1333.イラクの現状と北朝鮮



イラクと北朝鮮の状況を検討しよう。   Fより

イラクは、クサイ・ウダイのフセイン元大統領の息子2人が米軍の
攻撃で死んだ。しかし、米軍へのゲリラ攻撃は少し減りぎみである
が攻撃の高度化で死者数はかわらない。これはウダイ・クサイが、
すべてのゲリラ戦を指導しているわけではない可能性が高いためだ。
サッハーフが言っているように、クサイ・ウダイは嫌われていた。
このため、サダムがこの家を出た後に、米軍に通報されていまうの
です。

今後もゲリラ攻撃は続くでしょうね。そして、米軍の死者は、湾岸
戦争に比べて、断然大きくなっていくのであろう。ベトナム戦争と
比較されるようになると思う。そうならないようにするためには、
イラクをイラク人の望む指導者と政府に渡して、米軍は撤退するべ
きである。

GHQの日本統治がなぜ、うまくいったかというと、旧政府の官僚
達を温存したためで、無用な混乱を避けたためである。
そして、戦争になった大きな原因と米軍が考えた軍・財閥の解体と
農業改革・教育改革だけを行っている。非常に穏やかな戦後改革で
あったために、日本は大きな文化的痛手を受けている。伝統的な
日本文化や精神を崩壊されてしまった。これが戦後50年目以降に
青少年犯罪の増加というツケを支払うことになっている。日本人と
しての誇りも失っている。そのように日本が子供達を教育している。

それに比べて、今回のイラク統治では、米軍は寛容でなさ過ぎで、
政府官僚や軍人、警察などの旧政府の官僚を大量に解雇した。
このため、その人たちからの不満でゲリラ戦が起こっている。これ
を防ぐためには旧政府機構をそのまま継続使用するべきであった。
そして、サッハーフなどイラク国民から評判のいいイラク旧政府要
人をトップに据えれば、米国のイラク統治は上手く行くはずであっ
た。しかし亡命イラク人・チャラビ氏、ハキーム師を中心とした
親米政権を樹立しようとしたが、ハキーム師はイラクに根を持って
いるが、チャラビは根もないし、イラク人からの評判もよくない。
これでは上手く行くはずが無い。

この混乱を静ずめてイラク人にイラクを戻す手順は国連に任せたほ
うがいいように感じるが、米国は権益を得たいようで、手を離さな
い。そうすると、米軍の死者が増え、米国の財政赤字が増えるだけ
だ。ゲリラ戦はどこに敵がいるか分からない。このため苦戦になる
。ウォルフォウィッツ国防副長官もこれを認めている。

このようなイラクに日本の自衛隊を派遣するようであるが、戦場に
自衛隊を派遣するなら、戦死者に報いる褒章や名誉の体系を確立す
ることが必要であろう。普通の国の軍隊制度の確立をしておくべき
だ。そうしないと、自衛隊の不満が募ることになる。最後には自衛
隊主導のクーデターになる危険性もある。日本政府は軍の運営を間
違えている。

そして、米国がイラクに軍の多くを貼り付けておく必要があること
を見透かされたように、北朝鮮が瀬戸際外交を仕掛けている。中国
も米国と北朝鮮の仲介が不可能になってきているようだ。中国は、
中立のポジションを放棄する可能性が高くなってきている。このと
き、中国が米国と戦争するという選択子はない。このため、米国の
味方になるしかない。そして、中国国境から北朝鮮に朝鮮人を侵攻
させて、金正日政権を倒すことになると思う。北朝鮮の核実験は、
自国の崩壊を引き起こすように感じるが、米国は脅しには乗らない。
多国協議でしか北朝鮮と交渉をしないと思う。

北朝鮮が強硬手段を取ると、中部出身のブッシュはカーボーイ気分
になってしまう。米国のイラクでの失敗を北朝鮮で取り返すような
ことになってしまう可能性がある。戦争前に米軍は韓国の駐留地を
後方に移して、被害を少なくする可能性が高い。韓国から米軍がい
なくなれば、北朝鮮が幾ら核で米国を脅しても、それは脅しになら
なくなる。北朝鮮は今しか瀬戸際外交が出来ないので、焦っている。

