1213.米国勝利の条件



イラク戦争は、やはりこのコラムで予想した通り、英米軍の苦戦に
なっている。それではどう米国は戦うべきかを検討しよう。Fより

ネオコンの中心的な存在のリチャード・パールが米国防政策委員長
を辞任した。この人物に引きづられて、イラク開戦をしてしまった
。当初、3万の米軍で1ケ月でイラクは崩壊するという楽観論も言
っていた。軍事専門家でない人が戦争を企画すると碌なことはない
ですね。米軍制服組は湾岸戦争程度の規模(55万人)の兵員が必
要と言っていた。それをラムズフェルド国防長官は保守的だと制服
組を批判して、20万人にした。しかし、どちらが正しかったか、
すでに判明している。

英米軍はゲリラから補給線を守るために、陸軍をあと10万人必要
といい、最終的にはイラク全土の治安維持には60万以上の軍が必
要になるでしょうね。湾岸戦争以上の軍を必要としている。また、
イランやシリアなどがイラク支援の方向になっている。アラブから
義勇兵もイラクに押し掛けている。このままにすると、アラブ対米英
の戦いになってしまう。この後ろには、ロシアがいる。シリア経由
で軍事物資を供給しているようだ。

もちろん、トルコが阻止したいが、クルド人は独立を確保するため
米軍に協力しますから、この地域に米国の味方が居なくなることで
はない。そうすると、トルコは反米になり、親イラクになる可能性
はあるが。

しかし、米軍はベトナム戦と違って、イラクの方が楽なはず。ゲリ
ラ戦は基本的に都市だけですので、サバクの補給ラインは守りやす
いため、補給ライン確保に苦労したベトナムより条件はいい。
イラク正規軍の戦車や重火器は航空攻撃で、叩けるため、問題ない
。特に天候のいい時に集中的に攻撃することが必要である。
反対に、イラク軍は補給ラインを砂嵐に混じれて、攻撃してダメー
ジを与える作戦しかない。市街戦を英米軍が回避すると、戦争のや
りようがない。

都市という点にしかイラク軍と民兵はいないのですから長期戦を覚
悟さえすれば、都市を包囲して、水と電気、食料のない都市から民
衆を脱出させるように持っていく。兵と市民を分離させる。しかし
、長期戦になると、国際政治的には戦争反対やアラブ世界での反米
運動が盛んになり、米国の政治的な面で不利になる。もう1つ、
長期戦になると、米軍の被害が相当なことになるため、米国の世論
を維持できるかどうかと、国防予算36兆円以外に1ケ月6兆円の
戦費が必要であり、この戦費が経済に大きな重石になり、米国の衰
退を早める可能性がある。もし、1年間戦争が続くと6兆円*12
月=72兆円になる。日本の国家予算と同じ規模になる。しかし、
今イラクからの撤退も米国の威信からできない。

しかし、英国はある時点で撤退する可能性がある。戦後復興に英国
企業は一切入れないという不満と国内世論とで、撤退をブレアは決
断する可能性がある。豪州も増員をしないし、交代要員を考えない
と言っている。これはある時期で撤退と言っているようなものであ
る。米国の長期戦に最重要同盟国も付き合う気がない。

それと、イラクにアラブ・ロシアが本格的に支援して、アフガニス
タンで米国支援のゲリラにソ連がやられた戦略を、ロシアが米国に
お返しする可能性がある。これをやられると米国の被害が大きくな
る。このときは、アラブ諸国からイラクに義勇兵が集まり、ロシア
製武器をサウジ??の金で支援するような気がする。戦争になれて
いるアフガン・ゲリラやチェチェン・ゲリラが米軍と対応するため、
戦争経験の差で米軍の被害は相当に大きくなる。特に都市近郊で陣
地を張っている米軍を攻撃するため、24時間警戒する必要がある
。ロシア製のゲリラ用対戦車ロケット砲の射程距離50KM程度で
あり、この範囲を警備する必要があり、相当の兵員を必要とする。
ゲリラが運べるロケット砲・迫撃砲には航空攻撃はあまり効かない
。

イランの武装勢力(革命防衛隊)もイラクに入っている。この行動
は要注意である。イラク・シーア派の支援であるが、どちらサイド
で行動するかで南部の動向を決定する。もし、米国に対して武装活
動をすると、南部支配をスムーズに米軍はできない。それより、
米国はイランをも敵にすることになる。

楠木正成のサダム・フセインの「ジハード」の呼びかけに、アラブ
諸国がどの程度反応するかが次のポイントになる。もし、アラブ諸
国が影でイラクの味方になると、今後の国際政治面で米国は窮地に
陥ることになる。国連の安保理で侵略戦争反対決議が採択される可
能性もある。もちろん、拒否権を英米は使うが、国連で米国が拒否
権を使うこと自体が、米国の覇権が揺らいだ証拠になる。

独仏露中を中心として、世界の諸国は国連とは別の組織を作る可能
性が出てくるか、逆に英米が国連を出て、有志連合という組織を作
る可能性もある。このときはEUが世界覇権を取りに来る可能性が
高まっていく。イラク戦争に勝ったとしても、米国にとって正義を
捨てた戦争の代償は大きいことになるでしょうね。
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(3/28)米国防長官が警告「シリアから軍事物資」

 【ワシントン28日共同】ラムズフェルド米国防長官は28日の記者
会見で、シリアからイラクに国境を越えて軍事物資が運ばれている
との情報を明らかにした上で「こうした敵対行為はシリア政府に責
任がある」と強く警告した。

 長官は「(軍事物資の)供給は米英軍部隊の生命を脅かすものだ
。状況をより複雑化させている」と指摘。物資の中には市街戦など
で使われる暗視用ゴーグルが含まれていると述べた。具体的にどの
ような組織が輸送に関与しているかは説明しなかった。これに対し
、イラクのサハフ情報相は「根拠がない」と否定した。

 また、イランの武装勢力がイラク領土内に侵入しているとして「
彼らは(イランの軍事組織である)革命防衛隊と通じている。米英
軍を妨害するなら戦闘員とみなされる」と述べ、イラン政府をけん
制した。

 長官は、米軍はバグダッドをほぼ全方位から攻めることができる
よう包囲網を構築しつつあると強調した。 


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