1150.パウエルの好戦性について



パウエルの好戦的な発言が目立ち始めている。それを分析しよう。
              Fより

「905.第4次世界大戦遂行」で紹介したパウエル・ドクトリンを
再度確認しよう。

パウエル・ドクトリンとは、1.戦争は政治の最後の手段でなけれ
ばならない。2.目的を限定し、必勝の戦略態勢を築き、十分な兵
力を集中せよ。3.戦いは国民の理解と世論の支持がなければ勝利
は得られない。というものである。

この原則をパウエルは着実に実施している。1.については国連査
察をして、イラクの査察違反を待ち、その結果攻撃とする方向にあ
る。しかし、査察が完全な黒にならない。パウエルは国連がイラク
の経済封鎖を続けていたいために、査察を延ばすのではないかと
国連査察に不信感を持っているようだ。この国連と欧州、ロシア
が石油利権の確保で利害の一致をしていると思っている。

それを裏付けるように、フランス・ドイツは攻撃反対であり、中国
、ロシアも消極的である。これに対して、イラク戦後に石油の利権
をやらないと米国はロシア・中国などを脅している。しかし、安保
理で攻撃決議が通らない可能性が高い。フランスは明確に拒否権を
行使すると言明している。しかし、パウエルは国連に米国の持って
いる秘密情報を提供すると述べているため、まだ予断を許さない。

2.は十分な兵力を集めるために、ラムズフェルドなど国防省背広
組の特殊部隊中心の攻撃を排除して、15万人以上の大部隊展開に
した。そして着々、湾岸に到着している。空母も6隻を湾岸に送ろ
うとしている。準備は万端整ってきた。攻撃が始まれば1ケ月程度
でイラクを占領して、その後、日本化できると踏んでいる。軍心理
では攻撃の直前に中止と言われると、士気に影響するため、もう攻
撃しないということができない。パウエル自体も軍心理を知ってい
るため、中止できない可能性が高い。このため、ブッシュの外交補
佐官のライスも攻撃派になっている。このため、米国政権で、意見
が統一されてきた。後は、イラク周辺に十分な軍隊の到着を待つだ
けになっている。英国も3万人の軍隊を送っている。これも同様。
必勝の体制はできた。

3.ブッシュへの支持は60%と現状は高い。米国議会でイラク攻
撃の決議案は既に可決されている。しかし、懸念事項は反戦運動が
盛り上がっていることで、それに輪をかけてローマ法王のイラク攻
撃反対との声明でしょうね。
このローマ法王声明の影響は反戦活動に多大な影響を与えている。
ロサンゼルスの反戦集会に20万人もの人が集まったのはローマ法
王の声明の力も大きい。

というように、国際、米国国内政治環境は混沌としている。ダボス
会議にパウエルも出席するので、欧州首脳との会議が行われると思
うが、パウエルはイラク攻撃を欧州首脳に説得するサイドに回る。

米国政権内の意見が統一しているため、国連安保理での攻撃決議案
の審議も無いようだ。米国は国連での決議は必要ないとしているた
め、米国の単独攻撃になり、英国や豪州、日本(?)、チェコなど
が攻撃に参加することになるでしょうね。独仏はイラク攻撃反対に
なる。ロシア、中国は疑問符ですね。戦争後の石油利権をどう考え
るかで決まる。どちらにしてもハルマゲドンの2歩目が踏み出され
ることになるでしょうね。

軍人でもあり、かつ国際協調派のパウエルがどう欧州との調整する
かと、もう1つが経済サイドのグリーンスパンがどう判断するかで
、今後のイラク戦争があるかどうかを決めるようだ。欧州メインは
イラク戦争に反対であるが、国連査察でイラクに疑念があるので、
黒の証拠が出れば、逆転する可能性もある。ここ1・2ケ月は国連
、米国、欧州、ロシアから目が離せないですね。
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宮崎正弘の国際ニュース・早読み
    平成15年(2003)1月25日(土曜日、臨時増刊)
「イラクの嘘」決定版をコンドレーサ・ライス補佐官が寄稿
  「真摯な武装解除でなくゲームをつづけている」
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 先にホワイトハウスは「サダムフセインの嘘」という34ページ
の小冊子を作成、いかにイラクが査察に非協力的であるか、過去十
数年に亘り欧米を騙そうとしてきたかを、簡潔に纏めた。

