1448.選挙と組織論



選挙と組織論。
 先の衆議院選で、現れたことは、日本における組織を考える上で
、面白いかもしれない。自民党という、日本土着型政党は、構造上
<村組織>の集合体の上に乗っていた。田舎という村、企業という
村、業界という村である。

自民党では、派閥のことを、自ら<むら>と呼んでいる。
よくよく、冷厳に見れば、これまでの日本もイラクのような、部族
社会の変形だったと言えなくもない。そこで、世襲が、実利だけで
なく、心情的なバックボーンをもたらしているのであろう。

 企業が、グローバル化に押されて(開国して)終身雇用制を無く
した時、真っ先に、企業という村がなくなったのである。また、同
時に労組という村もなくなった。(わずかに、生首を切られない、
閉鎖型の社会である官公労のみが生き残ったのである。)

利益の調整が効かなくなるとき、(談合や規制)やはり、業界の村
が崩壊するのであろう。そういう意味で、競争社会は、いやがおう
でも自民党の<むら>をも解体していくことになるであろう。つま
り、鎖国的経済のもとでしか、自民党という幕府は成り立たないの
だ。

 もう一つの組織が働いた。言うまでもなく創価学会である。
学会組織というものは、社会から疎外された人間が、もう一度、組
織内のヒエラルヒーに加わって、再編され、世間とは別種の地位的
資格を得、いやしと位置づけの補償を行っている。与党の中に入り
込むことは、それが、ストレートに外部社会の位階とリンクしてい
くことになると感じるのであろう。

問題は、この組織は、池田独裁体制であることだ。苦しみの人々を
引き付けるために、宗教を利用し平和などの美しい理念を唱えてい
るが、その<俗権>への愛欲が強まるにつれ、内容が乖離してきて
いる。今はカリスマとしての押えが、盲目の大衆を引っ張っている
が、池田大作が倒れた後、どうなるのか?
理念の回帰するのか?公明党へ出た<俗権>志向の集団が、あらぬ
方へと、大衆を誘導できるのか? いまだ解からない。それとも世
襲で小法王化し、取り巻きで腐敗させていくのだろうか?

 民主党は、受け皿が無くなった官公労と、自立自発の個のネット
ワークにその主体を移すことになるだろう。そこでは、はっきりと
した組織は期待できない。労組も、ある程度の豊かさの中では、条
件闘争になるのがせきの山である。

 民主党が、これからすべきことは、「秘書」を雇って要望を聞く
ことではなく(どうせ、そんな金は無いだろう。)、それぞれの候
補者(つまり、当選した代議士も次の候補者なのであるから)が、
日常活動ができる<生きた、有意のグループ>をしっかり作ること
だろう。要望を聞くというだけでなく、対話会や、一緒に政策の方
向性を議論することが望ましいのだ。

 投票率は、ここまで下がってしまった。無関心層を選挙の時だけ
振り向かせることは、ますます難しくなるだろう。ならば、有意の
人間の輪を広げるしかない。国会も大事だが、有権者を育てること
が、益々重要性をます。長野の田中は、田舎の隅々まで歩いて、膝
詰め対話を行った。マスコミに出るだけが重要なのではない。一人
一人に本気で語り掛けられるか、説明・説得出来るかが重要だ。幸
い小選挙区制になったのだから、小さな集まりで、利益だけでなく
、理念と現実の政策を共に語れ。そうすることが、日本の進路を<
民>の手に戻す力となるのだ。
                      まとり
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国際戦略コラム 御中
林といいます。

