1075.日本の再設計(4)



日本の再設計(1)2002.10.24Fへのコメント

燃料油植物栽培して食料を輸入する風景
現代の常識で生きている仁科優です。今回は少しまじめにコメント
してみます。論点は、エネルギーの「量」の問題、蛇足で環境と
EMです。

結論を先にいえば、部分最適は無意味で全体最適を考えるべきです。
下手なことをせず石油を上手に焚いてロスをなくすべきです。送電
ロス・道路渋滞から日常社会システムまで含めたロスをなくす事で
す。これは景気などの経済問題も含め社会システムに大きな変革が
結果的に必要になると思います。代替燃料や自然エネルギー利用は
条件が余程良くない限り、結局石油を余分に使い、人間の生存環境
を損ないます。

蛇足として、私は実際にEM農法を試みて、EMは新興宗教の一つ
との結論に至りました。理系の農業・バイテク分野の専門家はみな
否定的と言うよりは相手にしない様子で、いわば、永久運動機関の
実用化のように素人が有難がっています。本来ならば、門外漢の文
系の方の実証的な検証がなされると良いと思います。

前回、私は「原子力のアウトカムはイエローケーキから廃炉と永遠
の核廃棄物の保管コストまでのエネルギーを合計すれば石油をその
まま焚いたほうが結局人類が使えるエネルギーは多い」と述べまし
た。

Fさんが述べられた、休耕田で内燃機関の燃料油になる作物を栽培
する話、太陽電池や燃料電池の話は本質的に原子力と同じ発想です
。遡れば、負けるの知ってて、松を切り倒して、環境破壊して、松
根油で戦闘機を飛行させようとした発想です。結局菜種の一種の小
松菜は八百屋で買うと結構な価格ですが、殆どが流通コストで、菜
種は雑草のように容易に栽培可能な植物です。でも人力で栽培収穫
すると小松菜のようにとんでもないコストになります。機械(内燃
機関)で栽培する場合、得られる菜種油のエネルギーは菜種油で動
く農業機械や精製装置、輸送機関を利用した場合は如何でしょうか
?原子力よりはマシと思いたいです。太陽電池を作るのに南米の鉱
山から半導体の素材の鉱石を運搬する時点から屋根に設置するまで
のエネルギーは石油に換算するとどうなるのか?風力発電も同様で
す。

悲しい事に、地球でわれわれが利用できるエネルギーは全て太陽エ
ネルギー由来ですが、現実的には元をたどっていくと、石油を経由
して太陽にたどり着きます。(同様に、ものの価値はすべて人件費
に由来しますね。泳ぐ魚は只ですが、船を出して漁師の労働があっ
て価値をもちます。船を作る労働者も、その材料の木材や鉄も…)

石炭石油の化石燃料は太古の動植物の遺骸が変化してできたもの、
つまり蓄積された太陽エネルギーです。そして、大気の酸素はその
時できたものです。極論すれば、大気の酸素の分だけ燃料はあるわ
けです。膨大な貯金を取り崩しているみたいですが、大気の組成が
変われば地球の生態系は大きく変わります。
つまり、恐竜が絶滅したようになります。

人間を含めた生物(いきもの)を養うにはエネルギーが必要です。
江戸時代の技術水準で、当時の気候環境(19世紀までは小氷期で
、今より少し寒かったらしい)で日本列島に降り注いだ太陽エネル
ギーで養えた人口は約3千万人でした。現在は1億2千万人を、
現在の技術水準と中東からタンカーで運ばれて来る石油のエネルギ
ーと海外から購入した食料(これも石油で作っています)で養って
います。単純計算で、中東から運んできている石油エネルギーのカ
ロリー数(いまはジュールかな)と同じエネルギーが太陽エネルギ
ーで日本列島に降り注いでいるかどうかです。日本列島で栽培可能
な燃料用植物油採取用の作物の合計カロリー数がタンカーで運んで
きている石油に匹敵する分はどれ程か計算して見る必要があるかも
しれません。

学生の頃、熱力学の入門の講義で「エネルギー保存の法則」という
話があり、エネルギーは無から生じることは無い理(ことわり)、
または「永久運動機関」は絶対に製作不可能の原理ですが、耕作可
能面積に降り注ぐ太陽エネルギー以上のエネルギーは生み出せませ
ん。最も、燃料油を栽培して食料を輸入するのもアホですね。

