1018.国連でのイラク攻防



だいたい、イラク攻撃のシナリオが見えてきたように思う。Fより

1004の米国動向で述べたように英国のストロー外相とパウエル
国務長官が筋書きした通りに、国連でイラク決議をして、イラクが
査察を拒否したら、フランス・英国などと米国でイラク戦争をする
という方向に結局は進んでいる。

しかし、ロシアと中国の動向がまだ、明確でないし、イラクも査察
を受け入れないと表明していないため、まだイラク戦争があるかど
うかはわからない。しかし、米国はイラク戦争の準備を着々と進め
ている。10万人規模の軍を湾岸諸国に配置したし、クルド人の部
隊の訓練も進んでいる。イラク北部のクルド自治地域には、既に
飛行場と米国軍基地ができているようである。特殊部隊もイラク国
内への偵察活動を行っているようである。

イラクは欧州のドイツとフランスに石油権限を一部渡しているため
ドイツは、イラク攻撃に参加しないと表明している。しかし、イラ
クの石油権益を一番貰っているのはロシアであり、このロシアの動
向は、不明である。安保理で拒否権を発動する可能性もあり、米国
が安保理で審議するかどうかは、ロシアと中国の動向が明確化しな
いと、動けない。中国はイラクから明確な石油の権益を貰っていな
いため、中国の米国への寝返りは簡単と読んでいるようだ。
そして、中国は、報道によると、安保理の決議に棄権のようで、
残すはロシアとの交渉になるのでしょうね。

このロシアとの交渉も見えてきている。ロシアのグルシア派兵を米
国が黙認する代わりに、米国のイラク派兵をロシアは黙認するとい
う交換条件になるようである。そのため、米国は突然ロシアのグル
シア派兵反対を言った可能性がある。これは交渉のため、反対した
ような気がする。ボルトンがロシアに行き交渉した。

その結果、ロシアは米国に譲歩して、イラクとの石油と引き換えの
経済援助協定に国連の査察を受け入れない場合は調印しないことに
した。イラクはロシアにも、中国にも見捨てられたようである。
米国もゲリラのロシアへの引渡しをグルシアに要求し始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
中国、イラク問題解決へ向け積極関与の姿勢示す
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020913-00000609-reu-int
[北京 13日 ロイター] 国連安全保障理事会の常任理事国で
ある中国は、イラク問題解決へ向け積極的な役割を果たす姿勢を明
らかにした。
 中国外務省は声明で、「国連の枠組みの中でイラク問題の政治的
解決を目指すため、中国は国際社会とともに積極的かつ建設的な役
割を引き続き行なう意向である」と述べた。
 中国は1991年の湾岸戦争時にほぼ全ての安保理決議を棄権し
た。西側外交筋によると、今回も、イラク問題について安保理決議
があれば棄権する可能性が高いとみられている。
 中国はこれまで、イラクのフセイン大統領に対し、国連の大量破
壊兵器査察を受け入れるよう繰り返し要請。また、武力行使に反対
し、問題は国連で解決すべきであるとの見解を示している。
(ロイター)
[9月13日22時48分更新]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ロシア、イラクとの経済協力棚上げ――国連決議履行求める

 【モスクワ14日共同】14日のインタファクス通信によると、ロシ
アの複数の関係筋は、ロシアとイラクが調印を検討している長期経
済協力計画について、イラクが国連決議を履行することが調印の条
件になるとの見解を明らかにした。

 事実上、調印棚上げの意向を示した発言で、イラクに国連の大量
破壊兵器査察の受け入れを迫るとともに、両国の関係強化に神経を
とがらせる米国に譲歩した可能性がある。

 同筋は、イラクが国連決議を順守し、米国の軍事攻撃を回避する
ことによって「計画調印への道が開かれる」と語り、イラクをめぐ
る問題が未解決のまま経済関係を強化することに慎重な姿勢を示し
た。

 両国は一昨年から長期経済協力計画の協議を始め、大筋で合意。
イラクの石油・ガスパイプライン建設や油田開発へのロシア企業の
参画など、10年間で400億ドル規模の経済協力を盛り込んでいるとさ
れる。

 計画案は8月にロシア政府の閣議に提出されたが、政府はこれまで
承認していない。イラクの駐ロシア大使は先に、計画が9月前半に調
印されるとの見通しを示していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
グルジア、ロシアに武装勢力メンバー引き渡し――指導部に書簡