先の衆院選につきいくつか書きます。
総務省は10日朝、衆院選小選挙区の最終確定投票率について、史上
2番目に低い59.86%と発表しました。

投票率が低下していることについては様々な意見があります。ただ
、自分が投票に行かなかったことが何を意味するのかは考えてもら
いたい。

棄権するとは、「自分以外の人の投票結果を無条件で受け入れる」
「投票者全体の意見に賛成する」ということです。

今の選挙の特徴は、年輩者の投票率が高いこと(特に地方)、公明
党などの組織票の割合が大きいことでしょう。

すなわち、棄権するということで年輩者にとって都合の良い政策を
支持する。公明党などの組織を支持する。という意思を積極的に示
たことに他なりません。

もしも、一部マスゴミの尻馬に乗って、俄評論家きどりで政府を糾
弾している人がいたらこう聞こう。「あなたは投票に行きましたか
?」と。

比例定数の削減が急務
今回の衆院選では、憂国議員の落選もありましたが総じて良い流れ
ができつつあるように思います。とりわけ愉快だったのは、政界廃
棄物ともいうべき社・共が一桁代に転落したことです。
二大政党制に移行することは、結構なのですがその際比例区を見直
すことがどうしても必用になります。
惜敗確という考えもあるでしょうが、不的確な人を落選させるとい
うのも選挙が持つシビアな側面です。
落ちたはずのあの人が数時間後には息を吹き返す、これをゾンビ議
員などと揶揄される始末なのは改めなければならないでしょう。
それに比例で当選しておきながら政党を渡り歩く輩が絶えないのも
不信感を招きます。

民主党は選挙前には比例定数の削減を求めるようなことをいってま
したが、自民を上まわる議席を確保したため今後の動きが懸念され
ます。このままでは、政局がどう動こうとも、公明党=創価学会が
キャスティングボートを握り続けることには変わりありません。
これは極めて危うい政治体制です。

これは、例え民主党が政権を取ったとしてもジレンマに陥ることに
なるでしょう。比例当選を多数出した民主党ですが、どのような対
応を取るのか見守っていきたいと思います。

今回民主党があと一歩及ばなかった最大の理由は、政権を取った場
合参議院での審議が大混乱に陥ることを心配した人が少なくなかっ
たからでしょう。

来年の参院選が二大政党制に向かうかの決め手になると思います。
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(Fのコメント)
比例選挙の廃止を主張するなら、1票の格差是正も言うべきであろ
う。比例区で民主党が第1党である理由は、公明党支持者が比例区
では自民党ではなく公明党に得票したためである。その分、自民党
は少なくなっている。もし、公明党が民主党と組めば、民主党が政
権を取っている。

しかし、選挙制度で一番問題なのは、農村と都市の1票の重みであ
る。2倍から3倍も違う。もし都市の議員を2倍にすれば、今選挙
も間違いなく、民主党が第1党になっている。自民党が優位な農村
に票の重みを大きくしているのですよ。

もし、比例区を問題にするなら、この議論をするべきでしょうね。
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 自民党が総選挙に勝ちました。前回と比べて議席が低下、増加と
いう議論はこの際無意味である。政権交代を唱え、公約を片手に堂
々と仕掛けた戦いなら、与党の過半数が崩れなければ民主党の敗北
である。
 
 民主党はやはり党内の意見統一が急務だろう。北朝鮮の危機が存
在する現状で、安全保障問題の方針が一貫しない政党では政権担当
能力に不安がある。非武装中立を唱える水島広子は落選したが、民
主党内には右派と左派が混沌としている。鳩山邦夫が民主党を抜け
たのは民主党の左傾化が理由だった。
 
 安全保障を軽視するのはかなりの問題点である。非武装論などを
唱える左派は社民党にでも行って欲しい。ついでに公明・社民・共
産が合流(実現は不可能だろうがそうすれば社会保障政党になる)
すれば政策本位の3党体制が成立する。
 
 弱小政党には退場してもらいたい。大した議席も持たないくせに
政治討論番組に当然のように出席するのは勘弁して欲しいものだ。
 
 民主党内の大掃除が終わればいよいよ政策本位の二大政党制が成
立する。民主党は頼りないが、公約を前面に出して戦った今回の選
挙の意義は非常に大きかった。
 
                                 久々に投稿 大学二年のY
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(Fのコメント)
自民党も政策面で分裂状態で、小泉さんの民営化を反対したり、高
速道路を全部作ると言う古賀さんが大きな顔しているのですよ。

