1068.日本再設計(3)



日本経済の方向が、定まらない。方向を決定しないと、日本政府の
組織や見通しもできない。都市と農村の関係や公共事業に代わるも
のの見通しもない。 これではダメである。この検討をしよう。
                 Fより

竹中さんの金融政策はある程度分かるが、産業再生策がどうも定ま
らない。そして、いろいろな評論家が批判しているが、単なる批判
で、建設的な再建策をだれも言わない。言えない。批判するなら、
責任ある代案を言うべきだ。そして、日本産業が目指す次の目標を
立てるべきときなのですが、それを言わない。それをだれも明確化
しないために、日本の改革の全体像ができないでいる。もういい加
減にしてよと、このコラムの読者は思うでしょうね。

1992年、クリントンが大統領に当選して、何をしたかを思い出
して欲しい。ゴアの情報国家構想というインターネットを全面に立
てて支援し、米国の景気を引っ張っていくのです。米国や日本ほど
の経済規模では、韓国で成功したような単なる企業の経営改善だけ
では景気は上向かないのです。特に今は世界的な景気低迷期ですか
ら、なおさらです。
クリントンは10年以上の好景気を作りましたが、この基本条件は
、米国社会に情報社会構築という国家目標を与えたことなのです。

これと同じことを日本は今、しなければなりません。このコラム読
者はもう知ってのとおり、脱石油というジャパン・エポックに向か
って、日本の組織・制度・法律などを再検討すればいいのです。
その方向さえ、国民合意ができれば、日本国民が全体でその目標に
向けてまい進します。どうして、目標を作らないのか、イライラし
て政府の方針を待っている状態です。
日本の再生の目標が無いため、産業再生もあやふやな印象になって
いるのだと思うのですが。

石油からの脱却に向けて、日本の産業を改革し農業や林業を見直し
新しい国家像を作る時が来ている。石油を前提にした国家体系に、
現在あるのですが、それを植物の光合成・自然エネルギーを中心に
した体系にシフトするのです。このための革新的な技術を開発する
という目的をハッキリすれば、いろいろなアイデアが出てくるよう
です。

この自然的な技術では、船井さんや比嘉さんなどが言っているよう
に、日本にはもう既にある程度技術が揃っているし、自然エネルギ
ーを利用する技術を発明するエジソンのような人も出ている。
これは間違いない。日本の技術者が基本的に持っている概念が省エ
ネ技術を推進しやすいようだ。ゼロ戦の堀越さんと同じように、少
しずつの改善に大多数の日本人技術者は、喜びを感じるようである。

それに引き換え、根本的な原理の見直しは不得手であるが、その不
得手な部分を、時々天才があわられ、乗り越えるのである。
その天才が、島津製作所の田中さんのように何人か出現している。
船井さんの言葉では、天が配剤したというが、本当である。まさに
必要な時に、現に日本に居る。

この天才エジソンの発明した技術を日本の多くの技術者が、改善す
ればいいのですから、後は簡単。そして、インターネットは現在、
主に金融系に使用されているが、経済を安定より不安定にしている
ようですが、IPV6やXMLのようなコンピュータ技術も自然エ
ネルギー活用装置と組み合わせると、大きな成果を発揮できるよう
です。

活用装置としてはセンサ・メータ技術、無線タグ技術、燃料電池、
超サイクル寿命鉛蓄電池、軽量高出力イオン2次電池、風力発電装
置、太陽光発電装置、人力発電装置、バイオ燃料合成法、EM農法
、生物利用無農薬技術、高圧コンプレサーでの材料生成技術、微生
物利用の薬品・タンパク合成技術、DNA技術による薬品・タンパ
ク製造などなど、
石油離れの技術が目白押しになっている。農業経営上の省力化技術
も研究されている。これを集大成すれば、どうなるか???

ブラジルのように植物からのエタノールで自動車を動かしている国
家もある。これは石油に高税を掛けて、エタノールに補助金を出し
ているために出来ている。しかし、その施策がドイツからCO2排
出権として、買われることになる。このようなことが実際に起こっ
ている。現実的な商売になってきているようだ。どうも、そこを分
かっていない人が観念的な反対をしているように思う。現実を直視
すると、もう時代は変革し始めている。石油の時代は、確実にその
ピークを過ぎようとしている。

