1133.CHOCOさんが帰国



コラムの皆様、あけましておめでとうございます。
今年も、このコラムが、日本国家の繁栄と、健全なる方向転換の
指針となりますよう、心からお祈り申し上げます!

いつもお世話になっていましたモスクワのCHOCOも、ついに、去年末
に学業を終え、日本に戻ってきてしまいました。
正直言って、一ヶ月ほどの間、慣れ親しんでいたはずの地元神戸に
帰ってからも、どうもしっくりこないまま、なにかモスクワが懐か
しくて、懐かしくて、ちょっとなにかあるたびに帰りたくて仕方な
いような気持ちで仕方ありませんでした。

まったく、ロシアってのはおかしな所です。
あれだけ、道端に出るのにさえ、パスポートを持っていないと警察
に捕まるというような、不条理な生活を強いられ、不愉快極まりな
いロシア流接客との戦いに日々明け暮れていながら、そんなロシア
に、ここまで惚れてしまった自分も、かなりいかれています。
でも、すべて終わってみれば、なんだか笑い話になってしまう、
それがまた、関西人の性というのでしょうか。

日本への帰国前になってくると、友達から、近所の人から、先生か
ら、教授からロシア人のいろんな知り合いに囲まれては、「日本に
なんて、帰らなくていいんじゃない?」、「もうこっちにずーっと
いたら?」とか、「今度はいつロシアに戻ってくるの?」という質
問攻めに遭う始末で、一体、自分でもどっちが故郷だったのか分か
らなくなるほどでした。

今回、国立演劇大学は、演劇の理論的研究をする学部におりました
ので、学士論文ということで、せいぜい100ページ前後の論文を
書いた程度で、たいしたもんではなかったのですが、それでも、「
日本女優 花子のロシア公演と、日露文化交流」というような珍し
い題材が受けたところもあって、意外なほど最終的には評価を頂け
たので、それはそれは感動的でした。

なんせ、この日本ではほとんど無名に等しいただの芸者だった、
太田ひさ、こと花子さんは、ヨーロッパに20年滞在した間に、
女優としての名声を確立し、ロシアへも公演旅行で二度も来訪しま
した。その際に、その時代の演劇界の頂点ともいえる、モスクワ芸
術座を創設した一人である、演出家のスタニスラフスキー、女優で
あの有名な劇作家チェーホフの妻、オリガ・クニッペル、また観客
としては、同じく有名な演出家で、アバンギャルドの寵児である、
メイエルホリドなど、怱々たる面々からの絶賛を得たのでした。

また、思いがけないことに、彼女はフランスの彫刻家ロダンのモデ
ルとしても、10年間の親密な交流があり、その作品はサンクトペ
テルブルクのかの有名なエルミタージュ美術館にもあるくらいなの
です。そして、森鴎外も会ったことも見た事もない彼女のことを、
短編「花子」で取り上げたほどでした。(しかしながら、この作品
はまったくのフィクションですが)

そんな「花子」のことを、恥ずかしながら、私自身、知りませんで
した。ロシアでも高名な演劇評論家で、私の指導教授となった、
アレクセイ・ワジーモビッチ・ボルタシェービッチ氏から「この女
優についての論文は、いまだロシアでは誰も書いていないから、君
がやってみないか?」、と持ちかけて下さるまでは。

正直言って、このときを始めとして、ロシア人インテリの知識と造
詣の深さ、他の文化圏の文化、芸術への関心の高さに、驚かされる
こととなりました。とりわけ、日本に対する尊敬と愛情の眼差しは
、予想外のものでした。

以前にも、壊れたドアを修繕してくれた、ロシア人の大工のおじさ
んに、「日露戦争で活躍した「こだま」を俺は尊敬してるんだ!」
と言われて、びっくりしたことがありました。しかしながら、花子
も、それに劣るものではない、と思われるほど、同じ日本人が聞い
ても、驚愕すべき人物であったのです。

まだまだ書きたいことが、山ほどありますが、今回は長くなりそう
なのでこの程度にしておきたいと思います。

また、今年前半にはロシア語で自分が書いた論文を日本語訳して、
ネット上でその一部を公開するつもりですので、そのときにはぜひ
、このコラムでもお知らせしたく存じます。

また、日本に帰ってきて、一種のロシアという文化圏の視点から見
た、現在の日本について、書きたいことがたくさんありますし、
ロシアの現状についても、まだまだ書きそびれたことがあるので、
今年もちょくちょく投稿させて頂くつもりです。

それでは 
今年もいっそう、このコラムが有益なものとなりますように!

神戸より   CHOCO
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(Fのコメント)
CHOCOさん、お帰りなさい。モスクワからのロシア事情が聞け
なくなるのは、少し残念な感じもしますが、神戸から発信してくれ
るようですので、期待します。


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