取りはずし自
力航行ができない。黒海から極東までの長旅で全体に赤さびが浮き
「まるで幽霊船」(海上自衛隊)のような無残な姿だ。 
 香港の企業、創律集団控股有限公司がマカオのカジノ施設用に
2000万ドル(約26億円)で購入した。同社の本社はビクトリ
ア湾に臨む香港の高層ビル「世界貿易センター」の34階にあると
登記簿に記されていた。だが、記者が訪れると、なんの関係もない
健診センターしかない。登記簿にあった番号に電話を入れると30
代らしい男性が応対、ワリヤーグを購入したことは認めたものの「
いま話すことはできない。事務所所在地も話せない」と一方的に電
話を切った。 
 謎の空母は北上を続け、軍事筋によると中国海軍北海艦隊の造船
所がある大連港に入港した。
 「針路を変えて排他的経済水域から出なさい」――。 
 昨年3月23日、中国沿岸にほど近い黄海。米海軍の海洋測量船
「ボウディッチ」(4762トン)が中国艦船から退去を命じられ
た。沖縄の嘉手納基地から飛び立った電子偵察機が中国戦闘機と接
触して海南島に不時着する9日前だった。 
 測量船は詳細な地形や海中での音の伝わり方、潮流など物理的デ
ータを収集するスパイ船だ。米原潜が航行するためだけでなく、
中国の潜水艦の動きを把握することにも用いられる。 
 米軍佐世保基地を監視する佐世保軍事問題研究会の篠崎正人事務
局長は「94年から米測量船の出入港が激しくなり、99年以降は
特に頻繁になった」と話す。冷戦時代はもっぱら横須賀基地を利用
していた米原潜の佐世保寄港も急増している。中国沿岸では海、空
の両面で米中のつばぜりあいが続く。かつて米ソ対立の舞台だった
オホーツク海のような最前線となりつつある。 
 「事前通報がないか、通報内容と異なる活動を行ったのは5隻」
。縄野克彦海上保安庁長官は4月23日の参院外交防衛委員会で中
国海洋調査船の実態を報告した。日本の排他的経済水域内で中国船
の活動が頻繁になったことを受け両国は01年2月に相互事前通報
制度を創設したが、今年4月末までに日本の経済水域に入った16
隻の中国船のうち、約3分の1が“違反”していた。 
 調査船だけではない。00年5月には対馬海峡を抜け北上した中
国海軍の情報収集艦(4420トン)が初めて津軽海峡を通過、
その後、鹿児島県沖の大隅海峡を通り日本を一周した。昨年7月と
11月には太平洋地域でも中国軍艦の姿があった。いずれの艦船も
米測量船と同様、海中に機器を投入して情報を集めた。軍事関係者
は中国潜水艦の航行準備と分析する。 
 米モントレー国際問題研究所のエバン・メデイロス上級研究員は
「中国海軍内には空母論者がいるが、電子分野、ミサイル、衛星な
どが最優先。今の予算規模では、空母護衛用の船を整備するだけで
使い切ってしまう」と空母保有に否定的だ。 
 一方、川村純彦・元海将補は「中国が空母を持ちたがるのは、将
来の主力となる戦略核ミサイル搭載の潜水艦を守るためだ」と分析
する。中国沿岸の黄海や東シナ海は水深が浅く敵から見つかりやす
い。艦載機で敵をけん制しながら、水深が深くより安全な太平洋に
潜水艦を導くために空母を使う戦略だ。 
 中国海軍の活動範囲は沿岸から徐々に広がっている。だが、ジェ
ーン海軍年鑑編集長のスティーブン・ソンダース元英海軍准将は「
中国は戦力構成の点ではまだ、沿岸部隊と外洋艦隊の中間に位置す
る」と分析する。中国は65隻の潜水艦を保有するものの、米西海
岸に届く戦略核ミサイルを搭載した原潜は1隻だけ。05年ごろに
は就役するとみられる新型原潜、そして空母保有に向けた動きは、
新たな緊張を作り出している。【「中国」取材班】」

海上保安庁と海上自衛隊が2000年に確認した沖縄近海の排他的
経済水域を侵犯した中国艦船は千五百四十七隻で、その中、四十五
隻は中国の軍艦と海洋調査船であった。中国の軍艦や海洋調査船に
よる日本の領海、特に尖閣諸島周辺の領海侵犯活動が活発になった
のは1990年代前半からであった。その理由は1993年に石油
輸入国になり、ひっ迫したエネルギー事情を打開するため海底の
石油資源の開発が急を要するからである。 

