1086.読者の声



やまとの恋はほろびたるらし            得丸久文 
渡辺京二氏が編集している「道標」第三号に、松本克夫氏が「昭和
思想史論 『昭和精神史』覚書」を掲載している。

 いうまでもなく『昭和精神史』は、ならびに『昭和精神史 戦後
篇』は、桶谷秀昭氏が、昭和の文芸紹介を通じて、その時代を生き
た日本人の心のありさまを表現したもの。この『昭和精神史』につ
いての、書評を書こうとした松本氏が、書評の準備作業として二冊
の本から感じたことを書き連ねたのが、この「覚書」である。

 なかなかに読みごたえのある覚書だが、とくに最初の部分の指摘
に共感したので、ひとことだけ印用する。

「敗戦までの昭和の二十年間は失われた時代と言えるだろう。恥ず
べき時代、忘れてしまいたい時代、できることなら歴史から抹殺し
てしまいたい時代として扱われている。(略) 近年、『歴史教科書
』をめぐって強い拒否反応が起きたのも、歴史が歪められるという
危機感からというより、忘れてしまいたい記憶を呼び起こされたこ
とへの苛立ちからではなかっただろうか。」

 「忘れてしまいたい記憶を呼び起こされたことへの苛立ち」とい
う表現に、とくに共感する。戦争を知らない世代、戦後生まれの世
代にも、この感情はみごとに共有されているのではないか。

 敗戦による心の傷は、世代を超えて伝えられている。この事実を
認めあい、お互いに協力して乗り越えていかなければならない。

 土居健郎博士が、昨年出版された「続・甘えの構造」の中で指摘
されておられるように、日本人はいまだにさきの戦争の敗戦のPTSD
(トラウマ後症候群)に苦しんでいる。このPTSDを乗り越えるため
には、とにもかくにも敗戦の事実を直視しなければならない。

 昨今の日本の政治の腐敗、医者の儲け主義、学校教育の荒廃、地
域社会の崩壊、家庭の崩壊の背景には、一貫して敗戦のPTSDあるい
は戦後改革による日本人の精神の骨抜き化の影響があると思う。

 もっと素直に敗戦の事実をみとめなければならない。敗戦後の占
領政策によって、大切な心を奪われてしまったことに気づかなけれ
ばならない。そこから、自分たちの精神を再インストールする作業
を始めなければならない。

 戦ひの破れし日より日の本の大倭(やまと)の恋はほろびたるらし 
        折口信夫 倭おぐな・遺稿より

「道標」は、発行人が人間学研究会。862ー0951熊本市上水
前寺2ー6ー8 榎田弘方、電話096ー381ー8150。
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中国とロシアの相似的関係と、ロマノフ皇帝一家を巡るある怪談。

本日11月15日、モスクワにて、偶然通りかかった修復中の教会
で偶然耳にした話。

ロシア最後の皇帝一家が惨殺された都市エカチェリンブルクに現在
、すでに非常に立派な、モスクワの有名寺院にも負けない規模のロ
シア聖教の教会が建造されたらしい。

しかしながら、まだ新しいこの教会には、既に一種の怪奇現象が起
きているという。なんと、何度拭いて綺麗にしても、壁のどこから
か、自然に流れ出す血が止まらないのだという。
信心深い青年は、その話をしながら蒼ざめた顔をしていた。

この話を横で偶然聞きながら、ある意味、「さもありなん。」とい
う気持ちであった。
この国の現状をあの世から見ておられるならば、ロマノフ皇帝一家
がいかにイコン化されようが、心の救いがあるわけがない。
心から気の毒としか言いようがなかった。

そして、偶然と言えば偶然ながら、このとき、この教会の受け付け
にいた女性に、私は、ある署名を頼まれた。

因縁的なことであるが、これがいわゆるソ連時代の負の遺産に関す
るものだった。
現在、モスクワで論争の焦点になっている、元KGB前の広場に無実の
市民を大量にシベリア収容所に送ったことで悪名高いジェルジンス
キーの銅像を、もう一度同じ場所に戻すことに反対する署名だった
のだ。

この教会だけなのか、ロシア聖教全体の動きなのかは不明であるが
、この銅像問題に関して、ロシア皇帝の親族の像をその位置に、持
ってくるという案を出しているらしい。
「当然、その方がよっぽどいいに決まってますよ」と賛成して、
即座に署名させてもらった。

それから、教会内をゆっくり拝見させてもらったが、まだ修復中と
いうこともあって、非常に質素な雰囲気で、薄暗くて寒寒している
のだが、この教会に携わる人々の懸命な努力が伺われて、早く立派
に修復されることを、祈らずにいられなかった。

もちろん、この教会だけの話ではないと思うが、30年代から80
年代までは、完全に宗教的な行事は禁止され、玩具工場、映画のフ
ィルム工場として使われていたというのだから、なんだか、その痛
手の深さを感じずにいられなかった。