どうして、そのような自民党の政策不一致を問題にしないであろう
か?自民党も民主党も党内不一致ですが、どうも自民党の不一致の
方が大きいような気がするが、どうか??
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件名:日本の呪いは解けた  

配達されてから二日ほったらかしておいた、最新のフォーリンアフ
ェアズを開いたら朗報が待っていた。Eugene A. Matthews, 
“Japan’s NewNationalism,”NovemberDecember 2003 で日本の「
新ナショナリズム」は古いナショナリズムとは違うのだと指摘して
いる。日本の呪いは解けたのだ。

「靖国は日本のアーリントン墓地であり、戦争犯罪人と並んで日本
国家の最も名誉ある軍人英雄たちが祭られている。だから日本政府
にそれを無視しろというのは非現実的だ」

「日本の世論は、日本政府が戦前や戦中の行為について強要される
謝罪にうんざりしている。今や多くの日本人は、彼らの国家が、
六十年前の行為について、充分に謝罪したと考え、自己主張をする
べきだと思っている」

この論文には写真がついている。誰の写真だと思いますか。石原慎
太郎と小泉純一郎が災害救助演習のユニフォームを着て、語り合っ
ているところだ。これで石原は「古いナショナリスト」から「新ナ
ショナリスト」に格上げされた。つい最近までフォーリンアフェア
ズは彼の政界復帰を阻止するのに汲々としていた。

日本の停滞、逡巡、先送りの背後に日米共同謀議があることがアメ
リカでも判ってきたのだ。いや、ブッシュ大統領が小泉総理に「一
緒に靖国に行こう」と誘った時に、既に判っていた。
01年7月31日の論説で、ニューヨークタイムズが、総理の憲法改正と
靖国参拝に反対し、それをテコにして駐日中国大使と加藤紘一など
が、総理を説得した。後から野中広務が総理に、盧溝橋の抗日戦争
記念博物館を訪問して、「反省」の意を示すように説得した。総理
は圧力に屈して参拝を前倒し(01年8月13日)にしている。

ブッシュが「靖国に行こう」と誘った時は、既に小泉・抵抗勢力連
立ができていて、ブッシュは断られた。これら一連の経過が判って
きたのだ。総理は宮沢喜一を切るために中曽根を道連れにした。宮
沢喜一の相棒として活躍したのが、ハーバード教授のジョゼフ・ナ
イであり、クリントンの国防次官補として、「シビリアン・パワー
」を売り込んでいた。長い暗黒の十三年だった。自民党の利権を守
るために国を売ってきた輩は、これでお終いである。

Kenzo Yamaoka
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「国際戦略フォーラムno.1442.山岡コラム」からの抜粋 

>そこに今の世界の頂点に君臨したキリスト教だとかカトリックだ
>とかの国家・民族のやり方が、すべて最も優れ、最良の思想であり
>文化であり、最高の人間性を実現しているなどと思いこんでいるこ
>とこそ、世界にとってはハナハダ迷惑であり、極論を言えば、世界
>秩序の破壊者であると言ってしかるべきかも知れない。 

現代のキリスト教が、本来の聖書に書かれている通りに実践されて
いるかという点を、少し考えてみたいと思います。 

多くの日本人も知っている、「もし、誰かがあなたの右の頬を打つ
なら、ほかの頬をも向けてやりなさい。」ということばがあります。 
(「マタイによる福音書」第5章第39節) 

アメリカは、「ほかの頬をも向ける」どころか「先制攻撃」をする
ことにしました。これは、誰の目から見てもキリスト教の考え方と
は相容れません。 

この点だけを見る限りでは、キリスト教が世界を破壊しているので
はなくキリスト*教徒*が破壊していると言った方が正確なのではな
いかと思います。 

* * * 
また、次のような記述が、新約聖書「コリント人【びと】への第一
の手紙」第14章にあります。 

 聖徒たちのすべての教会で行われているように、34.婦人たちは教
会では黙っていなければならない。彼らは語ることが許されていな
い。だから、律法も命じているように、服従すべきである。35.もし
何か学びたいことがあれば、家【いえ】で自分の夫に尋ねるがよい
。教会で語るのは、婦人にとっては恥ずべきことである。36.それと
も、神の言【ことば】はあなたがたのところから出たのか。あるい
は、あなたがただけにきたのか。 

