1084.中国の動向について



中国共産党大会が終わり、次の時代の指導者が確定した。これを検
討しよう。     Fより

まず、胡錦涛、曽慶紅、温家宝の経歴を知る必要がある。この経歴
を見るとテクノクラートとして、あまり思想的に強固な人物像では
ない。
中国の現実的な問題を着実に解決する、日本の高度成長期に首相に
なった佐藤栄作に似て、出てきた問題点を解決する面白みのない人
物のような気がする。中国もそのような高度成長の日本と同位相の
時代になったのであろう。しかも、上海閥が指導部の大多数を占め
ることになり、かつ、江沢民も軍事委員会主席に留まるため、院政
政治が可能になっている。当面、あまり変わらないが問題が明確化
してきている。

それでは中国の問題点とは何か??
中国の失業者は就業人口の7%以上と言う。それと国営企業に貸し
ている資金が不良債権化しているため、日本以上の問題点を銀行は
抱えている。農村と都市の年収の格差が拡大している。一方、中国
を豊かにするために共産主義から市場主義に着実に変化していくこ
とが必要だが、このためには私有資産を保護しないと、そうならな
い。今後の成長もできない。このため、貧富の差は広げることにな
る。共産主義とは益々矛盾したことになる。

しかし、中国の問題が大きくならないのは、10%内外の高度成長
と海外からの投資があるためで、その問題点が海外から見えないだ
けである。このように中国にも問題があるということだ。しかし、
胡政権は共産主義には戻らない。戻れない。欧米と敵対することも
しないであろう。それが高度成長に必要なことであるからだ。

中国は戦後、初めて豊かになって、指導者層にも国民層にも余裕が
出てきている。台湾との関係も、平和的な統合を目指し、戦争にな
ることはないであろう。戦争になれば、米国との対決に成り、中国
も経済的なダメージが大きいことを知っている。反米的な言動も無
くなる。政治的には面白くないが、現実的な政治になるであろう。
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胡 錦濤氏(日経)

胡耀邦氏に抜擢された改革派――共青団で頭角現す
 改革派の代表的な政治家、故胡耀邦総書記に抜擢された第4世代
のホープ。 

 共産党の下部団体である共産主義青年団(共青団)の活動で頭角
を現し、トウ小平時代の改革派全盛時代に共青団書記局書記として
活躍したのは有名な話。その後、共青団出身の政治家は天安門事件
などで失脚するケースが相次いだが、胡錦濤氏は多くの上海系の政
治家とは異なり、壮年時代を内陸部の貴州省やチベット自治区の党
書記で勤務した時期が長かったために、政治的な係争から難を逃れ
たとの見方もある。 

 中国の理工系の名門大学である清華大学を卒業しており、団結の
強さで知られる清華大学人脈が胡氏を陰で支えた面もある。江沢民
氏の直系の政治家ではないが、党内で衆望の高い政治家の1人。
日本への関心も強く、戦後日本の平和的な発展を高く評価している
という。 

経歴;
1942年 生誕、安徽省績渓出身  
1959年 清華大学水利工程系入学
1964年 中国共産党入党  
1982〜85年 中国共産主義青年団の中央書記を務める
1985年 貴州(開発が遅れている地域)省党委員会書記に就任
1992年 当時最高権力者のケ小平から政治局常務委員に抜擢される
1993年 共産党中央校校長兼務
1998年 国家副主席に就任 
1999年 中央軍事委員会副主席に就任
胡錦涛について⇒「中国のニューリーダーはなぞ人間」と題を付け
たのは、胡錦涛がこれまで政治姿勢をはっきり示したことがないた
め不明な点が多いからである。
胡錦涛の批評⇒? 国際情勢・貿易・軍事問題・グローバル化など
に通じておらず、経験不足なのでは?
逆に、秘密に覆われた中国の権力構造の中で生き延びるためには「
過ちを犯さず現指導者より前に出ないこと」が必要なため、明確な
自分の姿勢が取れないのでは?
ケ小平の時と同様に、江沢民が引退した後も影響力を持ち続けよう
とする動きも見られ、胡錦涛が権力基盤を固め本格的な政策転換に
着手するには数年はかかるのでは?
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曽 慶紅氏

