1436.<国民主権と選挙>と木村コラム



<国民主権と選挙>

 国民主権(主権在民)…いわゆる主権は、<民主主義>を意味す
るが、その観念は、多様な形成過程にからみ、また、多義的な<民
主主義観>が存在し、説明を複雑なものにしているところがある。
また、国家主権については、別の問題があるので、論を分けて考え
たい。

 <主権>を、ごく、本質的に言えば、<自律と自己決定権>…自
分に関することは、自身に決定権があるということだろう。

 しかし、現実の<国>という枠組を考えた場合、「<主権>とは
、国家権力の淵源を形造る上での擬制(フィクション)である。」
ということも支持されている考え方だ。
 逆に言えば、主権がフィクションだあるからこそ、「象徴天皇制
」が機能しているとも言えるだろう。
祖霊神の祭主(あるいは依り代としての聖体)であり、国民意識の
焦点として天皇は機能するだろうし、だからこそ、歴史的にそうで
あったように、<俗権>から分離しておくことが望ましいのである
。(古代天皇政治と、幕藩体制以後やはり擬制された、天皇主権に
ついては論争のあるところだろう。しかし、近代過渡期の制度では
なく、<現在>を踏まえた論議こそ必要なのである。)

<国民主権>は、やや、特殊な場合を除いて、代議制をもって、権
力を行使されるとしている。
だから、主権の意識を持てない人間が、たくさんいるのも事実である。
<選挙>を通じての代議士を選択することのみが、ほとんど可能な
主権の行使であるからだが、そして、完全な選挙方法というのも存
在しないからである。いったん選挙で預託してしまった主権は、今
度は法を通じて、「決め事に対する賛成・反対にかかわらず、メン
バー(構成員)を全員残らず拘束する」という社会契約として現れ
、被支配者としての国民の上に行使されるからである。

 実は、投票率は、アメリカでさえ、40%〜50%ぐらいしかな
い。その内の過半数…総有権者(しかも、総構成員ですらない)の
25〜20%で総意とされる訳である。
先の埼玉参議院補選は、投票率は27〜28%であったはずだ。そ
の過半数は、15%未満…。これでは、多数者の意見による、全体
の支配というフィクションさえも確保されない。(棄権は投票者側
のまさに「自由からの逃走」以外なにものでもない。それは、白紙
の委任状になる。「もう、どうにでもして〜。」か?)

6・70年代の大学紛争以降、急速に学校も家庭も、子供達が政治
と社会を考えることを避けさせてきた。
そのツケが、<自己決定>ができない大量の人間を生み出している。
言わば、積極的に民主主義を形骸化させてきたのである。(民主主
義と議会制度は、歴史の始めから一緒だった訳ではない。むしろ、
貧乏人によるアンシャンレジュームの変更は、暴力的であった。
しかし、その後、議会に活路を見出したという経緯がある。対抗概
念は自由主義であった。)

<国民主権>の考察には、歴史社会的、法(特に憲法)、政治(権
力の構造)、人権、選挙、メディア、等様々なアプローチがある。
詳しく述べると何処までも長くなる…。

また、プラトンの批判を持ち出すまでもなく、衆愚政治、ヒットラ
ーが生まれたワイマール憲法が、当時進歩的と言われていたにもか
かわらず(いや、進歩性故にか?)独裁政治を生み出した。名称は
、朝鮮民主主義人民共和国を名乗っているにもかかわらず、おぞま
しい独裁国家もある。
それほどに、現実は、理念の単純な反映ではない。

 歴史的に言えば、現代デモクラシーは、フランス革命、アメリカ
の独立等を通じて、形造られてきた。
基本的には、1789年に発表された、フランス人権宣言の第一条
「人は、自由かつ権利において平等なものとして出生し、かつ生存
する」という思想に因っていると言っても過言ではないだろう。
ただし、ここでの「人」には、女性すらまだ含まれていなかったが…。
そして、様々な歴史の経緯の上で、その<権利>の拡大につとめて
きた上での、<現在>というものが存在する。

 共産国家などにあった、民主集中制は、また違う考えへと派生し
ていると考えられる。自己決定よりは、<指導>概念が強いからだ
。よく、民主政治は、衆愚化するというが、<哲人指導者>による
国家経営の変形が、こうならないと保証できるのか?そもそも、<
一つの原理>を押し付けることに、危機感を感じないのだろうか?
国家社会主義=全体主義=個と少数の圧殺、の危険は、常に存在する。