この文からは、西洋風の男女平等の考え方は伺えません。しかし、
キリスト教徒たちは、男女平等をうたっています。男女は、本来平
等なのですが、役割が違うことが、聖書では描かれているようです。 

聖書では、神は男性です。「父なる神」(father God)です。しかし
ながら、フェミニスト神学では、"father mother God" と聖書を「
書き換え」ています。 

先日、図書館で女性の書いたキリスト教関係の本を手に取って見て
みました。序文に「聖書に書かれていることは、単にイエスと言う
ヒーローの物語である」というような事が書かれていて、それを読
んだところで先を読む気になれず、書棚に戻しました。 

この本は、キリスト教を批判する内容ではないのは、題名から察せ
られるのですが、「イエスは神の子ではない」という考え方をする
最近のキリスト教の傾向を垣間見ることができました。 

* * * 
この投稿では2つの例を挙げましたが、キリスト教徒の振る舞いが
必ずしもキリスト教的ではないことを知っておいてください。 

ブッシュ大統領はイラク攻撃に関する演説で「私は神の声に従った
」と言ったそうですね。どこの神なのでしょうか...。 
嘆かわしいことです。 

* * * 
私には、現代のキリスト教徒が聖書を忠実に守っているかどうか
甚だ疑問に思えます。 

joe
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(Fのコメント)
キリスト教から離れたために、米国キリストえせ教徒は苦難に出く
わすことになるのであろう。この苦難に日本は、お付き合いする必
要は無いですね。

ブッシュ自身が神と言っているので、オウム真理教の米国版でしょ
うね。キリスト教のような寛大さをイラク侵略戦争から感じられな
い。自己の都合がいいようにしか事態を捕らえない身勝手さしかな
い。これは宗教とは反対のものとしかいいようがない。そして、こ
の事態を聖書が予言している。ハルマゲドンの予言。

その結果は戦争の敗北しかない。イスラム教対米国オウム真理教の
戦いであり、ヨーロッパのプロレスタント教ドイツもカトリック教
主のパウロもフランスもイラク侵略戦争に反対していた。
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件名:イラクで何が間違ったのか  

驚くべき戦後統治計画の不在・米国防総省指導部の“誤算”が主因
進攻の綿密な計画とは対照的

 二〇〇三年五月一日、ジョージ・W・ブッシュ米大統領は、空母
エーブラハム・リンカーンの艦上で、「イラクにおける主要な戦闘
活動は終了した。この戦闘で米国と同盟諸国は勝利を収めた」と宣
言した。今にしてみれば、大統領のこの言葉は尚早に思われ、楽観
的にすぎていたかもしれない。状況悪化については、絶え間ないメ
ディアの報道に加え、ドナルド・ラムズフェルド国防長官が、国防
総省の四人の高官にあてた〇三年十月十六日付の内部メモで、イラ
クやアフガニスタンで事が順調に運んでいないこと、米政府には、
世界的な対テロ戦争で勝ちつつあるのか負けているのかを知る「測
定の基準」がないことを認めた。さらに長官は、どうやってこの戦
争に勝つのか、国防総省には構想も知識もないと吐露している。

 これは、非常に驚くべき展開だ。第二次湾岸戦争における米国と
同盟諸国の特筆すべき勝利の後に来たのは、意外なほどに欠陥だら
けの占領だった。ハイテク機動戦に見事なまでに訓練された米軍が
、戦後イラクでどのように秩序と治安をもたらすかの訓練を受けて
いなかった。米軍は、石油省を保護した以外、同国をのみ込んだ広
範な略奪と組織的な破壊を制止できず、当初はやめさせることに関
心も示さなかった。貴重でかけがえのない文化財が持ち去られ、
六十万d以上の武器が放置された。この中には、五千b離れた所か
ら航空機を攻撃できる地対空ミサイルが大量に含まれていた。
バグダッド空港では、この脅威ゆえに、いまだ民間機の運航ができ
ないでいる。