 【モスクワ14日共同】シェワルナゼ・グルジア大統領は13日、
同国東部パンキシ渓谷で拘束したロシア・チェチェン共和国の武装
勢力メンバーをロシアに引き渡すとする書簡を、プーチン大統領ら
ロシア指導部に送った。

 ロシアはプーチン大統領が12日、グルジア領内での軍事行動を示
唆する「最後通告」ともいえる書簡を国連事務総長などに送付する
など、グルジアに強い政治的圧力を加えており、グルジア側が譲歩
をしたとみられる。

 しかし、グルジアは今のところ、ロシアが求めるパンキシ渓谷で
のロシアまたはグルジアとロシア共同の掃討作戦実施を認めておら
ず、たとえ引き渡しが実現しても即座に両国関係が改善する状況に
はない。

 武装勢力メンバーの即時引き渡しは、ロシア側が繰り返し要求し
ていたが、グルジアは事実上拒否し、両国間の大きな争点となって
いた。

 書簡は、引き渡しについて「国際的な人権(基準)とグルジアの
国内法」に照らして適切な場合に限るとしており、無条件に行われ
るものではないと強調している。

 シェワルナゼ大統領はまた、書簡でプーチン大統領に対話を呼び
掛けた。両国首脳は来月の独立国家共同体(CIS)首脳会議に
参加する予定で、会談はこの際行われるとみられる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2002年09月13日(金) 
米の二重基準に“宣戦” イラク攻撃に便乗のロシア
http://channel.goo.ne.jp/news/kyodo/kokusai/20020913/20020913a3090.html
【モスクワ13日共同】イスラム武装勢力掃討のためロシアのプー
チン大統領が表明したグルジアへの越境攻撃の用意に対し、米国が
「グルジアの領土主権を支持」として反対姿勢を打ち出し、米中枢
同時テロを契機にした米ロの協調は最初の大きな試練に直面するこ
とになった。米国のイラク攻撃と同様の論理を振りかざし、反テロ
戦線拡大の便乗を狙ったロシアは今後、米国の「二重基準(ダブル
スタンダード)」を追及する構え。イラク攻撃に対する各国の姿勢
にも影響を与える可能性が出てきた。 

2002年09月13日(金) 
米がグルジアの主権支持を表明
http://channel.goo.ne.jp/news/kyodo/kokusai/20020913/20020913ta004.html
 【ワシントン共同】米国務省当局者は12日、プーチン・ロシア大
統領がチェチェン共和国武装勢力掃討のためグルジア国内に軍隊を
派遣する構えを見せていることについて「米国はグルジアの領土の
主権を強く支持し、同国内でのロシア軍の行動に反対する」と強く
警告した。米国がグルジアの主権の侵害は容認できないと反対の姿
勢を鮮明にしたことで、ロシアは対応を迫られることになりそうだ。 

<グルジア議会>露の越境攻撃脅威 国際社会に有効な措置を要請
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020914-00000176-mai-int
 【モスクワ田中洋之】グルジア議会は12日夜、プーチン・ロシ
ア大統領がグルジアへの越境攻撃を示唆したことについて「グルジ
アが侵略の脅威にさらされている」と国際社会に訴える決議を全会
一致で採択した。

 ロシアはグルジアが同国パンキシ渓谷に潜むチェチェン武装勢力
を野放しにしていると批判しているが、決議では「テロの土台はロ
シア領内(チェチェン共和国)にある。ロシアは自分で問題を解決
できないことを、主権国家(グルジア)に対する侵略の口実に利用
している」と指摘。国際社会が有効な措置を取るよう要請している。

 一方、ロシア下院は13日、グルジア越境攻撃を示唆したプーチ
ン大統領の立場を全面的に支持し、グルジアへの経済制裁の導入を
政府に求める声明を賛成多数で基本採択した。ロシアはグルジアに
ガスなどエネルギーを安価で提供しているが、声明ではこれらの特
典を見直すよう政府に要請している。(毎日新聞)
[9月14日1時50分更新]