もう1つ、中国の外交政策の変更を米国は待っている。北朝鮮の内
戦にしてしまうのが中国・米国の共同認識であろう。しかし、この
ようになっても韓国ソウルが攻撃される可能性は高い。このため、
小型核兵器で、北朝鮮を早期に崩壊させる戦略も米国は考えている。

米国の一国主義は、ここでも破綻している。中国の助けが必要であ
り、米国のパウエルなどの国際協調派は北朝鮮との戦争を回避しよ
うとしている。米国国務省としては、この戦争の意味・利益が見出
せないでいる。本音は日本も拉致事件と安全保障上の問題さえ無け
れば、関わりたくない。

北朝鮮に意味があるには、シベリア鉄道を日本・韓国に接続したい
ロシアだけである。中国も北朝鮮との外交関係にいらいらしている
。軍同士の交流はあるようだが。

しかし、中国も北朝鮮の暴走を止めることが出来ないようだ。行く
所まで行くしかない。日本はノドン・ミサイルの防止を真剣に考え
る必要が出てきた。自衛隊の処遇や防衛で日本も普通の国家になる
いい機会である。
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中東コンフィデンシャル
報告者:アブ・ハバル
ウダイ・クサイの死とサッハーフの一言  2003年07月24日
http://www.tkfd.or.jp/news/meast/1_20030725_1.shtml

 イラクの独裁者サダムの子息、ウダイとクサイがモースルで米軍
によって殺害されたという情報が流れた。 この結果、問題はイラ
ク国内がどう変わるのかということだ。
アメリカのブッシュ大統領と政府、イギリスのブレア首相と政府、
イラン政府などはこぞってこの事態を歓迎し、イラクに安定と真の
自由が実現すると期待しているようだ。

 イラク国民の間では、サダムが子息二人に対し、決して同一の場
所にいないよう厳命していたことから、二人が一緒に死んだことは
信じられない、という意見もある。
 また、アメリカ国内でイラク戦争と、その後の長期化しつつある
軍の駐留に対する批判が出始め、ブッシュ大統領の支持率にかげり
が見えてきた時期にこのニュースが流れたことから、あまりにも
タイミングがよすぎる、造られた虚偽の情報だと受け止める人も少
なくない。

 そうした主張をする人たちは、アメリカとイギリスとの間にはウ
ダイ、クサイについて生け捕ることが約束されていたということだ
が、アメリカ軍は結局殺害した。遺体の写真からはそれがウダイな
のかクサイなのか全く別人なのか判断が出来ないと語る人もいる。
しかし、イギリスの著名な中東ジャーナリスト、ロバート・フィス
クは、二人が死んだことはほぼ確実だ、とする意見を述べている。
この彼の確信の裏には、彼独自のネットワーク、情報源があっての
ことだろう。

 今回の死亡報道のなかで気を引いた一言は、元イラク情報相の
サッハーフが語ったものだった。彼はアブダビ・テレビとのインタ
ビューのなかで、「ウダイもクサイもイラク国民からは嫌われてい
た。しかも、彼らは軍を指揮していたわけではない。」と語ってい
る。
この一言の裏には、「現在のイラク国内の反アメリカ抵抗闘争、
テロ攻撃はウダイが指揮しているのでも、クサイが指揮しているの
でもない。あくまでも国民主体なのだ。」ということだ。

 従って、ウダイが殺害されようがクサイが死のうが、イラク国民
のアメリカ軍に対する抵抗、テロは終わらない。それどころか、
これから逆に激しいものになっていく可能性すらある、ということ
を語ったのではないか。
ウダイやクサイが生存していたのでは、イラク国民のアメリカ軍に
対する抵抗運動の成果が、彼らによって将来、横取りされる可能性
を否定できないからだ。
しかし、実際にこの二人が死亡したのであれば、サダム王国はサダ
ムの死後はなくなる確立が非常に高くなり、イラク国民のための、
全く新たな体制が誕生することを期待できるからだ。

