1185.覇権の構図



覇権確立には世界の支持が必要であり、覇権の衰亡には世界の反対
があることを見よう。   Fより

まず米国の覇権確立期を見よう。米国は第二次世界大戦後、欧州の
植民地で民族自決というキーワードを使って世界の期待を集めて、
この期待に応えるために米国が支配しやすいIMF、国連、世銀な
どの世界体制を確立できたのです。米国の戦力が大きかったから確
立したのでは断じてない。

この民族自決の大西洋憲章は、日本がアジア人の独立を助けて、と
もに繁栄するという大東亜共栄圏構想に対抗するために、米国が考
えた戦争スローガンであったのです。しかし、それにより米国は、
世界の覇権を確立したのです。

英国の覇権確立は、世界の貿易に欠かせない海の治安を確立して、
海賊などの不法行為を取り締まり、世界を1つの貿易圏にしたこと
で、世界の商人から支持されて覇権を確立したのです。しかし、英
国の衰亡は、植民地の独立を押さえたために、世界から猛反対を受
けて、第2次大戦後は世界の覇権を米国に取られている。

このように世界の覇権確立は、世界の多くの国民から正義と思われ
る行為をすることで、確立するものなのです。反対に、世界の多く
の人たちが迷惑とする行為をして支持を無くすと、覇権は他に取ら
れることになる。今の米国の行為は世界の正義と言えることかどう
かです。米国の自己だけの利益であると、他の世界によっては迷惑
ですので、どうなりますか??この間隙を欧州の独仏が狙っている
し、世界世論も独仏に有利に展開している。

今までの経緯でいうと、覇権を取るのは世界島であるユーラシア大
陸ですが、ロシア・中国が共産主義であったために、共産主義のハ
ートランドと自由主義のリムランドの戦いが50年間続いたのです
。このリムランドを率いたのが米国です。米国は世界島にいなかっ
たために防衛が欧州に比べて安価にすんだし、ソ連との戦争で被害
を受けない可能性が高かった。このため、覇権的には不利なリムラ
ンドではあるが、米国は優位な位置になったのです。

自由主義は正義で、国民大衆の自由を制限する共産主義は悪である
ことは明確であったものですから、地政学的に劣勢なリムランドが
、戦略的に有利なハートランドを圧倒できたのです。ハートランド
のソ連陸軍に欧州は脅威を感じて、NATOを作り米国の支援を必
要にしていたのです。リムランドは海軍中心で、米国が空母を12
隻用意して、自由主義のリムランドを守ったのです。米国の正義は
揺らぎがない自信と威厳に包まれていたのです。

もう1つ、20世紀は石油の時代でした。この石油を運搬するのに
海運業のタンカーが効率的なために、巨大なタンカーが造られて、
非常に安価に石油を運搬できたのです。このタンカーの海上防衛を
米国の海軍がしていたために、米国の同盟国は得し、このためにも
米国の自由主義国家群での覇権は確立していたのです。米国に対抗
したソ連や中国は自国内陸部の少ない石油をパイプラインや鉄道で
運ぶしかなかった。アラブ産油国の石油を使えなかった。このため
、ハートランド諸国は鉄道輸送というランドレーンで、リムランド
諸国がシーレーンというタンカー輸送になったのです。

しかし、1989年以降、ロシアと中国が自由主義陣営に参加して
から、リムランドとハートランドの戦いは終了して、世界がグロー
バリズムとして一体感を得始めたのです。こうなると米国の正義は
影が薄くなり、世界、特に欧州は米国の言うことを聞かなくなるし
、米国は米国だけの利益に走り始めたのです。この典型的な事件が
、京都議定書の米国拒否が上げられる。米国は世界防衛のために軍
事費を30兆円以上費やしながら、世界から尊敬されないことにな
っていったのです。

米国が利益を追求し始めてからは、世界は米国の行動を批判し始め
たのです。このため、米国は益々、自分の利益追求に走ることにな
る。また、イスラエルと米国が一緒であることを隠さなくなってい
る。このため、アラブ諸国が石油の30%を占める産油国群ですが
このアラブでのテロが頻発することになる。特に湾岸戦争後、米国
がサウジアラビアに駐留してからはオサマビン・ラディンなどの
テロリストが輩出して、米国をターゲットにした攻撃をし始めるの
です。そして、とうとう英米は国際法上での侵略戦争を開始しよう
としているのです。このため、米国の現役外交官まで米国の不正義
に憤慨して辞任する状態になっている。

さあ、今後の覇権はどうなりますか??
独仏露ハートランド連合対英米豪のリムランド連合の戦いになり、
両陣営の中国・日本などの東アジアと産油国のアラブ諸国の取り合
いが起こるし、起こっている。米国は戦争と言う手段でアラブを取
ろうとしているのに比べて、独仏露は平和的に味方に付けようとし
ている。このため、独仏露に世界世論は靡くことになる。あと十数
年後は覇権的には有利なハートランドの独仏露に覇権が移行してい
る可能性があると考えられる状態になってきている。
==============================
米のキャリア外交官がイラク政策に抗議して辞任=国務長官への書
簡で執拗な戦争計画を非難 
2003 年 2月 28日 

【ワシントン27日】米国務省は27日、在ギリシャ大使館に勤務
する同省のキャリア組の外交官が米国のイラク政策に抗議して辞表
を提出したことを明らかにした。この外交官は政治担当のブレイデ
ィ・キースリング氏で国務省歴20年のベテラン。パウエル国務長
官に送った辞表の中で、米国がイラクとの戦争に血道を上げている
ことを非難している。国務省のバウチャー報道官は「そういう見解
を持っていても米国の外交官を続けられるのに残念だ。しかし、こ
ういうことはよくある」と述べた。

27日付のニューヨーク・タイムズ紙によると、キースリング氏は
パウエル長官への書簡の中で、米政府が執拗にイラクとの戦争に突
き進もうとしていることは海外の米国の権益に災厄的な結果をもた
らしており、ウッドロー・ウィルソン大統領以来、攻撃・防衛の両
面で米国の最も強力な武器だった国際的正統性を浪費させていると
述べている。〔AFP=時事〕


コラム目次に戻る
トップページに戻る