露大統領がグルジア介入を示唆、安保理国首脳に書簡 
2002 年 9月 12日 
http://news.msn.co.jp/articles/snews.asp?w=210094
------------------------------------------------------------
【モスクワ12日=瀬口利一】ロシア政府が、チェチェン共和国か
らグルジアに逃げ込んだイスラム武装勢力の掃討作戦強化を求めて
いる問題で、プーチン露大統領は12日、ブッシュ米大統領ら安保
理常任理事国首脳およびアナン国連事務総長に書簡を送り、グルジ
アがテロ撲滅で具体的行動をとらない場合、「ロシアは固有の自衛
権を行使する」と表明した。これまでにない強い調子で対グルジア
軍事介入の可能性を示唆したものだ。イラクに対する軍事攻撃を狙
う米国をけん制する意図もうかがえる。

書簡は11日の軍、治安機関幹部との合議を受けたもの。プーチン
大統領は「グルジアの対テロ作戦は見せかけにすぎない」と改めて
批判。軍参謀本部に対し、軍事介入を検討するよう指示した。大統
領は「ロシアはテロの脅威に対し、しかるべき行動をとる」と強気
を示したが、「(グルジアの)主権や領土を脅かし、政権転覆を意
図するものではない」とも述べた。

ロシア大統領がグルジアへの軍派遣に言及=グルジアは「許容しな
い」 
2002 年 9月 12日 
http://news.msn.co.jp/articles/snews.asp?w=209747
------------------------------------------------------------
【モスクワ11日】ロシアのプーチン大統領は11日、テレビを通
じて、グルジアの無法地帯であるパンキシ渓谷がチェチェンのテロ
幹部のみでなく、昨年9月11日の米同時多発テロを実行した勢力
の避難地帯になっている可能性が高いとして、グルジアの許可なく
同渓谷に軍を派遣すると警告した。

グルジアのアラサニア国家保安次官はこれに対し、ロシアのいかな
る介入も戦争行為とみなすとし、「グルジア政府はパンキシ渓谷の
問題を武力で解決しようとするロシアを許容しない」と述べた。
また、シェワルナゼ大統領は緊急閣議後、「(プーチン大統領の)
発言は現実に沿っておらず、問題の原因を述べていない」と話した。

プーチン大統領はロシアには、国連加盟国として、チェチェンによ
る攻撃に対する単独あるいは集団での自衛権があると主張。「グル
ジア指導部が自国の領土を管理し、国際テロと戦う国際的義務を果
たすことができれば、軍事行動は必要なくなるだろう」と述べた。
 〔AFP=時事〕

==============================
先制攻撃の軍事政策を展開しているブッシュ
−−新ドクトリンは対テロに焦点−−
by トーマス・E・リックス、ヴァーノン・ロウブ
「ワシントン・ポスト」執筆スタッフ

 ブッシュ政権は、冷戦時代の柱である封じ込めと抑止(containment and deterrence) 
 から、テロリストと、化学兵器、生物兵器、核兵器を保有する
敵対国家に対する先制攻撃(preemptive attacks) を支持する政策
へ、新戦略ドクトリンを展開している。

 政府当局者が述べたところによれば、新ドクトリンは、ブッシュ
大統領の国家安全保障諮問会議によって、ブッシュ政府の最初の「
国家安全保障戦略」の不可分の一部として展開される。それは、
今秋の初め頃までの発表へむけて草案が準備されている。

 ある政府高官は、次のように述べた。その文書は、封じ込めと抑
止の戦略を捨て去ることなく、アメリカに対して大量破壊兵器を
使用しようとしていると思われる敵対的な国家やグループへの攻撃
のための公式のオプションとして、初めて「先制攻撃」(preemption)
と「防衛的介入」(defensive intervention)を付け加える。

 ブッシュは、1月の一般教書演説でイラク、イラン、北朝鮮を「
悪の枢軸」とレッテルを貼り、これらの国家が大量破壊兵器でアメ
リカを脅迫することは許さないと警告したとき、新ドクトリンを
ほのめかしていた。大統領は、6月1日のウエストポイント陸軍士
官学校の卒業式での演説で、このドクトリンを初めてはっきりと述
べた。

 このドクトリンを、公式の国家安全保障戦略の不可分の一部とし
て採用することによって、政府はアメリカ軍と情報機関にこれまで
の歴史上最大の変革を遂行させることになるだろう、と当局者は述
べた。それは既に、政府内部で、また防衛問題の識者解説者たちの
間で、どんな変革が必要とされるか、先制攻撃のドクトリンは現実
的か、ということについて白熱した議論を引き起こしている。