蛇足ですが、そして農業はたとえ農薬・化学肥料を一切使わない
有機農法であっても、最大の環境破壊です。もっとも、この場合の
破壊される「環境」の定義は人間以外の生物の生存権で、観賞用以
外の生物を皆殺戮しても、人間が快適に生活できれば環境は保護さ
れているともいえます。ま、環境保護と言ってもあくまで人間の都
合です。その意味で「環境保護」と言う発想自体が「ニンゲンが自
然を支配」しちゃう、アリストテレス+西欧基督教ブンメイの所産と
思います。

温帯モンスーンから亜寒帯地域までなら、300坪の土地でカロリ
ー換算で4人家族を養えるそうです(肉を食わず、馬鈴薯、甘藷、
米少々、各種野菜となり、ま、敗戦直後の日本の食生活か?)で、
個人的な話題ですが、「鍬を握ると農耕民族の血が騒沸く」と7年
前から300坪の畑を借りて、週末に人力で耕作しています。無農
薬栽培ですが、100坪づつ、「EM農法」、「通常有機農法」、
「化学肥料」で対照群を作り5年間比較しましたが、現在は通常有
機農法+化学肥料です。個人的にはEM農法は「宗教」との結論です
。EM菌?は特別なものではなく自然界にいる通常の微生物群で、
特別なものではありません。土壌中には膨大な種類と数の微生物が
1つの強力な「社会」を形成しています。そこに太平洋に牛蒡じゃ
なかった小便するように微生物を撒いても無意味です。化学肥料の
みではやはり土壌が痩せるので、堆肥+過燐酸石灰がベストです。
堆肥は落ち葉、雑草、稲藁、鶏糞、籾殻、米糠、菜種糟を混合し高
温で好気性発酵したもの、ちなみにEMは嫌気性発酵です。過燐酸
石灰は化学肥料です。原料の燐鉱石は南米の海鳥の糞の化石らしい
ですが。

機械同様に農薬は省力化の必要悪で、無農薬は高度の労働集約が必
要となります。農作物は免疫機能が低下した保育器で育てるような
赤ん坊と同じで、害虫や雑草、カビ、細菌に生命を絶たれぬように
「薬」を必要とします。無農薬野菜を考えるとき、無医薬ニンゲン
も考えて見たいものです。つまり、一生医薬品の世話にならないで
健康に生きるために、一生無菌室で生活するわけです。
ま、特定の病原体を中心に食肉用の豚や鶏で無菌室に近いSPF飼
育がなされていますが。もっとも、農薬の恐怖を知っているのも農
家で、自宅用は手をかけて無農薬で栽培し、売り物はタップリ農薬
を漬けて栽培します。個人的には無農薬自家栽培の各種野菜、果実
の味を知ってしまうと、八百屋やスーパーの野菜果物はとても不味
いものです。自分の時間給を計算すると自家栽培の野菜は法外な金
額になりますが、とても止められません。

結局人類は皆、全体最適を知りつつ、部分最適に血の滲むような努
力をして、松根油を絞って、破滅を迎えるのかなあ。
仁科優
==============================
(Fのコメント)
江戸時代も現代も日本に降り注ぐ太陽エネルギーの数千万分1も利
用できていない。それは、太陽エネルギーの分布が薄く広いために
、利用するのが今までは難しかったためでした。しかし、その太陽
エネルギーを今以上に有効に利用できれば、その分、石油を減らす
ことができる。言い換えると、太古に地下に固定したCO2を地上
に出さなく出来る。温暖化が緩和する。

このため、徐々に石油依存から非石油依存に人類は、技術を開発す
る必要があるのです。仁科さんは、現時点で実現できている技術し
か、想定していないし、変革を否定している。ベルエポックの当初
も、現代のような生活を想定できなかったようにです。まだ、非石
油・ジャパン・エポックは開始し始めようとしている所であり、
想像しにくいことは分かります。

しかし、石油の消費の効率化と同時に、脱石油の装置を開発する必
要があります。アモルファス半導体である太陽電池の原料は、どこ
にでもある材料です。勿論、その加工は電気が必要ですから、現在
は石油から作られるわけですが、太陽電池の半導体は10年以上の
寿命があります。その電子回路の基板は5から8年です。しかし、
電気も砂漠で太陽光発電して、水を分解した水素にして日本に運搬
する研究もしているようです。この技術が実用化すれば、燃料電池
の技術と組み合わせると、非石油化ができるのです。