江沢民氏の側近ナンバー1――父親譲りの党内人脈いかす
 江沢民氏の側近ナンバー1として江政権を13年間支えた功労者。
党務に抜群に強く、胡錦濤氏のライバルとも目される第4世代を代
表する政治家。 

 1989年の天安門事件直後、江氏が上海市共産党委員会書記から党
ナンバー1の共産党総書記に抜擢された際に、江氏が党中央に懇願
して部下だった曽氏を北京入りさせたというのは有名なエピソード
。父親は文化大革命時代に国務院内務部長を務めた曾山氏で、党内
に張りめぐらされた豊富な父親の人脈を受け継ぎ、発足当初、政治
的な基盤の弱かった江政権を補佐した。江氏の信頼が最も厚く、
最近では江氏の外遊に従い国際的な人脈作りにも力を入れてきた。 

 党の出世コースである党中央弁公室主任や党中央組織部長を歴任
し、党人事の実権を握り「陰の総書記」ともいわれる。 
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温 家宝氏

朱首相を経済面で補佐し実績積む――党中枢で実力蓄える
 1999年の米軍によるベオグラード中国大使館誤爆事件や構造改革
路線で、朱鎔基首相が窮地に立った時、副首相として前面に出て経
済政策を取り仕切ったことは党内でも高く評価されている。党内勢
力のバランスの取り方が絶妙との評判もあり、洪水対策でも人民解
放軍と政府の連携に腐心し、陣頭指揮を取るその姿はテレビに放映
され国民に新しい指導者像を植え付けた。 

 栄達の始まりは胡錦濤氏と同様、勤務地の甘粛省で党の実力者、
宋平氏の知遇を受けたとの見方もある。その後はトウ小平時代の
改革派全盛の波に乗り、趙紫陽首相の下で中央指導部の秘書業務を
担当する党の中枢組織、中央弁公庁の主任にまで上り詰めた。
趣味は乗馬と射撃。 
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胡錦涛氏が総書記に就任 江氏は中央軍事委主席に留任(ASAHI) 

 中国共産党の第16期中央委員会第1回全体会議(1中全会)が
15日、北京で開かれ、新しい党総書記に胡錦涛・国家副主席
(59)が就任した。指導部となる政治局常務委員には胡氏をはじ
め呉邦国副首相(61)、温家宝副首相(60)ら計9人が選ばれ
、胡指導部が正式に発足した。また、総書記を退いた江沢民氏
(76)は党中央軍事委員会主席に留任し、軍トップの座を維持し
た。 
 常務委員は、序列順で胡氏、呉氏、温氏に続き、賈慶林・前北京
市党委員会書記(62)、曽慶紅・前党組織部長(63)、黄菊・
前上海市党委員会書記(64)、呉官正・山東省党委員会書記
(64)、李長春・広東省党委員会書記(58)、羅幹・党中央政
法委員会書記(67)が選ばれた。呉官正氏は党中央規律検査委員
会書記に選出された。 

 政治局員には、呉儀・前政治局員候補、劉雲山・党宣伝部長、賀
国強・党組織部長ら24人が選ばれた。同候補は1人。 

 江氏との関係が近い曽氏らが常務委員入りしたことで、江氏は
新指導部への影響力を維持していくことになる。 

 政府の役職は、来春に開かれる全国人民代表大会で決まる。胡氏
は江氏に代わり国家主席にも就任する見通し。呉氏は全国人民代表
大会常務委員長、温氏は首相にそれぞれ就くとみられる。 

 常務委員9人は15日、北京の人民大会堂で内外記者と会見した。 

 常務委員を退いたのは江氏のほか、朱鎔基首相(74)、李鵬・
全国人民代表大会常務委員長(74)、李瑞環・全国政治協商会議
主席(68)、尉健行・中央規律検査委員会書記(71)、李嵐清
副首相(70)。 