国連海洋法条約(日本は1996年に加盟)では公海上での海洋調
査について、沿岸から十二カイリまでを領海とし、二百カイリまで
を排他的経済水域として設定する権利を認めている。排他的経済水
域での他国による資源調査は認められていないが、当事国の許可を
得れば化学調査は認められる。中国は1995年ごろから日本の許
可なしに日本の経済水域でエアガンやボーリングによる資源探査を
頻繁に行っている。このような中国の不法調査につき、海上保安庁
の巡視船は何度となく中止要求をしているが、従わない。その発端
は1996年に日本が海洋法条約に加盟し、東シナ海の日中中間線
を引いた段階で日本の権利を侵す中国に対して日本政府は常に日中
友好が第一で、日本の権利を断固として守ってこなかったからであ
る。 

 中国が日本の要求を無視して日本の大陸棚、排他的経済水域で執
拗な海洋資源探査を行っている真の狙いは国連海洋法条約による大
陸棚画定に向けた海域調査のためである。国連海洋法条約は沿岸か
ら二百カイリを排他的経済水域として沿岸国が漁業や鉱物資源を利
用する権利を認めている。さらに海底の地質的条件が一定の要件を
満たせば、二百カイリを越えてもその国の大陸棚として鉱物資源の
採掘権が認められる。つまり、国益の基本である領土の拡張は歴史
上、ほとんどの場合、戦争によるものであったが、国連海洋法条約
が認める海底の地質的条件が一定の要件を満たせばすべての沿岸国
が戦争せずに領土を拡張できるようになったのである。 

 日本周辺の大陸棚はマンガン団塊、ニッケル、コバルト等の鉱物
資源、石油に代わるエネルギーとして注目されているメタン・ハイ
ドレートの宝庫といわれている。さらに注目すべきことは地質の専
門家によると日中中間線の中国側よりも日本側の方が埋蔵量は多い
と予測されていることである。中国が不法に日本周辺の大陸棚調査
を急いでいるのは中国の大陸棚として認めさせるには2009年ま
でに海底の地質調査のデータをそろえて国連大陸棚画定委員会に申
請し、勧告を受ける必要があるからである。したがって、日本は考
えられる手段を全て用いて、中国艦船による日本の経済水域での活
動を止める必要がある。もちろん、この交渉にはアメリカも参加さ
せるべきである。埋蔵資源の一部を上納してもいい。度重なる中国
船の不法な調査は日米安全保障条約の対象であると宣言するだけで
抑止効果は大きいのである。

最も重要な点として、最大の援助国である日本に対して、中国は核
ミサイルの照準を合わせていることである。

以上の諸点を考え、検討した場合、中国とは経済圏を形成すること
はできないと考える。

A韓国
2002年のワールドカップ共催から、一時、「日韓新時代」が言われ
た。この国との関係は長期的にどう考えるべきか。まず、日本と歴
史認識を巡って相違があり、根強い反日感情をもっている点に関し
ては中国と同じである。市場としては小さく、資源供給先にも成り
得ない。安全保障に関しては、北朝鮮と陸上で対峙しており、安定
的とは言いがたい。最大の問題は、韓国は、中国を中心とする歴史
的な華夷体制の優等生であり、小ランドパワーの閉鎖性、通弊を色
濃くもっていることである。彼らの反日感情の根底には、華夷体制
の枠組みでは、自分達のほうが優等生で、日本は劣等生であったに
も拘らず、近代化に際して逆転され、併合されたことがある。本作
から日本の近代がシーパワーによって為され、一方韓国は小ランド
パワーで終わってしまったことが最大の原因であることを理解して
もらえないものであろうか。近代とはシーパワー優位のパラダイム
なのである。今のまま、韓国が小ランドパワーの精神構造をとり続
けるならば、提携のメリットより、デメリットが大きいと思う。
人の流入が犯罪を招く点の危機感も強い。又、北朝鮮と陸上で国境
を接することは非常にデメリットである。しかも、近い将来、北朝
鮮との南北統一がなされた場合、大ランドパワーの中ロと国境をせ
っすることになる。これは、経済圏を安全保障の枠組みとしても考
える立場からは、大問題となる。よって、私は韓国とのFTAには反対
である。         

