1469.読者の声



【追悼文】周麗梅(愛子)さんを偲ぶ■ 

             周麗梅さんを悼む      
                  鈴鹿国際大学教授・水屋神社宮司
                             久保 憲一

 敬愛する台湾・高砂族の頭目 周麗梅(日本名・秋野愛子)さんがお亡くなりに
なったと聞きました。その悲しみを今じっと噛みしめております。周麗梅さんと私の
心の絆はこれまで拙著などで幾度となく書いております。

 平成10年2月に、ゼミの学生と共に高砂義勇隊英霊碑を訪れた時のビデオがたまた
ま手元に残っていましたので、改めて見直してみました。故小林文治翁から岐阜県春
日村産の「さざれ石」を奉納したい旨、周さんにお伝えした時、お元気だった頃の周
さんのお喜びのご挨拶、感激のお言葉が、そのビデオレターに鮮やかに残っていまし
た。ここに文字起しをさせていたたき、在りし日のお姿を偲びたいと思います。

          ◆                  ◆

 小林文治様のことを久保先生から紹介していただいて、本当に嬉しく存じます。本
当に感謝いたします。

 そして(先刻)ものすごく良い話をいただきました。というのは「君が代」の中に
ある「巌となる」という『さざれ石』を台湾に寄付すると言われました。よろしいで
すか?と言われましたので、よいですと言って…(絶句)…私も心から感謝して…
(絶句)…なんとお礼を言ってよいかわかりません。

 本当に(先の大戦における日本)降伏の時、私は18才だったのですよね。看護学
校を卒業して、検定試験に合格して、さあこれから天皇陛下のために、日本のために
身を捧げて働こう、身を投げ出しても構わない…という気持ちで看護婦に志願しまし
た。  私、小さいですよね。担架を運ぶのですが、担架重いですよね…走るときに
は担架が肩から落ちるのですよね。それでも頑張って第一線に立とうと思ったの。

 そうしているうちに(戦争に)敗けたでしょう。その時、私や、みんなは大声で…
跪いてないたのよ。「天皇陛下、どうして負けたかー」と大きな声で泣いたの…昔の
思い出です。

 その君が代は、私は忘れていません。いつも歌っています。日本と高砂族は一心同
体のつもりです。私たち高砂族が戦争に行ったときは裸足で、(高砂族の)刀で敵を
何十人か倒したのですよね…そういう話しを聞きました。(高砂族の)お兄さん達…
兵隊で戦死した人もおり、帰ってきた人もいました。そして(帰還兵の方々は)いろ
いろなことを私に言いつけました。この慰霊塔は台湾にはつくる人が(他に)いない
から、私は十年計画を立てました。でも、作ろうと思ってもお金がなく、女一人では
何も出来ないでしょう。…そこて私は日本に行って、兵隊に行った中村会長に相談し
ました。

 「造りなさい。力を貸します。募金してね。造るようにするから、計画しなさい」
ということで十年計画を立てて、(こうして慰霊碑が)出来ました。これはみな、日
本の方々のお陰で建てた慰霊碑です。私ども心を併せてつくりました。

 それにまた今回、久保先生からこういうことを言ってくれて、本当にどんなに嬉し
いか判らない。あんな良い石……いただくのは簡単ではないのですよね…今日、この
ことを聞いて、本当にありがとうございます。感謝いたします。11月27日の慰霊
碑の時に間に合ったら幸いです。また私たち高砂族のことを忘れないで、兄弟だと
思って…ここを知らない人を誘って、参拝にいらっしゃることをお願い申し上げま
す。ありがとうございました。

( )内の文字は筆者が補足

          ◆                 ◆


 今日は朝から冷たい雨が降っています。明日平成15年12月2日(火)午前10
時、台湾烏来郷において葬儀が執り行われるとのことです。友人に代参いただきま
す。私は周さんから頂いたお若い頃の自筆の掛け軸を水屋神社斎館の神殿に掛け、改
めてお別れをいたします。秋野愛子様、本当に、本当に有り難うございました。安ら
かにお眠りください。                       平成15年
12月1日
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200万アクセスおめでとうございます。ちなみに私が200万件目でし
た。これからも格調の高い論調を期待しています。
関係者各位ご苦労さまです。
早川
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(Tより)
編集者のTです。本来は、200万アクセスした人には、記念品を
贈呈したところですが、無料でこのコラムを運営しているので、す
いませんができません。
今後も、このコラムのご愛顧をお願いします。
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Re: 国際戦略コラムno.1460.シーパワーとランドパワー  