生物は、多様性を保持する戦略で、生き残ってきた。<一つの強い
原理>で突き進むより、<揺れ動き模索しながら対応する>方が、
進み方は遅くとも、生き残れる可能性は高い。
うずくまっては駄目だが。
政治においては、<ある理想>をこの世に実現させることは、危険
である。しかし、<理想の方向への運動>は、絶え間なく行わなけ
ればならないというパラッドックスがある。

 国民主権は、<国家>と<民>の関係の問題でもある。
歴史的に見れば、「公共」publicとは、政府・国家のことではなく
、市民社会の自律的な概念から生じている。
だが、日本では、「公」は「お上」から来ているとしか思えない。
<憲法>というものの本質は、国家=政府=統治者の行動を縛り・
制限するための法律である。
逆に一般法は、主権を(選挙によって)預託された議会・政府が、
法によって国民の行動を、公共の為に制限・あるいは作動させるも
のと言ってもいい。
両者は、交感神経と副交感神経のように、緊張関係のようにあるこ
とが望ましいのだろう。

民主主義とは、一人一人が<声>を持つことで担保されていることだ。
西洋的市民と日本的市民の感覚が違うことはしかたのないことだが、
「人間の根底にある、お互い違った人間だけど、深いところで繋が
り会おうとする気持ち」を共有した、裸の人々。であることはでき
る。(これは、仏教の思想にも通じる。)
日本における自由民権運動は、1877年の立志社から多くの運動
となって現れた。
しかし、戦前までの多くの治安律法によって圧殺されてきたのも事
実である。そして、また、世界の中で、民主制だけが、唯一の正当
な政治体制であると言いきれないことも事実だ。
民主主義(自分達の、自分達が必要とする形での)を選び、確保し
て行くのは、自身の努力でしかない。

そして、 今、アメリカの鋭意な人は、アメリカの民主主義を危ぶ
んでいる。
アメリカでは、小学校で、「あなたにとって、民主主義とは何か」
というコンテストすらあるそうだが、(それだけ、民主主義観が多
様ということだろう)やはり、それでもコントロールは可能なので
ある。政府への批判・チェック機能が麻痺、あるいは、巧妙な世論
誘導が行われるようになると危険でもある。(世論誘導技術を科学
的に発展させた最初は、ナチスドイツだと言われているが、昨今の
宣伝・広告技術の発展は、様々な使われ方をする。)それゆえに、
マスメディアと政権の緊張関係は必要になる。大政翼賛化した社会
は、おうおうにして悲劇へ突っ走る。また、インターネットという
媒体が、今後どう作用していくか、興味深いところだ。

 メディア論と民主主義は、切り離せないものの一つだ。
わたしは、メディアが、自らの意見を持つことに反対というわけで
はないが、(なぜなら、新聞の発達史というものは政府政策に対す
るあら捜しの側面、良く言えばチェック機能であり、また、完全な
中立性などは、蜃気楼のようなものであり、ものの表現という観点
に立てば、編集権(切り取りと視点)から、それを除外することの
方が不可能であるからだ。
だからこそ、個人の側が、自分の尺度を持つ必要が重要である。

 人は、様々な「間違い」を犯す。だが、それを含めて、人間社会
というものが成り立っている。
そして、<人>は、<人>以外にはなれないのだ。
願わくば、<自律と決定>に参加し、<人間社会>が、どうあるべ
きかに苦悩するべきだろう。だから、せめて、<選挙>ぐらいは行
こう。
先人が、いかにして、この権利を獲得したかの<歴史>を知れば、
疎かにできないものに感じるはずだ。

<いのち>は、呱々の声を上げて、この世に出現してくる。それは
、この世へ、参加する為の、はじめの決意かもしれない。
                          
                    まとり
==============================
『亜空間通信』680号(2003/11/31)
【米歴史見直し論者マハティール演説賛同しシオニスト法師クーパー謝肉祭示唆強烈
皮肉に一部留保】

 注記:本号は、以下に見出しを並べる『亜空間通信』前々回の678号と前回の679号
に続く連載記事の位置付けである。わが電網宝庫の方の679号には、話題の主のマハ
ティールの映像も入れてある。
 
