805−2. 在日日本人 祖国を忘れし者



きまじめ読書案内 山下正仁著「さらば、在日日本人 祖国を忘れ
し者に告ぐ」(展転社、2001年、2000円)
   今の日本人に欠けているものを総合的に診断

 今朝、次男はテレビで「仮面ライダー」を見ていた。CMのときに
ザッピングしたら田中真紀子前外相と鈴木宗男議員の国会でのやり
取りがいくつかのテレビ局から放映されていた。これが国会の様子
なのかとあきれるほど低レベルな会話だった。答弁の内容もさなが
ら、それを何度も見せられて平気なマスコミや国民も同様に重症で
あると思った。
 
 日本は、この程度の政治家しかもてない国になってしまったのだ
、戦争に負けるとこうなるのか、としみじみと思う。最近テレビを
見ると不愉快になることばかりだ。
それ以上不愉快な気持ちになるのが嫌だったので、テレビを消し、
おととい書店で見つけた「さらば、在日日本人」を読む。テレビや
雑誌の改革論議がすべて的外れに感じるのは、「現状が正しく認識
されていないからである。」正しい歴史観をつかめ、というまえが
きに感じるものがあって購入した。

 この本の著者は、21世紀初頭、日本人が一億総痴呆ブタ状況とな
ってしまった元凶は、占領軍が日本人から魂を奪い取るべく占領政
策を行ったこと、また日本人が敗戦による精神的ショックから立ち
直っていないため、その状況を正していないこと、にあると見てい
る。

 敗戦以来、「命あってのものだねだ」というブタの思想とも呼べ
ない思想がまかり通るようになってしまった。自分の信念も思想も
なく、ひたすら経済的利益のみを求め、アメリカを怒らせないこと
だけに気を使い、自分の考えというものを持たないゾンビになって
しまった。

 腑抜けになってしまった日本人には、神を畏れ敬う信仰心が欠け
ている。また、親戚や近隣や職場の人との人間関係を築く意欲や能
力も失ってしまった。さらに、地理上の発見以来、西洋が他地域を
植民地化した歴史認識や、その中で明治維新から大東亜戦争敗北ま
での日本人が独立を保ってがんばったという歴史観も欠けている。
要するに感性にも知識にも欠損がある重症なのだ。

 著者は、「戦後」、「近代主義」、「国益」、「歴史観」、「国
際社会と戦争」を論じ、さらに「憲法」と「教育」にも論及する。

 日本国憲法と大日本帝国憲法を比較して、憲法典としては日本国
憲法に不備が多くあることを指摘した後に、憲法をどう変えるか、
どのような条項を付加するかではなく、今の日本国憲法には何が足
りないかを考えてみようという現実的な提案をしている。憲法論議
は、概念的で地に足のつかない議論が多いなかで、注目すべき提言
ではないか。戦後民主主義という思想の、欠落するファンクション
やバグを認識し、それにパッチをあてる作業こそ、第一に行われな
くてはならないのだ。

 また、今の教育は、あれはダメこれもダメと否定することばかり
で、子供たちにニヒリズムを教えていると指摘する。そうではなく
て、自分を取り戻し、生きがいを実感すること、偉人の生き様を学
ぶことなどを通じて美を感じる感受性を育み、人生においては感動
を求めなければならないのだと主張する。やはり日本人を取り戻す
ためには、教育から改めるしかないのだろう。

 こういう本を待ち望んでいた。日本人を回復するためには、まず
日本人が何を失ったかを知らなくてはならない。本書はそれを実に
わかりやすく提示してくれる。議論の対象が多岐にわたっているに
もかかわらず、引き込まれて読んでしまうのは著者の日本への思い
の深さゆえであろう。「素人であるがゆえに大局を素直に見渡した
」と著者のいうとおりの本である。

 ちなみに「在日日本人」とは、日本に住んではいるがまだ日本人
になっていない我々のことを指す。
(得丸久文、2002.02.03)
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環境ホルモンに関する本の紹介 得丸   2002/02/04 16:53 
京都府立大学の川添先生が環境ホルモン関連のMLで紹介されていた
ものです。

環境ホルモン関連の書籍紹介2001(2)和書
●和書
(No.81)
  家森幸男、太田静行、渡邊 昌 編
「 大豆イソフラボン 」
  幸書房、東京、2001年3月30日発行
  2400円(税別)、165ページ、ISBN 4-7821-0181-3 
大豆イソフラボンの生合成と分布・類似物質、分析法、物理化学的
性質、生理活性、体内動態、ホルモン作用と臨床への応用、発がん
抑制、期待される効果(内分泌かく乱化学物質との競合他)、摂取
量、食品への応用