国際戦略コラム御中

いつも拙文を掲載いただき、ありがとうございます。江田島孔明で
す。

いくつかの点について反論させていただきます。

1.大陸内部にランドレーンを確保するという発想はシベリア出兵
 、満州建国で前例があります。どうなったかはいわずもがなです。

2.「ロシアは宗教国家でも社会主義国でもない。金を出せば石油
 でも車でも輸送してくれる。」とは全く認識が甘いといわざるを
 得ません。ロシアはプーチン主導でKGB独裁に回帰しました。彼ら
 は石油の国家管理を主張してます。

すなわち、日本に期待してるのは金だけで、実際の運用は安全保障
の観点から行わない可能性すらあります。ロシアを信じてはいけま
せん。日ソ不可侵条約の結果を忘れないで下さい。ランドパワーと
取引してはいけないのです。さらに、日本のシベリア石油利権をロ
シアが軍事力で差し押さえたらどうするのですか。
自衛隊派遣して確保するのですか。そんなことはできません。利権
の確保は軍事力で行うのが鉄則です。

3.「シーパワーとかランドパワーとかという軍事の時代ではない
 。経済合理性の問題でシーレーンでもランドレーンでも使用すれ
 ば言いだけの話である。」これも上記と同じ、非常に甘い認識で
 す。利権の確保は軍事力で行うのが世界の常識で今後その傾向は
 ますます強まります。なぜ日本がイラン石油利権でアメリカ其の
 他の横槍に屈するかわかりますか。それを確保できる軍事力がな
 いからです。経済合理性だけで世界を見るのは間違ってます。軍
 事と経済は表裏一体です。

4.反対にシーレーンは空母保有すれば、世界第二位の海軍力たる
 海自で十分確保できます。
 イスラム諸国がどうやってシーレーンを犯すのですか。彼らに
 そんな海軍力はありません。

5.現在の最大の問題はアメリカがシーパワーをやめ中東でランド
 パワー化している点です。これは絶対に失敗します。環太平洋連
 合は日本台湾英国豪州そしてシンガポールといった国々で海洋国
 家連合を構築しアメリカを正気(シーパワー)に戻すための枠組
 みとするものです。

アメリカ海軍との提携を視野にいれてます。海軍はイラク戦争に辟
易してるので私の提案に乗ってきます。

JOGの要約では私の主張は全て伝わらないので、添付をご一読いただ
ければ幸甚です。

本件は日本の国家戦略上の最重要課題です。お会いして詳細におは
なしできればと思います。
貴兄の姿勢、方針には大変感銘を受けております。

今後ともよろしくお願いします。
satoblue01
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(Fのコメント)
軍事的にはシーパワーでもランドパワーでもなく、エアーパワーや
スペースパワーの時代です。宇宙戦略や航空戦略が重要な時代です
。そのため、米国でも金の掛かる空母艦隊を転換して、空軍を中心
とした編成にと議論されている。シーパワーからエアーパワーへの
変更をしようとしているようですよ。また、シンセキさんが反対し
ていた陸軍の大幅削減をしたために、イラクのゲリラ戦で躓くので
す。米軍はランドパワーを大幅削減したために問題を起こしたが、
正解だと思います。

それと現代の経済大国日本は海外展開の軍事力もないのに、世界的
に商品を輸出・輸入しています。台湾エバーグリーンや中国の会社
が運んでいますが、何も問題が起きていません。あるのは、インド
ネシアの海域で海賊がでることが大きな問題のようですが。

米軍が圧倒軍事力で、世界の安定を保持しているために、他国は、
その軍事力に対抗できないために、米国が提唱する資本自由主義、
グローバル・スタンダードになっているのです。

ロシアも然りです。今のロシアは米国に対抗できる国ではないです
よ。そのために資本主義経済に戻っている。ロシアがプーチン独裁
になったとしても、この経済は当分続くでしょうから、取引可能で
す。現状をしっかりと分析する必要があると思います。

このように米国が江戸幕府のような働きをして、世界が安定してい
るのです。そして、米国の提唱する民主主義を実行しないイスラム
教中東を、米国流民主主義化しようとして、中東でも宗教色の少な
い世俗主義のイラクに侵略したのです。ランドパワーとは関係ない。

インドネシアとマレーシアは石油のルートで、かつ海峡があり、そ
の海峡を通行するタンカーや空母を陸から砲撃されるとどうしよう
もない。陸からの砲撃と海上からの砲撃では精度が数段違いますか
ら、相当な犠牲を出すはずです。インドネシアやマレーシアと友好
関係を維持するか、その地域を占領するしかないでしょうね。地図
を見てください。精度の高い分析をしないと現在の戦略を間違えま
すよ。このため、アチェの独立も一時、米国は企てたように感じる。