1)・・・・・・・・・・・・・・・・・
---------- 引用ここから ----------
http://www.jca.apc.org/?altmedka/2003aku/aku678.html
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/662.html
『亜空間通信』678号(2003/10/22)
【イスラム長老マハティール演説を概略すら報ぜずイスラエル寄りで斬った似非紳士
朝日の深層】
[後略]
---------- 引用ここまで ----------

2)・・・・・・・・・・・・・・・・・・
http://www.jca.apc.org/?altmedka/2003aku/aku679.html
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/1071.html
『亜空間通信』679号(2003/10/26)
【「ユダヤ人は代理人を使って世界を支配」批判でシオニストの攻撃を呼んだマハテ
ィール演説】
[後略]
 ---------- 引用ここまで ----------

 本号では見出しの締めに、いきなり、「謝肉祭」示唆強烈皮肉と記したが、キリス
ト教の歴史の予備知識がないと分かりにくい皮肉なので、まず、この「謝肉祭」の意
味を、文脈を示すことによって解説する。
 
 アメリカの歴史見直し論者による英語の原文の該当箇所は、以下である。
---------- 引用ここから ----------
http://www.bvalphaserver.com/postt26720.html
http://www.biblebelievers.org.au/nl296.htm
Bible Believers' Newsletter #296
[中略]
 The best antidote to this Zionist liars' carnival is to distribute the
actual text of the speech in question.
[後略]
---------- 引用ここまで ----------

拙訳:「このようなシオニストの嘘付きの謝肉祭(カーニヴァル、バカ騒ぎ、大浮か
れ、狂乱)に対する最良の対抗策(解毒剤から発し、矯正、手段、対策)は、問題の
演説の原文を広めることである」。

 謝肉祭は、処刑されたイエスが蘇ったと称する復活祭の前夜祭に位置付けられるか
ら、この言葉を使うこと自体に、ユダヤ教徒への皮肉が込められているのかもしれな
いが、そこまでは断定できない。
 
 マハティール演説の全文を読むことの重要性に関しては、冒頭に注記したごとく、
「連載記事の位置付け」の前号で、日本の「代表的な商業新聞」、似非紳士朝日の取
り扱い方を、厳しく批判した。


 上記の原文の投稿の主、「アメリカの歴史見直し論者」こと、ミッチェル・ホフマ
ン2世(Michael A. Hoffman II)とは、会ったこともなく、電子手紙のやり取りをした
こともない。しかし、かなり前から、彼の電網宝庫情報については、アメリカやイギ
リスの歴史も直し論者たちからの紹介も受け、何度か覗いてきた。写真も見ている。
夫婦と小さな子供が一緒の一家の写真もある。まだ40歳前後の若さのようである。私
の子供の年頃である。父親のミッチェル・ホフマン1世と一緒の写真も掲載されてお
り、父親は私と同年代と見受ける。
 
 以下に、彼の自己紹介が入っている。
 
---------- 引用ここから ---------- 
http://www.hoffman-info.com/persona.html
The Campaign for Radical Truth in History P.O. Box 849, Coeur d'Alene, Idaho
83816

Hoffman In Person
[後略]
---------- 引用ここまで ----------
 
 しかし、国籍も年齢も違ってはいても、お互いが歴史も直し論者だから、共通の予
備知識がある。とりわけ、以下のわが投稿の「破戒糞法師クーパー」に関する認識は、
完全に一致している。

---------- 引用ここから ----------
無様な仕掛け人破戒糞法師クーパーとはマルコポーロ廃刊事件の記者会見で会った。
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/629.html
投稿者 木村愛二 日時 2003 年 10 月 22 日 11:05:29:CjMHiEP28ibKM
(回答先: [ユダヤ支配発言報道は文脈無視] マハティール氏が反論←ユダヤ名誉毀損
連盟「ADL」の抗議圧力効果なし。あはは 投稿者 スーパー珍米小泉純一郎 日時
2003 年 10 月 22 日 10:42:40)
 無様な仕掛け人の極右シオニストの手先、破戒糞法師のクーパーとは、1995年春、
マルコポーロ廃刊事件の記者会見で会った。
 脂ぎった実に不愉快な下品の見本のような糞坊主の典型だった。
---------- 引用ここまで ----------
 