地政学的に見た場合、半島は大陸のランドパワーの影響を直接受け
、しかも国境線の防衛のために多大な陸軍を整備、維持するコスト
がかかり、かつ資源にも恵まれない。よって、シーパワーは効率の
観点から、防衛線を海上もしくは相手国の港の背後に置くべきとい
うのは歴史の鉄則だと考える。例として、アメリカは二度の世界大
戦から冷戦を通じて、リムランドのイギリスと欧州大陸の間のドー
バーに防衛線を置いた。アメリカの世界戦略を考えた場合、韓半島
を維持するのに、3万5千の陸軍を配備するだけの価値がないとい
う判断から在韓米軍の縮小、撤退も時間の問題であろう。現時点で
は、北朝鮮を抱えている以上、韓国とは共同で対応せざるを得ない。
この点で唯一「共通利益」が存在する。ここで考えなければいけな
いのは、北朝鮮の今後である。近未来、経済破綻により北朝鮮が崩
壊した場合、在韓米軍撤退が現実化し、防衛線は対馬になり、人口
七千万人の超反日国家が出現する。しかも、中国の韓国に対する影
響力は増大することになり、そうした場合、日本と韓国は調停者を
失い、必然的に利害が対立する(かって、李承晩は日本を攻めよう
としてマッカーサーに阻止されたことを忘れてはいけない)。この
場合でも、米海軍と海上自衛隊で安全保障は十分に可能だと考える。
逆に言えば、北朝鮮をある意味で「管理された危険」と位置づけ、
現状を維持することが、逆説的ではあるが、アメリカの関心を極東
に引きつけ、在韓米軍を正当化し、日米韓の枠組みを維持し、日韓
の対立を調停するために必要になる。これは北朝鮮が崩壊した場合
の復旧や統一のコストを負担したくない日本や韓国、難民の流入や
統一朝鮮出現を恐れる中国やロシア、日本や韓国へ影響力を行使し
たいアメリカの意向に合致する。すなわち、周辺関係国全てが、北
朝鮮の現状維持による秩序の安定の恩恵を受けるということである。

何よりも、日本の近代におけるこの半島への容喙が、その後の大陸
内部への防衛線拡大そして中ソ米との利害対立から破滅を生んだこ
とを思い出す必要がある。更に、古代からの朝鮮半島の権益確保の
苦闘(白村江の戦い、秀吉による文禄、慶長の役)は全て悲惨な結
果に終わっている。このような歴史的視点から見て、朝鮮半島は日
本にとって正に鬼門なのである。

よって、シーパワーとランドパワーの関与は必要最小限にすべきと
いう歴史の鉄則、さらに、地政学的観点から中長期的に見て、北朝
鮮崩壊から南北統一の可能性を考えれば、韓国との経済圏、安全保
障の枠組みを持つことは不可能と考える。

あくまで、朝鮮半島の現状維持に必要な範囲で経済、安全保障の関
わりを続けるしかない。金大中政権以来の太陽政策もこの文脈で考
えるべきである。なお、2003年6月9日、来日した盧武鉉韓国大統領
は衆院本会議場で演説し「北東アジア地域は世界的な地域統合の流
れに後れを取っている」として、日韓両国が主導する21世紀の北東
アジア時代づくりを共通の目標として取り組むよう提案した。
これは、裏を読むと、アメリカを見限り、中国を盟主にランドパワ
ーの連合を組むことを提案したものであり、必然的にアメリカの利
害と衝突する。このような主張をもつ盧武鉉韓国大統領に対するア
メリカの回答は、米軍の部隊配備の見直しを早急に進め韓国の南北
境界線近くに陸軍第2師団を配備しているが、後方への移転をし、
韓国軍に38度戦防衛の責任を負わせることである。これは韓国にと
って、受け入れがたく、いってみれば米軍はソウルの防衛に責任を
負わないといってるに等しい。盧武鉉に対して、アメリカがどんな
ゆさぶりをかけるか見ものである。

Bモンゴル、ロシア
モンゴル、ロシアとの提携は長期的な展望としてはどう考えるべきか。
モンゴル・シベリアは確かに資源の宝庫である。しかし、そのほと
んどが未開発で、この開発を日本の資本で行うという案もあるよう
だが、少し考えていただきたい。もしかりに日本がこの地域の開発
に参加し、利権を有した場合、戦前の満州国が直面した問題すなわ
ち、中露との利害の衝突を惹起するのではないか。安全保障上の観
点からもまた前述の「シーパワーは大陸奥地に嘴を突っ込むべきで
はない」という歴史を貫く黄金津の観点からもこの地域への容喙に
私は非常に懸念を覚える。ましてこの地域との自由貿易など考えら
れない。

