977.ロシアの最新事情



ウクライナ航空ショー惨劇と、モスクワの飛行機事故の因果?
 
最近、ロシアでは、本当に軍隊の乱れ方が、思っている以上である
ことに、改めて衝撃を受ける。
 
ここ数年、モスクワにいるだけの若輩が知っていることは、たかだ
か知れているとしても、ここ最近、ニュースなどで伝えられる事件
だけでも、かなりあるが、おそらく、内実はそれどころではないの
だろう。
 
徴兵拒否の問題も、かなり大きくなってきているが、軍隊内の陰湿
ないじめの実態も、ロシア人に聞いてはいたが、実際に新卒兵が、
どういう理由かアクシデントかによって、上官に撃たれ、命は取り
留めたものの入院という事件まで起きているのを見れば、「ユダヤ
人が、軍隊に入った日には、五体満足で帰ってくることはありえな
い。」という知人の話も、あながち嘘ではない気がしてくる。
それほどに、人種差別も相当のものであるらしい。
 
今回起きたウクライナの航空ショーにおける惨劇もまた、ロシアと
非常に軍隊の体質も、経済状態も似ている(さらに酷い)ウクライ
ナで、(しかも、ほぼ独裁的に政権を握るレオニド・クーチマ大統
領の元)残念ながら、起きるべくして起こってしまった事件であっ
たのかもしれない。
 
こちらの情報では、主要な原因は人為的なミスと、結論づけられて
いるようだが、実際には、あの手の戦闘機に必要な実習時間200
時間にまったく満たない(50時間とテレビでは報道)状態で、見
切り発車させていたのも、大きな原因といわれるし、長い間、ロシ
アとの関係も冷え切って、戦闘機のメンテナンスも不充分、その上
、燃料まで満タンでなかったという噂まであり、一体、ここまで質
の低下した状態の軍を維持する意味がどのくらいあるのか、疑問を
感じるほどである。
 
こちらの、80数名の一般市民の犠牲者のことを考えると、あまり
の杜撰な実態に、非常に心が痛む。
さらに、その少し後、モスクワでも飛行機の墜落事故が起きた。
死傷者の数が少なかったのが幸いであったが、この事件による、ロ
シアの航空関係者の受けた衝撃は、大変なものであったらしい。
 
なんせ、大統領や軍の高官を乗せるような、国内生産機の中でも、
一番性能のいいはずの飛行機(IL-86、350席)が離陸直後に、シ
ェレメチェボ第一空港近くの森の中に、離陸数分後に、墜落炎上し
てしまったのだから、相当の衝撃といっていいだろう。
 
ロシアでは、この手の見せかけ(やらせ)墜落事故で”要人を消す
”という手段が、政治的にけっこう使われるようなのだが、今回の
ケースは、明らかに違う。
乗務員と関係者15人ほどしか乗っていない、帰路の国内線の飛行
機だけに、そういうことではなさそうだ。
 
しかも、ブラックボックスを回収しても、無線の会話状態がまった
く残されていないという失態もあり、ますますロシアの航空関係の
信頼度を落とすことになったのは、いうまでもない。
 
つい数週間前にも、北部の軍事関係のヘリコプター墜落事故があっ
たところで、民間機の不時着事故、整備不良による引き返しもしょ
っちゅう報道されているし、(報道されていないのもあろう)これ
は国外であるが、ドイツ航空機との衝突事故など、あまりにも最近
、ロシアでは航空機の事故が多すぎる。
 
それだけに、今回の二件の事故によって、いっそう事態は深刻にな
っているようである。
 
最近、イギリスで行われた軍隊関係の航空博覧会にもロシアからの
出展が、ほとんど無いに等しい状況の中、ヨーロッパ各国が共同製
作した、新型戦闘機の実演がロシアのテレビニュースでも、悔しげ
に公開されていたが、この調子では、戦闘機どころではないのでは
?と危ぶまれる。
 
まず、なにはともあれ、国内線に安心して乗れるようなまともな
民間機の運営状態にしてもらわないことには、どうしようもない。
 
しかし、ロシアもウクライナも、国外国内に威信を示すためだけの
出鱈目な軍隊運営では、これからも、このような事故が絶えない、
ということは、大体、目に見えている。まともに、軍人に給料も
払えないまま、維持しようというのが間違っている気がする。
 
そんなこんなで、ロシア軍の士気の低下は、ほとんど、とどまると
ころを知らない。
やはり、そういった精神面で乱れが、ますます協調性のなさと、
責任ある仕事をしない態度、日常からの惰性的な作業など、末端の
人間に至るまでの、その内部の歪みぶりが、このような事故に現れ
ているのではないか、と非常に危惧するものである。
 
東 知世子

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