 クーパーは、以下のBBC報道のごとく、ユダヤ名誉毀損連盟「ADL」の資格で、マハ
ティール演説の即座に噛みついたのである。曰く:拙訳:「マハティールの本日の演
説はユダヤ人に対するさらなる憎悪犯罪とテロリズムへの純然たる招待である」
 
---------- 引用ここから ----------
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/3196234.stm
[中略]
Mahathir's speech today is an absolute invitation for more hate crimes and
terrorism against Jews

Rabbi Abraham Cooper
Simon Wiesenthal Centre
[後略]
---------- 引用ここまで ----------

「ADL」の戦闘部隊の「サイモン・ウィーゼンタール・センター」は、シオニストの
対日謀略、大手メディア対策の中心である。クーパーは、何度も日本に来ており、拙
著、『アウシュヴィッツの争点』には、以下のように記した。

---------- 引用ここから ----------
http://www.jca.apc.org/?altmedka/aus.html
『アウシュヴィッツの争点』
ユダヤ民族3000年の悲劇の歴史を真に解決させるために
[中略]」
http://www.jca.apc.org/?altmedka/aus-66.html
「経済大国日本の国際世論への影響」を重視し「交流」を予定
[中略]
クーパーは日本での実態調査を土台にして、つぎのような「予定」を立てていた。
「クーパー師は、近くこうした調査結果をまとめて関係団体、議員らに連絡する。同
時に『経済大国日本の国際世論への影響が大きくなっている』ことを重視、今後、米
国や日本でユダヤ人問題のシンポジウムを開催したり、日本人をユダヤ人家庭に招く
などの交流を呼びかける」
[後略]
---------- 引用ここまで ----------

 ただし、以下のごとく、歴史見直し論者の中には、私と同意見の「留保」もある。
拙訳は、「私はマハティール演説を読み、ホロコーストに関するたわごとを除けば、
そのすべてに賛同する」である。

---------- 引用ここから ----------
http://www.biblebelievers.org.au/nl296.htm
Bible Believers' Newsletter #296
[中略]
Having read Dr. Mahathir's speech I agree with everything he said except the
holocaust baloney.
[後略]
---------- 引用ここまで ----------

「ホロコーストに関するたわごと」(holocaust baloney)に相当するのは、以下の拙
訳の中間の部分である。


---------- 引用ここから ----------
http://www.jca.apc.org/?altmedka/2003aku/aku679.html
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/1071.html
『亜空間通信』679号(2003/10/26)
[中略]
39.(この部分は全訳)われわれは実際には非常に強力なのである。13億人の民は簡
単には一掃できない。ヨーロッパ人は1千2百万人のユダヤ人(ユダヤ教徒)の内の6
百万人を殺した。しかし現在、ユダヤ人は代理人を使って世界を支配している。彼等
は、他の者が自分たちのためにに戦って死ぬようにしている。
[後略]
---------- 引用ここまで ----------

この39.の原文は以下である。

---------- 引用ここから ----------
39. We are actually very strong. 1.3 billion people cannot be simply wiped
out. The Europeans killed 6 million Jews out of 12 million. But today the
Jews rule this world by proxy. They get others to fight and die for them.
---------- 引用ここまで ----------

 私は、以上の部分を原文に忠実に訳し、特に自分の解釈は付け加えなかった。しか
し、マハティールが、「ホロコーストの大嘘」を知らないわけはないのだし、聴衆の
イスラム諸国の首脳も同様である。私は、もともと個人崇拝は好まないし、マハティー
ルにも、政治家の「古狸」の要素ありと見ている。

 マハティールは、上記のような留保をも含めて、議論を呼ぶことを狙ったと考える。
全文を、少なくとも、わが抄訳を読み、大いに議論されることを願うものである。
 
 以上。
木村愛二:国際電網空間総合雑誌『憎まれ愚痴』編集長
==============================
『亜空間通信』679号(2003/10/26)
【「ユダヤ人は代理人を使って世界を支配」批判でシオニストの攻撃を呼んだマハテ
ィール演説】

 注記:本号は、前回の以下の『亜空間通信』678号に続く連載記事の位置付けであ
る。

---------- 引用ここから ----------
http://www.jca.apc.org/?altmedka/2003aku/aku678.html
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/662.html
『亜空間通信』678号(2003/10/22)
【イスラム長老マハティール演説を概略すら報ぜずイスラエル寄りで斬った似非紳士
朝日の深層】
[後略]---------- 引用ここまで ----------