C台湾
台湾にとって、日本は旧宗主国であり、かつ、台湾が中国の海洋へ
の出口に通じる戦略上の要衝を占めている点を考えると、安全保障
の観点からアメリカと共同で台湾を保持する以外、東アジア、東南
アジア地域で制海権を確保できない。よって、台湾については、安
全保障、制海権の観点から絶対に見放すことはできない。経済的に
見ても優秀で勤勉な国が、中国における内陸部のような不良債権抜
きに存在するわけであるからパートナーとして最適である。台湾を
基地にして、アメリカと共同で、安全保障の枠組みを構築し、中国
海軍の外洋進出を阻止するべきである。これは、後述する環太平洋
シーパワー連合の扇の要が台湾ということであり、域内各国の全海
軍力を結集して台湾の保全を図るべきである。ランドパワーを封じ
込めるためにも、更にはシーパワーの根幹は上述のマハンが唱えた
制海権維持にあるのであり、台湾の保持はこの観点からも絶対に譲
れないのである。

DASEAN諸国
ASEAN10カ国は宗教的にも、経済の発展においても政治体制におい
ても多様であり、域内を一律に論ずることはできない。ASEANの内部
をランドパワー、シーパワーと分けて対応を考えるべきである。
以下はこの観点からのASEANの区分である。
・ランドパワー
タイ、マレーシア、ミャンマー、ベトナム、ラオス、カンボジア
・シーパワー
フィリピン、シンガポール、インドネシア、ブルネイ

これら諸国の中で、シーパワーについてはインドネシアを除いて全
てFTAを締結し、人物金の往来自由を認めるべきである。シンガポー
ルとの間では2002年1月13日にFTA締結済み。安全保障上の関
与も必要である。インドネシアについては宗教的にイスラム教であ
り、かつ人口も多く、人物金の往来自由を認めることには躊躇があ
る。ありていにいえば、アルカイーダと接点をもつことになるから
である。しかし、その資源や市場、温和な国民性を考えると、制限
つきながら人物金の往来自由を認めざるを得ない。ただし、フィリ
ピン、シンガポール、ブルネイとは格差を設けるべきである。

この中で最も重要なのは、マラッカ海峡(西はタイとマレーシアの
国境付近から始まり、東はマレー半島南端のシンガポール海峡まで
続く長さ約1,000キロの海峡。)に面する島国、シンガポールである。
東西交易、日本のシーレーンの重要な要衝であるマラッカ海峡の航
海自由は日本のみならず、シーパワー諸国にとって、死活的な重要
性をもつ。よって、日米海軍を機軸として、シーパワー諸国の海軍
力が共同でシンガポールを基地にして、マラッカ海峡の哨戒を実施
すべきである。

ランドパワー諸国についてはどうか。タイ、ベトナムを除く国は全
て中国の影響が無視できない。これら国々への関与は中国との利害
対立を惹起しかねない。よって私はこれら国々とは限定的な関係を
構築するべきと考える。

タイは仏教国で親日的、国民も勤勉で優秀と考える。しかし、周辺
国が全て中国の影響下にあり、タイへの関与が安全保障を伴うもの
だと考えると内陸部への展開を想定しなければならず、ベトナム戦
争を思い起こさせる。よって、タイについては若干限定的な人物金
の往来自由に留め安全保障上の関与については考えざるを得ない。
ベトナムについても同様である。 

Eオーストラリア、ニュージーランド
日本とオーストラリア、ニュージーランドは互いに・技術・資源・
生産・消費と言った経済の循環を行うことが出来る能力を補完して
おり、オーストラリアは保守的な白人が約二千万人住んでいるのみ
で、民族問題や、戦略上の脅威もない。自由貿易を締結し、人物金
の往来自由を達成したとして、日本にかなりの人口流入があるとも
考えられない。更に、この地域は環境の観点から、最も重要な提携
先になりうる。この点は後述する。

Fインド
インドはランドパワーであり、人口も多い。インドと経済圏を築く
メリットより、大量の人の流入による民族問題発生、治安悪化が懸
念される。よって、私はインドとの経済圏構築は反対である。安全
保障上の関与については後述する。

Gイスラム諸国
日本は石油を中東地域に依存しており、その意味でこの地域との関
係は重要である。更に、欧米による植民地支配のような過去の歴史
がないため、先進国で唯一フリーハンドを有している。しかし、ユ
ーラシア大陸ハートランドの大部分を占めるイスラム諸国は本質的
にランドパワーである。「シーパワーは大陸奥地に嘴を突っ込むべ
きではない」という黄金律の観点から、この地域への容喙には懸念
を覚える。更に、この地域との関りは、アメリカおよび金融資本と
の関係を十分考慮する必要がある。資源獲得競争が闘争、戦争、環
境破壊を生んだ20世紀を考えるに、21世紀は石油中心のパラダ
イムを止め、海洋開発、石油代替エネルギーの開発を目指すべきで
ある。    