 そして、今回の殺害報道で忘れてならないのは、サダム自身の死
亡はいまだに確認されていないということだ。
彼が存命である限り、二人の子息を失ったことで、アメリカ軍に対
するサダムの復讐心は、何十倍にも膨れ上がっている可能性がある。

シーア派の幾つかのグループが、独自の抵抗運動組織を結成しても
いる。シーア派ばかりではなく、スンニー派のなかにも反米抵抗組
織は誕生してきている。
イラクのアメリカ軍に対する抵抗闘争は、これからが本番なのかも
しれない。少なくともそう考えておいたほうがリスクを軽減できる
のではないか。

 これからイラクに派遣されるであろう自衛隊員は、そのことを頭
に入れて考慮すべきであり、決して「イラク国内が安定化に向かっ
ている、」などという幻想と希望を抱くべきではなかろう。
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「想像よりひどい」米国防副長官、イラク戦で誤算認める (ASAHI)

 「特に治安の面で想像していたよりもかなりひどい」──米政権
内のネオコン(新保守主義者)の理論的主柱として知られ、イラク
戦争の正当性を掲げたウォルフォウィッツ国防副長官が23日、
イラク戦争で「誤算」があったことを認めた。 

 5日間の現地視察から戻り、国防総省で記者会見した副長官は「
イラクを35年間運営してきた犯罪者集団がゲリラ戦争などと呼ば
れる攻撃を続けるなど、戦争前には想像できなかった」と述べ、
フセイン元大統領支持者らによる「抵抗」を過小評価していたこと
を認めた。 

 また、戦争中にイラク軍の大規模な部隊の投降がなかったことや
、治安維持に必要なイラク警察の抜本的な立て直しが必要とされる
事態も「予想より状況が悪い」と吐露。イラク人については「何か
実現しないことがあると、米国が望んでいないからだ、となる。
そして、極めて手の込んだ理由を作り出す」と怒りの矛先を向けた。
 (07/24 12:22) 
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北朝鮮「対話進まぬなら核実験の用意」 米に伝達 (ASAHI)

 北朝鮮が今月8日にニューヨークで行った米国との非公式接触の
中で、米朝対話が進まない場合には近く核実験を行う用意がある、
と伝えていたことがわかった。日本政府もこの事実を把握している
。北朝鮮に核実験の能力があるかどうかは不明だが、政府は多国間
協議を早期に実現させ、事態が悪化しないよう全力を挙げる方針だ。 

 複数の日朝関係筋が明らかにした。それによると、北朝鮮の韓成
烈(ハン・ソンリョル)国連代表部次席大使が米国のプリチャード
朝鮮半島和平協議担当特使と8日に接触した際、「これ以上、米国
が我が国に対して圧殺政策を続けるなら、近い将来、我が国も対抗
措置を取らざるを得ない。例えば核実験だ」と語った。核保有を宣
言したり、核関連物質や兵器を輸出したりすることも示唆したとい
う。 

 特使が「なぜそういう行動に出るのか」と尋ねると、韓次席大使
は「本国の政策であり、私が意見を述べたり止めたりできるもので
はない。伝えるだけだ」と答えたという。米政府は、このやり取り
を外交ルートで日本政府に伝えた。 

 また、米クリントン政権当時の北朝鮮担当者が最近、北朝鮮から
得た情報として日本政府関係者に伝えた話によると、山間部の岩山
にトンネルを掘って爆発させる計画で、北朝鮮の建国記念日に当た
る9月9日の前にも実施する可能性があるという。 

 日本政府は、北朝鮮に核実験能力があるかどうかは確認できない
が、「実験が行われれば、北朝鮮を非難する国内外の世論が強まり
、外交的解決が難しくなるのは確実」(政府関係者)と判断。米朝
中の3カ国協議の直後に日韓などが加わる多国間協議を8月にも実
現させ、対話の舞台を整えたい考えだ。 
(07/26 06:11) 
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(7/25)米、北朝鮮にらみ軍事計画(nikkei)