 進攻に先立つ綿密な立案と戦後の占領計画の不在は、非常に対照
的だ。しかしながら、満足のいく計画はあったのだが、戦争を立案
した影響力あるグループが、その検討を拒否していたのだった。例
えば、〇三年二月には、エリック・シンセキ陸軍参謀総長(訳注・
当時)が、イラクの戦後処理には「数十万人」の米軍部隊が必要だ
と議会で証言した。シンセキの見方は、ラムズフェルドやポール・
ウルフォウィッツ国防副長官などの国防総省の文民官僚らのそれに
、真っ向から対抗するものだった。

小さく効率的にされた軍隊
 ラムズフェルドは一九七五年から七七年にかけフォード大統領の
下で国防長官を務めたが、七七年から二〇〇一年までは民間企業の
重役だった。国防長官として二期目を務め始めた時、彼はより小さ
く効率的な軍隊を提唱、ビジネスモデルを用いた軍の再編の意向を
明らかにした。イラク戦争以来、彼は駐留米軍の規模の拡大に、断
固として反対し続けている。軍事史家のフレデリック・ケーガンは
ウォール・ストリート・ジャーナル紙への寄稿(〇三年十一月十二
日付)で、ラムズフェルドのモデルには大きな欠陥があり、国防総
省の文民、制服組の両指導部の間に少なからぬ緊張をもたらしてい
ると述べている。ラムズフェルドは軍隊を、太り過ぎで非効率、浪
費ばかりしているとみたわけだが、民間企業と軍隊の違いを考慮し
なかった。うまく経営が行われている企業であれば、非経済的な余
剰機能・人員を削減しようとするのだが、軍隊は企業活動ではない
。ケーガンによると、多くの軍幹部は、戦時における“余剰”の重
要性を理解しており、これは「ある一つのシステムが機能しない時
に、別のシステムが確実に取って代われるようにする」ためであり
、未知の挑戦に対応できる力を供給するものだ。

 もし企業経営のように経済効率を追求すれば、ある面で優れてい
る半面、別の能力がないがしろにされる軍隊ができかねない。米軍
は数千マイルも離れた所にある基地から、膨大な数の標的を認識し
、攻撃することが可能だが、この能力にかなう国はほかにはない。
それにもかかわらず、同じ軍隊がイラクでは、全体の作戦遂行を危
うくするゲリラ的な攻撃を防ぐことができないでいる。

 軍隊を企業経営に近づけようとするラムズフェルドのコミットメ
ントは、ブッシュ大統領の減税策に通じるものがある。米国が宗教
も文化も言葉もまったく異なる人々と戦争をする、まさにその時に
なって大統領は史上最大の財政赤字をつくり出し、さらに戦争遂行
のための財源を大幅に削減した。保守系エコノミストの中には、こ
の赤字によって社会保障(ソーシャル・セキュリティ)や高齢者医
療保険(メディケア)といった政府の社会保障制度をだめにする、
あるいは大幅な縮小を余儀なくされるのは間違いないと論じる者も
いる。これらの制度は中流階層には好評だが、右派の共和党は快く
思っていない。不幸なことに、こうした赤字によって、米国が地球
規模の責任を果たすのに必要な軍事力を維持することがますます困
難になる。

