1460.シーパワーとランドパワー



日本はシーパワーでもランドパワーでも、どちらでも行ける自由を
持っている。戦略を決める必要がない。これを検討しよう。Fより

このコラムでは治安維持の難しいシーレーン防衛は、金も掛かり、
また米国はイスラム教国をターゲットにして民主主義国家に変えよ
うと活動している。すると、親米国家日本はイスラム教最大の人口
を持つインドネシアやマレーシアによって、米国へ反発して同盟国
日本のシーレーン防衛上、一番難しい所を攻められて、そこを守れ
ないことになる。いまのような信仰的な米国とイスラム教国とは上
手く行かない。マレーシアのマハティールが退任瀬戸際に、米国の
非難はできずにユダヤ非難をしたが、このような雰囲気が現代の米
国とイスラム教国家には存在している。

もし、シーレーンを日本が確保したいなら、イスラム教国家と仲良
くする必要があり、この面からもイラク侵略戦争で米国サイドに立
つのはおかしいし、今後日本は親米の立場を変更する必要がある。
しかし、これは圧倒的なシーパワーを持つ米国を敵しかねないため
に、日本のシーパワー戦略としては実現性がない。

この石油ルート防衛の問題からすると、ランドレーンの方がロシア
一国の通過でナホトカと日本の新潟を結べば、アジアのイスラム教
文化圏を通るより、治安上も安定している。ロシアは宗教国家でも
社会主義国でもない。金を出せば石油でも車でも輸送してくれる。

それより、日本とヨーロッパを長いこと結んでいたのはシルクロー
ドで、ランドレーンであった。奈良からローマまでを結んでいた。
シーレーンの開発はシルクロード上にパクトリアが出来て、シルク
ロード交易を邪魔したために、ローマ帝国がインドまで伸びていた
海からの通路を中国の長安まで伸ばしたのが始まりである。

このように、シルクロードのランドレーンはシルクロード上の国家
やイスラム教とキリスト教の戦いなどで、実質機能しなくなり、シ
ーレーンがその交易を代替したのです。しかし、再度、現在このシ
ーレーンがイスラム教と米国の戦いで危うくなっている。その代替
としてロシアのシベリア鉄道というランドレーンがある。そして、
このランドレーンを使い、シーパワーとランドパワーを日本は使い
やすい方を使えばいいだけの話しになり、一方を選択する戦略をど
うして持つかが分からない。

シーパワーとかランドパワーとかという軍事の時代ではない。経済
合理性の問題でシーレーンでもランドレーンでも使用すれば言いだ
けの話である。これがいい意味でのグローバルエコノミーでもある
。しかし、お金が必要であるから経済競争力だけは、持っているこ
とが必要になる。米国人だけの正義の侵略戦争のような経済合理性
のないイラク人にとって迷惑で無意味な戦争は米国に任せておけば
いいのです。

英国と日本は大陸に近い島であるので、シーパワーでもランドパワ
ーでもどちらでも利用できるので、それそれの時代で、使いがって
のいい方をその時々で使い分ければいいだけであろう。

どちらにしても、世界的な経済大国との交易が重要なことになり、
現在は米国がその中心的な存在であるために、そことの交易として
シーレーンを使用し、それがEUになれば、EUとの交易上便利な
ランドレーンになるだけであろう。
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地球史探訪: ランドパワーとシーパワー
■1.ランドパワー(大陸国家)とシーパワー(海洋国家)■

     世界の国々はランドパワー(大陸国家)とシーパワー(海洋
    国家)に大別できる。この視点から地球史を眺めてみると、今
    まで見えなかった側面が浮かんでくる。
    
     たとえば、米ソ冷戦は資本主義と共産主義の対立ではなく、
    ユーラシア大陸のほとんどを占めた史上最大のランドパワー・
    ソ連と、世界の貿易を支配するシーパワー・アメリカの対決だ
    った。その最前線がユーラシア大陸のリムランド(外縁部)で
    ある。リムランドはランドパワーとシーパワーが対峙する最前
    線。東西ヨーロッパ、南北ベトナム、北朝鮮・韓国の間で冷戦
    や熱戦が展開され、さらにその外側では、日本やイギリスがシ
    ーパワー・アメリカの補給基地となった。アメリカの「封じ込
    め政策」とは、まさにソ連をユーラシア大陸に封じ込めること
    を狙いとしていた。
    
     ソ連が崩壊すると新たなランドパワーとして台頭してきたの
    が、中国、イラク・イランなどのイスラム勢力、さらに独仏を
    中核とするEUである。アメリカはイギリス、日本、台湾、オ
    ーストラリアなどのシーパワー諸国を率いて対抗しようとする。
    
     今後の外交や防衛戦略を考える上で、シーパワー対ランドパ
    ワーという視点は、西洋と東洋、ヨーロッパとアジアなどの地
    理的区分よりは、より深い意味を持つと考えられる。この視点
    から地球史を捉え直し、今後の我が国の進むべき道を説いたの
    が、江田島孔明氏の「環太平洋連合」である。[1]

