1397.ブッシュ外交



ブッシュの再選戦略のために、イラク再構築が必要になっている。
                Fより

今の米国ブッシュ政権は、再選のために早くイラクからの撤退が、
必要になっている。クラーク大将が民主党候補となり、手ごわい相
手が出現して、ブッシュものんびりしていられない。支持率は50
%以下になっている。クラークが支持率を上げてくると、クリント
ン夫人が候補者として、出てくることになる。このため、クラーク
候補をクリントンは押している。ブッシュもイラクでの出口を探さ
ないと再選の可能性が無くなる。

イラクの出口戦略として、ロシアとドイツを手なずけて、フランス
を孤立化することができた。今後はイラクの民主化と外国帰りのイ
ラク人たちに権限を委譲することである。このときにイラク国民の
60%以上が信仰するシーア派を、味方に付けるしかない。という
ことはイランのシーア派、イラン現政権との核問題をイラク問題で
取引することになると感じる。なるべくなら、イラクを親米国国家
としたいので、そのような仕組みを考えている。このため、1年以
内程度の時間が必要なのであろう。この時間をロシアとドイツは認
めた。

このような対応はロシア原発がイランに出来るのであろうから、ロ
シアとの関係正常化にも役立つことになる。イラク出口戦略は、日
本から資金を引き出すにも、役に立つ。イラクなどの中東から東ア
ジアに目線を移すことを確約して、その代わりにイラク復興資金を
出して欲しいと言う事になる。そうしないと、日本の衆議院選挙の
最中に来て、米国の言いなりに小泉さんがなっていたら、勝てる選
挙も勝てなくなる可能性が出てくる。そのようなことを米国はしな
いし、してはいけない。

民主党の菅さんは、イラク自衛隊派遣反対ですから、米国ブッシュ
としては自民党の小泉さんの政権を押すしかない。それを邪魔する
ようなことをしないはず。または、小泉さんにいいカッコをさせる
仕組みを作るであろう。ブッシュが小泉さんを支援するはず。

民主党に国内派の田中真紀子や野中さんが合同すると、国際派対国
内派の戦いになり、面白いことになるのであるが、どうであろうか?
民主党の菅さんも国内改革では小泉さんと同じ意見であるから、自
民党と民主党の違いは、国際問題(特に米国対応の違い)だけであ
る。

ブッシュは今、800億ドルのイラク復興資金を米国議会に上程し
ているが、これ以上の資金を投入することは無理である。このため
に、早期にイラク撤退をするといって、日本から1兆円程度の資金
を支援してもらわないといけない。国連からの資金援助は、すでに
国連の安保理事会で拒否されている。しかし、出すからには日本も
条件を付ける必要がある。北朝鮮を早期に崩壊させて緊急な安保問
題を解決するという条件を。これを米国は飲むと思う。
==============================
平和への希求

 州兵出兵の誤算の広がりと、補正予算の出費によって、ブッシュ
政権は、潰れるじゃろう。今も、州兵の一部が、イラクに入り、
交代要員として、各地の州兵がかき集められておる。これは、おた
めごかしに、強気の自画自賛の幻影をふりまく、ブッシュ政権に
とって、多大な選挙のマイナスになるじゃろう。

 一般のアメリカ国民は、海外戦略の実態に、これまで、さほど関
心を持たなかったんじゃ。ところが、海兵隊等のプロの軍隊と、州
兵では、構成要因に根本的な違いがあるのじゃ。州兵は元々本当の
意味での、戦闘意識の低い(きらびやかな軍装と、戦争ごっこが好
きな、そして、キャリアとしての兵役が役に立つと考える程度の、
良家の子弟が多く含まれている。)集団であるんじゃ。

それが、もっとも過酷な、砂漠地方のゲリラ戦場に送られることに
なるんじゃ。彼等が、戦勝の昂揚もなく、続々とイラクでの不満、
国防省の占領統治の不備を、アメリカ国内に、リアルに発信するこ
とになる。その上、アメリカという国の国民の尺度は、<金銭>に
置き換えられた価値が、一番わかりやすい形となっておる。