 しかし、次のことは一般的に認められているところである。つま
り、先制攻撃ドクトリンを採用するということは、半世紀にわたる
抑止と封じ込めの政策からの急激な変化となるだろうということで
ある。この従来の政策は、敵対者がアメリカを攻撃すれば、それは
確実で圧倒的な報復攻撃を引き起こすから、敵は攻撃しないだろう
という考えを中心に構築されてきたものである。

 新ドクトリンを策定している政府当局者は次のように述べた。
アメリカは、9.11以降、テロリストグループとそれを支援する
敵対国家によって引き起こされた脅威のため、抑止をこえて進んで
いくことを余儀なくされてきた。「敵の性格が変化し、脅威の性格
が変化した。それに応じて対応も変化しなければならない。」と
政府高官は述べ、次のことに留意した。テロリストは「守るべき領
土をもっていない...。我々が経験したような攻撃を、どのよう
にして思いとどまらせるかということは、明らかではない」と。

 政府が新ドクトリンをいだいていることは、ペンタゴン内部と
軍事戦略家のあいだでの激しい議論を引き起こした。それは、はっ
きりしないテロリストのネットワークや武器貯蔵施設に対する先制
攻撃の、実行可能性と賢明さについてである。

 それはまた、NATOの中にも懸念を引き起こした。国防長官
ドナルド・H・ラムズフェルドは、先週の火曜日、ブリュッセルで
、NATOの18の同盟国に対して次のように述べた。同盟は、
テロリストグループあるいは化学兵器、生物兵器、核兵器を保有す
る脅威となる諸国に対して行動をとる前に、「完全な証拠」
(absolute proof)を待つわけにはいかない、と。

 NATO事務局長ジョージ・ロバートソンは、ラムズフェルドの
言明に反発して、NATOは防衛的同盟であり続けると述べた。彼
はこう付け加えた、「我々は、解決すべき問題を待ち受けることか
ら踏み出さない」と。

 防衛分析家の中には、次のように指摘する者もいる。先制攻撃は
、双方に手遅れにならないうちにすばやく行動するようにという
プレッシャーをかけることによって、危機を急速にエスカレートさ
せる危険をもたらす、と。それは双方に、チェスの用語で「使わな
ければ負ける」という強制力を働かせる、と。

 「先制攻撃は、表面的には魅力的である」と防衛分析家ハーラン
・ウルマンは述べた。しかし彼はこう付け加えた、「深入りすれば
するほど、複雑になり危険になる」と。

 批評家たちは、また、次のことに留意した。やりそこなった攻撃
は、化学物質や生物兵器胚や放射性物質を大気中にまき散らし、標
的国家だけでなく近隣諸国でも何千何万もの人々を殺す危険がある
だろう、ということである。

政府内外の先制攻撃擁護者でさえ、次のことを認めている。より
いっそう攻撃的なこの戦略ドクトリンは、アメリカ政府が現在収集
している情報よりもはるかにすぐれた情報やもっと異なった情報を
必要としている、ということである。−−それも、CIAやFBI
の現在の任務を果たす能力が綿密に吟味されているときに。

 前ペンタゴン核兵器拡散問題専門家で今は国際戦略研究センター
にいるミシェル・フルーノワは、こう述べた。効果があるようにす
るには、アメリカは、敵の武器庫を破壊するために、危機が爆発す
る前に先制的に攻撃する必要があるだろう。そうしなければ、敵は
それらの武器を守るために防御物をうち建てることができるだろう
、あるいは単に武器を分散させることができるだろう、と。

 フルーノワは言う、テロリズムを支持する国家のあいだへの化学
兵器、生物兵器、核兵器の拡散が前提になっている場合は、先制攻
撃のドクトリンに移行することに、自分は賛成である、と。この方
針は、一連のよくない選択の中では最善のものを提供するのかもし
れない、と彼女は述べた。

 「ある場合には、敵の[大量破壊兵器の]能力に対する先制攻撃
は、アメリカに対する壊滅的な攻撃を防ぐために我々がとりうる最
善の、または唯一の選択かもしれない。」と彼女は述べた。

