1173.得丸コラム



芸術ではなくて物体

 現代芸術作品を、「オブジェ」と呼ぶのは、これは芸術作品では
なくて、単なる物体なんだという主張が込められているのではない
かと、思った。芸術概念の否定である。

 芸術だと思うから、作家は何を意図したのだろうとか、この色使
いには、この造形には、何の意味があるのだろうか、などといった
邪推、考えなくてもいい下手な考えをしてしまう。

 単なる物体であるからこそ、そのものを好きか嫌いか、触るのは
好きだけど見るのは嫌だとか、触っているうちにだんだんと触感を
好きになったとか、その物体にもたれかかっていると気持がいいと
か、物体と自分の五官との直接的な交流ができる。

 そのような見る者との直接的対話をするために、現代芸術作品は
自ら芸術であることを否定した。「アート(芸術)」あるいは「ピー
ス(作品)」ではなく、「もの(オブジェ)」としてそこに存在するの
だ。

 今こそ高らかに言おう。芸術の時代は終わったのだと。どこかの
美術館に収蔵されている芸術作品をありがたがっていても何も世界
は変わらない。

 むしろ、我々の感受性を高めることによって、この世界そのもの
が美しいことに気づかなければならない。我々自身の努力によって
、我々の住んでいる今・ここを、美しい空間にしなければならない。

(得丸久文、2003.02.11)
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はじめは気色悪かったものが、心を捉えて離さなくなる
ヘンリー・ダーガー展 @ ワタリウム美術館
http://www.watarium.co.jp/museumcontents.html

1973年、アメリカ・シカゴで、身寄りのない81歳の老人が死んだ。
彼の部屋にあった旅行鞄の中から、「非現実の王国で」と名づけら
れた物語の原稿1万5千ページと、300枚の大ぶりな挿絵が見つか
った。

老人の名は、ヘンリー・ダーガー。8歳からカトリックの孤児院、
障害者施設などに入れられ、17歳のときに施設を脱走。以後、病院
の皿洗いや掃除夫を50年続ける。
彼は20代の10年をかけて物語を書き上げ、その後30年かけて挿絵を
書いた。

これらの絵は、生前は誰にも公開されず、ひたすら作者の楽しみの
ためにだけ書かれたのであった。

東京・青山のワタリウム美術館で4月6日まで開かれているヘンリー
・ダーガー展に、私はたいした期待もせずに訪れた。

実にやすっぽいポップアート調の全裸の少女たちには、みなおチン
チンがついている。その子たちが、南北戦争のような白兵戦を繰り
広げ、血がドバっと流れ、下腹部は引き裂かれ、、、、といったど
ぎつい、やや倒錯気味の2階に展示されていた絵を見て、私は、これ
は自分には合わない絵だなと思った。足早に3階、4階と訪れ、美術
館を後にしようと思った。

40年に及ぶ一貫したスタイルと、作者の執着力には、恐れ入ったが
、正直言って、私の趣味じゃない、と思っていた。

出口で、学芸員の人に、自分がいかにこの絵を気に入らなかったか
を説明し、学芸員から作者にまつわるいろいろな話を聞いた。地下
の売店に画集がありますから、よかったらどうぞといわれて訪れて
みると、昨年アメリカで出版された700ページ以上もあるカラー・大
判の研究書があった。

「この絵を見ていると、首の後ろのあたりが、重苦しくなるんだ」
、「気持ち悪いし、安っぽい」とさんざん悪口を言いながらページ
をめくる手がまったく止まらない。

「色がきれい。山下清みたいだ。この描かれた人物の個性のなさは
、現代に通じるものがある。ユニクロ現象みたいな衣装だし」とぶ
つくさいいながら、結局700ページを二回も通しでめくってしま
った。1時間半くらい立ち読みしていた。

不思議な力をもつ作品だった。ものは試し、おすすめします。

www.watarium.co.jp
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http://japanese.joins.com/html/2003/0210/20030210134851400.html 
中国の汚染物質が韓半島や日本に影響 

米宇宙航空局(NASA)は、北京など中国北部地域の都市と 
工場から排出された大気汚染物質が韓半島と日本に 
影響を及ぼしていることを示すグラフィック資料を公開した。 
この資料は先月27日から今月2日までNASAが人工衛星に 
付着された遠隔監視装置を通じて高度3キロの空気中に含まれた 
一酸化炭素の濃度を分析した結果を地図に表示したものである。 
地図上には一酸化炭素が濃度によって0〜270ppb範囲で 
表示されており、汚染が激しい中国北部地域と日本の大阪などは 
赤い色で、汚染が少ない砂漠、海洋は青い色で表示されている。 


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