現状の石油エネルギー供給源として、必要な範囲でお付き合いする
べきである。逆に言えば、燃料電池や太陽エネルギーといった石油
代替エネルギーが開発され、普及すれば、ランドパワーイスラム諸
国の地政学的重要性は失われ、つきあう必要はなくなる。現時点で
、アメリカの傘下であることを明確にした日本がイスラム諸国に対
して働きかけることができる可能性はあまりない。よって、イスラ
ム諸国とのFTA、安全保障の枠組みは考えられない。ODA等で関係を
維持していくだけである。

HEU(ヨーロッパ連合)
ユーロ導入により、大経済圏として勃興してきた感はあるが、地政
学的に見た場合シーパワーたる島国イギリスと大陸欧州の差異は依
然として大きい。今後、米英VS独仏という対立の構図が鮮明になる
ことが予想され、東欧諸国は独仏への対抗上英米に接近することに
なる。EUといっても全く一枚岩ではなく、政治統合まではまだ相当
の時間がかかる。日本としては、EU内部の対立、EUとアメリカとの
対立については、是々非々で対応していくしかない。

I国際連合
戦後永らく、国連中心を外交政策の基本においてきた日本であるが
、その虚構性は明白になった。しかし、世界秩序に国連が果たす役
割を全ては否定できず、ランドパワーとシーパワーが平和裏に意見
交換できる場としての意義は決して小さいものではない。よって、
今後も国連の重要性はあると考えられるが、より重要な意義はラン
ドパワーとシーパワーの枠組みを認識することである。安保理常任
理事国もランドパワー(仏中露)VSシーパワー(米英)という対立
になっていくであろう。

このような観点から、私は、WTOや国連といった多国間協議の場を重
視しつつも、アジア太平洋圏に共通利益を有するシーパワー同志の
連携による経済圏、安全保障の枠組みを形成することが必要ではな
いかと考える。

アジアを重層的に考え、中国を中心とする大陸アジアとASEANに代表
される海洋アジアを考えた場合、前者をランドパワー後者をシーパ
ワーと考えることができる。

日本の場合ここでいうところの海洋アジア(ASEAN諸国を核とした
国々)を中心とし、日本・オーストラリアを頂点とするシーパワー
の国々と連携した経済圏を構成すべきである。

また、海洋アジアの国々は発展段階こそばらばらであるが、各国と
も今の日本にない可能性を持っている。これらの国々と提携して経
済圏を構成するメリットは非常に大きいと思われる。さらに忘れて
はいけないのはこの地域は親日的な国家が多く中国への対抗の意味
から日本のコミットメントを求めているのである。

距離的な問題は、この圏内はほとんどが海運の使用でまかなうこと
ができる。

時間的には陸運の方が有利だが、コスト的には海運が数段優位性を
もつからである。

一時話題となったシーレーンの防衛問題もオーストラリア及びASEAN
諸国と提携することによって解決することが出来る。この提携のた
めには、英国との間で、新たな同盟を形成し、英連邦を発展的に解
消した上で、あくまでシーパワーの真髄たる、制海権の保持と交易
自由を死守するという戦略がベストであると考える。注意すべき点
として、日本には、歴史的に見てもこの制海権、シーレーンを重要
視しないことが多々ある。現在も、アメリカの第七艦隊の軍事的プ
レゼンスに頼ることによって、日本の中東へのシーレーンは安全が
どうにか確保されている状況を自覚する必要がある。湾岸戦争時、
日本のタンカーを護衛したのは米海軍であったことを忘れるべきで
はない。しかしながら、このアメリカ軍のプレゼンスが永続する保
障はない。上述のアメリカの衰退の章で述べたことが現実化し、
日本のシーレーンを日本の自力で確保しなければならない事態が訪
れるときがそう遠くない時期に訪れる可能性もある。この問題にど
う対処すべきか。戦後の日米安保が日本に提供したサービスとして
、以下の2点が挙げられる。