 その決定版が登場した。
 大統領補佐官のコンドレーサ・ライス(安全保障担当)が「NY
 タイムス」に「イラクの嘘を我々は知っている」と題した論文を
寄稿したのだ(1月23日、日本時間24日)。

 「国連決議1441号から11週間が経過した。サダムは核、生
物、化学兵器の全容を明らかにしていない。明らかに嘘をついてい
る」と激しい批判で始まる同文は、南アフリア、カザフスタン、ウ
クライナの武装解除の模様を比較している。

 とくに南アフリカは1989年に密かに開発し保有してきた7発
の核兵器を、突如、公開し廃棄した。アパルトヘイト政策撤廃を前
に戦略的決断をしたのだ。
このときはIAEAが査察に入り、査察官はすべての施設を立ち入
り検査した。建設記録から日々のオペラーション日記に至るまで数
千頁の書類が引き渡された。
 南アはIAEAに完全な協力をしたのだが、これと比較すると、
イラクは査察官を手玉に取り、非協力的であり、まるで「ゲーム」
を楽しんでいる。
 しかし「もう時間はない」とライス補佐官は冷淡に結んでいる。

 空母の移動、軍の大量配備、予備役の招集。そして最後通牒的な
ホワイトハウスの動き、こうなるとイラク攻撃は秒読み段階ととれ
る。
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イラク問題、フランスに近い立場=中国外務省 [ロイター]

 [北京 23日 ロイター] 中国政府は、イラク問題をめぐる
姿勢は、戦争回避に全力を尽くすべきとするフランスに近い、と表
明した。その上で、中東地域における米軍の戦力増強に懸念を示し
た。
 外務省スポークスマンが記者団に述べたもの。

 同スポークスマンは、「われわれのポジションは、フランスに極
めて近い。(米国の)大規模な軍事力増強を懸念している」と語っ
た。

 ドイツとフランスは、米国によるイラク攻撃に反対する姿勢を鮮
明にしている。
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「米国だけでは行動せず」国務長官 対イラク軍事行動(ASAHI)

 パウエル米国務長官は22日、米PBSテレビの番組で「軍事行
動をとる場合、米国だけでやることはない。我々に加わる別の国々
がある。米英だけではない」と述べ、軍事行動の場合、数カ国の参
加が得られるとの見通しを示した。 
 フランスやドイツが軍事行動に難色を示していることについて、
「米国は、大半が機密扱いの情報や知識を他国より持っている。(
安保理)討議のなかで、提示する機会があるだろう」と述べ、より
機密度の高い情報に基づいて判断していると説明。国連査察団が
27日に安保理に報告した後の29日に開かれる安保理などに情報
を提示する考えを示した。 

 27日の査察報告について、パウエル長官は「中間報告」としな
がらも、「問題は査察活動にどれだけの時間がさらに必要かという
ことではなく、査察が機能しないだろうということだ」と述べ、査
察による武装解除が現状では難しいなか、武力行使の判断の時機が
迫っているとの見通しを示した。 

 国務省によると、パウエル長官は、スイスのダボスで開かれる世
界経済フォーラムに出席し、26日に演説する。世界中の政財界の
有力者が集まる場で、イラク攻撃の正当性などを主張するものとみ
られる。 

 一方、ブッシュ大統領は22日、ミズーリ州セントルイスで演説
し、イラク軍高官らに対し、米軍が武力行使に踏み切った場合、大
量破壊兵器を使用すれば、「深刻な結果を招く」と改めて警告。戦
犯などで訴追することを示唆した。 (19:24) 
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「イラク攻撃急ぐのは間違い」 NYタイムズ社説(ASAHI)

 22日付米紙ニューヨーク・タイムズは、ブッシュ政権がイラク
攻撃を急ぐのは間違いとする社説を掲載した。 
 社説では、国連による大量破壊兵器開発をめぐる査察が続く現段
階では、攻撃を急がずに、フランスやロシア、中国など国連安保理
メンバーのアドバイスも聞くべきだと指摘。 

 さらに、攻撃では多くの人命が失われることや、中東全体の政治
的不安定化、米国の経済的負担などリスクが大きく、平和的解決の
可能性をすべて断念するのは早すぎるとしている。 
(20:42) 


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