勿論、全てを一挙に変えることはできない。優先順位をつけて、
徐々に代えていくことが必要です。しかし、石油や石炭、ガスを利
用すると高く、自然エネルギーを利用すると安くなる方向に、日本
政府が音頭を取って持っていく必要がある。当面は税制でそのよう
なことにすればいいのです。また、森林の維持はCO2吸収元とし
て重要であるし、農作物も同様に重要である。このCO2吸収に対
しての対価を当然、農民に還元する必要がある。このため、当面は
政府補助金でしょうが、将来はCO2排出権市場が必要なのです。
この市場形成も政府が音頭を取っていく必要がある。

このように、農林省の役割も、休耕田の増加を指導するのではなく
、ケナフや菜種やサトウダイコンなどのCO2吸収源や、バイオ燃
料材料への転作を指導する方向になり、そこでどのくらいCO2が
削減できたかを計測する必要が出てくる。農林省はこのような役割
の変更になるのです。

また、どんどん農民が減っているが、それを食い止めるため、どう
都市から壮・老齢者を農村に住んでもらうかを、考えて農村を荒廃
させない方法を検討する必要があるのです。農民保護の観点である
と都会人を拒否することになる。このためにも、ケナフや菜種のよ
うな簡単な作物が必要であろう。その作物を換金できるような農業
自由化も必要です。もう過去の制度を捨てて、新しい制度を作るこ
とが必要なのです。農民、漁民、林業従事者のためにも、その方が
得なのですから。

もう1つ、国民はスローライフのような生活にシフトして、落ち着
いた生活を目指すことも必要であろう。もう建設の時代は終わった
。ほとんどの人は親から家を相続できるため、今の生活ができる費
用を工面すればいいのであるから、あせくせする必要は無い。

江戸時代の庶民の生活感覚に戻ればいいのである。江戸時代の庶民
は、週休5日で、仕事に出るのは週2日だったようです。それで、
1週間分の生活費を稼ぎ出せたようである。これと同じ感覚になる。

ほとんどの人は会社からの請負の仕事になるため、仕事量は多くな
い。しかし、その請負を完成すれば、数ヶ月の生活はできるという
ようなことになると思う。
この詳しい説明は1057.日本の再設計(1)に述べている。
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/141024.htm
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件名:「不安定さ」制御が課題  

 情報革命が経済の構造や社会、場合によっては政治を大きく変え
るという認識が広がってきた。情報資本主義、サイバー資本主義化
で、世の中が大きく進歩するという楽観的な議論がある一方、既成
の秩序の崩壊現象が起きるという悲観的な見方もある。
 産業全体の中で、IT革命で先頭を切ったのは金融だった。ここ
十年足らずの間に様変わりした。瞬時に何億ドルもの資金がコンピ
ューターを使って国境を超えた。それがアジア金融危機などを引き
起こした。

 これから変わるのはマスメディアだろう。ブロードバンド(広帯
域接続)化などが進むと、インターネット画像がテレビ画像とほぼ
同じになる。そこに携帯電話や家電、ゲーム機器が入り、さらに放
送と通信は融合化し、情報通信の核であるメディア・ビッグバンが
起きるのは間違いない。

 ただ、ITとかサイバースペースといっても、コンテンツ(中身
)が重要で、何を送るのかが問われる。経済でも、一時のベンチャ
ー、ITブームがやや曲がり角を迎え、実物経済や物流が重要、と
いう認識が出てきた。

 ネットを介した企業間取引(BtoB)が将来、世界経済、日本
経済を変える要因になるといわれる。が、日本には系列取引や商社
などBtoBに近い形態があった。単にニューエコノミーに切り替
わるというのではなく、これまでの日本のビジネスや組織が新しい
技術の影響を受け、どう変わるか、と見た方がよい。

 情報資本主義の問題の一つは、その不安定さにある。一九九五―
九九年の危機でも国際金融システムの不安定が表面化したが、危機
はこの四―五年の間にも再び起こり得る。
 不安定なシステムをいかに制御するかが問われる。

 もう一つはIT革命がもたらす分権化の問題だ。上からのグロー
バリゼーションに反対するNGO(非政府機関)がITを通して組
織化され、WTO(世界貿易機関)などの会合反対に結集したよう
に、近代の既成秩序が崩れる現象があちこちで出ている。その中で
国や企業は果たしてどうなっていくのか。

 分権化が新たな資本主義社会、民主主義社会を世界にもたらす可
能性がないわけではない。が、民主的になったり、効率が上がると
いって手放しで喜べる状況でもない。情報革命を光と影という形で
、双方から見ていくことが非常に重要だ。 榊原 英資氏 
Kenzo Yamaoka
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件名:危ういかな日本経済  
整合性を欠く経済運営、先見性も全く乏しい、
                             近代経済史研究会主宰 尾関 通允
重要な要因の一つは海外環境

