1410.米国の動向



米国のジレンマ、グリーンスパンFRB議長の苦悩を考察しよう。
                Fより

米国の経済は、国家予算の赤字、貿易赤字、投資資金の流失と3つ
のマイナスを抱えている。この3つのマイナスを主に中国と日本が
為替市場でドル買い円売りで支えている。このため、日本の外貨準
備高は、60兆円にまで膨らんでいる。

米国は毎年60兆円の米国国債を発行し、日本は毎年40兆円の
国債を発行しつづけている。日本の国家財政が逼迫してにも関わら
ず、日本は米国に米国国債購入という形で資金援助している。この
まま後、20年も続けたら、ドル・円暴落になる。日米のハイパー
・インフレは必至だ。

日本はこのためにも、公共事業を減らして、老人福祉に資金をシフ
トしていく必要がある。ここが今回の総選挙の争点であろう。自民
・民主両陣営ともに知っているようであるが、そのシフトの仕方を
どうするかの議論をして欲しいものですね。横に逸れた。

しかし、G7会議で為替の介入を止めようとして、米国は日本・中
国を非難した。この結果はどうなるか明白である。米国国債の消化
ができないで、米国金利が上昇し、かつドル安になり、米国の投資
資金が流出することになる。

ドル高政策をこのために、今まで維持してきた。しかし、米国労働
者の雇用が減少しているために、ドル安政策にしようとしているが、
それは、ドル暴落を引き起こす可能性が高いことになる。米国製品
が競争力を持っていればいいが、製造を中国などアジアで行って、
そのブランドを守っているだけで、米国での生産品ではない。この
ため、雇用が増えない。

このため、ドル安にするにも速度調整が必要である。このため、日
本の円ドル相場介入を米国財務省が日本の肩代わりで行うという
G7会議の趣旨とは違う政策をすることになる。米国のジレンマで
すね。国民も国家も浪費家であるために、このようなジレンマにな
る。日本は反対に米国に貢ぐために貧乏な生活をしている。これも
問題ですね。

もう1つ、米国ブッシュ再選のために、イラクの安定化に取り組ま
なければならない。州兵まで動員して、イラク駐留の米軍を増強す
る必要がある。1年も中東から米国に帰れない米軍人が多数いて、
その米軍人が反ブッシュになると、ブッシュの再選は無い。このた
め、韓国駐留の3万人の米軍をアジア展開に流用して、米軍のイラ
ク駐留数を捻出しないと、米軍はイラクの安定化さえできない状況
にある。

イラク暫定政権の権力構築ができない間に、シーア派が独自の政府
を作ったと宣言している。シーア派が反米になると、イラクでは比
較的安定していた南部も、テロが頻発することになる。ここに自衛
隊を12月に派遣することになっている。死者がでないことを祈る
が。

この全体像にラムズフェルドが関与していないとインタビューに答
えている。ネオコンから米国ブッシュ政権は離れた。パウエル国務
長官とライス補佐官が中心に、今後の中東政策、アジア政策を練る
ことになるでしょうね。しかし、米国は国連中心外交には戻れない。

フランスやロシアや多くの安保理の理事国が米英の決議案に反対し
て、国連で英米の主張が通らない。このため、また、有志国家群と
の連携をいう形に持っていくしかないことになっている。結果、
一国主義になるのでしょうね。

中東の情勢は緊迫している。イスラエルがシリアを爆撃して、シリ
アは安保理にイスラエルの侵略非難決議案を持ち込んだが、米国の
拒否権発動で否決された。シリアは今後、イスラエルからの攻撃に
対して、反撃すると公表した。

そして、イラクがアルカイダの集結点になっているようである。サ
ウジアラビアからテロリストが続々、イラクに向かっている。この
ため、当分中東が今の米国の中心的な位置を占めるでしょうね。

北朝鮮問題は、米国としては時間を掛けて、ゆっくりと進めていく
ことになるようだ。それにより北朝鮮にとっては経済的に厳しいこ
とになるのですから。
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▼主要国の対外純資産(財務省集計)
(1407山岡コラム:件名:たった6兆円の資金流入だけで・
吉田繁治さんから)