 1中全会には、14日に閉幕した第16回党大会で選出された
198人の新たな中央委員、158人の同候補が出席した。 

(13:27) 
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     宮崎正弘の国際ニュース・早読み
       平成14年(2002)11月15日(金曜日)
             通巻442号
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中国共産党の党大会は終わったが、本当の権力の行方は今日の人事
の発表に存在する危機をどれほど認識した配分になるだろう?
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中国共産党党大会が昨日、滞り無く終わった。
「階級」政党から国民全体の党に変質しようと江総書記のニュー思
想「三つの代表」を盛り込んだ党規約改正案はとうとう採択された。

 党規約には「その他の社会層の先進者」なる曖昧な表現で私営企
業家の入党を認めた。 
 江総書記は閉幕式でも挨拶に立ち、「今大会は、『三つの代表』
の重要思想をマルクス・レーニン主義、毛沢東思想、トウ小平理論
とともに党の指導思想として確立した」と連呼した。
 また党規約には、党を「労働者階級の前衛」に加え、「中華民族
、中国人民の前衛」との表現が追加された。

 「三つの代表論」なるものは、00年2月に広東省を視察した際
、江沢民が唐突に発表したニュー思想である。
 それがいまや単行本になって全土の書店でも売られていた。

 すなわち(1)先進的な社会生産力の発展の要請(2)先進的な
文化の前進の方向(3)最も広範な人民の根本的な利益を党が代表
すべきだとする時代の化粧を施した独裁の論理だ。
 
大急ぎでこの大会を振り返る。

一、GDPを2020年まで現在の四倍にすると宣言した。これ
  を大言壮語という。

二、公定歩合を柔軟に操作する金利政策の見直し

三、国有財産管理システムを構築し、多国籍時代の多国籍株主に対
  応する

四、金融市場、投資顧問、ファイナンス、不動参サービスなど規制
  の多い分野へも私企業参入を認めた

五、海外投資の規則を改正し、もっと柔軟にする。つまり中国企業
  が海外へ本格的に進出する

六、農民は農地使用権を売買できる
 
七、私学を認め、政府の介入しないシステムの導入も検討する

八、党改革、法改革、とりわけ司法制度をもっと開かれたシステム
  への改変。海外からの批判の多い「司法の独立」をともかく標
  榜した。

 他に台湾、軍事戦略、外交方針では「覇権を求めない」などと
従来の方針とどうも変革のあとが見られない部分がめだつ。
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  宮崎正弘の国際ニュース・早読み
  平成14年(2002)11月16日(土曜日、臨時増刊)
       通巻443号
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  胡錦濤新執行部は「江沢民院政」を顕著に象徴している
 政治局常務委員を二人増員し、しかも六名が「江沢民派」で固め
 られた
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十一月十五日、中国共産党は中央政治局常務委員を選出した。
胡錦濤・総書記のほか、呉邦国(江沢民派)、温家宝(朱容基派)
、賈慶林(江沢民派)、曾慶紅(江沢民の右腕)、黄菊(江沢民の
子飼い)、呉官正(江沢民に近い)、李長春(江沢民に近い)、
羅幹(李鵬派)氏の9人。二人増えたので小生の予測外に呉官正と
李長春が参入した。

ともかく六名が江沢民派。これで胡錦濤は完全に周囲を「上海閥」
でふさがれた。

 しかも中国人民解放軍の最高指導機関・中央軍事委主任(つまり
中国の最高実力者)は江沢民が「居座り」を決めた。まさに拙著の
予測が当たった。

副主席の胡錦濤は兼務留任だが、制服組のトップだった張万年
(74)と遅浩田(国防相、73)、さらに傅全有総参謀長(72)
、于永波・総政治部主任(71)、王瑞林・同副主任(72)、王
克・総後勤部長(71)が、いずれも70歳以上、引退を余儀なく
された。
 