 マレー半島を占領したこともある日本が敗戦した時には20歳だった勘定になる78歳
の超著名なイスラム・アジアの長老政治家が、10月末に引退すると表明し、自国が主
催地のイスラム諸国の首脳会議の冒頭に、演説したのである。これまでのマハティー
ルの政治的位置、最近の発言などを知る者ならば、当然、目下の重大局面に際しての
蘊蓄を傾けた演説になると思うはずである。当然、日本人も、全文を読むべきである。

私は、この演説の英語の全文を読み、一世一代の声涙ともに下る大演説と評価し、世
界中に転送した。アメリカへはもとより、マレーシアとは一衣帯水の関係のオースト
ラリアの友人にも送ったが、その直後に、以下の電網宝庫情報が出現した。

http://www.melbourne.indymedia.org/news/2003/10/56392.php
メルボルン独立メディアセンター
マハティール演説
2003年10月20日(月曜日)午前8時50分(投稿の時刻)
攻撃を呼んだマハティール演説の全文

 英語の原文の全文は、以下に入っている。

Prime Minister's Office
Putrajaya 
http://www.bernama.com/oicsummit/speechr.php?id=35&cat=BI

 しかし、この大演説、もしくは、すべての諸宗派の宗教家、顔負けの名「説教」は、
いまだに、その全文の訳出の例を見ない。外務省の担当者は読んだというが、訳して
はいない。マレーシア大使館の日本人の広報官に聞いても、やはり、訳していない。
そこで、仕方なく、以下の拙訳を広める。

 これを読んだだけでも、シオニストの攻撃や、それに従った似非紳士、朝日新聞の
報道が、いかに無礼な、お粗末な「ものだったかが分かるであろう。

以下は、わが抄訳(ただし主要部分は全訳)

写真:演説の前に時計を見る首相

1.〜6.(この部分は極めて概略の解説)アラーへの感謝に始まるマレーシア政府と国
民の代理としての礼儀正しく格調の高い主催地代表挨拶。

7.(この部分は全訳)全世界は今、われわれに注目している。世界の人口の6分の1を
占める13億人のイスラム教徒は、たとえ彼等が、イスラム教とイスラム教徒の名誉の
回復の進路を定めるための、そして、少なくとも、彼等の兄弟や姉妹が現在被ってい
る抑圧と屈辱から解放するための、われわれの決意と能力に対して懐疑的ではあって
も、確実に、この会議に参集したわれわれに希望を託している。

8.(この部分は全訳)私はあえてここでは、屈辱と圧迫の具体例を数え上げず、われ
われを誹謗中傷する者や圧迫者への非難を繰り返さない。われわれが何度非難しても、
彼等は一向に態度を変えようとはしないのであるから、非難は不毛な行為に終わるだ
けなのである。われわれが、もしも、自分たちとイスラム教、われわれの信仰の尊厳
を回復したいのであれば、決断しなければならないのは、われわれ自身であり、行動
しなければならないのは、われわれ自身なのである。

9.(この部分は抄訳)イスラム諸国の政府は、すべてについてではなくとも、たとえ
ば最も重要な議題の1つであるパレスチナ問題について、結束を固め、共通の基盤を
確認することができる。われわれは皆、イスラム教徒である。しかし、これまでには、
足並みを揃えようと試みたことがなかった。

10. (この部分は抄訳)政権が分裂しているだけでなく、イスラムの宗派も何度も分
裂を繰り返している。1400年間にわたって、数千もの分派が生じ、時には殺し合って
きた。

11. (この冒頭の部分は抄訳)われわれは、それぞれが自分たちのみが正しいと主張
する分派に分裂する状況を許してきた。(以下の部分は全訳)われわれは、われわれ
を誹謗中傷する者や圧迫者たちが、わえわれのそれぞれが本物のイスラム教徒である
か否かを、まるで気に掛けていないことに、注目を払ってこなかった。彼等にとって
は、われわれはすべて、信仰に従い、テロの推進を教えていると彼等が宣伝する預言
者に従う許し難い、神に誓って滅ぼさねばならぬ敵であった。彼等は、われわれを攻
撃し、殺し、われわれの土地を侵略し、われわれの政権が、たとえスンニ派であろう
と、シーア派であろうと、アラワイト派であろうと、ドゥルーズ派であろうと、何で
あろうと、構わずに破壊する。それなのに、われわれは、互いに攻撃し合い、互いを
弱め合うことで、彼等を助けたり、煽動したりし、時には彼等の命令に応じたり、代
理人としてイスラム教徒の仲間を攻撃したりする。われわれは、暴力で、自分たちの
国の政権を破壊したりして、自分たちの国を弱めたり、貧しくしたりする。