@)中東産油国からの原油輸送路(シーレーン)確保
A)大陸アジアからの脅威に対する抑止
 戦後、日本はこの点について、在日米軍(第七艦隊)に依存して
きた。今後、永久にこの点が保証されるとは言い切れない。沖縄、
横須賀を核にする在日米軍基地の存在意義はあくまで、アメリカが
アジア全域、更には米国の国家戦略上最重要な中東地域への戦力投
射能力を担保する中継基地なのであり、上記は日本を中継させても
らっている手前、おまけのサービスとして提供していたにすぎない
のである。ここは重要である。在日米軍の兵力構成を見ればわかる
が、日本本土防衛を担うはずの米陸軍は存在せず、空軍、海軍、海
兵隊なのである。いわば槍を置いているのであり、盾は自衛隊が担
うのである。この点が在韓米軍と根本的に異なる。在韓米軍はあく
まで北朝鮮に対抗するための陸軍なのである。

アメリカが上記サービスの提供を停止した場合どうすべきか。取り
うる政策としては以下の通りである。

@)日本は、東南アジア諸国連合(ASEAN)と安全保障関係を結ばざる
   を得ない。

A)東南アジアにおいて、アメリカのプレゼンスが希薄になれば、
  シーレーン支配に    関してそれに代わるのは日本しかない
  という認識が一般的になりつつある。

B)インドとの長期的関係を結ぶ。同時にインドネシアと、もし可
  能ならシンガポールとも関係を結ぶ。

W)日本海上自衛隊の増強の第1段階が完了した段階で、シンガポ
  ール(さらに可能ならフィリピンスビック湾にも)にシーレーン
  監視用の基地を設置させるよう交渉する。

X)インドに対し、適切な規模の海軍を開発するよう、援助する。

Y)インド洋に進出し、ホルムズ海峡からシンガポール、日本まで
 のシーレーン全補給線を支配するように努力する。

要点は、日本が一国の独力だけでシーレーンの安全を確保すること
は困難である以上、アジア諸国との海上安全保障体制を確立する必
要があるということである。

この場合、どの国と安全保障体制を組むか、その際の仮想敵はどこ
かが問題になる。

南沙諸島における中国と周辺国の紛争、中国とインドとの関係、印
パ紛争などの国際関係に鑑みると、インドと同盟関係を確立すると
いうことは、必然的に中国とパキスタンを含むイスラム諸国を敵に
回すということにつながる。アジアにおける安全保障体制の確立に
ついても、これらをいかに調整するかという問題が生じる。インド
との軍事同盟は長期的観点から考慮に値するとしても、現時点では
否定的にならざるを得ない。

問題は、日本の海上自衛隊の構成である。朝鮮戦争以来、アメリカ
第七艦隊の補完部隊として、主に対潜哨戒能力を中心に拡充してき
た。独立した海軍力ではないのである。上述のアメリカの衰退とい
う事態が現実化し、海外への米軍派遣が段階的に縮小した場合、
第七艦隊独力による極東から中東にいたるシーレーン防衛は困難に
なり、海上自衛隊、保安庁共同によるマラッカ海峡から日本までの
哨戒、制海権確保が要請されることになろう。近い将来、この海域
に、中国の空母が出現することも想定される。その際、独立して運
用できる海軍力の整備維持の観点から、中規模空母の保有が必要に
なる。空母機動部隊の開発、維持はコストがかかり、カタパルトや
早期警戒機の開発など、技術的な問題も多い。よって、横須賀基地
を母港とし、退役を迎える予定のキティホークをアメリカから格安
で譲ってもらい、試験的に海上自衛隊で運用する。艦名は太平洋戦
争の最高武勲空母にちなみ、「瑞鶴」がいいだろう。更に進んで中
国の核ミサイルに対抗するため、日本の核武装が検討されるように
なるかもしれない。その場合は潜水艦発射型SLBMしかない。この保
持についてはアメリカの意思が重要である。現時点ではアメリカは
日本に核の傘を提供しているため、日本の核武装に反対であろう。
日米安保を堅持する立場からは時期尚早と判断せざるをえない。
日本の核武装はCTBT体制崩壊をもたらし、小国の核武装に道を開く
。しかし、極秘に潜水艦発射型SLBMを開発し、核恫喝を受けた場合
は核恫喝で応えることも必要かもしれない。日本に核の傘を提供し
、抑止力となる在日米軍基地はアメリカの世界戦略の要であり、
かつ、日本に対するお目付け役として、冷戦期の米軍配置状況を見
直しから911以降の対テロ戦に対応するため、小規模な機動力に
富む米軍を全世界に展開していく上で、海兵隊や空軍力の縮小はあ
っても、海軍基地の全面撤退はあり得ないと考える。