現在のロシア人は、残念ながら精神的に非常に荒廃している。
ここ数年のモスクワを、表面だけ見てみれば、まるで驚くべきスピ
ードで新しいビルが建ち、巨大なショッピングセンターができ、
新車のベンツやトヨタ、BMWがガンガン走り、多くの若者が日本と
ほとんど変わらないレベルの文字送信可能な携帯を持つようになっ
たものの、それが一体、実際の全体の国民の幸せに繋がっているの
か、疑問を感じずにいられない。

その精神的な傷が、いたるところに見られる。
たとえば、地下鉄などは、この2−3年ですっかり落書きだらけに
なり、国粋主義的な張り紙、怪しげな痩せる広告、転がったペット
ボトルやビール瓶、窓ガラスにまで刻まれたスラング、ギスギスし
た人間関係に外国人排斥と、アンチユダヤの声ばかりが高まる様子
から、その傷の深さは、既に明らかになりつつある。

一番大きな被害者は、社会で最も弱いものたちということになる。
それは、地方から逃げ出してくる何万人もの子供たちに重なる。
両親がいるにもかかわらず、育児能力がない。あるいは、アル中、
薬中である。育児放棄している。

いくら親とはいえ、そんな連中の虐待を受けるくらいなら逃げ出し
て、モスクワで浮浪児になって、シンナーでも吸いながら、日銭を
稼いで、地下道で暮らす方がまだましだと思う子供の気持ちも分か
らなくはないが、そんなことで何年後にどうなるのか?
そこまで、彼らは考えない。当然、考える余裕もない。

それに対して、ロシア政府は孤児院のようなものを作るなど努力は
しているものの、根本的な地方経済の浮上など、抜本的対策をほと
んど取らず、華やかできらびやかで虚飾に満ちた、首都のうわべだ
けの繁栄に、うつつを抜かしている。
こんな国賊的な金持ちを見ていると、正直言って気が滅入る。

香港から、数年前に来た友達に、ロシアの現状について話すと、「
中国本土の様子も、それにそっくりだ」と言って、嘆いていた。
私は中国には行ったこともないものの、こんなモスクワにでも職を
求めてやってくる大量の中国人の人たちの存在を考えれば、うなず
ける気がする。

このユーラシア大陸というのは、単に地理的、気候的条件が厳しい
だけではない気がする。
特に、元共産主義、あるいは、現共産主義社会における、国民の精
神的な被害、退廃的空気というのは、想像を超えるものがある。

昨日までの共産主義社が、いきなりある日、民主主義を言い出した
日には、今度は混沌の中にまっさかさまに落ちて、ほぼ強いものだ
けが生き残る社会になり、マフィアと売国奴的な連中ばかりが、
よってたかって、国家の遺産を食い潰してしまった。
それが、中国ロシアの共通点に思える。

にもかかわらず、脳天気な日本の有能政治家代表、川口外相のよう
な人は、このモスクワでジュース工場の見学と、外相会談をした程
度で、「ロシアは順調に経済発展している」そうな。

これは笑うに笑えない話で、この程度の観察力と、下調べしかしな
い無能な外務大臣が、ロシアや中国のような狡猾な国相手に交渉す
るのは、不可能としか言いようがない。
大体、ロシア人、中国人というのがいかに交渉においても、外交に
おいても、狡猾で手強い相手か、どの程度理解しているのかまった
く疑わしい。

まるで、彼女とロシアのイワノフ外相などを比べると、老獪で極悪
な質屋と、暗記一筋の優等生みたいなもんで、とてもじゃないけど
話にならないと、最初っから踏み倒され、相手にされていないこと
は明確である。

だから、工場建設問題なども、政府保証の約束を反故にされて、泣
き寝入りするしかないのだ。正直言うと、外交官、外務省は即刻解
体すべきだと思う。本当に、交渉能力があるのは民間で自分の力で
やってきた日本人であって、このような狭い官僚世界の中でのエリ
ートではない。

ちなみに、イズベスチヤには、大きな外相の写真の下に、「日本の
外相は、愛嬌を振りまいてロシア側を惹き込もうとするが、その戦
略いかに?」というようなことが書いてあったが、それはとても無
理だろう。よっぽど、昔ロシアの映画に二本も出演した、ロシア語
も知らないで、全台詞丸暗記で挑んで好評を博した、栗原小巻のよ
うな女優の方が、ずっとまともに役立ちそうな気がする。
(こちらの人は、いまだに彼女のことをよく覚えている)

こんなロシアであるが、外交を見ていると、チェチェン問題以外は
このコラムでも取り上げておられるとおり、順調にすべてを手中に
収めて行く戦略がある。悔しながら、たしかに見事だ。
国内がこれだけめちゃめちゃで、国民が苦渋を噛み締めていても、
この国家は、なにか異様なほどの威厳に満ちている。
プーチン就任以来特に。