■2.それぞれの性格■

     ランドパワー(大陸国家)の代表は、古代ペルシャや元、近
    代ではナチス・ドイツ、ソビエト・ロシア、中国の華北政権
    (清、中華人民共和国)などである。主に大陸内部や半島部を
    故郷とし、海から切り離された過酷な自然環境の中で、異民族
    との生存競争を戦い抜く過程で、内には土着的、閉鎖的、専制
    的となり、外には狡猾、残忍、獰猛さを身につけた。ユダヤ人
    ホロコースト、ロシア革命、文化大革命など、歴史上の大流血
    事件はランドパワーが引き起こしている。共産主義国はほとん
    どがランドパワーである。
    
     ランドパワーは土地に執着し、さらに遮るもののない陸上で
    他民族から身を守るために、少しでも国境線を遠くに広げよう
    とする生存本能を持つ。そのために侵略的になりやすい。
    
     シーパワー(海洋国家)は、大陸の外縁部、島嶼部を生存圏
    とし、土地所有よりも交易を重視する。古代ギリシャ、中国の
    華中・華南政権(宋、明)、ベネツィア[a]、近代のオランダ
    [b]、イギリス、アメリカなどがその代表である。海上交易を
    生業とする所から、開明的、先進的、合理的、かつ自由主義・
    個人主義的な性格を身につけている。交易は相互依存関係であ
    るから、外交においても協調・同盟関係を志向する。ただしシ
    ーパワー同士で海上の覇権を争うこともある。資本主義国は、
    ほとんどがシーパワーである。

省略

■5.環太平洋連合■

     ソ連が崩壊した後、最大のランドパワーとしてのし上がりつ
    つあるのが中国である。清や中華人民共和国などの華北政権は
    歴史的に典型的なランドパワーである。着々と領土を広げてい
    く膨脹主義はランドパワー本来の性格であるが、華北政権の場
    合はさらに中華思想により、周辺の「野蛮国」を服属させ「文
    明化」することが中華帝国の使命である、という文明観を持つ。
    
     こういう極端なランドパワーの膨脹主義をどう防ぐかが、日
    本のシーパワーとしての最大の課題である。そのために江田島
    氏は、日本、台湾、フィリピンやシンガポールなどの海洋アセ
    アン諸国、オーストラリア・ニュージーランドからなるシーパ
    ワー連合を提案する。これらの国々はユーラシア大陸のリムラ
    ンドを構成し、中国の膨脹を防ぐ障壁となる。
    
     これにアメリカを加えると江田島氏の提唱する「環太平洋連
    合」が実現する。これらのシーパワー諸国に守られた太平洋は
    その名の通りの「平和の海」となって、諸国の交易と交流を通
    じた繁栄がもたらされる。我が国にとっても、中東からの石油
    輸入シーレーンを防衛するという安全保障上の課題が達成され
    る。
    
省略

■8.シーパワー大国の夢■

     中国の膨脹に脅かされている石油輸入のシーレーンにしろ、
    上記のシベリア石油パイプラインにしろ、安定的なエネルギー
    確保に不安があるのが、近代日本の安全保障上の大きな問題で
    あった。この問題は大東亜戦争において、連合国側の対日石油
    禁輸から開戦に踏み切らざるを得なかった時から、少しも変わ
    らない。
    
     しかし、シーパワーとして生きる戦略を固めれば、この問題
    を根本的に解決しうる望みが生まれる。それは我が国が世界第
    6位、451万平方キロに及ぶ200海里排他的経済水域(E
    EZ)を持っていることである。この広大な海洋を開発するこ
    とで、我が国は一挙に資源・エネルギー大国となりうる。
    
     海はエネルギーの宝庫でもある。波力発電、潮汐発電、海上
    風力発電などは自然に優しいエネルギー源である。また海底に
    眠るメタンハイドレートは天然ガスに替わるクリーンなエネル
    ギーであり、日本周辺の埋蔵量は、日本の天然ガス消費量の約
    100年分に相当すると言われている。これらを開拓すれば、エ
    ネルギーの自立も夢ではない。海底にはマンガンやコバルトな
    ど、近代工業に不可欠の戦略物資も豊富に存在している。

     また食料面でも、我が国の魚類養殖は世界で最も事業化が進
    んでいるが、その技術をさらに発展させて人工的に孵化した稚
    魚を海に放流して,自然界の生産力によって成育させる「海洋
    牧場」が実現すれば、食料の自給率を大幅に上げることができ、
    今後の食糧危機にも相当の対応ができるようになる。
    
     さらに海上に巨大な鋼鉄製ブロックをつなげて浮かべる「メ
    ガフロート」により、海上空港や、海上都市の実現も実用レベ
    ルに近づいている。これにより、国土の狭さも問題にならなく
    なる。
    
     世界第六位の広大な経済水域に、我が国の先進的な科学技術
    を適用すれば、資源・エネルギー・食料の豊富なシーパワー大
    国としての未来が開けていくだろう。海こそが我らのフロンテ
    ィアである。


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