1151.北朝鮮の危険なカケ



ロシアの介入で北朝鮮も動いている。検討しよう。  Fより

ロシアの特使ロシュコフ氏がロシア・プーチンの懸念を、金正日に
伝達した。核開発を米国に認めた状態で北朝鮮が譲歩しないと、国
連安保理では北朝鮮への制裁は確実で、下手をすると全世界を相手
にした戦争に成ってしまうと、脅したようだ。

このため、北朝鮮は米国との話し合いを無条件に行うことと、核開
発はしていないと主張を変化させている。しかし、米国は核施設の
利用も核兵器開発の一貫と認識しているので、この米朝の認識が一
致するまでには、長い時間がかかることになるでしょうね。米国は
核開発の廃棄が交渉の前提条件であると言っている。米国の交渉引
き延ばしという時間稼ぎに合いはず。

それより国連安保理への付託は戦争の布告と同じであるという北朝
鮮の主張は、確実に国連安保理への付託を米国はロシア、韓国の反
対でも行うため、北朝鮮サイドの主張では戦争開始になるがどうす
る気でしょうかね。

日本や韓国にミサイルを発射すると、本当の戦争になる。日本の国
会で日本か韓国またはグアムに打つ北朝鮮ミサイルに水素燃料を積
み込む時、憲法上の攻撃と見なすという防衛庁長官の発言に反対す
るマスコミや知識人・議会人がいるが、多くの日本にいる日本人・
外国人が死ぬのに、バカもほどにしろと言いたいですね。

もし、9条の条項がそうなら、憲法がおかしいので、直ぐに改憲す
るべきだ。日本を守るために憲法や防衛があるという原則を忘れて
いる。日本人の生命を護る気がない反日日本人・外国人たちは日本
から出て行って欲しいですね。横に逸れた。

横に逸れたついでにもう少し検討しよう。日本にはまだ空中給油機
がないため、F15戦闘機でミサイル基地を爆撃して日本に戻れな
いので、爆撃後、韓国の空軍基地に下りるしかない。
それでなければ、ミサイルがどこを狙っているかわからないので、
米国や韓国軍に爆撃を依頼するか??しかし、これは違憲の集団安
保の行為であり、日米安保では米国は一方的に日本を守ることしか
できない。

このように日本の安保体制が不備であることを示すいい例になる。
この機会に東アジアの集団安保がいかに大事か分かって欲しいもの
である。集団安保も違憲だそうで、そのような憲法は日本人を護っ
ていないため、憲法の根本原則から外れている。憲法改正が必要で
すね。

米国は北朝鮮を焦らす作戦である。イラク戦争後までは米国として
は動けない。もう1つ、北朝鮮のミサイルが韓国のソウルを狙って
いるために戦争ができない。このため、食料援助、重油援助の代わ
りにミサイルと化学兵器、生物兵器、核兵器の全廃を要求してくる
。北朝鮮はそれを受けられないであろう。金政権が丸腰の米国追従
では持たない。

このため、長期交渉になり、その内にイラク戦争が終了して、米国
の全兵力は北朝鮮に集結する。このとき中国サイドから国連軍が北
朝鮮に侵攻することになると思う。韓国は北朝鮮と友好関係を保つ
が、国境線は不可侵としている。国連・米国と裏交渉で中国は北朝
鮮と敵対関係になるが、国境は自由に往来できる。もちろん、脱北
者は中国に出る。韓国には出られない。中国は既に北朝鮮の今回の
核開発の行動を大反対しているし、金正日の亡命も拒否している。

ロシアはランドレーンとしての石油輸送を韓国・日本としたいため
、北朝鮮の安定が必要であり、金正日政権のように米国や日本と対
決する今の状況は、ロシアも望んでいない。このため、金打倒は直
接はしないが黙認となるような気がする。その前に北朝鮮内部で、
クーデターが起きるような気がする。

北朝鮮の内部を良く知るレンクの活動で分かるが、北朝鮮内部に大
きな変化が起きているようだ。経済が苦しいため、多くの民衆が餓
死線上にある。これは金政権の政治がおかしいと思っているようだ。

