1003.ベル・エポックの終焉



米国のチェイニー副大統領がイラク攻撃に拘っているのは、大恐慌
の時代という認識があるためではないかと思う。これを検証しよう
。             Fより

日本の構造改革が遅れている間に、世界経済の雰囲気は大不況とい
うより、大恐慌の前夜の様子になっている。特に米国の銀行の不良
債権が、日本と同様に大きくなっているし、米国国民が株投資をし
たことにより、大きな損を抱えている。この感じは、1920年代
ー戦前の大恐慌時代とよく似てきている。

もう1つが2003年問題が日本の建設業界を中心に騒がれている
が、2003年に汐留、品川、六本木6丁目などの巨大開発のビル
が完成して、あのバブル期以上のビルが建って、供給過剰が起きる。
このため、ビル賃料の下落が起こり、かつ新しいビルの着工がなく
なるという。それによって、建設業界の大整理、多くのゼネコンの
倒産が起きると言われている。

このビルの着工がなくなると、それに伴う経済的な波及は大きいの
ですが、この影響はIT業界にも来ているようである。2003年
以降の受注がないとIT産業界の方たちが言っている。これは大変
である。今まで売れていたドコモの携帯電話なども売れなくなって
いる。

今までのように米国の景気も期待できないし、その上、電子業界、
特にコンピュータ業界は、自動車に次ぐ日本を背負って立つ産業に
なっているが、この不振は今の不況を恐慌に変えさせることを意味
するようである。これは日本経済の破局という意味を持つと思う。

少し遠回りをして、この解析をしよう。これは、コンドラチェフの
波動の下降期に現在はある。それの原因は戦後続いた電子産業の終
焉になっているように感じる。思い起こせば、戦後のベル研の半導
体の実用化から始まり、ノイマンコンピュータ、LSI開発、
インターネットで引き起こした通信革命と続いた産業の一連のサイ
クルの終焉、電子業界全体的の終焉にきたのであろう。この分野で
の世界的な競争が起きて、価格が下落して、儲からなくなっている。

開発競争に参加しているのは、人件費の安い中国、インドですから
、日本での開発ではどうしようもない。ハードは中国、ソフトは
インドと住み分けもでき始めたようです。インドの大学卒業生の
月給は2万円ですから、中国の月8万円より安いようです。しかし
一般的な労働の質は中国の方がいいため、製造業は中国の方が安定
しているようである。また、横に逸れた。

前回のコンドラチュフの波の下降期は、イギリスの産業革命、ワッ
トの蒸気機関から始まる機械産業の終焉で、米国の自動車産業バブ
ルが弾けて、大恐慌になった。これを同じように今回も米国のイン
ターネット・バブルが弾けて、大恐慌になる可能性が高い。

もう1つ、前回も金本位制を基軸通貨が止めて、お金の過剰流動性
が起きたが、今回も今時点で、デリバティブという仕組みのお金が
実体経済のお金の数十倍になっている。この流動性資金が世界を不
安定にしている。この劇的な減少をしないと世界経済は安定しない
ということである。そのためには混乱が必要なのであろうとチェイ
ニーなどのタカ派米国有識者は考えているはず。普通の経済状態で
は戦争がこれほど、騒がれることはない。戦争はもう1つの効用は
、軍事的な需要を生むことである。

このため、過去の歴史的な事実を見ると米国の戦争戦略に世界は反
対するが、大恐慌になるといつかは戦争なるでしょうね???
これにEUは反対しているし、日本も反対するべきであろう。しか
し、この解決はどうするのかと問われると、解がない。解を作る
しかないが、今のところ少なくても解けていない。

それでは、日本はどうすればいいのでしょうか?
ここまで来ると、有効な公共事業を積極的に行う必要があると言う
しかない。山にムダなダムや高速道路で金を捨てるのは止めて、
都市の基盤整備に金を使うべきです。たとえば、環状8号線や外環
状線などの道路需要が見込める道の整備、市民が欲しがっている
巨大な公園の整備、国内外からの交通を便利にするために羽田空港
を現在の5倍以上拡大して国内国外共用空港化を行い、世界でも
一番きれいで便利な東京・横浜・大阪・神戸・名古屋にして、世界
から多くの資産家、技術者、ビジネスマンたちを呼び込むことが
必要である。日本には金がないのであるから、米国やイスラエルの
ユダヤ人たちに来てもらうのは、非常にいいことであると思う。
文化的な類似性も高いと言う人たちも多いため、日本が安全である
となれば、来ていただけるのはないか???