新保守主義派に共通の“楽観”
 ラムズフェルドの経済効率を追求する性向は、ウルフォウィッツ
やリチャード・パール(訳注・元米国防次官補)といった新保守主
義派の楽観的な見方と一致している。彼らは、軍事的な勝利とそれ
に続く民主的なイラクの誕生で石油資源が復活し、早ければ二〇〇
三年末にも、戦費や復興の費用を賄えるようになるとしている。新
保守主義によれば、新生イラクは、中東全体のモデルとなるという
。彼らの見方は、戦後イラクの指導者候補で、何かと議論のあるア
ハマド・チャラビに負うところが大きい。中央情報局(CIA)や
国務省の専門家らは、新保守主義派のシナリオに甚だ懐疑的だった
が、いつものように無視された。不幸なことに、国防総省で同地域
の歴史や宗教、文化に関する相当の知識を持っている者は、たとえ
いたとしても、ほんのわずかだ。このことは、イラクの主要勢力の
激しい反対にもかかわらず、トルコに派兵させようとした最近のぶ
ざまな試みでも明らかだ。米国の無知に加え、信頼できるアラビア
語通訳の不足により、情報収集が大幅な制約を受けている。

 米軍がなぜイラクで困難を経験しているか、ほかにもいくつか理
由はあるが、筆者の考えでは、これまでに述べてきたことが最も重
要なものだ。筆者はイラク戦争をめぐるブッシュ大統領の決断を今
も支持しているが、戦後統治の計画の不在にがく然としている。
 戦争に負けているということは決してない。だが、国防総省の指
導部の誤算と彼らが他人の意見に耳を貸さなかったことで、戦争は
長期化、複雑化しているのだ。
米ブリッジポート大学名誉学長 リチャード・L・ルーベンシュテ
ィン 世界日報 ▽掲載許可済です
Kenzo Yamaoka
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件名:対イラク戦略の難しさ指摘する主要紙  

イスラエル/ブッシュ演説を大筋で歓迎する一方、対イラク戦略の
難しさ指摘する主要紙
「中東民主化」の一環
 テロの頻発を受けてイラク情勢が混迷を深める中、ブッシュ米大
統領は六日、対イラク政策をめぐり演説、イラク駐留の継続と「中
東の民主化」の必要性を訴えた。
 大統領は、中東のアラブ諸国は、「自由がなく、ねたみが支配し
、暴力を輸出し続けている」とイラン、シリアなどを非難、「欧米
諸国は中東の独裁政権と協力してきたけれども、…これが欧米の安
全に寄与しないことが明らかになった」とした上で、「米国は新し
い政策、中東に自由をもたらすための政策を取ることにした」と語
り、イラク進攻が「中東の民主化」の一環であることを改めて強調
している。

 これに対しイスラエル主要紙は大筋、歓迎を表明。一方で撤退し
たくともできない米政権の厳しい事情を挙げながら、ブッシュ大統
領の対イラク戦略の難しさを指摘している。

 国際問題グローバル研究所のバリー・ルービン所長は保守系紙エ
ルサレム・ポストでのコラムで、「民主主義は重要なテーマ。だが
、うまくいくだろうか」とイラクでのブッシュ戦略に疑問を呈した。

 米国は、フセイン政権残存勢力などの活動家の摘発を続ける一方
で、住民の反発を恐れ、イラク住民に対しては厳しい姿勢で臨むこ
とを控えている。

 ルービン所長は「米国の問題は、米国が荒々しい態度を取り、帝
国主義的であることではない。優し過ぎることだ」と指摘、「シリ
ア、イラン、イラクの治安機関が取ってきたように無慈悲になれれ
ば、反乱分子を容易に発見できるだろう」としている。 

イラクの将来を悲観 
 それができないところに、米国の苦悩があるというのだ。自由と
民主主義を支持すればするほど、過激組織摘発は困難という矛盾に
陥らざるを得ない。

 ブッシュ大統領は「中東諸国の政府は現実に立ち向かい、国民の
真の利益のために働くべきだ」と、中東諸国に対し独裁主義からの
決別を求める。

 湾岸諸国などで、民主化の動きはゆっくりだが着実に表れている
。ブッシュ大統領の演説はこれらの諸国を視野に置きながら、イラ
クが独裁政権を脱するための変革を起こすことを求めたものだ。

 また、ラリー・ダフナー氏はエルサレム・ポスト紙に寄せたコラ
ム「ブッシュのイラク脱出戦略」で、「失敗はあり得ない。だが、
問題なのは、成功もしないかもしれない、ということだ」と、イラ
ク情勢の難しさを指摘した。