 ペンタゴンの当局者が述べたところによれば、このドクトリンの
下では、核先制攻撃(nuclear first strikes) は最終手段の武器
(weapons of last resort)とみなされるだろう。特に、核爆発の
高熱に持続的にさらすことによって最もよく破壊されうる生物兵器
に対して、そうである。しかし、努力の焦点は、武器庫と特に攻撃
のために使用されるミサイルを見つけ出して破壊するのに、従来の
武器を使用する新しい方法を見出すことにある。

 それを行うために、ペンタゴンは、すばやい空襲をはるかに超え
る「警告なし」の急襲をいかに行うかを研究している。その任務を
遂行する中心的な手段は、新たな「ジョイント・ステルス・タスク
・フォース(統合隠密機動部隊)」(Joint Stealth Task  Force)
である。それは、軍のあらゆる部分の偵察的要素を少なくとも取り
込んでいて、レーダー回避航空機や特殊作戦部隊や、その部隊を運
んだり巡航ミサイルを発射したりするために転用もされる弾道ミサ
イル搭載潜水艦を含んだものである。

 武器やドクトリンや機構の変化を越えて、ラムズフェルドとその
トップレベルの側近たちは、アメリカの軍事的思考様式( military
 mind-set )を変えようとしている。「先制=攻撃は...アメリカ
の政治的、戦略的文化に完全に反している」と、防衛専門家フラン
ク・ホフマンは、防衛情報センターによって今年公表された論文の
中で述べた。

 過去において、アメリカは、奇襲あるいは「卑劣な」攻撃を不名
誉なもの、アメリカ人民に加えられることはあってもアメリカによ
って発動されはしないものとみなしてきた、と分析家たちは指摘し
ている。

 ある国防省高官は、こう応じた。21世紀の安全保障上の脅威は
、もはや過去の用語では評価され得ない、と。「我々が生きている
今の世界では、抑止では十分ではない。もっと大きな能力、もっと
大きな柔軟性、もっと多くの色合いの選択肢が必要である。」と
その高官は述べた。

 国防省の科学者と戦争計画者たちは、ブッシュに「彼が過去に持
っていたかもしれないのとは異なった選択肢」を与える新しい兵器
と能力を開発することに、熱心にとりくんでいる。その政府高官は
そう述べた。

 対防衛脅威軽減局( the Defense Threat Reduction Agency )は、
大量破壊兵器の脅威に対処するために1998年に創設された11
億ドルの防衛局だが、そこで、科学者たちが、化学兵器、生物兵器
、放射線兵器を格納している堅固化され深く埋められた地下壕を、
攻撃して破壊する方法を研究している。それには、進歩した従来型
爆弾、低出力核爆弾、さらには高出力核兵器さえ使用される。

 「我々がどんな局面にいるのか実際のところ我々にはわかってい
なかった時があった。それで我々は、それを『冷戦後の局面』と呼
んだ。」と、この局の局長ステファン・M・ヤンガーは述べた。「
そして、我々には将来の紛争でどんな種類の武器が必要なのか、明
らかではなかった。9.11がそれを明らかにした。そして、我々
が将来直面するかもしれない[脅威の]タイプについて、またそれ
[を迎え撃つため]に必要とされる武器のタイプについて、より良
い理解を獲得しつつある。」と。

 ヤンガーはさらにこう述べた。彼の局は、地下のコンクリート掩
蔽(えんぺい)壕を貫通して、極度の高熱の持続で生物兵器を破壊
できるような、硬化弾頭を持った進歩した従来型爆弾について研究
している、と。

 「我々は、最小限の武力を使って軍事目的を達成したいと思って
いる、もし全く可能であるならば、従来型兵器で。我々は、核の敷
居をまたぎたいとは思っていない、もし極度の国家的緊急時という
事態にならないのであれば。」とヤンガーは述べた。

 しかし、「信じられないほど堅固な」掩蔽壕があって、「それは
まさに高エネルギー核兵器を必要とする」とヤンガーは述べた。彼
によれば、低エネルギー核弾頭は、あるシナリオでは有益であるだ
ろうが、しかしそれは、生物兵器を国中にまき散らして広めるとい
う危険をおかす。