このためには、石塚さんが指摘している借家法の改正は絶対に必要
になると思う。公共的な目的のためには、私有財産や借家人の権利
を制限するべきである。効率的な運用を行わないと、日本経済が立
ち行かない。

もう1つが、次の時代を生み出す産業の目を着実に追求することで
ある。1つ目がエネルギー革命、特に燃料電池を初めとした水素系
燃料の追求をするのでしょうね。2つ目が生命科学、DNAの追求
、3つ目がナノテクノロジーの追求で、次世代ベル・エポックは
日本から生み出したいですね。
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件名:空洞化する日本経済  
1.拡大するアジア市場
ベルリンの壁の崩壊を境に、自由主義、社会主義の二極化した経済
圏が一つの経済圏になった。かつては、ココム協定に代表されたよ
うに、社会主義国との自由貿易や企業の経済進出はタブーであった。
しかし、今や世界の市場が一つになり、中国人民12億人の未開拓市
場をねらって、世界が動きだしている。近年、アジアの時代といわ
れているのも、中国の市場開放が大きな加速力としてとらえること
ができる。

2.空洞化する日本経済
10年前は、日本の貿易黒字と円高背景の下、アメリカの強い要請も
相俟って、アメリカへの現地工場進出を推進した時代であった。
日本産業の空洞化のはじまりでもあった。しかし、ここ数年は、
アジア諸国への日本の企業の進出がめざましい。これは、アジア諸
国からの要請というよりは、円高の背景の下、コストダウンを進め
てきた結果といえる。

アジア諸国の物価水準は低い。日本国内での合理化効果をはるかに
しのぐ安い人件費を求めて、アジアへの工場進出が加速している。
現在、従来型の家庭用テレビは全て海外生産し、ハイビジョン対応
の横長テレビ等の高付加価値商品のみ国内生産しているメーカーも
多い。VTRの海外生産シフトも加速しており、オープン価格に代表さ
れる低価格指向に対応している。日本産業の空洞化はとどまるどこ
ろか、ますます加速するばかりである。既存産業の空洞化が食い止
められない以上、中長期的な日本産業の成長の視点にたった、空洞
化への対策を新たな次元で考えていく必要がある。

3.既存方式の限界
日本の海外工場進出の最大の目的は、コストダウンの実現である。
日本の生産技術をアジア諸国に持ち込み、安い賃金、安い土地を利
用したコストダウンを実現する。そこで生産した製品を、物価水準
の高い日本に持ち込み、利益を確保しようとするものである。

かつて日本企業は韓国の進出を強力に推進してきた。その結果、
韓国企業の生産技術が強化され、特に鉄鋼、造船の重工業の自立が
著しい。

今までの日本企業の進出をみると、情報公開、技術公開の世論の下
、あまりにも無防備に技術提供しているようにみえる。日本が何十
年も試行錯誤して築いてきた生産技術(特に量産技術)や管理技術
を、惜しげもなく海外に提供している。今後数年もすれば、量産技
術にかけては、日本の技術者を不要とし、日本の存在意義さえ薄れ
てくるかもしれない。

すでに韓国では、低コストを武器に、日本企業をしのぐ企業がいく
つも存在している。以前、日本のファスナー企業が韓国に合弁会社
を設立した。現在資本提携も解消され、競合企業として世界市場を
奪い合っている。無償に近い日本の技術提供のやり方では、将来的
には日本企業に不利益である。今こそ、コストダウン中心のアジア
進出の考え方から、中長期的視点にたった、アジア戦略が必要とい
える。

4.今後の日本企業の対応
アジア戦略を、超短期的にみれば、物価格差によるコストダウンの
実現であろう。しかし、中長期的にみると、アジア進出の目的を次
の4つの視点から再構築していくことが急務である。

(1) 現地の顧客の囲い込みとシェアの拡大
海外に工場を建設すると、現地の雇用が促進され、個人所得の増加
により、消費が拡大する。また、現地に工場があることで、その企
業の知名度と信頼度を増す。雇用と消費の良循環を意識的に作り上
げることが、中長期的視点で大切な考え方である。ターゲット市場
は日本ではなくアジア(特に中国)である。

例えば、現地採用の社員に、自社製品の割引制度を導入したり、現
地の販売代理店等の販売流通網を整備することが重要である。早期
に行うほど、シェア拡大が有利になろう。

(2) 資本面での将来的利益確保のしくみ作り
現地企業が自立したとき、育成した日本企業に継続的な恩恵が得ら
れるしくみを構築しておくべきである。他国への産業育成に注力し
、その見返りが競合企業の増殖では、何のために努力したのかがわ
からない。そのため、株式資本比率を優位に保持し、同時に株式配
当性向をアメリカ並みに高く設定することも効果的であろう。

(3) ライセンス提供による継続的な収入確保
ライセンス提供により、継続的に収入が入り続けるしくみを作る考
え方も重要である。ライセンス収入として、商標権、著作権、特許
権収入が考えられる。例えばマクドナルドは、フランチャイズ方式
により、商標権やノウハウを提供することにより、日本国内の売り
上げの一部がアメリカ本社の継続的な収入になる。

要するに、労働集約的な収入構造から、ライセンス型の収入構造に
転換する考え方が重要である。例えば技術支援段階から、技術提供
料を長期的に確保できる契約形態を考慮するべきであろう。

(4) 新技術、新産業の継続的開拓
これからの日本企業の役割の一つに、新技術と新産業の継続的な開
拓がある。現在、規制緩和の流れにのって、携帯電話、PHSが伸びて
いる。特にPHSは日本が開発した製品であり、海外からの関心も高い
。これらの新産業を継続的に生み出し続けることは、日本企業にと
っての必要条件といえる。

今が日本企業のアジア戦略成否の分岐点である。他社に先駆けてい
かに現地の顧客を囲い込むか、また、ライセンス型の収入構造を構
築できるかにかかっているといえる。
Kenzo Yamaoka


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