 「イラクはフセイン支持者、アルカイダ、その他の米国の敵対勢
力を鎮圧し、平和な国として自立できるだろうか。中東の現状を見
る限り、可能性はなさそうだ」とイラクの将来に悲観的な見方を取
っている。

 ブッシュ大統領は当初、中東問題に対してほとんど関心を示さな
かった。ところが、同時多発テロを通じて、中東に目を向けざるを
得なくなる中で、対外的な干渉と親イスラエルを主張する新保守主
義者(ネオコン)に傾斜していった。 

打算の産物との指摘 
 ダフナー氏は「短期間でイラクが安定した民主国家になれるなど
、大統領が思っているはずがない」と言う。

 また「ただほかに選択肢がなかったから、ネオコンのアドバイス
を受け入れ、民主化をイラク進攻の最後の言い訳とした」と、イラ
ク進攻がブッシュ大統領の打算の産物と指摘する。

 仏独ロなどは、早期のイラクへの権限の移譲と国連の役割の強化
、米軍の撤退を訴える。
 米軍の駐留がテロを引き起こしている一方で、米軍の撤退は反乱
分子の横行を許し、国内の混乱を招きかねない。そのような事態は
、誰も望まない。世界日報 ▽掲載許可済です
Kenzo Yamaoka
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件名:「遊牧民族のリーダーシップ」  

「遊牧民族のリーダーシップ」
 日本民族が海外から様々な文化を受け入れながら、その影響を受
けなかったものの一つに、去勢の制度・宦官(かんがん)がある。
王宮の後宮で働く宦官は、中華文明に付きものだったが、韓半島か
ら日本へ伝播(でんぱ)した形跡はない。
 これは、昔から日本には、海外の新技術や知識・制度・思想を無
批判に受け入れたのではなく、日本の伝統文化や倫理意識と照らし
合わせて取捨選択をしたことをうかがわせるものである。

 圧倒的な先進文明の恩恵に浴していながら、それでも自国の主体
性を手放すことがなかった古代日本人は、現代の政治家よりもした
たかで国際性に富んでいた見識を持っていたといえるかもしれない
。 森浩一対談集『古代は語る』(河合出版)では、去勢は牧畜を
主とする遊牧民族が家畜のコントロールのために発達した技術が、
人間にも適用された例ではないか、と対談相手の松原正毅氏が指摘
している。

 「牧畜の中で、去勢というのはたいへん重要な技術だっただろう
と思います。群れをコントロールするという意味で、去勢が牧畜の
管理技術の中のいちばん重要な部分だった。これが発明されたこと
で群れをコントロールすることが可能になったといってもいいほど
です」

 遊牧民は、家畜のエサとなる草を追って移動する。そのためには
、強力なコントロールによって家畜を管理しなければ、自分たちの
生存が脅かされてしまう。そのような危機意識が去勢技術によるリ
ーダーシップを発達させたのだろう。

 去勢された家畜は従順になる。そうでなければ、群れから離れて
勝手な行動を取る。遊牧民にとっては死活の問題だった。そこから
強力なリーダーシップも生まれたと言えよう。

 しかし、そうした強力なリーダーシップを中心とした家族や氏族
を中心とした群れを形成したために、部族から国家への経路は、な
かなか難しかった。 

 その意味で、チンギス・ハーンがモンゴルを統一したのは希有(
けう)のことである。
 (鷹) 世界日報  ▽掲載許可済です
Kenzo Yamaoka
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件名:「少年非行対策の推進」を急げ  

年々凶悪化する少年の犯罪・政府検討会「提案」の早急な実現を
「公衆を保護」する新しい観点

 政府の「少年非行対策のための検討会」は過般九月十八日、十四
歳未満の犯罪でも警察が「捜査」を行うようにすべきとする「少年
非行対策のための提案」をまとめた。政府は少年非行の緊急対策を
具体化する方針である。

