819−1.囲い込み症候群について



「囲い込み症候群」大田肇著、ちくま新書を読んで。  Fより

我々が生活していく上で、企業、労働組合、地域、学校など何らか
の組織に所属する。組織は、そもそも個人ではできないことを実現
するためにつくられる。だが、いつのまにかその目的からはずれ、
組織が個人を縛る「囲い込み」症候群に陥る。なぜこのような病理
が、起きるのでしょうか??

日本人の職場に対する満足度の低さが際立っている。「自分の仕事
を片付けてもなかなか帰れない」とか「人間関係がわずらわしい」
とか。

これは、会社と社員の利害が一致させて、運命共同体的な関係を作
っているため、必然的に起きる現象なのです。企業は本来、機能集
団なのですが、それを認めるとメンバーの犠牲的な貢献を得られな
いために、擬似的な共同体として組織を一枚岩にして、メンバーの
個別の利害や打算を超えた貢献を引き出そうとするのです。
今まではプロセスを重要視していた。どう個を我慢したかが重要で
あった。個を1つの組織に貢献させるために、多重の組織には所属
できない。このため、多くの会社が兼業を禁止している。これも、
この個を捨てさせるため、複数の組織に所属させないことになる。

しかし、縮小社会では、個の犠牲的な貢献に見合った報酬を期待で
きなくなってきている。このため、自分の個を大事にする選択肢が
出てきているし、成果と報酬を合わせようとするため、プロセス重
視から成果重視になる。

このため、囲い込み症候群を日本の組織は脱しないといけないこと
になっている。しかし、まだその後の組織を構築する理論がない。
個の利害と、組織の利害をどう調整するかの重要になっている。
個人も自分の人生を自分で切り開くという視点が必要になっている。

まあ、このごろの調査を見ると、昇進志向からプロとしてのスキル
向上志向になっているのはいいことであろう。これをサポートする
企業の管理方法をどうするかが問題である。組織人から仕事人への
変化となる。専門性を重要視した人事も必要であろう。

米国は昔からこの部分でも、個人主義化されている。管理職という
専門職を企業は雇うようだ。このため、管理職になるのであれば、
MBAに行くことになる。35歳前後で一度、会社を辞めて、大学
に戻ることになる。そして、人の管理や経営を出来るようにしてか
ら、高級管理職になる。個人の仕事を考えた転職も自由にできる。

個人の論理が中心になり、組織の論理が効かないような社会に日本
もならざるを得ないと覚悟しよう。


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