これから2008年までに、日本は現在のCO2排出量の15%を
削減する必要があります。京都議定書で、日本は1990年より
6%の削減となっているが、1990年から現在までに8%程度増
加しているためです。

これを実現させるためには主に石油消費の効率化をする必要があり
、この方法・技術を開発するのが差し迫っている。一挙に石油を無
くすと言っているのではなく、徐々にしかし、着実に社会体系をも
含めて、変化させることが必要であると言っているのです。

今の技術では風力発電も、太陽電池も、家ではその使用コストが
採算に合わない。このために、普及できないのです。このネックは
交流と直流の変換効率が非常に悪いためです。それと、鉛蓄電池の
高サイクル寿命ものも、量産体制ができれば、今の自動車用バッテ
リーとほぼ同じ価格(1万円程度)になるようです。まずはここに
焦点を置いて、製品開発と政府援助をするべきでしょうね。これだ
けで、今までより太陽電池や風力発電の採算性が良くなりますし、
石油依存から非石油に転換でき、かつ家・ビル・工場の経費は改善
します。いいことだらけです。

そして、この変換装置は、既にその開発を終わり、商用開始しよう
としている。また、その応用製品として風力発電等に展開するよう
ですよ。

風力発電も、2年程前は米国のサウスウイング社の製品しかなく、
それを利用して見たが、結果は良くなかった。今は日本のゼファー
の風力発電装置が世界的にもトップにあるし、この分野では近々
ダリウス型が日本のベンチャー会社から製品を出すそうである。

このように日本のこの分野は欧州とは違い、家とかで使用する小電
力系100Vや200Vの物がいいようです。これに比べて欧州は
3000Vなどの大設備の物が主流で、小電力系ではない。

このように日本がこの省エネ分野で、世界に先駆けて、その技術を
蓄積している分野である。今でも世界でトップクラスの省エネ技術
があり、このため、今後、日本のCO2減少は簡単にはいかない所
まで来ているのです。このように過去からの積み上げがあり、かつ
京都議定書という追い風を受けて、今後も日本がこの分野を開いて
いくようです。そして、それは世界に販売できるのです。

そのため、政府の援助という追い風の風力を上げれば、技術の厚み
もあるので、一挙に開花するように感じる。このため、ジャパン・
エポックと言っている理由でもあるのです。

それと、日本は昔から麹菌などの発酵技術がいい。この技術の延長
上にEM法などの技術があるのでしょうが、日本は土壌もいいため
にEMと提唱する菌によらなくても、いいのでしょうね。
しかし、今後、水素発生の細菌とか、籾殻から作るプラスチックな
どの際に使用する細菌発見は日本が最先端にいるようですね。

DNAなどの遺伝子分野は世界的な競争分野ですが、発酵菌につい
ては日本の研究は長く、蓄積もある分野です。この蓄積から、いろ
いろな応用分野を開く可能性があります。

日本の制度も石油優先の思想から、非石油優先の思想に転換するこ
とが、重要になっている。揮発油税や重量税が道路整備だけとなっ
ているのを、省エネ車や燃料電池車などの支援にも使えるようにす
れば、自動車の新規需要を促進し、経済活性化できるし、道路整備
ではなくCO2吸収元への整備補助金とすれば、森林整備や菜種栽
培などの支援になる。

そして、徐々に石油からの転換をしていく。日本は石油の大量輸入
国でかつ、中東の石油は紛争地域でかつ、米国の中東戦略から当分、
安定的な供給に不安がある。石油依存は、その石油が無くなった時
、大きなダメージを受ける。これは、1973年の石油ショック時
に経験したことである。

この時から、ブラジルは植物から生成するエタノールに石油を転換
している。このブラジルと同様に石油が長期に来なくなったことを
検討する必要がある。
日本は、人命でも経済でも安全保障という概念が無さ過ぎである。
83日の備蓄があるというが、戦争になった時はどの程度の期間
石油が来なくなるか想定したことがあるのかしら??

このコラムでは中東に戦争が起こるから、シベリアの天然ガスを開
発しておくことが必要と指摘していた。石油とガイアックスのよう
な天然ガスからの石油製品も温存するべきと言っている。
このような安全保障をもう少し考えるべきではないかと思うが。


コラム目次に戻る
トップページに戻る