12. (この部分は抄訳)われわれは、イスラム教の教えをまったく無視している。

13. (この部分は抄訳)しかし、われわれが無視してきたのは、以上のことだけでは
ない。知識を得ることに関して言えば、初期のイスラム教徒は、ギリシャその他のイ
スラム以前の学者の業績を学び、それに自分たちの研究の成果を加えてきた。

14. (この部分は抄訳)初期のイスラム教徒は、偉大な数学者、科学者、医学者、天
文学者などを生み出した。イスラムの世界は貿易の中心で、豊かで、自分たちの暮ら
しを守ることができた。その時期、中世のヨーロッパは迷信に閉ざされ、後退してい
た。ヨーロッパ人は、学問的な遺産を受け継ぐために、イスラムの学者の足下に、ひ
ざまづかなければならなかった。

15. (この部分は抄訳)その時期には、優れた指導者が沢山いたし、十字軍の侵略か
らイスラム世界を守り抜いたサラデーィンのような戦士もいた。

16. (この部分は抄訳)しかし、イスラムの偉大な文明の建設過程の途中で、信仰だ
けに関する教条的な解釈が横行し、科学や医学の研究が疎かにされた。

17. (この部分は抄訳)イスラムは知的に退歩し始めた。知的退廃とともに、イスラ
ム文明は、よろめき、しおれ始めた。オスマン・トルコ帝国の戦士たちの出現がなけ
れば、グラナダ陥落によって、イスラム文明は、消滅したかもしれない。

18. (この部分は全訳)オスマン・トルコ帝国の初期の成功は、知的な復興を伴わな
かった。むしろ逆に、細いズボンや尖った帽子がイスラム的であるとか、印刷機の導
入やモスクの照明の電化の是非などの枝葉末節の議論へと、ますます矮小化し、狭い
狂信が蔓延した。イスラム教徒は、産業革命から完全に取り残された。このような退
歩は継続し、その果てには、イギリスとフランスによるトルコの支配に対する反乱の
唆しに始まり、オスマン・トルコ帝国と最後のイスラム諸国家の権力の崩壊へと進み、
ヨーロッパの植民地の支配に置き換えられ、独立の約束は果たされなかった。それら
の植民地が独立できたのは、第2次世界大戦後でしかなかった。

19. (この部分は抄訳)国民国家の形式とは裏腹に、われわれはまた、ヨーロッパ流
の民主主義を受け入れた。この政治制度がまたしても、イスラム教を奉じたり、拒否
したりする政党と集団の抗争によって、われわれを分裂させた。彼等は暴力に走り、
イスラム諸国を不安定にし、弱めた。

20. (この部分は概略の抄訳)このような数世紀にわたる経過を経て、イスラム文明
は衰退し、一時は、ヨーロッパ人の植民地または支配下でない国が、まったくなくなっ
た。独立の獲得の結果も、イスラム教徒の強化を助けなかった。諸国は弱く、悪政が
はびこり、動乱が絶えなかった。ヨーロッパ人は、イスラム諸国で好き勝手な真似が
できた。彼等が抱えるユダヤ教徒の問題を解決するために、イスラム教徒の土地を使っ
て、イスラエル国家を創設するに至ったのも、あえて驚くには足らない状況である。
分裂したイスラム教徒は、バルフォア(バルフォア「宣言」(パレスチナに「ユダヤ
人の郷里」を約束したロスチャイルドへの手紙の出し主のイギリスの外務大臣)やシ
オニストの違法行為を、阻止するための何らの効果的な反撃も、できなかった。