一歩進めて、日米韓中で、北朝鮮の民主勢力に資金と工作兵を送り
込んで、北朝鮮内部から崩壊させることが重要であると思う。
脱北者が大勢中国に来ている。この人たちに軍事的な訓練をして、
送り返せば、いいだけである。そうすれば、北朝鮮軍には弾薬・兵
器もほとんどないから、容易に中国臨界部のある地域を占拠できる
。そこから韓国、中国特殊部隊と北朝鮮反乱軍で北朝鮮内部に侵攻
すれば、化学兵器のほとんどは韓国国境にあり、反対の中国国境に
は容易に輸送できない。
そして、北朝鮮の民衆のほとんどが解放軍に着くことは、間違いな
い。案外、イラク戦より政権打倒は容易のような気がする。国連安
保理で拒否権を発動する国もないし、こちらの面でも容易である。
戦後処理も中国主導で政権を作れば、大きな混乱も起きないだろう。
中国流開放政策を着実に実施すれば、韓国企業も日本企業も進出す
るでしょうから、発展できる。中国と韓国の合意ができる時期に
韓国と統一すればいい。

国防省の戦略家マーシャルのRMAは北朝鮮向きな戦術だと思うが
どうですかね。マーシャルさん???
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<北朝鮮>「重油止まり、経済苦しい」 金総書記が露特使に訴え

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正日(キムジョンイル)
総書記が、20日に平壌を訪問したロシュコフ露外務次官に対し、
北朝鮮の核開発問題について「米国の本音は北朝鮮の体制崩壊だ」
と米国への疑念を示す一方、「重油供給が止まり、経済状況も厳し
い」と窮状を訴えていたことが、23日分かった。日朝関係筋が明
らかにした。厳しい経済環境下で米朝協議による事態打開を望んで
いることを示す発言として注目される。

 ロシュコフ氏はプーチン大統領特使として訪朝した。金総書記は
、米国が不可侵条約の締結を拒否していることについて「米国は『
条約は議会で通らない』と言っているが、本音は体制崩壊で、根本
的に相いれない」と米国への不信感をあらわにした。一方で、総書
記は「北朝鮮の体制を保証できるのは米国しかいない。この問題は
米朝協議でのみ解決できる」と強調。さらに「北朝鮮の経済状況は
悪化している。特に重油が不足している」と、米側に重油供給再開
を求めた。

 日朝関係筋は「総書記が率直に経済の窮状を訴えたのは、米朝対
話への意欲の表れ」と分析。日本政府内には「ロシアが米国に対し
て重油供給再開による事態打開を米国に求める可能性がある」との
見方も出ている。(毎日新聞)
[1月24日3時21分更新]
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安全保障は「米ロ中で」 ロ次官、北朝鮮に提案(ASAHI)

 ロシアのロシュコフ外務次官は24日、金正日総書記と会談した
先の北朝鮮訪問について記者団に語り、ロシア側が北朝鮮側に「米
国とロシア、中国の3国で安全を保障する」案を提示したことを明
らかにした。また、同次官は「訪問中、北朝鮮側はわれわれに核兵
器の開発は行っていないと強調した」と語った。 
 ロシュコフ次官は18日から21日まで平壌を訪問。金総書記や
趙昌徳副首相ら高官との会談で「包括提案」を示し、この中でロシ
ア側は北朝鮮に対して「米国を含む関係国で安全を保障する」とし
ていた。今回の発言はこれをさらに具体化するものだ。 

 北朝鮮に対する安全保障についてはアーミテージ米国務副長官が
同国に対する不可侵を公式声明などで文書化する用意があることを
表明。しかし、北朝鮮はあくまで米国に不可侵条約締結を求める考
えを強調している。ロシアの提案は米国による不可侵の約束を北朝
鮮の友好国である中ロも側面から加わって保障する形だが、ロシュ
コフ次官は「北朝鮮は提案を否定しなかった」と語った。 

 ロシュコフ次官は「北朝鮮は核問題の国際化を拒否している」と
し、北朝鮮の核開発問題の国連安保理への付託を「時期尚早」とす
るロシアの立場を強調。「米朝の緊張緩和は主として米朝の対話に
よって行われるべきで、ロシアなど第三国の課題はその対話をでき
るだけ早く実現することにある」と語った。 
(23:46) 
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IAEA緊急理事会、2月3日開催(ASAHI)