 これまでのように少年の保護一辺倒でなく、凶悪化する少年犯罪
から「公衆を保護」するという観点を明確にしているのが特徴とな
っている。

 提案は十四歳未満の少年による事件に関して、@少年法の目的で
ある「性格の矯正」につながる自己責任を自覚させるためにも、十
分な捜査あるいは捜査に準じた調査により証拠を確保し、事実を十
分解明することが罪を認識させることにつながるA正確な審判のた
めにも証拠の確保は必要で、このことは少年自身の利益にもなる――
との見方を提示している。

 十四歳未満であると分かったとたん、警察が手を引かざるを得な
いということは、関連事件の解明も中途半端となり、地域住民の不
安感は解消しない。

 これに対し、日本弁護士連合会は十月十六日、「これまでの少年
司法・非行対策が根底から覆されかねない」として、「提案」の内
容を政府が採用しないよう求める意見書を公表した。

 「提案」は少年犯罪からの「公衆保護」をメーンに置いたものと
いえるが、日弁連は「公衆保護」目的化が少年法の基本理念を覆す
ことや、少年審判の非公開原則の見直しが少年の健全育成を損なう
ことを指摘し、「提案」が少年犯罪についての誤った認識に基づく
ものであるなどと批判している。

強い孤独感を抱く子供たち
 長崎の男児誘拐殺人事件が中学一年(十二歳)の少年による犯行
だったことは、日本中に大きな衝撃を与えた。少年犯罪は、戦後最
悪のレベルに達し、刑法犯少年は百人当たり一・六七人とされてい
るが、検挙されない少年も含めると約十倍になるとみられている。

 最近の特徴は、凶悪犯が増加し、特に殺人、強盗が急増している
一方で、喫煙・深夜の徘徊(はいかい)などで補導された不良少年
も、この上半期、統計を取り始めて以来最高に達していることだ。

 現今の社会はモラルなき自由が横行し、子供たちは、よるべき価
値観がなく、強い孤独感を感じざるを得ない状況に置かれている。

 「援助交際」という少女売春は、孤独感や疎外感と表裏一体の関
係にあり、家族との心の結び付きが乏しく、心のよりどころがない
ことが原因している。薬物依存者の多くも「自分は愛情を受けてこ
なかった」など、心に壁をつくったり、恨みを抱いたりしている若
者たちで、強い孤独感の中で心のよりどころを求めている。

 動物の惨殺事件も全国各地で発生しているが、反社会的人格障害
と診断された犯罪者の多くが、少年期の十五歳前後に動物虐待をし
ている。長崎での殺人少年、神戸事件の少年や宮崎勤被告、全国に
大きな衝撃を与えた「女子高生コンクリート殺人事件」を起こした
少年たちも、動物を虐待していた。

 現在子供たちの心には、孤独感や疎外感、あるいは憎悪、怒りと
いった負の破壊的感情が広がっており、しかも、良心が育っていな
いために、容易に非行や犯罪に結び付くようになっている。

 問題行動を起こす子供たちの多くは、自分をダメな人間だと思い
込んだり、存在感を実感できずにいたりする。自尊の感情や存在感
は、親から人格を尊重され、認められ、無条件に受け入れられた経
験が必要であるといわれている。

今こそ“家庭の復権”が必要
 少年犯罪が凶悪化した要因には、規範意識の確保が崩れてきたこ
とが大きい。離婚率と少年犯罪の発生率、特に少女の犯罪・妊娠中
絶率は驚くほど相関している。

 また女性の社会進出と犯罪率の増加にも相関関係があるとされ、
働きながらでも母親が子供と触れ合う時間を持てるような環境を整
備することが必要である。今こそ家庭の復権を進めることが必要で
あり、温かい家庭を築くことが犯罪抑止に最も効果的である。

 今日の少年犯罪の凶悪化にかんがみ「提案」は早急に実現されな
ければならず、その推進は国民大多数の意思ではないだろうか。
弁護士 秋山 昭八 世界日報▽掲載許可済
Kenzo Yamaoka


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