21.(この部分は極めて概略の解説)現状に関する認識は様々である。来世に希望を
つないだり、すべてアラーの思し召しと諦めたりしている。

22. (この部分は全訳)しかし、すべてがアラーの思し召しで、われわれには何もで
きず、してはならないというのは、本当だろうか?アラーは、詩編11、スラー・アル・
ラアドで共同体が自らの運命を変革するために努力を試みるまでは、、彼は自身は共
同体の運命を変えることはしない、と語った。

23.(この部分は全訳)初期のイスラム教徒は、現在のわれわれと同様に抑圧されて
いた。しかし、イスラムの教えに従って、彼等が真剣で決意に満ちた自助の努力をし
た後、アラーは、彼等が敵を打ち負かし、偉大で力に溢れるイスラム文明を築くよう
に援助した。しかし、われわれは今、いかなる特別な努力によって、彼がわれわれに
与えてくれた遺産に応えているのだろうか。
24.(この部分は全訳)われわれは今、13億人の巨大な勢力となっている。世界最大
の石油資源を持っている。われわれは巨大な富を持っている。われわれは、イスラム
教を受け入れた当時のジャヒリア(イスラーム教以前の無知の時代の異教徒のアラブ
人)と同様の無知の状態ではない。われわれは世界の経済や金融の動向を熟知してい
る。世界の180の国家の内の57を統御している。われわれの投票は、国際的な組織を
作ることも壊すこともできる。それなのになお、われわれは、予言者を指導者として
受け入れた少数のジャヒリアの改宗者たちよりも、もっと頼りなく無力に見える。な
ぜか?その理由は、アラーの思し召しか、われわれが、われわれの宗教を間違えて解
釈しているからか、われわれの宗教の正しい教えを守り損ねているからか、または、
悪いことをしているからか?

25.(この部分は抄訳)われわれは、われわれの信仰に基づいて、イスラム共同体を
防衛する用意を求められている。不運なことに、われわれは、防衛を強調せずに、予
言者の時代の武器を強調した。それらの武器と騎馬とでは、最早、われわれを守るこ
とはできない。われわれは、防衛のために、銃砲とロケット弾、爆弾と戦闘機、爆撃
機、戦車、戦艦を必要とする。しかし、われわれは、科学と数学、その他の学芸を衰
退させてしまったので、それらの防衛のための武器を生産することができない。われ
われは、それらを、われわれへの誹謗中傷者や敵から買わなければならない。このよ
うな事態は、コーランの教えの表面的な解釈の結果である。

26.(この部分は抄訳)われわれは、ヒジュラ(始祖ムハンマッドらのメディナへの
移住)の最初の世紀への回帰を望むこともできる。しかし、それは不可能である。わ
れわれへの誹謗中傷者や敵は、その結果としての退行を好機として利用し、われわれ
への支配を強めるであろう。イスラム教は、7世紀だけのためのものではない。あら
ゆる時代に通用しなければならない。イスラム教自体は正しくとも、解釈を誤っては
ならない。時代の根本的な変化に対応しなくてはならない。

27.(この部分は全訳)現在、われわれ、すべてのイスラム共同体は、軽蔑され、不
名誉な扱いを受けている。われわれの宗教は誹謗中傷されている。われわれの聖なる
場所は冒涜されている。われわれの国々は占領されている。われわれの国民は飢え、
殺されている。

28.(この部分は全訳)どの国も真に独立した状態ではいない。われわれは、どう振
る舞うか、いかに自国を統治するか、何を考えるべきかに至るまで、抑圧者の圧力の
要求の下にある。

29.(この部分は全訳)現在、彼等が、われわれの国々を襲い、われわれの民を殺し、
村や町を破壊しようと欲しても、われわれには効果的な対抗手段がない。これらのす
べては、イスラム教が引き起こしたことなのか?それとも、われわれがイスラム教の
義務を果たし損ねたからなのか?
30.(この部分は全訳)われわれの唯一の反応は、ますます怒りを増すことでしかな
い。怒る民は適切な思考ができなくなる。その結果、多くのわれらの民が非理性的な
反応を示すようになった。彼等は、絶望的な不満と怒りの爆発を求めて、攻撃を行い、
仲間のイスラム教徒をも含む誰彼となく殺す。彼等の政府は彼等を止める術を持たな
い。敵は報復し、政府に対してさらなる圧力を加える。政府は屈服する以外の選択肢
を持たず、敵の命令を受け入れ、言いなりになって、独立の行動権を放棄する。