国際原子力機関(IAEA)の報道官は24日、北朝鮮の核問題を
協議する緊急理事会を2月3日に開催すると述べた。核問題を国連
安保理に付託する決議が採択される見込みだ。 
 同報道官は「現在、安保理付託に向けた決議の内容について理事
国が協議中だ」と述べた。エルバラダイ事務局長はすでに理事国(
35カ国)に対し、北朝鮮の核不拡散条約(NPT)脱退宣言など
についての報告を提出、理事国間の調整が行われてきた。 

 国連安保理への付託については、早期付託を求める米国と、外交
交渉を重視するロシアの対立が伝えられている。また、韓国も早期
付託に消極的との情報もある。報道官は「決議の内容は理事会まで
に変わる可能性もある」と述べた。付託後も各国の外交努力を継続
し、すぐに制裁などは検討しないことを盛り込むなど全会一致の付
託を目指し協議が続く見込み。3日までに調整がつかない場合、
93年の核危機時同様、多数決に持ち込まれる可能性もある。
 (00:20) 
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北朝鮮、安保理で協議ならミサイル発射実験再開=外交筋

 [東京 22日 ロイター] 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮
)に近い外交筋によると、国連安全保障理事会が北朝鮮による核開
発問題の協議を始めれば、北朝鮮は弾道ミサイルの発射実験を再開
するという。 
 同筋は、「この問題が国連安保理で協議されれば、北朝鮮は、自
ら課していたミサイル発射中止を解除する」と述べた 
 ボルトン米国務次官は22日、ソウルでの記者会見で、国連安保
理が今週末までに、北朝鮮の核拡散防止条約(NPT)脱退など、
同国の核開発問題に関する協議を開始する、と述べていた。 
 (ロイター)
[1月22日22時23分更新]
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<北朝鮮>寧辺の原発で「数週間以内に発電始める」高官語る

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の機関紙「朝鮮新報」(21
日付)によると、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のシン・ヨン
ソン電気石炭工業次官は同紙とのインタビューで、核凍結を解除し
た寧辺の原子力発電所が「数週間以内に発電を始め、平安北道、平
安南道を中心に電力を供給する」と述べた。(共同)(毎日新聞)
[1月23日0時0分更新]
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宮崎正弘の国際ニュース・早読み
    平成15年(2003)1月25日(土曜日、臨時増刊)
北朝鮮に融和したブッシュ政権の「外交は崩壊した」
これでは同盟国からも不信の目で見られるだろうークラウサマー再
び吠える
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 1月17日付け「ワシントン・ポスト」にでたチャールズ・クラ
ウサマーの「朝鮮半島の滑稽劇」と題する論説は実に激しく、厳し
い。すこし時機を失したかも知れないが、大事な論文なので、紹介
したい。

クラウサマーは「ブッシュの北朝鮮政策は完全に崩壊した」とまで
断じている。外向的なジグザグは米国外交史上まれな災禍、北朝鮮
を増長させるばかりだ。

 これまでブッシュ外交は北朝鮮に対して、「核開発を放棄しない
限り交渉しない」と主張してきたのに、核拡散防止条約体制から北
が脱退するや突如として融和姿勢に転じ、「食料も油も供給しても
いい」としたのは「アメリカへの信頼を裏切る」ものでしかなく、
しかもイラクを片付ける前は妥協も必要とばかりの無原則的な平壌
への融和は「ニンジンどころか、上にサクランボをのせたケーキ(
ご褒美)」である。
 