 ラムズフェルドの「ニュークリア・ポスチュア・レヴュー」
(Nuclear Posture Review、核態勢見直し報告)は、昨年の終わり
に完成されたのだが、次のように言明した。「堅固で深く埋められ
た目標物のような、新たに生じてきている脅威を打ち負かすために
、新たな能力が開発されねばならない」と。それはまた、こうも述
べている。そのような軍事施設を攻撃する際に有益でありうる「い
くつかの核兵器の選択肢」には、「改良された地中貫通兵器」が含
まれる、と。

 しかし、政府高官によれば、核兵器の戦術的使用(tactical use
 of nuclear weapons)が研究されている、しかし、積極的に目論ま
れているわけではない。「核兵器の戦術的使用について考えたがっ
ているものは誰もいない。それは、我々が行おうとしていることで
はない。」と国防省の高官の一人は述べた。

 ペンタゴンが最も焦点を当てているのは、「進歩した従来型の攻
撃」(advanced conventional strike)の方法である、とその高官
は述べた。

 ペンタゴン内部では、新しいドクトリンがさほど遅くない時期に
実行に移されると推測する高官もいる。

 「私が思うには、大統領は」イラクに対する「ある種の先制攻撃
の準備をアメリカ国民にさせようと努力している。」とペンタゴン
のある顧問は述べた。彼によれば、それは必ずしもイラクの武器貯
蔵施設に対してだけとは限らず、イラクの油田の押収を含むかもし
れない。

 しかし、ある政府高官は、イラクに対する「青天の霹靂」攻撃と
いう考えを退けた。「私は、[大統領が]今にも起こりそうなアク
ションについての発表を」ウエスト・ポイント陸軍士官学校での演
説で「おこなったわけではないということを警告したい。」とその
高官は述べた。「全く率直に『ああ、これはイラクについて述べた
ものにちがいない』と言った人々もいる。しかし、大統領は今にも
起こりそうなアクションについての発表をおこなったのではなく、
これは教義上の公式声明であった。」

 ラムズフェルドは、先週、先制攻撃について議論するのをことわ
ったが、そのとき彼はこの状況を最もよくとらえていたのかもしれ
ない。インタヴューで、アメリカ政府が他国の大量破壊兵器に対す
る先制攻撃を目論んでいるのかどうかということを尋ねられて、彼
はこう答えた、「もしそれを目論んでいるとして、どうしてその質
問に答えるものがいるだろうか?」 
Kenzo Yamaoka
==============================
件名:在日米国大使館  

中国や朝鮮半島の安定 日米同盟の緊密さ貢献
 
米国のハワード・ベーカー駐日大使(76)は23日、東京都港区の
米国大使館で産経新聞のインタビューに応じ、米中枢同時テロを受
けた日本の対テロ攻撃支援を例に挙げて日米同盟の良好さを指摘し
た。そのうえで、東アジアは朝鮮半島の南北関係や中国の台頭によ
り今後の展開が不透明だとの見方を示し、「地域の安定は日米の緊
密さにかかっている」と強調した。

 テロとの戦いの一環としてたびたび観測の出ている米国の対イラ
ク攻撃の具体的な可能性には言及を避けたものの、そうした事態と
なった場合の、日本の協力については、「大量破壊兵器やテロの危
険性を考えたうえで、日本が独自の判断で決めることだ」との見解
を示した。大使はまた、北朝鮮による日本人拉致や不審船問題への
理解を示し、
 拉致問題をめぐる交渉では、情報提供などで支援する方針を表明
した。経済の好転に向けた日本政府の構造改革への取り組みに関し
ては、自身は「楽観的」とする一方、改革の履行は、「タイミング
が肝心」として改革の遅れに懸念を示唆した。

   ◇  ◇

(ベーカー駐日大使との一問一答)
拉致問題 情報提供など支援の方針
ベーカー大使のインタビュー内容は次の通り。

― 昨年9月11日の米中枢同時テロ後の日米関係をどう評価するか

 「同盟、友情関係はかつてないほど強い。両国関係は(日米安全
保障条約締結後の)過去50年間、常に同盟関係は改善され続けた。
日米同盟は太平洋の安全保障の重要な基礎となっている。また、
テロによる危機感で関係は一層強まった。同時テロ以降、日米だけ
でなく対テロ戦が世界中の自由を愛する国をひとつにするようにな
っている。対テロ戦への協力で日本が迅速で有効な支援を行ってく
れたことに米国は感謝している」