改めて着目すべきは、対外純資産です。対外純資産は、実物投資と
債券投資の合計(対外資産)から、海外からの実物投資と債券投資
(=対外負債)を引いた、純額です。

日本国と民間が、海外にもつ純自己資本と見ていい。

      対外純資産        (GDP比)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
日本   175兆円(02年末)     35%
スイス   44兆円(01年末)    137%
フランス  20兆円(01年末)     12%
ドイツ   13兆円(01年末)      6%
イタリア   2兆円(01年末)      2%
英国    −7兆円(02年末)     −4%
カナダ  −17兆円(01年末)    −19%
米国  −304兆円(01年末)     23%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
資料 http://www.mof.go.jp/houkoku/14_g3.pdf

日本の対外純資産の175兆円は、1年間で稼ぐ貿易・サービスの
黒字(02年:6兆3607億円)の、27年分にも相当します。
現在の貿易黒字の、約30年分にも相当する額を、海外に純資産と
して、保有する国が日本です。(対外純資産=対外資産−対外負債)

30年分の純貯蓄を、町内にばらま続けた働きものの世帯が、豊か
な生活ができるでしょうか? これが日本です。

世界の先進国の国家財政史上、最悪の赤字(年GDPの8%:40
兆円)を抱え、しかし対外純資産も世界史上最大の国という矛盾の
中に、巣ごもりしているのが日本です。

▼60兆円の外貨準備
日本政府の金庫で、もっとも潤沢なものは、財務省管理の外為会計
であり、その結果として増えてきた$5551億(約60兆円:
03年8月末)の外貨準備です。↓
http://www.mof.go.jp/1c006.htm

外貨準備の、80%($4434億:50兆円)は、$の現金や預
金ではなく、証券であり、大半は米国財務省証券(米国債)です。

【日本の外貨準備の総額(03年8月)】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
証券        $4434億(50兆円:主として米国債)
預金        $ 921億(10兆円:海外銀行)
IMF預け     $  78億( 9兆円)
SDR(特別引出権)$  25億( 3兆円)
ゴールド      $  92億(10兆円:FRBの金庫に預託)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
合計        $5551億(62兆円)

今の外貨準備は、国際通貨であるドルを、輸入代金支払いのために
準備するという、戦後復興期の性格ではなく、ドル債の購入残です。

【外貨準備の増加】
00年   $3615億
01年   $4015億
02年   $4962億
03年8月 $5551億

ここ3年で、$1936(22兆円)の、円の流失(=外貨準備増
加)です。これは、同期間の貿易黒字を上回ります。
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2003年10月3日(金) 
「アメリカにとっては、痛し痒しの日本のドル買い」との論調 
http://www.sasayama.or.jp/akiary051/200310.html#20031003

ファイナンシャルタイムズの記事
によれば、日本がG7声明に従わず、為替介入を続けることは、アメ
リカにとっては、結果的には、好ましい事態だという。

なぜかといえば、アメリカは、ドル安を望んでいるが、それは、ア
メリカの製造業界に対するゼスチュアという意味であり、どん底に
まで、ドルが下落することまでは望んでいないからだという。

その意味では、アジアがドル買いをストップさせてしまうことは、
ドル相場を奈落の底にまで落としてしまうことになるわけであり、
今回の日本の為替介入再開によって、アジア諸国のドル買いが復活
し、結果、アジア諸国が、ドルの極度の下落を防ぐ松葉杖になった
との見解を述べている。

また、この記事では、9月に行った日本のドル買いが、4兆4500
億円に達したが、このことは、日本が単独で、アメリカの経常収支
赤字に資金提供していることを意味しているという。

つまり、アメリカの経常収支赤字に対する資金拠出が、これまでの
個人・民間ベースからの資金拠出から、アジアを中心とした公的部
門からの資金拠出へとシフトしたことを意味するという。

しかも、その資金拠出の目的は、それによって、利益を売るという
ものではなく、ひとえに自国の輸出産業保護のための資金拠出であ
る点に特徴があるという。

(岩田一政・服部哲也両氏によれば、2002年第3四半期における全世
界の外貨準備残高は、23兆ドルであり、このうちドルの占めるシ
ェアは73パーセントであり、アジア全体では、58パーセントを
保有しているという。このほとんどは、自国の通貨が増価しないた
めの為替介入によるものであり、このことを、Martin Wolfは、「為
替レート保護主義の帰結」-Exchange Rate Protectionism−といっ
ているという。