結論として、戦略的に台湾、フィリピン、シンガポール、NZ、豪州
そして米国を中心とするNAFTA諸国との連携を重視し、行く行くはこ
の地域で自由貿易、安全保障上の同盟まで含んだ枠組みを目指すべ
きである。更には、上述のシーパワー連合による、海洋開発のため
の枠組みとしても機能させていかなければならない。注意すべきは
、マハンの頃(19世紀)と異なっており、制海権を取るためには
、制空権、制宙権、制情報権を取る必要があるということである。
この分野は全てアメリカが産業競争力を持っている、知識集約産業
分野(ソフトパワー)であり、現時点では、日本としてもアメリカ
を支えていくしかない。ミサイル防衛もこの文脈で考えるべきであ
る。上述のように、アメリカが経済破綻、戦争の恒常化により衰退
した場合、これらの戦略産業の知識、技術を持った人間を日本に呼
べばいいのである。上述の米系金融資本との提携の真の意味はここ
にある。

このような経済圏、安全保障体制構築からさらに進んで欧州諸国の
ような政治的に統合された共同体、共同軍を形成すべきか否かに
ついては議論が分かれる。環太平洋圏は欧州のような共通のバック
グラウンド、経済発展程度を有してはいない。よって当面は主権国
家間の同盟のような形を残していかざるを得ないであろう。しかし
、将来的には国家統合まで視野に入れるべきである。

この過程で、上海へのビザ無し渡航、タイ、インドネシア、ベトナ
ムの準加盟から、環太平洋シーパワー連合(Rim  Pac)が成立すれ
ば自ずと中朝露は頭を下げてくる。上海を中心とする地域は長期的
に見て北京と一緒にいるよりこちらの陣営にいたほうがよいという
判断をするかもしれないし、そのように仕向けなければならない。
上海地域は『中国WTO加盟とITビジネスのすべてがわかる(総合
法令出版)』によると、 GDPは4551.2億人民元で、上海一市だけで
中国全体の5%にあたるGDPを稼ぎ出している。一人当たりのGDPは
3万4600元で、中国平均の5倍である。

ドル換算ではおよそ4、000ドルとなり、これは1970年ごろの日本の
水準であり、現在のブラジルやポーランドなど、上海はすでに中進
国のレベルに達している。さらに、上海市1、674万人に江蘇省
7、438万人、浙江省4、677万人を加えると、揚子江下流地域の人口
は1億3、800万となり、この地域だけでも日本の人口を越える経済圏
となる。

つまり、市場としての中国を見ていく場合、中国全体に目を向ける
のではなく、購買力がある新中産階級が集中している北京、上海、
広東などをひとつの独立した経済圏と見るべきであるという考え方
に立ち、上海の分離独立を画策するのである。

あせって罠にはまるべきではない。制海権は制陸権に勝るというの
は歴史を貫く法則、鉄則であると考える。

さらに環境の問題がある。今後数十年を経ずしてユーラシア大陸内
陸部は環境破壊により、人類の生存が難しくなる地域が増大すると
推定される。例えば、中央アジアのアラル海の2/3は農業用水、工
業用水の使い過ぎによって干上がってしまって、砂漠になってしま
っている。

中国では、北京の北、天安門から70キロの所に砂漠が出現している。
すなわち地球の温暖化に伴って、中国においては砂漠が急速な拡大
を見せているわけであり、北から南へ砂漠がどんどん下へ降りてき
ているのである。

研究者の中には、中国では今後50年以内に3千万人の環境難民が発生
すると考えている者もいる。中国の北部一帯は全部地下水の枯渇に
直面しており、北京は既に、59メーター掘らないと地下水が出てこ
ない。どんどん地下水を組み上げているから、年間1.5メートル位
、地下水の水位が低下している。中国の砂漠の拡大スピードは、
一年間に2460平方キロ。これを1秒間に直すと78平方メートルずつ、
全中国で砂漠が拡大している。1998年までに砂漠化した土地の面積
は262万平方キロ。日本の面積の7倍位が、もう砂漠になってしまっ
ている。砂漠は北京へ進撃を続けているが、1年間に3.4キロメート
ルずつ進撃している。つまり、天安門まで70キロだから、このまま
いくと、恐らく30年から40年で北京は砂漠化するであろうと考える。