 日々の生活の向上がないところへ、天文学的な予算の負担は、鬱
屈を強め、もう一度、冷静にイラク戦争の意義と、姿を振り返るじ
ゃろう。当然、戦争への道筋の、妖術師達の種も暴かれてくるはず
じゃ。そこでは、もうまやかしも効かなくなる。

 今、ヨーロッパ・ロシア等が考えている戦略の転換は、アメリカ
の不関与を<逆に>阻止することじゃ。そして、自国の負担・被害
を最小限度の抑えることなのじゃ。
当然、日本の戦略も、これと同じでなければならぬ。

 気前のいい貢献を期待するなどと言う、ブッシュ政権の柔らかな
威しに乗ることは、国益を損なうものじゃ。まず、当面の、第一次
分として、ヨーロッパとほぼ同額を、拠出すると表明することじゃ
ろう。(このイラク復興という作業は、どうせ、長くかかる。それ
を計算せねばならぬ。)
其の後、国連改革と絡め、復興への拠出は高まって行くことはしか
たがない。国連主導・イラクの本来の自治が取り戻されはじめれば
、当然、国連内での発言力と引き換えに金を出していく。今回は、
発言力と、権限の拡大無しに、出費は無しじゃ。
 いいかげんにCD(現金自動支払い機)からの脱却をはかったら
どうじゃ。

 もう一つ、馬鹿の一つ覚えみたいに、国際貢献が軍事部門だけが
、評価されるもんだなどという、すりこみをやめたらどうじゃ。非
軍事部門で、人的国際貢献ができる体勢と姿勢を確立したらどうか
ね。

 日本の希求する平和は、かっちりとした、国土防衛と、世界との
広汎な連帯の中にあるのであって、アメリカの一部にある、国家戦
略や、産軍複合の思惑に、軌を一にすることでは無いのじゃよ。

 アメリカや、日本の一部にある、<世界=アメリカ>の感覚の愚
かさには、笑ってしまう。本当の知恵あるモノとは、うまく立ち振
るまうことだけじゃない。気概と意志の強さを見せることなのじゃ
。そういうものだけが認められるのじゃよ。臆病モノとは、力の強
いものの陰で、こそこそする奴をいうんじゃ。

 わしは、世界の平和を希求する。それこそが、貿易立国でもある
、日本の最大の国家利益になるからじゃ。

(もう一つ、アジア通貨協定は、加速させることじゃね。米・民主
党政権=ユダヤ国際金融政権下では、絶対に阻止されるからの。
ドルは、近じか、効力を大幅に下げる。)
                              
                      虚風老
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(Fのコメント)
ロシアでもフランスでも国際貢献の見返りを米国に要求している。
米国が国連や他国の介入をされたくないと一国主義でイラク戦争を
始めたのであるから、国連も知らないと言える。このため、見返り
を要求できるのですよ。

日本だけが、この見返りを要求していないように感じる。ここは、
金も出すが、口も出し、見返りの石油利権も要求するべきである。

日本はイランの石油利権まで取り上げられたが、近々米国はイラン
と仲直りして、米国が石油利権を横取りするはず。人が善すぎる。
==============================
2003年09月27日(土) 
日本の資金援助強く期待
http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/kokusai/20030927/20030927ta005.html
 【ワシントン共同】アーミテージ米国務副長官は26日記者団に対
し、イラク復興における日本の支援で「日本は惜しみなく貢献して
くれると確信」と、相当額の資金提供への強い期待感を表明。「金
額や支援の在り方などは日本政府が決めること」と日本の主体的判
断を尊重する意向を示した。米国負担分除くイラク復興経費は4年
間で300億〜550億ドル(約3兆3500億〜6兆1400億円)といわれて
いる。 
==============================
駐留米軍、来年にも撤退 米当局者伝達と議長

 【カイロ27日共同】イラクの暫定統治機関「統治評議会」の
チャラビ議長は、米当局者がイラク駐留米軍を早ければ来年にも撤
退させたいと非公式に伝えてきたことを明らかにした。27日付の
アラブ紙アルハヤトとの会見で語った。
 議長は「(米国は)来年撤退したいと言っている」と述べる一方
、国連安全保障理事会決議に基づく多国籍軍の派遣によって米英軍
の「占領は終わる」と、多国籍軍派遣の意義を強調した。
 米当局者と太いパイプを持つチャラビ議長は最近、従来の姿勢を
変え、米国に対し統治評議会への権限移譲を求めるなど、イラク人
による早期の統治が必要との考えを表明していた。多国籍軍派遣の
意義を強調したのは、米軍の占領色を薄めたいとの思惑からとみら
れる。(共同通信)
[9月27日23時52分更新]
==============================
件名:米との「和解」図る独ロ  