 【ワシントン=秋田浩之】マイヤーズ米統合参謀本部議長は、北
朝鮮をにらんだ軍事計画の策定に全力を挙げていることを明らかに
した。朝鮮半島で戦争が起きれば米軍などに多大な犠牲者が出ると
予想しながらも、北朝鮮が攻撃に打って出る可能性は高くないとの
認識を示した。24日の上院軍事委員会での証言。

 議長は公開の場で詳細を明かすことはできないとしながらも、
軍事計画の策定について「我々は極めて熱心にそうした作業を進め
ている」と言明。そのうえで「北朝鮮が戦争を始めれば、(金正日
)体制が終わりを告げるのは疑う余地がない。これが北朝鮮への最
大の抑止力になっている」として、同国は攻撃に二の足を踏まざる
を得ないとの見解を示した。 
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調停断念、中立放棄も=北朝鮮の核問題で中国専門家

 【北京24日時事】中国・北京大学の国際問題専門家が24日付
の週刊紙・南方週末に発表した論文で、北朝鮮の核問題解決に向け
た中国の調停は成功するとは限らず、調停を断念し、米朝のどちら
かに加担して、もう一方に圧力を掛けるという選択を迫られる可能
性もあると指摘した。
 論文の筆者は北京大国際関係学院の葉自成外交学部主任(学部長
)。調停が失敗して、中国が中立を放棄する場合、米朝のどちらを
支持するのか、葉主任は明言していないが、「調停各国とともに圧
力を掛ける」としており、北朝鮮に核開発計画を放棄させるため、
日米などと共同歩調をとる事態を想定しているとみられる。
 (時事通信)[7月24日23時5分更新]
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件名:イラク特措法に思うこと  

「国際貢献」より自力防衛の思想確立を、拉致被害者さえ自力で救
出できぬ国「戦死者」に名誉で報いる道を

 現在、今国会でイラク特措法が可決成立する見込みとなっている
。筆者は、自衛隊のイラク派兵に反対だというわけではないが、三
点の問題を感じている。

 戦争終結宣言があったものの、イラクでは、多数の米英兵がゲリ
ラ攻撃にさらされ、「戦死」している。自衛隊員は、「日本国憲法
」第九条に基づく「専守防衛」の理念に拘束されて、相手から攻撃
されるまで武力行使は許されない。したがって、自衛隊員は、米英
兵よりも「戦死」する可能性が高いとも言える。実際、イラク人ゲ
リラ組織も、自衛隊も米軍と同じく攻撃対象となると言明している
し、小泉首相も、自衛隊員死亡の可能性は否定しきれないと述べて
いる。

 「普通の国」は、「戦死」という過酷な運命を軍人に甘受しても
らうために、少なくとも「戦死者」を顕彰し、その功労に名誉の面
で報いる装置を用意している。すなわち、「戦死者」などの軍人の
功労に対する勲章制度や、「戦死者」の「魂」を祭り感謝する場の
設定である。「戦死」が可能性として予想される事態を迎えるから
には、日本国家も、同様の装置を整備する必要があろう。この名誉
の体系づくりが第一の問題である。

集団的自衛権の行使を認めよ

 第二の問題は、集団的自衛権をめぐって発生する。自衛隊と米軍
その他が隣接地域に存在する場合、米軍他が攻撃されたら、自衛隊
はどうするのか。法的に言えば、集団的自衛権の行使を否定してい
る以上、自衛隊は、反撃もせず、米軍他を見捨てなければならない
。だが、現場感覚から言えば、米軍他が攻撃されれば、当然に反撃
するだろう。反撃しないことは、人倫にもとる「卑怯(ひきょう)
」な行為であるし、日米関係や日英関係などを大きく損なう結果を
招くからである。政治的・道徳的には、現場判断による反撃は正し
い行為である。

 ところが、あくまで、この反撃は国内法的には違法である。反撃
命令を出した指揮官は処分しなければならないが、恐らく処分でき
ないだろう。しかし、違法行為を犯した者を処分もせず見逃せば、
国法体系の全体が揺らぎ、無法国家に道を開くことになろう。
 それゆえ、イラクに派兵するならば、最低限、政府の責任におい
て、集団的自衛権の行使を認める第九条解釈を確立する必要がある。