この図式を一口にいえば、欧州の民間投資部門の対米投資の落ち込
みを補う形で、アジア諸国の公的部門による為替介入が、米国の経
常収支の赤字を資金面から支えるという構図になるという。)

もし、G7声明後、為替介入が完全にストップし、これらの資金拠出
がなくなるということは、ドル相場の急落をまねき、このことによ
って、国際投資家がアメリカ国債の購入を手控えることにな利、結
果、アメリカの金利は上昇するとしている。

アメリカの金利水準は、ドルの下落率よりも低いほうが、GDPに好ま
しく、アメリカは、その辺の兼ね合いをみながら、G7後の日本の為
替介入を見守っているという状態なのだという。

そういえば、ここにきて、ジョン・テーラー(John B. Taylor)米財
務次官は、日本政府・日銀が9月30日にニューヨーク連銀に委託
して行った外国為替市場での円売り・ドル買い介入について」「先
進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の声明に背く行為とは
考えていないと述べるなど、微妙な軌道修正を行っているのも気に
かかる。
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■「イラク安定化グループ」の新設で明らかとなったブッシュ政
権内の意見の対立
(2003年10月9日更新)
http://www.idcj.or.jp/1DS/11ee_josei031009.htm

 ラムズフェルド国防長官は10月8日、欧州の新聞社とのインタ
ビューに答えて、「イラク安定化グループ」の新設に関して何ら事
前に相談を受けていなかったことを明らかにした。 

 ライス大統領補佐官は先週末、ニューヨーク・タイムズ紙に「イ
ラク安定化グループ」の新設はチェイニー副大統領、パウエル国務
長官、ラムズフェルド国防長官と共にこの8月に考え出したもので
あると語っていた。また、ホワイトハウスのマクレラン報道官も
10月6日、記者団に対して、ラムズフェルド国防長官は新組織の
創設に密接に関わっていると説明していた。ラムズフェルド国防長
官が事前に知らされていなかったと記者会見で明らかにしたことを
受けてマクレラン報道官は、連合国暫定当局(CPA)のブレマー文民
行政官は知らされていたがラムズフェルド国防長官は相談されてい
なかったと述べ前言を翻している。但し、同報道官はラムズフェル
ド国防長官がインタビューで、今回の動きは、省庁間の政策の調整
に当たるという本来の国家安全保障会議(NSC)の役割を単に再確
認したに過ぎないと述べたことを捉えて、長官も答えているように
NSCの役割を明らかにしただけであるので驚きではなかったはずであ
ると語っている。

 他方、ラムズフェルド国防長官は10月7日、事前に知らされて
いなかった不快感を示すように、記者団に対して、まず次のように
語っている。「自分はライス大統領補佐官から機密扱いのメモを受
け取るまでイラク安定化グループについて知らなかったし事前にブ
リーフィングも受けていなかった」「但し、国防総省のスタッフは
知らされていた」「ライス大統領補佐官がイラク問題を取り扱うこ
とに驚きはしないが、メモが意思決定過程を変えるわけではない」
(news.ft.com 2003.10.09)。

 そしてラムズフェルド国防長官はライス大統領補佐官の名前を挙
げて、「ライス大統領補佐官がニューヨーク・タイムズ紙に背景を
説明した。機密メモから分かったのは、基本的にNSCの責任が何かと
いうことだが、それはこれまでもそうであったような同じ役割であ
る」「ライス大統領補佐官の新制度はNSCの業務、即ち省庁間の調整
という業務を再度明確化させたものに思える」
(www.washingtonpost.com 2003.10.08)と述べ、新組織の位置づけ
をことさら低くしようとしているような言い方をしている。

 記者団から数回に亘りどうして組織改編が必要であったのかと尋
ねられたラムズフェルド国防長官は不機嫌そうに、「その質問はラ
イス大統領補佐官に尋ねるべきであると思う」「私は知らないと答
えた。それでは明確ではないと言うのですか?」「英語が分からな
いのですか?」「新組織造りの背後に自分はいなかったのだから」
(同上)と答えている。