強硬姿勢の仏と温度差
 イラク復興をめぐり、国連の関与拡大を認めながらもあくまで米
英主導で行いたい米国と、「国連中心」の復興を求める仏独ロなど
の「対立」が続いている。しかし、ここにきて強硬姿勢を貫くフラ
ンスと、対米関係の早期修復を図りたい独ロとの微妙なスタンスの
違いが表面化してきた。(ワシントン・三笘義雄・世界日報)

 米紙ニューヨーク・タイムズは十九日、米政府当局者の話として
、ブッシュ米政権が、米国のイラク新決議案をめぐり対立が続くフ
ランスを孤立化させつつ、国連安保理内での多数派獲得を図ってい
ると伝えた。イラク戦争をめぐって対立した安保理常任理事国のロ
シアと非常任理事国ドイツが主な“ターゲット”だ。

 同紙によると、米国の戦略は、ドイツの支持を得るために妥協点
を探る一方で、ロシアに対しては「イラク再建への参加の機会を提
供しながら、有利な契約を分かち合う」というもの。つまり、「ド
イツと交渉し、ロシアを買収し、フランスを孤立化させる」(米外交
筋)のが狙いという。

 米国の懐柔策が奏功しつつあるのか、ここにきて独ロが米国との
関係修復を図る動きが表面化してきた。

 シュレーダー独首相は十八日付経済紙ハンデルスブラットとのイ
ンタビューで、安保理新決議案にかかわらず、現地警察や軍隊教育
などでイラク復興支援に携わる用意があることを表明。

 また、同首相は十九日付ニューヨーク・タイムズに寄稿し、アフ
ガニスタンへの独軍派遣などに言及しながら、ドイツが米国と共に
「テロとの闘い」を継続する決意を強調。
 その上で、「(イラク戦争の是非をめぐった)議論を続けても意
味はない。われわれは未来に目を向けるべきだ。われわれは平和を
勝ち取るために一致協力しなければならない」と訴え、米国との「
和解」に向けた“シグナル”を送っている。米独両首脳は二十四日
、ニューヨークで会談する。

 一方のロシアは、さらに軟化しているようだ。プーチン・ロシア
大統領は、安保理新決議を前提として、イラクへの軍隊派遣を含め
、同国がイラク再建に積極的に関与していく用意があることを示唆
している。

 二十一日付米紙ワシントン・ポストによると、同大統領は二十日
、「(イラクの)事態正常化のためにロシア軍を派遣することを含
め、イラク復興へのさらに積極的なロシアの関与を排除しない」と
述べた上で、「重要なことは国連安保理が(多国籍軍派遣の)決定
を下すことだ」と語った。多国籍軍を米国が指揮することを容認す
ることも明らかにしている。

 ブッシュ大統領と仏独両首脳との個別会談がニューヨークで行わ
れる一方で、米ロ首脳会談は二十六、二十七日にメリーランド州キ
ャンプデービッドの山荘で行われる。これは米ロの“緊密さ”を示
すもので、ロシアの対米路線が仏独とは一線を画しつつあることが
うかがえる。

 そこで気になるのがフランスの動向だ。

 二十日にベルリンで行われた英仏独首脳会談後の記者会見で、
シラク仏大統領は、焦点となっている米英からイラク側への主権移
譲時期について、「数カ月以内にすべきだ」と改めて強調した。
当初の「一カ月以内」との主張から軌道修正するなど、米国との妥
協点の模索を始めているとみられるが、米仏間の政策的・心理的な
隔たりはいまだに大きい。来年秋の総選挙を経た上での主権移譲と
いう構想を持つ米側は、早期の主権移譲について「理論上はたやす
いが、現実的ではない」(パウエル米国務長官)などと一蹴(いっ
しゅう)している。