― ブッシュ大統領は、悪の枢軸としてイラン、イラク、北朝鮮を
厳しく非難したが、大量破壊兵器の拡散阻止やテロ撲滅を目的とし
たイラクへの軍事行動があった場合、米国は日本にどのような行動
を期待するか

 「悪の枢軸という言葉は大量破壊兵器を開発してきたことを非難
するために大統領が使った。これらの国を孤立させるのではなく、
態度を変えるならば話し合いにも応じようとしている。大統領もた
だちにイラクを攻撃するとは言っていない。現時点で日本に何を期
待するかを述べるのは適当でないが、(アフガニスタンでの)テロ
との戦いで日本が尽力したのは、同盟とか友情関係以上に日本が自
国の利益にとって最も良いと判断した結果だったからだろう。イラ
ク攻撃があったとしたら、日本は自国で判断し自国の意思決定を尊
重し、テロや大量破壊兵器開発の危険性や利害関係を自ら考えて行
動すべきだ」

― 北朝鮮による日本人拉致問題について、米国はどのように考え
ているか

 「米国はこの問題が日本にとって重要であることを理解している
。北朝鮮も国際赤十字を通じた話し合いに応じており、このような
対話継続が重要だ。米国も情報提供などで支援する方針で、大統領
も朝鮮半島をめぐる問題は重要視している」 

― 北朝鮮の不審船問題をめぐって、米国政府や米軍が沈没した
不審船引き揚げについて日本から協力要請を受けたことはあるのか   

 「協力要請は受けていない。日本が不審船問題を強く懸念してい
るのは理解しており、米国政府も日本の対応に強い関心を持ってい
る」

― アジア、太平洋地域における日本、米国、中国の3国間の関係
安定のために必要なことは

 「日本は世界第2位の経済力を持ち、中国の成長は驚くべきもの
だ。米国は太平洋の大国であり、これら3国の関係はこの地域(東
アジア)において極めて重要だが、先行きが不透明なこの地域で、
韓国と北朝鮮は安定を脅かすものともなりうる。中国が世界貿易機
関(WTO)への加盟を果たしたが、中国に対しては日本、米国が
WTOの規則に従うよう支援することが重要だ。地域の将来におけ
る軍事的、経済的均衡は、日米の同盟関係にかかっている。日米は
地域の安定に大きく貢献しており、日米同盟の緊密さが中国や朝鮮
半島にも安定をたらすことができるだろう」

― 小泉純一郎首相の構造改革に否定的な見方が出て、支持率も下
がりつつあるが、小泉首相の改革をどう評価しているか。米国の期
待に応えているか。

 「私は、日本の将来には楽観的だ。日本には問題を解決する能力
がある。大統領は小泉首相が改革や経済再生を成し遂げることを確
信している。私もそう思っている、時間がかかりすぎるとよくない
のは歴史が示しているが、日本が適切にタイムリーに問題に対処し
ていくと考えている。米国が日本に対して楽観的であることも重要
だが、日本が自国に対して楽観的であることも必要だ」
Kenzo Yamaoka
==============================
件名:アメリカの限界  
イランのイスラムはアラブ人のスンニ派に対して少数派のシーア派
になる。二つの宗派にはカトリックと東方正教会ほどの違いもない
が、ただ不浄なものとしてスンニが豚だけなのに対して、シーア派
は豚に加えて「犬もまた不浄なり。その血も汗も」(ホメイニ師の
法学書)としている。 
 なぜ犬を付け加えたかは、七世紀、イスラムがササン朝ペルシャ
を下したときにまでさかのぼる。イスラムはペルシャ人に改宗を迫
った。しかし、彼らは国教だったゾロアスター教を捨てない。 

 で、イスラム側はゾロアスター教徒を卑しい仕事につけ、さらに
彼らが神の使いと信じていた犬を侮辱した。やがて犬を虐待するこ
とがよきイスラム教徒のあかしになっていった、という。 

 時代が下って西欧化したパーレビー朝には犬の“人権”も回復さ
れたが、一九七九年、ホメイニ師がテヘランに戻ってきて犬の運命
は再度、暗転する。 

 市民はホメイニ師を恐れ、競って飼い犬を捨てた。ぼくが赴任し
た八〇年代中ごろのテヘラン郊外にはレトリーバーとかセントバー
ナードとか血統のよさそうな野犬が街外れをうろうろしていた。 