 イラクの統治・復興を巡るブッシュ政権内の突然の不協和音につ
いて、米国のある政治評論家は、政権内部での内戦の勃発と表現し
ている。ネオコン派の理論的支柱であるウイリアム・クリストファ
ー/ウィークリー・スタンダード編集長は「CIAはホワイトハウスに
正面切って反乱しているし、国務省と国防総省は全く一緒に仕事を
していない」(news.ft.com 2003.10.09)と述べ、親組織創設の理
由の一つはブッシュ政権内の内戦と解説している。

 但し、共和党筋は今回の新組織の創設について、ホワイトハウス
が2004年の大統領選挙キャンペーンがはじまる前にイラク復興
の速度が上がっていなければ、重大な結果をもたらすと認識してい
るためであると解説している。事実イラク問題はブッシュ政権にと
って外交政策での負債となりつつあった。ブッシュ政権を支持する
ネオコン派の人々も、2003年8月以降のイラクの治安の悪化が
ホワイトハウス内に絶望的な思いを生んでいたと解説している。
同時に、イラク戦争の遂行をフセイン前大統領の除去という狭義の
目的でとらえていたラムズフェルド国防長官と、中東の民主化の序
曲という広義の目的で考えていたブッシュ大統領及びライス大統領
補佐官との対立があったと見る向きもある。

 最後に政権内の見方とワシントン在住の欧州外交官の分析を紹介
すれば次のようになる。 
● 今回の動きで、国防総省に報告していたブレマー文民行政官が取
り仕切ってきた予算等の決定事項にホワイトハウスが関与すること
になったので、国防総省は無力化された。
● ライス大統領補佐官が、国防総省、国務省、CIAの争いを断ち切
れなかったので、自ら手綱を握ることとなった。
(エネルギー・環境室長/主任研究員 畑中美樹<はたなか・よしき>)
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イラク・シーア派が「独自の政府」発足…指導者語る

 【バグダッド=長谷川由紀】AFP通信によると、イラクの急進
的イスラム教シーア派指導者モクタダ・サドル師は10日、同国中
部クーファで行った説教で「司法、財務、情報省など複数の省庁か
らなる独自の政府を発足させた」と語った。

 「政府発足」の詳細は不明だが、サドル師は、政府発足に賛同す
る支持者に平和的にデモを行うよう呼びかけ、11日には近郊のシ
ーア派聖地ナジャフで数百人が同師支持を訴えながら、市内をデモ
行進した。イラクでは今月に入って、バグダッドのシーア派居住区
サドルシティーで警察署爆破テロが起きたのを受け、同国多数派の
シーア派の間に反米気運が急速に拡大している。(読売新聞)
[10月12日1時31分更新]
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件名:長期化する米軍のイラク駐留  

無数の武器庫が全土に散在・治安回復などの妨げに
 米国はイラクで、イラク復興以外に二つの大きな難題に直面して
いる。イラクの治安維持、大量破壊兵器の発見という課題だ。
イラクには、武器弾薬の貯蔵庫が全国各地に無数に散在しており、
それがこの二つの課題の解決を難しくしている。これらの問題を解
決しなければ、国際社会における米国の信用を回復することができ
ず、イラク復興への人材、資金両面での協力を各国から確保するこ
とも困難。米国はジレンマに直面している。
(ワシントン・横山裕史・世界日報)

 ブッシュ政権は最近、イラク復興のための八百七十億jの支出承
認を議会に要請した。さらに今月二十三、二十四両日には、マドリ
ードでイラク復興支援国会議の本会合が開催され、各国が担当する
復興分野や拠出金などを協議する。

 こうした復興活動も、イラクの治安の回復、維持が成功しなけれ
ば、困難である。このため米国は、イラクの治安回復に軍隊を動員
して取り組んでいるが、情勢は楽観できるものではない。

 イラク駐留米軍指揮官のリカルド・サンチェス中将は十月二日、
バグダッドでの記者会見で、旧フセイン政権残党、外国人テロリス
トによる米軍への攻撃が、ますます組織化され、戦術的にも高度に
なっているとの見方を示した。同中将は、「敵は進化しつつある」
と述べ、「攻撃の精度が向上するなど明らかな発展的兆候が見られ
る」と語った。