 ただ、仏側は「事態を前向きに打開する合意を模索しているだけ
」(仏大統領府)としており、これ以上の対米関係悪化は避けたいの
が本音だろう。一方の米国も、安保理新決議をテコに、トルコやパ
キスタンからの一万人規模の部隊派遣に道を開くなど、イラクにお
ける人的・財政的負担を軽減したいところ。新決議の早期採択に向
け、歩み寄る姿勢は崩していない。 二十三日の米仏首脳会談の成
り行きが注目される。▲掲載許可済です
Kenzo Yamaoka
==============================
件名:対イラク戦争の軍事的教訓  

20世紀軍に対する21世紀軍の勝利・将来的抑止戦略のあるべき姿示
すコンピューターの威力を発揮

 これまで私は対イラク戦争の政治的および法的側面について論じ
たので、今回は軍事的側面について検討したい。私は軍事戦略の専
門家でないので、知人で元ドイツ連邦軍総監、元NATO(北大西
洋条約機構)軍事委員会議長、クラウス・ナウマン氏の論点を紹介
しながら論じたい。

 一九九一年の湾岸戦争は軍事的転換点と言われたが、今般の対イ
ラク戦争も優れて転換的要素を示している。アメリカは、イギリス
と共に、歴史的に最初の全面的コンピューター・ネットワーク戦争
を遂行し、フランスと同規模のイラクをわずか三個師団で、しかも
三週間で制圧した。この戦争に対しては、とりわけヨーロッパで、
法的・政治的にさまざまな批判がなされ、それがいまだに終結して
いないが、軍事的にも根本的評価が不可欠である。なぜなら、これ
が二十一世紀の軍がいかなる形態であるべきかを示唆しているから
である。

 政治的には、NATOと国連内部でのアメリカと欧州の一部諸国
との対立がサダムに利することになったが、軍事的には、これを補
填(ほてん)して余りあった。この戦争は、二十世紀軍に対する
二十一世紀のコンピューター・ネットワーク軍の勝利の根拠を明確
に示した。

 ここでは五つの根拠が示されている。

1、アメリカ中心の「有志連合軍」は、戦争開始時期を明示する軍
事的ハンディキャップにもかかわらず、作戦的奇襲に成功した。
なぜなら、一九九一年湾岸戦争での比較的長い空爆後の地上軍作戦
とは異なり、戦闘開始と同時に、陸・海・空軍統合コンピューター
・ネットワーク軍事作戦が開始されたからである。さらにこれに
戦闘開始前にイラク潜入していた特殊部隊による部分奇襲が補完さ
れた。

2、アメリカ軍は、その高精度のピンポイント攻撃によって、イラ
ク指導部と防空システムを麻痺(まひ)させ、開戦一週間内に制空
権を獲得し、イラク軍に部分的戦争指揮以外を不可能にした。

3、アメリカは全面ネットワーク作戦を初めて利用し、高精度の偵
察システムの結果を遅滞なく、しかも確実に反応する戦争指揮シス
テムに組み込み、砲撃に転換した。戦略目標識別から目標砲撃への
反応時間は、アフガニスタンでの数時間単位から分単位にまで下げ
た。

4、アメリカは、最高精度の、かつ最大の火力を有した。これまで
到達した最高の精度、効果および柔軟性が迅速にイニシアチブを求
めて作戦する地上軍支援のために利用された。
従って投入された二万個を超える爆弾投下でのアメリカ戦闘部隊の
喪失は二百人以下、イラク非戦闘員喪失二千人以下であった。

5、アメリカ軍は、すべての軍事専門家にとって空前の驚嘆すべき
ほどの行動の余地を伴って柔軟に作戦を遂行した。

軍事史上のモデルとなる例も

 前記の五要素は、いまだ二十世紀形態の有志連合軍に二十一世紀
の作戦遂行を可能にし、人的に優越しているイラク軍を崩壊させた。
しかも以下の事実は、軍事史上のモデルとされよう。アメリカ軍は
、ケルベラ渓谷前でイラク・メディナ師団の抵抗と砂塵(さじん)
によって進攻が阻まれたかに思われた。主に西欧およびロシアのメ
ディアの一部による「毀傷の喜び」(敵の不幸を喜ぶこと)は、
無視できない域に達した。イラク軍は砂塵を攻撃のチャンスととら
え、メディナ師団にハンムラビ師団とニダ師団を加え、アメリカ軍
攻撃態勢を整えた。アメリカ軍は、この領域で無人偵察機グローバ
ル・ホークと有人偵察機(JSTRS)により、イラク軍のすべて
の動きを把握し、これらに精密兵器を投入し、かつAwacs(空
中警戒管制システム)機は爆撃機を目標に導いた。