 よほど好意的に眺めても、方向性が見極めにくい、露骨な表現で突
き放した言い方をすれば、支離滅裂で論理もなければ全体の整合性に
も欠ける―最近時点での小泉首相・竹中経済財政金融担当相による日
本経済運営に対しての筆者の見方をいえば、このようになる。このま
までは、日本経済が危うい。

 日本経済がいまどんな状況にあるのか―を、まず概観しよう。政府
が示した先の景気底入れ宣言、確かにその通りで判断としては間違っ
てはいなかったが、言ってみれば線香花火と似て、大方の予測通り一
時的な現象にとどまった。ここへきて、景況は不透明感を深め、経済
社会に先行きへの不安が広がっている。株式相場の一段の不振は、不
透明感と先行きへの不安の端的な反映にほかならず、市場参加者の多
数意見は、小泉・竹中政策ラインに信頼していない―ということにな
ろう。

 それについては、いろいろな要因が、当然ながら大なり小なりにか
かわっている。うち、最も重要な要因として、二つを挙げることがで
きよう。

 一つは海外環境で、とりわけ米国経済のこれからの展開いかんが、
大いに気になる。日本経済の輸出依存度は、総需要の構成比でみると
、実は、それほど高くはない。とはいうものの、全体の供給力との比
較で国内需要の不足が大きい昨今の実情では、輸出の消長いかんが、
これからの景況に決定的というべきほど影響することにならざるを得
ない。
 だからこそ、日本にとっての最大の輸出市場である米国の経済がど
う動くか―を注視することになるのだが、その米国経済の足取りが、
目下のところ、とにかく重い。輸出産業ならびにその関連産業の経営
が、そのため及び腰になりがちなのは致し方なく、そのことが日本の
全般の景況にも懸念材料になる以上、他の諸産業もまた、守りの経営
から攻めの経営に転じることは難しい。

景気刺激政策にひどく“冷淡”
 もう一つは、海外条件に心配があるからこそ、なおのこと、国内条
件をよくするための景気刺激政策に期待がかかるのだが、小泉・竹中
政策ラインでは、この期待にひどく冷淡なばかりか、必要不可欠なは
ずの前提条件の整備をそっちのけにしたまま金融機関の不良債権処理
と財政再建に性急で、これは、日本経済が縮小均衡の過程に陥没する
恐れを多分に内蔵している。景況が着実に上向いていく―そういう確
信を過半数以上の産業・企業が抱くことのできない経済の現況下で、
不良債権処理と財政再建を強行するなら、海外環境の予測外の好転が
ない限り、景況のさらなる悪化が不可避で、それはまた新たな不良債
権発生をもたらし、不良債権処理の強行→景況悪化→追加的不良債権
発生―の悪循環に連動していく公算が、恐るべく大きい。

 そもそも、竹中担当相らが、セーフティーネットの必要を唱えるこ
とに、ある種のおかしさがにじむ。真に大切なのは、セーフティーネ
ットでなくて、新たな不良債権が発生する余地をうんと小さくするた
めの措置、すなわち、積極政策を発動しての国内需要の刺激拡大にほ
かならない。もう一つ、竹中担当相の私案では、貸し渋りや貸しはが
しを不可としているが、景況低迷下の不良債権処理の強行には、貸し
渋りや貸しはがしを促す性格がいやでもついて回る。政策責任者とし
て誠に無責任―というほかない。

予見能力低く硬直的な態度
 景気底入れが線香花火にとどまり、日本経済の先行きに不安感が広
がって株式市況が一向に冴えず、経済全体が縮小均衡状態にのめり込
んでいくのではないかとの憂慮さえただよい始めている―要約すれば
、これが日本経済の現段階で、それについては、右に観察したような
拙劣で整合性のない経済運営策の責任が、いうまでもなく、すこぶる
重い。
 関連して、小泉・竹中政策ラインの致命的ともいうべきもう一つの
特徴に言及したい。

 それはズバリ、経済実勢の後を追いかける以外に能がない、鋭い洞
察力をもって先を予測し予防的政策手段を打ち出す能力も意欲も著し
く乏しい―ということである。公共事業は景気刺激に役立たないと一
方的に決めつけてしまい、どんな公共事業に中身を変えていくべきか
の問題意識のない短絡といい、景況の動きが怪しくなってからでなけ
れば補正予算を算定しようとしない予見能力の低い硬直的な政策態度
といい、首をかしげることばかり。日本経済のこれからは、このまま
では、やはり危うい。
Kenzo Yamaoka


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