 とりわけバグダッドと西部のラマディ、北部のティクリットを結
ぶイスラム教スンニ派トライアングルを中心に、駐留米軍に対する
ロケット弾、遠隔操作爆弾を使用した攻撃が激しくなっている。
現在、反対勢力の攻撃は一日平均十七件に達し、毎週平均六人の米
兵が殺害されている。イラク駐留米軍の司令部は、米軍は少なくと
も二〇〇五年までは駐留を継続せざるを得ないと見積もっている。
米軍単独で治安維持活動を行うことは多大な犠牲を覚悟しなければ
ならない。このため、米政府は多国籍軍を新たに組織し、各国に派
兵を要請したい構えだ。米国は、イラク復興における国連の役割拡
大を求める決議案を、国連安保理に提出している。

 米国が直面するもう一つの課題は、大量破壊兵器の捜索だ。イラ
ク開戦前に、ブッシュ大統領は、イラクの大量破壊兵器開発・保持
疑惑を強調し、それを戦争正当化の根拠とした。イラク戦争終結か
ら約半年経過した今も、大量破壊兵器は発見されていない。

 米政府がイラクに投入している大量破壊兵器捜索チームの責任者
デビッド・ケイCIA特別顧問は十月二日、非公開で開かれた上下
両院情報委員会で暫定報告を行い、「大量破壊兵器は発見できてい
ない」と明言した。このまま行けば、米国はまったく根拠のない主
張に基づいて、イラクへの一方的武力行使をしたことになり、米国
の国際的信用は完全に失墜してしまう。米国が各国にイラクへの派
兵協力を求める上でも、大量破壊兵器を発見できていないことが大
きな障害になっている。

 ブッシュ政権はこれまでに大量破壊兵器捜しに、千四百人の大量
破壊兵器捜索チームを動員し、三億jをかけてきた。最近、さらに
六億jを大量破壊兵器捜索に投入して捜索を継続することを決めた
が、兵器が発見される保証はない。

 治安回復、大量破壊兵器捜索の両方を困難にしている問題がある
。それはイラク全国に散在する武器弾薬庫だ。米軍の捜索の結果、
毎週、数カ所の武器庫が新たに発見されている。イラク全土の何千
カ所に民兵組織が準備したとみられる武器弾薬が貯蔵されており、
その量は六十五万dに達するとされる。駐留米軍はこうした秘密武
器庫の多くを発見していないし、確認済みの武器庫もまともに管理
できていない。米軍と敵対する旧政権残党、国際テロリストはこれ
らの武器弾薬を容易に活用でき、それを米軍攻撃に使用しているも
よう。

 一方、こうした無数の武器庫の存在は、米国の大量破壊兵器捜索
努力を複雑にしている。大量破壊兵器がこうした武器庫に隠匿され
ている可能性があり、それを全部調べるには長い時間を要する。
世界日報:△掲載許可済です
Kenzo Yamaoka
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件名:イラクがテロ組織活動家や破壊分子の新たな結集地に  

ロ大統領が「第2のアフガン」警告
イスラム教と特性を考慮した政策の導入と偏向教育・報道による閉
鎖社会からの解放が先決
 旧フセイン政権が四月九日に崩壊してから約半年を経た。プーチ
ン・ロシア大統領が、六日付ニューヨーク・タイムズ紙の中で、米
国はイラクにおいて一九八〇年代にロシアがアフガニスタンで経験
した長く不毛な戦争に直面する可能性があると指摘、今後さまざま
なテロ組織活動家・破壊分子の新たな結集地になる危険性があると
警告した。イスラム教徒は国家を超えて、イスラム教徒として団結
する特質を持っており、攻撃する側の意図と無関係に宗教戦争とし
てとらえる思考形式を持っている。イラク戦争を泥沼化させない方
途はあるのか。(カイロ・鈴木眞吉・世界日報)