「後退」するくらいなら「沈黙」すべきであり、北に与えるべきは
「褒美」ではなく「経済制裁」であり、「政治的孤立」だ、と明確
に言い切っている。 
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労働党内部文書から見た金正日式「経済改革」の欺瞞(レンクHP)
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/renk/insiderepo4.htm
05/01/2003
RENK代表/李 英和
*『SAPIO』2003年1月8号より修正・転載
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2002年10月末、北朝鮮に潜入していた新たな民主化闘士が国
境を突破して中国へ帰還した。北朝鮮人青年の李萬鉄(仮名、32
歳)氏である。今回の任務は、北朝鮮国内の民主化組織の協力を得
、「経済改革」に関する労働党の内部文書を入手することだった。
一見不可能に思える任務を、李萬鉄氏はみごとにやり遂げた。
 識者の一部には、民主化勢力が北朝鮮国内に存在すること自体に
疑念を差し挟む向きある。完璧な秘密警察網を備えた金正日体制の
下で民主化組織が生まれ育つはずがない、という思い込みである。
だが「弾圧あるところに抵抗あり」という格言は、古今東西はもち
ろん、北朝鮮にも当てはまる。たしかに、民主化勢力は金正日体制
を自力で倒せる力量をまだ備えていない。だが、着実に力を蓄えて
いる。安哲氏の秘密撮影に始まり、李萬鉄氏の内部文書奪取に至る
まで、隠密作戦を連続して成功させるまでに成長した。「論より証
拠」である、今回公表する内部文書は民主化組織の秘めたる力量を
示している。
 分け知り顔の識者だけでなく、金正日にも忠告しておくべきだろ
う。足下の敵は未熟かもしれないが、その闘争意欲は正面の敵(ブ
ッシュの兵隊)をしのぐ。「十回殺されても金正日を決死打倒する
」と宣言済みである。とを忘れるべきではない。李萬鉄氏は、海外
向けのビデオレターで、北朝鮮国内の状況と脱北者の心情について
こう述べている。

 「国内は相変わらず電気もない、テレビも観られない、新聞にも
読むべきものはない。〔情報に関しては〕漆黒の闇の状態で、地獄
に帰ったような気になった。金正日の悪口はまだ公然とは言えない
。それでも、以前は全くと言ってよいほど社会不満を口にできなか
ったが、『こんな調子でやっていられるか!』とか『こんな政治で
はダメだ』とか不満を口にするのは今や当たり前になっている。
余りに長い間、生活が苦しすぎたので、もう統制できなくなってい
る。〔脱北者は〕北朝鮮に帰れるものなら帰りたい。生活が良くな
ったらというのではない。それよりも、とにかく体制が変わったら
帰りたい。改革開放された祖国なら帰りたい」

 こんな国民の不満の高まりに危険を覚えた金正日は「経済改革」
なるものを2002年7月から実施した。太陽政策派の識者などは
、これを市場経済的要素の導入による「改革開放への第一歩」と評
価している。それが大間違いであることは本誌既報の通りである。
それでも太陽政策派の誤った評価は消えない。そこで、金正日式改
革の本質を、李萬鉄氏が奪取した内部文書それ自体にずばり語って
もらうことにする。そこには金正日の覚える焦燥感が浮き彫りにな
る。そして、金正日の統治能力の無さが透けて見えてくる。

◎前代未問の自己批判文書

 内部文書は表紙を含めてB5判8頁の冊子になっている。漂白剤
の足りないせいで灰色のままの再生紙に粗悪な活版印刷で印字され
ている。表紙の左肩には「対内限定」(部外秘)と記され、末尾に
は通し番号が振られている。表紙の記載から、朝鮮労働党出版社が
発行した「講演及び解説談話資料」であることがわかる。表題は「
価格と生活費を全般的に改定する国家的措置をよく知り、強盛大国
建設を力強く早めよう」となっている。今年7月実施の「経済管理
改善措置」(7・1措置)に関する公式文書である。
 この「金正日式改革」の実施に先立ち、6月1日付けで内部文書
が作成されたという。李萬鉄氏が奪取したものとは別バージョンで
A4判43頁の大部におよぶ。その内容については、同文書を入手
した韓国の「朝鮮日報」が10月16日付けで紹介記事を掲載して
いる。この「党・政府機関の幹部らと、将校らの講演、学習資料用
」は、「内容を綿密に分析すれば、北朝鮮当局の政策意思と方向を
読み取れる極めて重要な文書」と評価されている。
 これに対して、李萬鉄氏が奪取した文書は各工場や農場、軍部隊
や大学など、生産および活動単位で新政策の実施時期に合わせて用
いられたものである。生産・活動単位の長が部下たちに新政策の意
義と狙いを説明するために作成された。文書は配付されないので、
内容は簡潔明瞭、表現は直截でなければならない。
 実際に一読してみると、単純かつ明快である。「綿密に分析」し
なくても、その「政策意図と方向性」が一目瞭然となってる。その
意味では、まさに「第一級資料」といえる。ともあれ「百聞は一見
にしかず」である。以下、要点だけを抄訳する(下線部=引用者)。