31.(この部分は抄訳)民はさらに怒り、自らの政権にも怒りを向け、あらゆる和平
への試みは破壊される。しかし、攻撃は何も解決しない。イスラム教徒はさらに抑圧
される。

32. (この部分は抄訳)イスラム諸国には失望感が広がっている。イスラム教徒は永
遠にヨーロッパ人とユダヤ人(教徒)に抑圧され支配される。ある者は、これらをア
ラーの思し召しと信ずる。

33-38. (この部分は概略のみ)13億人が少数のユダヤ教徒に抑圧されている。予言
者の初期の23年の苦難の教訓に基づいて、戦略を練り直せ。彼は報復の攻撃をしたか?
怒りにまかせて、若者が自爆攻撃し、報復の大量虐殺を招く以外の道はないのか?考
え直す時期ではないか?

39.(この部分は全訳)われわれは実際には非常に強力なのである。13億人の民は簡
単には一掃できない。ヨーロッパ人は1千2百万人のユダヤ人(ユダヤ教徒)の内の6
百万人を殺した。しかし現在、ユダヤ人は代理人を使って世界を支配している。彼等
は、他の者が自分たちのためにに戦って死ぬようにしている。

40.(この部分は抄訳)われわれには、そういうことはできないかもしれない。われ
われは、13億人のイスラム教徒を統一することはできないかもしれない。われわれに
は、すべてのイスラム政権に、協調した行動をさせることはできないかもしれない。
しかし、もしも、われわれが、3分の1のイスラム共同体、3分の1のイスラム国家しか、
まとめることができないとしても、それだけでも、われわれは、かなりのことができ
る。予言者がメディナに移住した時には、彼に従う者は、そんなに多くは無かったこ
とを思い起こせ。しかし彼は、人々を統一させ、結果としてイスラム教を守るに十分
な強さとなった。

41.(この部分は抄訳)必要な団結の他に、われわれには数も資源もある。現在の世
界の中で、われわれは、軍事的な弱さを補うに足りるだけの政治的、経済的、金融的
な力を発揮できる。

42.(この部分は全訳)同様に周知のごとく、すべての非イスラム国家が、われわれ
に敵対的なのではない。非常に友好的な国も多い。多くの国はむしろ、われわれの敵
を、自分たちの敵として見ている。ユダヤ教徒の中にさえも、イスラエルが行ってい
ることを承認しない者が多い。

43.-49.(この部分は概略の解説のみ)われわれは、誰にも敵対してはならない。辛
抱強く力を蓄えなくてはならない。イスラムとアラブの歴史を振り返れ。パレスチナ
問題のような共通の課題で協力しよう。コーランは、敵が和平を求めてきた時には、
積極的に応じなければならないと説いている。和平の提案が欺瞞に満ちていても、交
渉ができる。予言者は、それを行い、最後には勝利した。

50.(この部分は抄訳)私は、これら私のすべての考えが、一般受けしないであろう
ことを承知している。怒る人々は、さらなる若者の犠牲を求める。しかし、それでは
勝利は絶対に不可能である。パレスチナでは、何らの成果は挙がらず、事態が悪化す
る一方ではないか。

51. (この部分は全訳)敵は、この提案を歓迎し、その推進者は敵のために働いてい
ると結論するだろう。しかし、考えよ。われわれが相手にしているのは、2千年間の
ポグロムを、反撃によってではなく考えることによって生き延びてきたと思っている
民なのである。彼等は、社会主義、共産主義、人権、民主主義を発明し、推進して来
たのだから、彼等を迫害するのは悪と見えるのであって、それによって彼等は、他の
民と等しい権利を享受してきたのである。

52.(この部分は全訳).最近、彼等は、見せ掛けの成功に驕って、傲慢になっている。
傲慢な民は、憤激する民と同様に、間違いを犯し、考えなくなる。

53.(この部分は全訳)彼等はすでに、間違いを犯し始めている。これからもさらに
間違いを犯し続ける。彼等は、われわれから見て、隙間だらけになる。われわれは、
この機会を捉えなくければあんらない。
54-59. (この部分は概略の解説のみ)演説の終わりの締めの挨拶。会議が新しい積
極的な方針を定めることが出来るようにアラーに祈る。

 以上。
木村愛二:国際電網空間総合雑誌『憎まれ愚痴』編集長


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