憲法前文と第9条を取り除け

 第三に、一番問題なのは、「国際貢献」という発想または考え方
である。一九九一(平成三)年の湾岸戦争以来、政府や国会は「国
際貢献」「国際貢献」という言葉を連発してきた。しかし、そもそ
も日本国家は、「国際社会」や「国際貢献」のためにあるのではな
い。第一次的には、日本民族などの日本国籍を有する者のために存
在する。それゆえ、日本国家は、国民および国土を自力で防衛しな
ければならない。自力防衛の課題が達成できて初めて、「国際貢献
」が次の課題となる。だが、日本国家は、二十年間以上、日本人拉
致問題を放置してきた。何とか拉致問題解決に乗り出した現在も、
イラク問題で米国等に「国際貢献」することを通じて、「国際社会
」の力によって拉致被害者を取り戻そうとしている。

 では、なぜ、日本国家は、「国際社会」の動きにかかわりなく、
自力で拉致被害者を救出しようと考えることさえできないのか。
それは、本質的には、国連憲章と「日本国憲法」が存在するからで
ある。一九四四年から四六年にかけての米国は、軍備を保有し世界
の安全保障に責任をもつ米ソ中英仏の五大国を上層国、軍備を保有
しないか制限された中小国を中層国、その下に軍備を認められない
日本とドイツを下層国と位置づける、三層世界秩序構想を抱いてい
た。米国が国連を形成し、戦力放棄を規定した「日本国憲法」を押
し付けたのも、この三層世界秩序構想からである(拙著『「日本国
憲法」無効論』草思社、二〇〇二年)。

 下層国日本の住民は、自国を愛することも、自己の考えで動くこ
とも、自力で自国防衛することも許されない。国際社会を愛し、
国際社会の意向に従って動き、国際社会に安全保障を任せなければ
ならない。実際、下層国日本の「憲法」前文は、日本の歴史も宗教
も否定して「人類普遍の原理」を強調し、「平和を愛する諸国民の
公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意し
た」「国際社会において名誉ある地位を占めたいと思ふ」と述べて
いる。このような「憲法」下では、自国民が拉致されても、なかな
か自力で取り戻そうという発想が育ってこないのは当然すぎること
なのである。

 と考えてくれば、レバノンのように自力で拉致被害者を取り戻す
ためにも、一刻も早く、「日本国憲法」の無効確認をおこない、
前文と第九条を取り除くことが必要であると強調しておきたい。
大月短期大学教授 小山 常実・世界日報
 ▲掲載許可済みです。
Kenzo Yamaoka
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件名:北の核武装解除には圧力が不可欠  

「完全で検証可能、不可逆的」放棄へ・経済崩壊させるほどの強力
さ必要交渉は3点をめぐる攻防に

 北朝鮮をめぐる情勢が緊迫している。七月上旬、寧辺核施設周辺
の大気から再処理に随伴するクリプトン85が検出されたのに続き、
同八日には、北が使用済み燃料の再処理を完了して核兵器六個分の
プルトニウムを抽出し、直ちに核兵器製造に取りかかる意向を米国
に伝えていたことが明らかになった。米側は再処理を完了した証拠
はないとしながらも、重大な懸念を表明している。

 他方中国は七月中旬、外務次官を訪朝させ、米朝二国間会談に固
執する北朝鮮の説得を試み、その結果第三者協議開催の可能性も見
え始めた。対話がなければ物事は進展しない。だから三カ国であれ
五カ国であれ、協議が行われることには賛成である。しかし対話だ
けで北の核放棄に道をつけることは不可能だろう。その理由を以下
述べたい。