 二昼夜後、メディナ師団は殲滅(せんめつ)され、ハンムラビ師
団とニダ師団の60%は継戦力を失った。イラク軍は敗走し、バグダ
ッドへの道は開かれた。これがわずか二昼夜の攻防の概要である。
この攻防の結果は、将来的抑止戦略の中心的軍事形態のあるべき姿
を示唆した。これは、NATOの「対応軍」の未来像でも、また自
衛隊の未来像でもあり得る。つまり有人・無人偵察機、Awacs
機および精密兵器を伴った三軍を統合するコンピューター・ネット
ワークシステムがこれである。このシステムによって、二十世紀軍
が二十一世紀軍となるのだ。この能力を保持することこそが、将来
のNATO軍および自衛隊改革の第一歩となるべきだ。このような
システムこそが、抑止力を発揮し、万一戦争勃発の不幸に見舞われ
た場合でも、味方の戦闘員と相手の非戦闘員損傷を最低限に抑える
ことを可能にする。

軍事面軽視での平和は不可能

 偵察、指揮および遠隔精密誘導火器の統合ネットワークシステム
こそが、将来抑止の中核とならなければならない。これにミサイル
防衛システムが加えられる。NATOにおいても、日米防衛体制に
おいても、米欧軍事技術協力と日米軍事技術協力によって、自由民
主主義国が抑止力を高め、国連におけるプレモダン的全体主義諸国
の数を可能な限り少なくする努力が必要である。軍事的側面を軽視
もしくは無視する平和主義によっては、自由下の「平和」は達成さ
れ得ない。
日本大学教授 小林 宏晨 世界日報 ▲掲載許可済です
Kenzo Yamaoka
==============================
件名:WTO閣僚会議決裂  

 メキシコのカンクンで行われたグローバルな貿易会議がぶざまに
決裂して終わったことは、米国の通商外交の失敗を表している。
それはまた、世界中の自由貿易気風に最近変化があったことの証拠
でもある。つまり、それは第二次世界大戦後何十年間も一世を風靡
(ふうび)していたのだが、過去数年の間に度を増して疑問視され
るようになったのである。この懐疑心は、公の通商サミットの内部
でも、外部でも見られ、ラウンドの決裂に一役買ったのかもしれな
い。

 技術的には、交渉の日程に関する欧州の要求が交渉終結を招いた。
欧州連合(EU)は、万一農業補助金の削減交渉をしたりすれば、
貧しい国は多額の投資や政府買い上げの政策を検討しなくてはなら
なくなる、と語った。アフリカ諸国は主に欧州の要求は日程を複雑
化し、間近に迫った期限を履行不可能にすると主張した。さらに、
欧州と貧困国の亀裂はカンクンでの再会のずっと前から歴然として
おり、自由世界と自由貿易の第一の唱道者である米国は、合意を引
き出すことができなかった。

 成功裏に終わった最後の貿易交渉は、ウルグアイ・ラウンドであ
った。それは1986年に始まり、1994年4月、120カ国が調印した。
1999年の11月と12月に(シアトルで行われた)世界貿易機関(WTO)
会議は、大規模な抗議行動で動きが取れなくされ、農業補助金と労
働条件の基準の相違の問題に決着を付けられないなどの騒ぎの中、
決裂して終わった。現在の交渉はカタールのドーハで2001年11月に
始まった。農業貿易改革の大枠合意の3月31日の期限を含め、度重
なる交渉の期限が守られずに終わっている。

 米国その他の交渉国はカンクンの件については、平静を装おうと
しているが、交渉の車の車輪はどこかで砂の中にはまってしまい、
現状ではすぐには再び走り出しそうにない。

