1312.神道と米



          水屋神社宮司・鈴鹿国際大学教授 久保憲一

神道と稲作=豊葦原瑞穂の國=


わが日本は、豊葦原の千五百秋の瑞穂の国=豊葦原の国はいつまで
も毎年秋になると稲穂の波打つ豊かなよい国、と言われてきた。
周知のごとく十一月二十三日の勤労感謝の日、すなわち新嘗祭には
天皇陛下が新しく収穫された米を嘗められ(食され)、天照大神は
じめ八百万の神々に収穫を感謝し、来年もまた豊穣・安寧を下さる
よう祈願されるお祭である。国民も五穀豊穣を祈念し、農民に感謝
する日でもある。

 また記・紀などによれば、高天原において地上の日本を統治せよ
と天照大神に命じられ、玉、剣、鏡の三種神器とともに斎庭の稲穂
を授けられた嫡孫・瓊々(にに)杵(ぎの)尊(みこと)は、高千穂に天
降られた。しかし地上は物の識別ができないほど暗闇であった。
そこで瓊々杵尊は授けられた稲穂を揉み、籾にし、四周に蒔かれた
。すると俄かに天が開け、太陽も月も照るようになったという。

毎年春には天皇陛下御自らお田植え、秋には稲刈りをされる。即位
後最初の新嘗祭には、大嘗祭が行われる。このように天皇陛下にと
り、もちろん日本にとっても、米もしくは稲は単なる食糧ではない
。稲作は、わが国の「和=協調・協力」「礼」「勤労」「信」…と
いう国民性や文化を形作る、極めて重要な意義を持っているのであ
る。

たしかに一時、わが国は戦後食糧難によって食糧増産に努め、
一九六〇年には自給率八〇%にも達したことがある。ところが、そ
の後は大きく下げて最早二〇%を割っている。アメリカ、フランス
は今なお堂々たる農業大国であるが、わが国は先進国中最下位、
OECD加盟二八カ国中二七位、今や世界第一位の食糧輸入国にな
っている。


稲作農業の壊滅的状況


戦後日本はアメリカの軍事・経済両面における誘導と圧力により動
かされてきた。日米安保条約締結後の米軍基地化、アメリカ追随の
大衆消費社会化がもたらされた。またプラザ合意は日本のバブル経
済の起因になった。問題は米である。アメリカの占領政策と農産物
自由化の下、米食が激減、農民も次々と水田を手放してきた。日本
農業は今や、後継者問題を含め、壊滅的状況に至っている。現在、
わが国にはわずか三ヶ月の米備蓄しかないという。

この稲作農民と水田の減少は今後の日本に深刻な食糧危機を招くか
もしれない。たしかに地球温暖化も懸念される。最大の輸入相手国
アメリカにエルニーニョや世界を震撼させている毒ガステロ、また
SARSのような大災害が起これば日本は一体どうなるか。今日の
日本の経済繁栄はまさに砂上の楼閣である。三十年ほど前のトイレ
ットペーパー買い占め事件を想起すべきである。また大東亜戦争直
後の食糧不足を教訓にしなければならない。世界の何割という飢餓
人口が米を一斉に食べ始めた時、日本は金さえ出せば米をいくらで
も輸入できるとタカをくくっていていいのだろうか。アメリカには
畜産飼料、麦、大豆といった基礎食糧の大半を頼っているが、過度
のアメリカ依存はこの国が今後こうした食糧を「外交カード」に使
いはじめるのではないかと危惧する。


 「神農連」結成と食糧備蓄の促進を!