〔前略〕最近数年間、我々は社会主義建設において価格事業を正し
く行えず、国の経済事業全般に重篤な悪結果をもたらした。現在、
国定価格が農民市場〔闇市場のこと〕の価格よりも低いせいで、商
売行為が盛行し、国家には商品が不足しているのに、個人は商品に
囲まれているという現象を招来している。農民市場に行ってみると
、米を始めとする食料品から工業製品に至るまで、生活に必要なほ
とんど全ての品物がみんなある。その大部分は、低い価格空間を利
用して、国家物資をごっそりと掠め取り、高く売っているものであ
る。だから、生産は国家がやっているのに、商品やカネはほとんど
全部が個人の懐に入っていく。〔略〕
 現在、個人の商売人たちは豚肉を生肉1キロにつき60〜80元
で仕入れては農民市場で暴利を得ているが、今後は国家が仕入れる
値段がそれよりもっと高くなるので、おのずから豚肉商売人たちは
居所がなくなる。〔略〕
 これまで社会的に許容してきた各種の価格基準を全て無くし、全
ての商品価格を一種類の基準で統一した。これからは商品の需要と
供給が変動するのに応じて、商品流通と貨幣流通を円満に保障でき
るよう、商品価格を固定させないで能動的に継続して調整するよう
になった。〔略〕
 また今回、国家は社会主義分配原則を正しく実施し、人びとが実
際に自分の働いたぶんだけ、そのぶん得をするよう生活費も改定し
た。〔略〕
 我々がこれまで適用してきた低い価格による食糧供給制は
1946年から実施してきた。過去、労働者、事務員の実質生活費
に占める食糧の値段の割合は、わずか3.5%にしかすぎなかった。
一日だけ働けば、一箇月の食糧を買って食べることができたので、
わざわざ苦労して働かなくても暮らして行けるようになっていた。
働ける家庭主婦の多くが社会に進出せず、一部の労働者が生産活動
に熱誠を示さない理由はまさにここにあった。〔略〕
 これからは、国家が協同農場から買い上げた食糧に値段に一定の
付加金を加え、今の食糧供給基準を超過しない範囲で売り与えるよ
うになるが、そうなれば勤労者の実質生計費に占める食糧の値段の
割合は50%程度になる。このように、全ての物を正しい値段で買
って使うようにする。〔略〕
 まず、新たな国家的措置に対して正しい認識を持たねばならない
。現在、一部の人びとの間では、食糧も不足し、商品もないのに、
物の値段と生活費を上げて経済問題が解決されるのか、国家が値段
を引き上げれば市場価格がもっと上がる、と言って半信半疑してい
る。これは、今般の措置の意図を深く理解できず、社会主義経済管
理に対する認識が不足しているところに原因がある。〔略〕
 現在、人民たちは、いまや苦労して働けば国が富強になり、全員
が良い暮らしができるようになったと喜んでいる。〔略〕
 基本は、誰もがみんな、苦労して働き、もっと多くの物質的富が
創造されるようにしようということである。ところがいま、一部の
人びとの中で、新たな経済措置に対し、自分勝手に解釈して、良か
らぬ世論をかき立てる現象が表れている。我々は今般の国家的措置
が国の経済を速く発展させ、人民生活を実地に解決できるようにす
る正当な措置であることをはっきりと知らねばならない。〔後略〕 