シーパワーやランドパワーの分析が間違いと言っているのでなくて
過去を分析しているだけで、現在の軍事的な状態や将来戦略の姿が
十分に解析されていないと感じるのです。
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件名:インドネシア・アチェ紛争/戒厳令を延長/かすむ和平  

 軍事作戦開始から半年・インドネシアのナングロアチェ州で独立派ゲリラ「自由アチェ
 運動」(GAM)掃討の軍事作戦が始まってから半年が経過した。民間人を含めた死者
 数は千五百人以上に達し、和平の糸口は見えないままだ。メガワティ大統領は国軍の要
 求を受け入れ、軍事非常事態宣言(戒厳令)の延長を決定し、GAM掃討作戦の続行を
 決めた。同国では来年、総選挙と大統領選が行われるが、ナングロアチェ州で正常に選
 挙が実施できるか危ぶまれる。(バンコク・池永達夫・世界日報)
 GAMは、インドネシアからの独立を求めるスマトラ島北部ナングロアチェ州の武装勢
 力だ。GAMは一九七六年、実業家のハッサン・ティロ氏らが結成、独立を宣言した。
 インドネシア国軍はこれを認めず、武力衝突が恒常的に続いてきた。GAMの兵力は五
 千人程度とみられてきたが、インドネシア国軍掃討部隊による切り崩しに遭っている。
 これまでの二十七年間で、民間人を含む一万人以上が死亡したとされる。

 独立意欲旺盛なアチェの住民は、ほとんどがイスラム教徒で占められる。しかも二年前
 の米同時テロ以降、米国がインドネシアに対して「人権擁護」を声高に求めなくなった
 ことで、分離独立派への圧力は高まるばかりだ。インドネシアは世界で最もイスラム人
 口の多い国であるばかりでなく、同国の一万七千以上の島は、イスラム過激派の戦士を
 集め、訓練するための格好の場所になることから、反テロの協力を米国はインドネシア
 に求めている。

 インドネシアから分離した東ティモール住民はキリスト教徒が大勢を占め、西洋諸国か
 らの独立支持を得やすかったことからすると、アチェの状況はかなり違う。

 インドネシアの東西に位置する東ティモールとアチェ。一方は二十一世紀最初の独立国
 となり、一方はインドネシア国軍による締め付けを強化されるといった対照的な立場と
 なっている。

 メガワティ大統領は二〇〇一年七月の就任当初、過去のアチェ弾圧を謝罪し、ワヒド前
 政権の進めた対話路線の継承を強調していた。その延長線上で、インドネシア政府はG
 AMとの間で〇二年十二月、和平協定に調印した。だが、ガラス細工の和平は長くは続
 かなかった。協定違反を犯していると相互が非難し合う泥沼状況に陥ったからだ。結局、
 今年五月に東京で開かれた両者の和平協議が決裂したことで、政府はアチェに半年間の
 軍事非常事態を発令、国軍が掃討作戦に乗り出すことになった。

 掃討作戦ではナングロアチェ州上空を国軍緊急展開部隊のパラシュート群が舞い、ゲリ
 ラ掃討のためのロケット弾攻撃が始まった。国軍当局によれば、国軍と警察の混成部隊
 四万人がこれまでに殺害したGAM兵士は千百六人、投降兵は五百九十四人。約一万人
 の避難民が今も州内でテント生活を送っているが、軍政下で救援当局や非政府組織(N
 GO)は十分に活動できないのが実情だ。マラッカ海峡を隔てた隣国マレーシアに亡命
 を求める難民も出てきているが、マレーシアには難民認定制度がなく不法入国者として
 扱われるなど国際問題にも発展している。

 国軍幹部らは当初、半年間で同州を完全制圧するとしていたものの、ムザキル・マナフ
 GAM最高司令官ら指導部の拘束には至っていない。エンドリアルトノ国軍司令官はこ
 のほど、「GAMの現有勢力は約二千六百人、壊滅までには時間を要する」と述べ、G
 AM武装勢力掃討作戦の長期化を示唆した。

 ジャワ人中心の中央集権に対するその他の島々の反乱の歴史は古く、メガワティ大統領
 の父親であるスカルノ初代大統領は、一九六六年に失脚直前まで、各地の反乱軍の対応
 に追われた。対オランダ独立戦争に誇るべき歴史を持ち、豊かな石油・天然ガスを有す
 るアチェ人の要求を、父が力で封じ込め、再び娘が武力制圧に踏み切ったのは、偶然で
 はない。メガワティ大統領は、強い「統一国家」インドネシアを父スカルノ大統領の遺
 言として受け止め、何としてもそれを守る道義的責任を負っていると自覚しているから
 にほかならない。
 同国では来年、総選挙と大統領選が行われるが、ナングロアチェ州で正常に選挙が実施
 できるか危ぶまれる。▽掲載許可済です