ある冬の夜、私は京都の山奥の神主さんと酒を酌み交わした。たま
たま神道と農業の問題を話題にした。彼は私に稲作農業を復活、
継続させ農家の生活を可能にすべきであると言い、「余剰米や賞味
期限切れの米は世界の飢饉の人々を救うために使うべきである。
そのため日本は休耕田をやめ、稲作農家が生活できるだけの収入を
得られるようにし、国民も食糧安保の観点から納税負担すべきであ
る。また『自衛隊(日本国軍)』は米輸送・配布などにおいて完璧
な自衛手段を持ち実行すべきである。もちろんその前提には『憲法
第九条』を改正し、自衛隊を正式な日本国軍隊として認定する必要
がある。また『神政連』は下部組織に『神農連』を結成し、農民の
先頭に立って政府に働きかける。全国の神職もそれぞれの神社を
中心に「神農連」を通じ農家のためにあらゆる活動をなすべきであ
る」と熱っぽく語った。まさにわが意を得た思いの夜話であった。

日本は今後、いつまでアメリカを始め外国からの食糧輸入に頼るこ
とができるのか。昭和三十年には六〇五万三〇〇〇戸あった日本の
農家は、平成七年には三四三万八三〇〇〇戸に激減してしまった。
将来展望は実に暗いと言わざるを得ない。丁度今、国会では有事関
連法案が取りあげられているが、「危機管理」を言うならば軍事よ
りもまず食糧備蓄に真剣に取り組まなければならないのではないか
。例えば、米、麦、大豆、また野菜、肉は缶詰、瓶詰め、真空パッ
クにし、一旦緩急の際、国民が飢えないようにすることぐらいは考
えねばならない。少なくともわが国は三年から五年の米の備蓄は不
可欠であろう。

また農業の保護といっても輸入を関税で完全に締め出すわけにはい
かないから最低限度の保護関税にし、『主要食糧は二重価格制』に
して消費者にもう少し高く買ってもらえば、兼業農家の長男は昨今
の経済事情なら多少は農業復帰するかもしれない。稲作農民は一朝
一夕には育たない。十年、二十年かけ、父親の技術を継承するもの
なのである。


 原点に立ち戻れ!


今日の日本はあらゆる部面において、日本人または日本文化の原点
に立ち戻る必要があろう。われわれが毎日食する食糧や食生活も原
点から見なおす必要がある。例えば戦後の日本人は食の原点たる
「水」「塩」「米」をあまりにも粗末に扱いすぎる。
昨今では「空気(酸素)」さえ売られ始めた。世界第二の森林保有
国・日本「豊葦原瑞穂の國」は一体何処へ行ったのであろうか。

終戦直後「日本人が好戦的な理由は米を主食としているからだ」と
いう迷信が意図的に流布されたことがある。今や食事はコンビニ弁
当、ファーストフード、ファミリーレストランになった。スーパー
マーケットで米は簡単に入手でき、家族揃って伝統的和食を食べる
食習慣もなくなった。

このような状態では大麻頒布減体傾向に示される通り、神道が脆弱
化するのも当然といえば当然である。戦後教育では我が国の歴史や
伝統文化は一切教えられず、新嘗祭(勤労感謝の日)の意味さえ教
えられない。「誰に何を感謝していいか分からない祝日」となって
いる。かつては御飯を粗末にすると天罰で目がつぶれるとか、精魂
込めて作られたお百姓さんに申し訳ないと教育されたものである。
「感謝」を教えない社会に神道が生き残れようはずがない。神道人
の存在意義が今問われはじめている。

      「みあかり」三重県神社庁教化特集号 第十一号より

水廼舎學人/久保憲一
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        農村の復興
日本農業の復興はどうすればいいのか??   Fより

中規模農業以上の農家をどう育成するか??若者や定年退職者が農
業をする仕組みが必要であろう。若者は、農業組合などの共同農業
に勤めて、月給で生活する。この組合が大規模農業をするとか。

定年退職者が、中規模農業をする。野菜や米などを作り、それと年
金で自活できる体制であれば可能だ。自然に包まれた生活ができる。

どちらにしても、多様な農業を考えることが必要であろう。都市生
活者に菜園などの土いじりができる農園を貸すのも、近郊農家に
とってはいいアイデアであろう。


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