 米英軍を主体とした連合軍が大量破壊兵器をかつて使用し、その
後も「開発のための施設を秘密裏に運営」(ケイ大量破壊兵器調査
団長)していた旧イラク政権を打倒したことは、テロリストに同兵
器が渡る可能性を排除し、また大量虐殺を断行した独裁政権を終え
んさせた点で大いに評価されていい。イラク国民をはじめ世界中が
事実上歓迎した。

 ところが戦後復興の過程で、@開戦理由の一つだった大量破壊兵
器の未発見Aサダム・フセイン氏の未捕獲−−が国際社会に不信と
不安を抱かせ、旧フセイン政権残存勢力とイラクに結集したイスラ
ム教過激派武装勢力を元気づかせている。

 同盟軍の治安維持能力に決定的な疑問が投げられたのは、バグダ
ッドの国連本部爆破でデメロ国連事務総長特別代表ら二十四人が死
亡、またイスラム教シーア派最高指導者ハキム師ら二十人が殺害さ
れた八月下旬ごろからだ。

 ラムズフェルド米国防長官が指摘するように、戦後復興の速度は
第二次大戦後のドイツなどと比較して急ピッチで、電力供給量も戦
前を上回り、石油パイプラインへの監視体制も確立、新紙幣が造ら
れ、学校も新学期が始まリ、雇用政策が始まり、トルコが派兵を決
定するなど、前向きの進展がかなりありながら、それらがかき消さ
れてしまうほど治安の悪化が進行し、ブッシュ大統領が五月一日に
大規模戦闘終了宣言を出して以降の米軍兵士死者数が八日現在九十一
人となった。最近は元軍人や元警察官、一般市民によるデモが頻発
、同盟軍との衝突が増えている。

 治安の悪化は、旧政権が犯罪者を大量に釈放したことや旧イラク
軍の武器が簡単に入手できることもあるが、フセイン政権残存勢力
のほか、全イスラム世界の過激派集団が結集して、反米・イスラエ
ル、反キリスト・ユダヤ教連合闘争を展開し始めたことが主原因だ。
国際社会が宗教戦争のつもりはなくとも、イスラム教徒には宗教戦
争と思い込む独特な思考形式があり、戦略的にもそれに引きずり込
んで、殉教や自爆を恐れない特徴を最大限に利用、自由民主主義世
界を揺さぶろうとしている。

 ここには、@イスラム教の特異な思考形式、すなわち帰属意識は
国家以上にイスラム共同体に持ち、土地と宗教に対す異常なまでの
執着心を持って侵略者と決め付けるA同盟軍側の三次元的戦いに、
イスラム勢力は死後の世界への確信をも加えた四次元の戦いを挑ん
でいるB宗教自体の特性でもある迫害されるほど燃えて勢力を拡大
する−−などの特性が表れている。

 しかも彼らは敵と敵に利するものはすべて「神の敵」とみなすこ
とから、同盟軍と関係を持つイラク統治評議会、暫定政権、軍、警
察などはもちろん、外国軍や国連、各種国際組織、通訳などの一般
市民に至るまで処刑(イラクの武装組織「イスラム解放軍」)の対
象とする。このことはたとえ米軍が引き揚げたとしても、タリバン
やアルカイダ組織がアフガニスタンを支配したように、イスラム過
激派勢力が暴力とテロを用いて「神の敵」を追い出し、イラクを占
領する可能性も考えられる。

 泥沼にのめり込まないために、まずフセイン氏の捕獲が第一だが
、イスラム教と宗教一般が持つ特性を考慮した政策が望まれる。
すなわち戦争が一つの契機となるとしても、偏向した教育と報道に
対して閉鎖された社会からもたらされる独善性や排他性、非近代性
などの改善や貧困からの解放など、イラクをはじめアラブ・イスラ
ム世界に投入しなければならない内容は山のようにある。新教科書
の創刊が遅れていることは気になるところだ。

 ブッシュ大統領は、イラク対策を強化のため「安定化グループ」
を発足させたが、大統領にとって今最も必要な顧問は、超宗教的立
場に立ってそれを啓もうし、イスラム教とユダヤ教をして独善的体
質から解放させ、超宗教的発想に促し得るような四次元的観点も持
ち合わせた宗教指導者のように思える。
世界日報:△掲載許可済です
Kenzo Yamaoka


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