●アチェ独立紛争の経緯
1976年12月 GAMが独立宣言
 98年5月 スハルト政権崩壊
 99年11月 州都バンダアチェで50万人が住民投票要求集会
2000年5月 政府・GAMが停戦協定調印
 01年4月 大統領令でGAM制圧作戦始まる
 02年1月 アチェ自治拡大法施行
      アチェ軍管区が復活、GAM制圧作戦強化
   12月 東京でアチェ和平・復興準備会合
      治安悪化で停戦監視のタイ、フィリピン軍人らが撤退
      政府とGAMが和平協定に調印
 03年5月 東京で和平協議が決裂
      ナングロアチェ州に半年間の戒厳令
      イスラム武装組織の掃討作戦本格化
   11月 ナングロアチェ州戒厳令継続が決定
Kenzo Yamaoka
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アメリカ合衆国衰退に備える

アメリカ市民の貯蓄率がマイナスを示し、NYダウも八千ドル割れが現実化している。
これは何を示しているのだろうか。これはアメリカからの資本逃避の兆し、つまり経
済、社会運営の条件が失われ、ビジネスを行う上での基盤が失われつつあることを表
してはいないか。過去の歴史をみると、戦争勃発や大統領暗殺などの外因性による
マーケットの衝撃は比較的短期間で終結している。しかし、今回は911のショックで
パニックになって、その後、弱気市場が終焉したというわけではなさそうである。現
に、2002年7月23日にはダウ工業株30種平均が7702ドルまで下がり、テロ直後
9月21日の底値を6.5%も下回った。その裏には、米国の構造的諸問題、すなわ
ち、恒常的な貿易赤字、異常に割高な株価の維持、貯蓄率の低さ、そして軍事支出増
加による財政赤字が横たわっている。これは短期間で調整し、解決できる問題ではな
い。

具体的には、911事件以降のテロの脅威、治安悪化、治安対策に伴う保険、物流と
いったコスト増大、株価低迷による消費冷え込み、さらには移民の増大による社会の
不安定化、人種、宗教、階級闘争の激化、疫病の流布、国際的孤立、戦争の恒常化、
訴訟費用増大、経済の保護主義化といった兆候はかなり見られるのである。Enronや
WorldComの不正会計問題は米国の資本主義に対する信頼を決定的に失墜させ、株式市
場が虚飾と不正に満ちていることを表している。有事に際してもドルが買われずに金
相場が高騰していることもこの見方を裏付けている。穿った見方をすれば米国の金融
市場主導の経済は全てこの虚飾の上に成り立っており、実態経済として、軍事航空通
信産業など一部を除いて製造業については当の昔に崩壊しているといえないか。巨額
の貿易赤字は雄弁にこのことを物語る。もっと言えば不正な手段でしか資本市場から
利益を得られないということは取りも直さず、資本市場はすでに利益を上げることが
できない、つまり、吸い尽くされたのではなかろうか。さらに米国で最大の問題は社
会インフラとしての「人」にある。単純作業従事者は英語もろくにできない移民パー
トタイマーに頼り、工場の生産ラインもしかり。これで社会の運営が可能か疑問なし
としない。しかも白人は近い将来マイノリティーになることが確実である。今でさえ
都市部では移民の増大を嫌って白人中産階級の離脱、移民増加傾向がはなはだしい。
一部富裕層は塀で囲った要塞町に住んでいる。全米で白人がマイノリティーになった
暁には彼らの米国からの脱出が現実化するであろう。米議会予算局(CBO)は6月
9日、最新の財政予想の中で、03会計年度(02年10月〜03年9月)の財政赤
字が4000億ドルを超す見通しであることを明らかに した。米国のこれまでの最
大の財政赤字は92年度の2900億ドルだが、これを一気に1000億ドル以上塗
り替えることになる。さらに、最近の「双子の赤字」(家計も入れて三つ子の赤字と
いう人もいる。)について、急速に膨れ上がっている。2002年の貿易赤字は前年
比21.5%増の4352億ドル(約51兆円)で過去最高であった。アメリカの負
債が増え続けるのは国民の貯蓄がないためであり、借金は全て外国の資金で賄われて
いる。しかし、このような借金体質でいながら、国民の投資は増えている。貯蓄がな
いために外国から借金して投資を行っている。更に、有事でありながら、ドルは円に
対してもユーロに対しても安い。原油の決済にもユーロが使われ出した。サウジがア
メリカを見限ったということであろうか。このことはドルの信用を大きく毀損させ
る。やはり、経済面でのドル機軸体制の「終わりの始まり」であろう。現在の有事で
ありながらの円高ドル安の進行の裏には、米景気の立ち直りの遅れやEnron破たんな
どを嫌った欧州や中東の資本が米国から流出し始めた事情がある。一般に過大評価さ
れた通貨は過小評価された通貨と比べると、一国の経済発展のスピードに鈍くなる傾
向がある。米国の貿易赤字はドル安を招く要因となっているが、それ以上に景気回復
を急ぐ米国がドル高を肯定し続ける理由はあまりない。加えて、割高な米国株式や資
産に対してグローバル投資家(米国外の投資家、主に欧州中東投資家)が売り圧力を
高めている。2000年の米連邦準備理事会(FRB)統計によれば、米国の証券の65%
は米国外の投資家が保有している。この保有率は1989年の49%から大幅に上昇してい
る。米国におけるグローバル投資家の動きは為替のみならず、マーケット全体に大き
な影響を及ぼすようになっている。以下は2002年8月の英紙フィナンシャル・タ
イムズ記事である。「サウジアラビアの対米個人投資資金のうち1000億―200
0億ドル(約12兆―24兆円)が欧州に流出していると報じた。米同時テロでは実
行犯19人のうち15人がサウジ国籍だったため米国とサウジの関係が緊張してい
る。サウジ資金の流出は、サウジ側が米国内での資産運用の安全性に懸念を抱き始め
たためという。」