 日米韓三国は、北朝鮮の核問題が「完全で検証可能、かつ不可逆
的な」方法で解決されなければならないことで一致している。交渉
はこれらの点をめぐる攻防になる。

 「完全な」解決には、核関連施設・物質のほか、既に造ったとさ
れる核兵器も当然含まれなければならないが、北の意図は今のとこ
ろ明確でない。四月下旬の米中朝三国協議の際、北は米特使に「保
有している核兵器の廃棄には応じない」と述べたが、五月末に訪朝
した米議員団には「核兵器、核施設、核物質のすべてが交渉のテー
ブルに載っている」と述べている。常識的に考えて、軍が今持って
いる核兵器をそう簡単に手放すはずはない。

 交渉が始まれば、北が大量に保有している化学兵器や生物兵器の
廃棄、ミサイルの開発・輸出の中止も取り上げられるだろう。これ
も交渉が難しくなる要因である。

 「不可逆的」の狙いは核関連施設・物質をなるべく早く撤去、国
外搬出し、核計画放棄を確実にすることである。九四年の米朝「枠
組み合意」は、核施設・使用済み燃料を凍結したが、その撤去・搬
出は「軽水炉完成時まで」延期され、北朝鮮が施設を再稼働して瀬
戸際作戦に打って出る余地を残した。「不可逆」は、この余地を封
じようとするものである。

「検証」問題が最大の難関

 「検証」が最大の難関である。九二年、国際原子力機関(IAEA)
が核拡散防止条約(NPT)に基づいて初めて査察を行った際、
当初の申告と異なり、核兵器一、二個分のプルトニウムを抽出して
いた疑惑が浮上した。IAEAはそれを検証するために核廃棄物貯
蔵施設に対する特別査察を要求したが、北は軍事機密を理由にこれ
を拒否し、このため危機が一気に高まった。

 「枠組み合意」では北の強い要求を容(い)れ、この疑惑を解明
するための特別査察は軽水炉の重要部品搬入時に先送りされ、疑惑
は当時確認できなかった。本年四月、北が核保有を認めたことで、
この疑惑が裏付けられた。

 この経験を踏まえ、疑惑の余地なく核開発を放棄させようとする
のが「検証可能な」解決である。査察の対象はプルトニウム製造施
設のみならず、北が昨年十月に認めたウラニウム濃縮施設、核兵器
製造施設も含まれる。

 北が核物質や兵器を秘匿している疑惑が起これば、全国に散らば
る軍事施設、倉庫、トンネル、さらには機器や核物質の隠し場所と
なり得るすべての施設(その中には強制収容所なども含まれよう)
を国際査察員が自由に査察することが必要となる。これまで北は外
国人と自国民の接触、特にセンシティブな地域への外国人の立ち入
りを厳しく制限してきた。外国人が全国土をくまなく査察して回れ
ば、政権の基盤は揺らぐだろう。

平和守るため妥協は許されぬ

 以上、「完全で検証可能、かつ不可逆的な」核計画の放棄は、軍
事優先政策の放棄、体制の改革・開放を前提としなければあり得な
いことを見てきた。問題は金正日にその用意があるとは思えないこ
とである。仮に交渉が行われても難航は避けられず、物別れに終わ
る可能性が高いと考えざるを得ない。

 米国の民主党関係者は、ブッシュ政権の強硬姿勢を無策と批判す
る。しかし上記の通り、今日の事態を招いたのは九四年の交渉で
クリントン政権が中途半端な妥協をしたためである。北が強く反対
するからといって今回また妥協を繰り返し、核開発の根を完全に断
ち切ることに失敗すれば、十年後にわれわれが直面するのは、間違
いなく好戦的な核大国北朝鮮である。いい加減な妥協は絶対に許さ
れない。

 平和的に核を放棄させるためには、対話と同時に圧力が不可欠で
ある。それも今破綻(はたん)に瀕(ひん)している経済を崩壊さ
せるくらいの強力な圧力でなければならない。しかしそれは、平和
を守るための圧力である。

 北は事あるごとに「制裁は戦争と見なす」と脅し続けている。
しかし黄長ヨプ元労働党書記が最近述べた通り、「金正日は核兵器
を使った瞬間に、自分が滅びるということをよく知っているため絶
対に使えない」のである。北の暴発を恐れることはない。
  (外交評論家 村岡 邦男・世界日報)▲掲載許可済みです。
Kenzo Yamaoka

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