新しく軍事委員会の副主席に就任したのは、軍事委委員で最も若い
郭伯雄・総参謀部常務副参謀総長(60)とハイテク、宇宙衛星に
あかるい軍事委委員の曹剛川・総装備部長(66)が昇格した。郭
は蘭州軍管区司令をつとめ、危機管理研究で研鑽を積んだ。
 
 米軍筋が副主任昇格を予想した徐才厚・総政治部常務副主任
(59)は99年9月の党中央委員会総会で軍事委入りしているが
、留任。副主任の三人に次ぐ位置をしめた。
徐は江沢民派で軍機関紙の責任者を努めてきた理論家でもある。

  中国共産党第16回全国代表大会は14日に中央委員198人を次の通
り選出した(氏名の画数順)。 

習近平、馬凱、馬啓智(回族)、馬暁天、王剛、王晨、王雲竜、王雲坤
、王太華、王楽泉、王兆国、王衆孚、王旭東、王岐山、王瀘寧、
王金山、王建民、王勝俊、王鴻挙、烏雲其木格(女性、蒙古族)、
ケ昌友、石雲生、石秀詩、石宗源(回族)、盧展工、田鳳山、田成平
、田聡明、白立忱(回族)、白志健、白克明、白恩培、
司馬義・艾買提(ウイグル族)、列確(チベット族)、呂福源、
回良玉(回族)、朱啓、喬清晨、華建敏、多吉才譲(チベット族)、
劉京、劉淇、劉雲山、劉書田、劉冬冬、劉永治、劉延東(女性)、
劉華秋、劉志軍、劉振華、劉鎮武、許永躍、許其亮、孫志強、孫家正
、牟新生、蘇栄、杜青林、李長江、李長春、李至倫、
李兆タク(チワン族)、李安東、李克強、李金華、李建国、李栄融、
李棟恒、李貴鮮、李鉄林、李継耐、李乾元、李盛霖、李肇星、
李徳洙(朝鮮族)、李毅中、楊元元、楊正午(トゥチャ族)、楊懐慶、
楊徳清、肖揚、呉儀(女性)、呉双戦、呉邦国、呉官正、何勇、
汪光トウ、汪恕誠、汪嘯風、沈濱義、宋法棠、宋照粛、宋徳福、
遅万春、張雲川、張中偉、張文台、張文康、張玉台、張左己、張立昌
、張慶偉、張慶黎、張学忠、張春賢、張俊九、張高麗、張維慶、
張福森、張徳江、張徳鄰、陸浩、阿不来提・阿不都熱西提(ウイグル族)
、陳雲林、陳至立(女)、陳伝闊、陳良宇、陳建国、陳奎元、陳炳徳
、陳福今、羅乾、羅清泉、季允石、金人慶、周強、周小川、周永康
、周声涛、周遇奇、鄭万通、鄭斯林、孟学農、孟建柱、項懐誠、
趙可銘、趙楽際、趙啓正、胡錦涛、鈕茂生(満州族)、兪正声、聞世震
、姜福堂、洪虎、賀国強、袁偉民、熱地(チベット族)、賈慶林、
賈治邦、賈春旺、柴松岳、銭運録、銭国梁、銭樹根、徐才厚、徐匡迪
、徐有芳、徐光春、徐栄凱、徐冠華、高祀仁、郭伯雄、郭金龍、
唐天標、唐家セン、黄菊、黄華華、黄晴宜(女性)、黄智権、黄鎮東
、曹剛川、曹伯純、常万全、符廷貴、閻海旺、梁光烈、隋明太、
葛振峰、韓正、儲波、曾慶紅、曾培炎、温宗仁、温家宝、蒲海清、
蒙進喜、雷鳴球、虞雲耀、路甬祥、解振華、靖志遠、廖暉、廖錫龍
、滕文生、薄煕来、戴秉国(トゥチャ族)、戴相龍、魏礼群 


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