同紙によると、ある識者は「米国内のサウジ資産凍結を求める米国のタカ派の主張が
原因」と指摘。さらに、 同時テロ犠牲者遺族がサウジ王子などを相手取り、テロ組
織に資金援助していたとして15日に起こした約1兆ドルの損害賠償訴訟で、資金流
出が加速する可能性も指摘している。

金融アナリストによると、王室を含むサウジの対米個人投資資金は株式、不動産など
推計4000億―6000 億ドルである。これらの指標は米国の実体経済は大部分
が外国人の資本によって賄われていることを示している。このために、貿易赤字を増
大させつつ、ドル高政策を取らざるを得ないのだ。逆に言えば、産業競争力の観点か
らは弱いドルが適正であるが、そうするとドル建て資産の流出から、海外資本引き上
げに繋がるのである。この矛盾の連鎖を断たない限り、アメリカ経済に未来はない。

米国の抱える地政学的リスクを考えてみたい。対イラク戦を主導しているブッシュ政
権を支えるNeo Conservative(ラムズフェルド国防長官、チェイニー副大統領等、米
国の理想、国益追求のため軍事力行使を厭わない高官達)とは何か。彼らの根底には
WASPの宗教観たる、キリスト教原理主義(ピューリタン)に基づいた、単純な善悪二
元論がある。孫子を例にとるまでもなく、戦争が外交を含む、国家戦略の最大の失敗
であるという考えをとらず、軍事力行使に積極的である。ブッシュ政権はテキサスの
石油資本をバックにする、アングロサクソン政権なのだ。この政権の特色は、政権内
にパウエル国務長官やライス補佐官といった黒人は入れても、ユダヤ人を入れていな
いことだ。上述のように、ユダヤ人はかってはイギリス、そして戦後のアメリカの外
交政策に影響を与え、金融資本主導のシーパワーの根幹をなした。そして19世紀以
来、中国を巨大マーケットと捉え、提携しようと試みる。
 彼らにとって外交というのは、言ってみれば国家と国家のビジネスである。自分に
有利な条件で契約を結びつつ、相手にもそれなりの実利を与えて、今後の付き合いに
備えるという発想をする。つまりビジネスでの交渉術に長けた者は、外交交渉術にも
優れていることになる。決定的な違いは、それぞれの交渉に関わる情報の中身が違う
ということだけである。
 ユダヤ人が生んだ最高の外交官といえば、キッシンジャーであろう。もともと政治
学者であった彼は、自らを巧みに売り込んで大統領補佐官、国務長官を務め、その期
間において米中和平とベトナム戦争終結を実現した。度々秘密外交と言われた彼の手
腕は、情報を一手に集約しつつ、全ての分析を担当し、エッセンスだけを大統領に提
供して最小努力で最大効果を生み出す外交スタイルに特徴があった。彼は数々の成果
を上げながらも、全ての花は大統領に持たせ、なおかつ情報を独占して自己保身も図
るなど、優れた人物であった。
satoblue01


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