 イスラムの教えになじんだ子供たちがそういう野犬を見つけると
石をぶつける。ときにはいい大人も交じっていじめる。 

 それを見ていて、ちょっと異様な気がしたのは、彼らは石をサイ
ドスロー気味に投げる。
 それもひじを伸ばしたままだから“球速”はなく、犬もキャイン
ぐらい鳴いてさっさと逃げたものだ。 

 石を投げるといえば、この辺には石打刑がある。イエスがオリー
ブ山を下りてきてエルサレムの城門でこれに出くわし、「心にやま
しさのない者は石もて投げよ」と言った、あれである。 

 ホメイニ師はそれを二十世紀に復活し、そのころも聖都コムやテ
ヘランでやっていた。
 不倫をした人妻が腰まで埋められる。十ガダームというから五、
六メートルになろうか、その距離に執行吏が輪になって立ち、石を
投げつける。 

 そこでもまたサイドスローっぽい投げ方で、だからなかなか死に
至らない。カズビンの刑場では最後に一抱えもある大石を投げ下ろ
してとどめをさしていた。 

 今、東エルサレムの帰属をめぐって再びパレスチナとイスラエル
が衝突している。ガザ地区で石を投げる子供たちの姿がCNNで大
写しにされているが、その投げ方をよく見ると、やはり下手投げか
サイドスローで、イランの子供たちが野犬に石をぶつける姿とよく
似ている。 

 これは中東だけに限った投げ方ではなく、英国でも伝統のクリケ
ットは下手投げが原則だし、ミレーの「種蒔く人」もサイドスロー
気味に遠心力で種を蒔いた。 

 昔の手榴弾は長い柄がついていて横投げ式だった。そういう投げ
方が、古来からの無理のないフォームだったようだ。 

 ところが、近代に入ってアメリカ人が野球を発明し、これまでの
下手や横手投げに代わってオーバースロー、上手投げを開発した。
これは画期的なことだった。だいたい、人間の腕はライオンなどと
同じに、肩の後ろから回るようにはできていないが、やってみると
威力は十分にあった。 

 この発見はまず手榴弾の形態を変えた。握り柄のない卵形の手榴
弾が生まれた。アメリカンフットボールもあのクオーターバックか
らのオーバースローパスがなければ生まれてはこなかった。 

 水上にもオーバースローの腕の使い方は革命をもたらし、クロー
ルとバタフライが生まれた。のどかな平泳ぎの時代は終わった。 

 時間のかかる石打刑もこれなら即、終わるだろう。米国の生んだ
オーバースローは人類から、まだるっこさを取り去った。 

 米国はまだるっこい選挙開票も変えた。出口調査方式だ。 

 これは調査機関が投票した有権者から聞き取りし、その投票動向
をはじき出す。そうすると実際に開票しなくても結果が出る。票を
仕分けし、時には何日もかかる集計が必要なくなった。 

 もちろんケネディがニクソンと争ったとき、開票ではニクソンが
勝っていたかもしれないのに、出口調査の結果を尊重してケネディ
勝利にしたような些細な食い違いはあったが、米国はこれをグロー
バルスタンダードに付け加えた。 

 だから、出口調査で決めないペルー大統領選などは明らかなグロ
ーバルスタンダード違反で、米国はわざわざ選挙監視団を送りつけ
たほどだった。 

 今度の米大統領選でも各州選管は当然ながら、出口調査の結果に
従った。カリフォルニア州では約百万票が未開票だったが、出口調
査が出た時点で作業をやめた。 

 新聞も出口調査に基づいてブッシュ勝利の号外をだした。 

 ところが、フロリダ州で信じられないことが起きた。出口調査結
果が間違ったというのだ。 

 そういうときにどうすればいいか米国民も政府も知らない。窮余
の一策として手作業による開票を始めたが、それは不正確だからや
めろという訴えも出た。 

                   ◇ 

 米国人は肉体問題にはすばらしいひらめきがある。しかし開票と
か集計とか頭脳を使う分野ではまだ無理があるようだ。
 (帝京大学教授高山正之氏)
Kenzo Yamaoka

コラム目次に戻る
トップページに戻る