だからこそ、他人(特に外国人)のクレジットカードの暗証番号を
かき集めて、精密な密造カードを作り、使いまくる犯罪が跡をたた
なくても、旧都ペテルブルクが麻薬の巣窟になりかかっていても、
(だから、ロシアでは絶対にクレジットカードは使わないほうがよ
いのだが)ヨーロッパでは、既にマネー・ロンダリング(資金洗浄
)のブラックリストから、この国の名前は消してもらえるのは、ま
さに、その外交力ゆえのものとしか思えない。
(それと石油、天然ガスか?)
以上    CHOCO
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(Fのコメント)
ロシアの現実と外国から見る姿が違うことがCHOCOさんのレポートで
よくわかります。このため、現地レポートが必要なのでしょうね。
今後も、現地レポートをお願いしますね。
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件名:こんにちは  
そもそも何が不良債権かといえば、自己改革できない政府自身がそ
うである。
みながお金を使わないのは破綻懸念の年金や赤字国債を出しても出
しても効果を出せない組織の無能さに問題があると思う。
道路公団の幹線路の半分が予想より交通量が少ないとか、公務員や
特殊法人のミスが相次いでいますが、国民の税金の使途、また国の
あり方に関して政治家だけでなく担当行政官も責任をとるようにす
べきだ。
でないと何の緊迫感も無しにいい加減な行政、特殊法人運営がされ
てしまう。どんどんやめさせる一方で公務員の採用に関してキャリ
アのある中高年に門戸を広げることにより、非効率運営やなれあい
組織に刺激を与えるべきだ。

八木
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(Fのコメント)
日本を悪くしたのは、政治家が国民にいい顔するために、公共事業
を地元に持っていくことを考え、地元民はそれを期待したのではな
いですか??
いい加減な行政にしたのは、国民サイドにも原因があったように思
う。そして今も、金を国民に配れという学者が国民の人気を博して
いるのであるから、どうしようもない。
勿論、官僚たちも非効率な運営をしていたのでその部分は改革が
必要であろうが。
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http://www5e.biglobe.ne.jp/~oljyuku/
はじめまして、あいかと申します。
貴HP及びメルマガは常々拝見してまして、いろいろなことを学ば
せて頂いてます。
国際情勢に対する深い読み、日本経済の予測などいつも感嘆の思い
で見てます。
 この度、私もささやかながら自前のHPを作りました。
「あいかのOL政経塾」といいます。
その中で、リンク集を作りたいと思いまして「国際戦略コラム」様
にリンクをはらせて頂きたいと思います。
見たところ、リンクフリーと書かれているのでこのままリンクを
はらせていただきます。

今後も貴HPより多くのことを学ばせて頂きたいと思います。
よろしくお願いします。
あいか
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(Fのコメント)
相互リンクにしました。リンク集21にあります。
22才の女性で日本の政治を評論するとは、度胸がある。
どんどん、ばさばさと日本政治を切ってください。楽しみにしてい
ます。
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新聞紙面は盆と正月が一緒にきたような忙しさである。  
新聞紙面は盆と正月が一緒にきたような忙しさである。北朝鮮の高
官が生物兵器の保有を語っていたと伝えられたところへ、イラクが
国連決議を受諾するというニュースが飛び込んできた。そうかと思
えばウサマ・ビンラーディン生存報道もある。
▼この三者は、いずれも無法国家、あるいはテロリストという“犯
罪者”として規定できる。そして三者を一つバスケットに放りこむ
と、共通項が浮かび上がる。“平気でうそをつく人たち”を頭にい
ただく国、あるいは人そのものということである。

▼イラクは「無制限、無条件」で国連決議を受け入れるむねの殊勝
な書簡を届けてきた。
 しかしこれが怪しく、これまで何度も煮え湯をのまされてきた。
何しろ大統領宮殿は百平方キロメートルの敷地に千五百の構造物が
あり、地下に大量破壊兵器の関連施設があるという。

▼さて北朝鮮は何のために生物兵器の保有を“告白”したのか。米
国務省は否定したが、金正日総書記の側近・姜錫柱氏は「核や、そ
れ以上のもの」と表現したらしい。そういう物騒な兵器の製造をや
めてやるからその代わり金をよこせという、北ならではの狡猾(こう
かつ)な駆け引きとみた。

▼カタールの衛星テレビ局アル・ジャジーラが流したビンラーディ
ンの肉声という録音テープは、バリやモスクワなど最近一連のテロ
を称賛していた。本物くさいという。しかしなぜテープでなくビデ
オの映像を出さなかったのか。恐らく見る影もなくやつれているか
らだろう。

▼ビンラーディンとみられる音声メッセージは、米国と米国を支持
する諸国へのテロ攻撃を警告している。警戒を厳にし、反テロ作戦
の再検討の必要があるかもしれない。ただしこの“警告”は彼がう
そをついたとしても許されよう。(産経抄)
Kenzo Yamaoka
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(管理人Tより)
山岡さん、世界日報からクレームが来ています。山岡さん自身が、
お書きになった物以外は、当分掲載を中止します。
このコラムの知名度も上がり、著作権侵害防止の厳格な履行が必要
になってきています。どうか投稿者の皆様にもお願いしたいのです
が、有料HP・メール記事の無断投稿、全面引用はしないでくださ
い。


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