 私が推測するに、こんな講演を聴かされた住民は口をあんぐり開
けて呆れ返り、苦笑と爆笑をこらえるのに一苦労したことだろう。
「一日働けば一箇月食える」という地上の楽園は、いったい何処の
国のことなのだろう。餓死者が続出したのは、闇市場と商売人のせ
いではないだろう。金正日の失政のせいである。黙って餓え死にし
たくない国民が商売に励み、農民市場を一大闇市場に発展させた。
おかげで国民の半数が餓死する最悪の事態をなんとか免れたのであ
る。そもそも闇市場には国家が生産した品物は何も売っていない。
国家は武器以外、ほとんど何も生産しなかったからだ。食料品から
工業製品に至るまで、ほとんど全ての商品は中国製であった。
 なのに金正日は、なにを勘違いしたのか、あるいは逆恨みしたの
か、「電撃戦」(価格競争)を仕掛け、闇市場と商売人の撲滅を狙
った。闇商人よりも国営商店が少しばかり高い値段で仕入れ、少し
安い目の値段で売る、というのである。そうすれば国が富強になる
と金正日は信じて疑わない。ところが、国営商店の幹部連中の不正
腐敗、先行き不安とインフレ期待の売惜しみで物価は暴騰した。
人民は「喜ぶ」どころか「絶望感」を深めている。
 ろくでもない講演を聴かされた一般国民は家に帰って「こんな政
策がうまく行くはずがあるか!」と悪態をついている。講演者であ
る当の工場支配人は自宅に戻って「とてもやっていく自信がない」
と辞表を書く。闇市場の商売人は「戦争」に勝ち抜くため、路上で
のキャッチセールスで対抗し、安売りで国営商店に猛反撃を開始し
ている。民主化勢力は金正日による「不当な措置」が広げる「人民
の海」を泳ぎ回り組織拡大を図っている。

◎金正日式改革の真の狙いは「封建制」の維持

 結局のところ、金正日式改革は市場経済への段階的移行を目指す
ものでも、改革開放への第一歩を踏み出すものでもなさそうだ。
最大の眼目は、市場経済的要素(配給制の廃止)を借用して、真の
市場である「闇市場」を撲滅することにある。金正日は「夷を以て
夷敵を制す」つもりなのだろう。
 だが、闇市場と商人を撲滅した後に、いったい何が残るというの
だろうか。不正腐敗まみれの党幹部連中と、商品を国内通貨や国定
価格で売ろうとしない国営商店だけである。商品価格と生活費(給
料)は、需要と供給とは無関係に、金正日と労働党が決めることに
なる。その際に基準となるのは、「豆と人民は絞れば絞れるほどよ
い」という、市場経済とも改革開放とも無縁な「封建制の金科玉条
」である。
 他方で、独裁体制の動揺という観点から特筆されるべき点がふた
つある。ひとつは、内部文書とはいえ、労働党が「国民の政策批判
」を公式文書に記載し、その内容を国民向けの講演で披瀝している
ことである。もちろん金正日が「表現の自由」を認めるようになっ
たわけではない。とても無視できないほど「良からぬ世論」が拡散
し、国民の不満と動揺が危険水位に近づいている証拠である。もう
ひとつは、「一日だけ働けば」云々という表現の示唆するところで
ある。もしこれが荒唐無稽な現状認識の発露でないとすれば、金正
日が「文化大革命」の発動を企んでいる兆候なのかもしれない。
「社会的に許容してきた各種の価格基準の全廃」とは、体制維持の
要である「核心階層」の懐に手を突っ込み、一部を「動揺階層」へ
と格下げする腹づもりなのかもしれない。搾る豆粒の数を増やそう
というのである。だとすれば、核心階層に文字通り深刻な動揺が走
りかねない。
 ともあれ、金正日式改革は、独裁体制の生き残りを賭けた「最後
の大博打」である。これに失敗すれば、金正日にはもうやり直す機
会はめぐってこない。そして、粗悪品の金正日式改革は、重油と食
糧の援助半減にくわえてミサイル輸出船の臨検という事実上の経済
制裁発動で、早くも賞味期限が切れかけている。その断末魔の足掻
きが「戦争カード」の選択である。戦争騒ぎで国民の不満を逸らし
、あわよくば援助を脅し取る「一石二鳥」を金正日はもくろんでい
る。


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