このように環境の観点から考えても沿岸部、島嶼部は有利である。

そして最終的には米国の衰退、世界からの退場という最悪のシナリ
オに備えて政治統合、EU軍創設まで踏み込む欧州に倣い、日本民族
生存圏を豪州沿岸部、タスマニア、NZといった地域に確保するので
ある。環太平洋連合はそのための布石になる。
==============================
イラク戦争への関与 
私は対米支援は海自による後方支援で必要十分だと思う。
陸自を派遣してそれで問題解決できるはずないだろう。 
むしろ日本は派兵しないことにより中東諸国との裏交渉できるんだ
。その立場を失うわけにはいかない。 
これはアメリカの機嫌を損ねない最低ラインで、あくまで真の目的
は対米関係の維持だから。 
派遣して陸自が実戦を経験するとそれ以後のアメリカの派兵要請を
一切拒めなくなる。つまり全面介入だ。これがアメリカの真の目的
なのだが。そして全イスラム教徒の親日感情にも傷がつく。ASEANの
イスラム諸国も敵に回る可能性大。これがデメリット。 
メリットは派遣地域住人に感謝されるくらい。それとてそこが戦場
になれば反日感情高まる。 
アメリカは石油支配による「ドル機軸体制」維持とイスラエル安全
保障のため戦争を開始した。よって、シリア、イランは確実絶対に
攻撃します。
その際、自衛隊は先鋒をつとめることになります。そのために前例
がほしいのです。それが今回の派兵の持つ意味。
satoblue01@aurora.ocn.ne.jp
==============================
アメリカが核を使う理由 
イラク戦争について、考察をしていくと、現在の米軍へのテロ攻撃
は今後激化していくことはあっても、収束に向かう気配はない。
むしろ、来年の主権委譲が実際に行われれば益々火に油をそそぐこ
とになるであろう。なぜか?これはイラク周辺のシリアやイランが
間接直接に支援しているからだ。
特ににシリアによるサポートについてアメリカは相当の証拠をつか
んでいると思われる。米軍の犠牲者は今後増加することは間違いな
い。しかし米軍の増派は世論のもあって難しく、かといって日本を
始め他の同盟国が大幅な派兵に踏み切ることも見込みが薄い。
むしろ、現在派兵している国の撤退が現実味をますであろう。
 
よって、アメリカはイラクで孤立したまま窮地にたたされる可能性
が高い。これは来年の大統領選挙へマイナスでる。ここからどのよ
うな展開が予測できるであろうか。
 
まず、テロリストの鎮圧を本気で行うなら、シリア、イランを押さ
える必要がある。しかし、イラクで手一杯の状況で戦線を拡大して
軍事侵攻することも、非常に難しいが全く考えられないではない。
 
なお、イラク戦争の真の目的はイスラエル安全保障と石油直接支配
であるからこの観点から、両国への攻撃は必至である。
 
そこで、手はじめにシリアに対して
「テロリストの支援を止めよ。聞き入れないならば核攻撃する」
と通告する。この場合の核は小規模のもので十分だ。そして、現在
それを開発中である。シリアが通告を無視した場合、実際に戦略拠
点への核攻撃するのである。
 
そして全世界に「テロ支持者、支援国には核攻撃する」と宣言する。
 
これは、かって、中近東を支配したモンゴル帝国がボハラ、サマル
カンド、バグダットにおいて、降伏勧告を無視したので女子供にい
たるまで徹底的に殺戮したいわゆる遊牧民の「草原の掟」につうず
るものである。
 
モンゴルは、その世界帝国を維持する上で、徹底的な自治、民族間
の公平を原則とした。しかし、それは、帝国への反乱者は過剰報復
で全滅させることにより始めて可能になったのである。
 
そして核使用こそが、彼我の被害を極小化し、終戦へのトリガーに
なることは太平洋戦争で証明済み。太平洋戦争で核が使われず、
本土決戦がおこなわれていたら数百万の犠牲が出ていたであろう。
 
ブッシュ政権は2002年9月20日、大量破壊兵器を持つ敵への
先制攻撃を正当化し、他国の追随を許さない軍事力の圧倒的な優位
を堅持することを打ち出した政策文書「米国の国家安全保障戦略」
を発表したことはこの文脈で考えるべきである。
 
そして、この米国による核使用こそが、今後長期に続く対テロ戦へ
、日本や諸外国が関与しなくてすむ唯一のシナリオだ。そしてさら
に重要な視点として、核を第二次大戦後実際に使った前例ができる
と、イスラエルやロシア、中国、北朝鮮への恫喝になることも付け
加えておく。これで六カ国協議は日米に有利に進むことは間違いない。
 
ソ連がアフガンから撤退したような形で米兵がイラクから撤退すれ
ばまさに世界はテロとその背後の勢力に支配される。それを避ける
には米国による核使用しかない。
 
草原の掟である。そして米国はその核使用を正当化するため、自国
での大規模テロを自作自演するのではなかろうか。シリアの関与の
証拠を残して。
satoblue01@aurora.ocn.ne.jp

コラム目次に戻る
トップページに戻る