 カンクンでは、米国の指導力に欠けるところがあったが、多くの
要因が相重なって成功を妨げたのだ。そういうわけで、米通商代表
部(USTR)のロバート・ゼーリック代表が、二国間および地域
間交渉を今は加速すべきだと言ったのは正しい。しかし、米国の
交渉担当者はそのために通商交渉の窓を閉ざしてしまってもいけな
い。米国はいかなる新しい合意からであっても、利益を得なければ
ならないのだ。

 一方、恐らく関連のある現象と思われるが、スウェーデンの国民
はちょうど欧州の共通通貨ユーロの導入を拒絶したところである。
中国は米国による中国通貨の変動相場制移行に対する要請を無視し
去った。米国民の多くが、米国の製造業の雇用が海外に移転してい
っていることを懸念している。それで、ブッシュ政府の通商代表部
は、米国の製造業の雇用を守るため先頭に立って闘おうとしている
のだ。

 本紙を含め、グローバルな自由貿易の唱道者は、実際問題として
、執拗(しつよう)さを募らせる批判者には知的に立ち向かう方が
賢明だ。2世紀前の高邁(こうまい)なアダム・スミスの学説を繰
り返したところで、シアトルの市街でも、あるいは、マホガニーで
造られた通商会議室でも、もはや勝ち目はないのである。
(世界日報)掲載許可済です
Kenzo Yamaoka
==============================
件名:胡総書記、江氏と確執も=金融疑惑処理で綱引き  

 中国の共産党総書記と国家主席の職を胡錦濤氏に譲り、一線を退
いた江沢民・党中央軍事委員会主席が上海の富豪、周正毅氏の金融
疑惑などの処理に介入し始め、胡総書記との間に微妙な確執が生じ
ているようだ。
 複数の中国筋によると、周氏が経営する不動産関連会社「新農凱
」への不正融資など総額100億元(約1400億円)に達すると
もいわれる金融疑惑の摘発は、3月の胡体制正式発足後、胡総書記
とスクラムを組む温家宝首相が主導。江氏の同意を取り付けた上で
党中央規律検査委員会が6月、本格捜査に着手した。

 ところが、胡総書記が党中央軍事委と上海市党委員会の捜査への
介入を禁止する通知を関係部門に出したことから江氏が反発。江氏
の側近の曽慶紅国家副主席に近い筋によると、疑惑を徹底追及すれ
ば「江氏の家族や黄菊副首相、曽副主席など江氏が基盤とする上海
人脈への飛び火が不可避のため、江氏は危機感を抱いている」とい
う。
 曽副主席は江氏の指示を受けて捜査の主導権の掌握に動いた。主
導権は党中央規律検査委から党中央書記局に移りつつあり、当初上
海へ200人を超す捜査員を派遣したが、捜査の規模は縮小された
という。

 中央書記局は党の日常の事務活動を行う要の組織。筆頭書記を曽
副主席が務め、周永康公安相、何勇・党中央規律検査委副書記ら
江氏に近い人物が固めている。
 江氏は1995年、汚職事件をきっかけに当時の北京市トップで
党政治局員だった陳希同氏ら政敵を追放したことがあり、胡総書記
が同様に金融疑惑を政権固めに利用していると江氏は受け止めてい
るようだ。

 また、江氏は胡指導部が3月から始めた報道改革についても「改
革のテンポが速すぎる」と不満を示し、これを受け中央書記局主導
で報道の引き締めが図られたという。中国政府は新型肺炎(SARS)
流行の際、政府批判の報道を容認するなど寛容な姿勢を示したが、
6月に一部の新聞を廃刊にするなど揺り戻しが起きたのはこのため
とみられる。
 曽副主席に近い筋は「江氏は故トウ小平氏にならって軍のトップ
、党中央軍事委主席として陰の実力者の地位に就いたが、自分が
本当に実力を維持できているか(この事件処理を通じ)初めて試し
ている」と話す。

 ただ、中国の指導部が露骨な権力闘争をすれば党の威信が内外で
失墜することは明らか。
 江氏と胡総書記は経済発展の基礎となる政治の安定を最優先に、
2人の関係の決定的な悪化を招かないよう金融疑惑などで慎重に落
としどころを探っていくことになろう。
 (北京、共同) 
Kenzo Yamaoka


コラム目次に戻る
トップページに戻る