(No.82)
  奈須紀幸 監修、立川 涼 編 
  総合的な学習にやくだつ ここまできた! 環境破壊 1
「 汚染物質がからだをむしばむ 環境ホルモン汚染 」
  ポプラ社、東京、2001年4月第3刷発行
  2800円(税別)、47ページ、ISBN 4-591-06343-7
環境ホルモンってなんだ?、生物におよぼす影響、環境ホルモンが
あらわれてきた歴史、21世紀にもとめられる環境ホルモンへの対応
執筆 井口泰泉、田辺信介、中下裕子

(No.83)
  井口泰泉 著
  ビジュアル版 新健康教育シリーズ
「 総合的な学習 21世紀の地球環境を守ろう 環境ホルモンと
野生動物の異変 」
  少年写真新聞社、東京、2001年8月1日発行
  1900円(税別)、61ページ、ISBN 4-87981-118-1
古くて新しい化学物質問題、ホルモンや「環境ホルモン」とはどの
ような物質か、ホルモンのはたらきと内分泌系、雄と雌の決まり方
、環境ホルモンの野生生物への影響、活躍する女性たち、すべての
生物にとって健全な地球を

(No.84)
  (社)日本化学工業協会エンドクリンワーキンググループ 著
「 内分泌かく乱物質問題 36のQ&A 」
  中央公論事業出版、東京、2001年7月7日発行
  1200円(税別)、143ページ、ISBN 4-89514-166-7
内分泌かく乱とは、野生生物や人への影響、疑われている物質の状
況、各国行政機関の見解、調査・研究の現状、内分泌かく乱物質を
見分けるための試験法、化学物質の安全管理に向けた化学産業界の
取り組み

(No.85)
  EDSTAC 著、小林 剛 訳注
「 内分泌攪乱物質スクリーニング及びテスト諮問委員会(EDSTAC
)最終報告書 」
  産業環境管理協会、東京、2001年8月10日発行、発売丸善
  12000円(税別)、532ページ、ISBN 4-914953-66-8 
1998年8月にEDSTACの最終報告書が発表されて以来、2年を越
えて翻訳されたものです。訳注もある労作です。

(No.86)
  西原 力 著
  大阪大学新世紀セミナー
「 環境と化学物質 化学物質とうまく付き合うには 」
  大阪大学出版会、吹田、2001年8月20日発行
  1000円(税別)、88ページ、ISBN 4-87259-114-3 
環境とは、化学物質とは、化学物質のライフサイクル、「くすり」
と「どく」、リスクとは、リスクアセスメント、指数法、リスク管
理、私たちにできること

(No.87)
  日本化学会 編
  季刊 化学総説No.50,2001
「 内分泌かく乱物質研究の最前線 」
  学会出版センター、東京、2001年9月1日発行
  4800円(税別)、224ページ、ISBN 4-7622-2977-6
(概論) 
内分泌活性物質をめぐる国際的動向・・宮本純之
内分泌活性物質の哺乳動物における実験的研究と人間集団への健康
影響・・白井智之
内分泌活性物質の生体影響・・川合真一郎

(本論)内分泌活性物質の生体および環境中での挙動
内分泌活性物質の生物体内での動態・代謝・化学変換・・栗原紀夫
ポリクロロダイオキシン類およびPCBの動態・・酒井伸一
有機塩素化合物のグローバルな動態・・田辺信介
有機スズ化合物の生物蓄積と環境動態・・高橋 真、田辺信介
天然および人工エストロゲンの下水道と環境中での挙動・・松井三
郎、足立 淳、松田知成、滝上英孝、清水芳久
植物由来の内分泌活性物質(フィトエストロゲン)・・金城順英
まとめ・・栗原紀夫

    内分泌活性物質の微量分析
内分泌活性物質の微量分析と分析値の信頼性の確保・・中澤裕之
ダイオキシン類の分析法・・斉藤貢一
ビスフェノールAの分析法・・吉田栄充
フタル酸エステルおよびアジピン酸エステル類の分析法・・平山ク
ニ、加藤嘉代子
有機スズ化合物の分析法・・藤巻照久
植物エストロゲンの分析法・・堀江正一
多環芳香族化合物(PAH)およびその代謝物の分析法・・鳥羽 陽、
木津良一、早川和一
PCBs、臭化ビフェニルエーテルの分析法・・堀伸二郎、阿久津和彦
アルキルフェノール(4-ノニルフェノールおよび4-オクチルフェノ
ール)の分析法・・吉村吉博、井之上浩一
揮発性有機化合物(VOC)の分析法・・猪飼誉友、近藤文雄、伊藤裕
子、岡 尚男
有機塩素系化合物(PCBsを除く)の分析法・・月岡 忠
内分泌活性物質の微量分析法における着眼点・・伊永隆史

    内分泌活性物質の環境残留
残留性有機汚染物質(POPs)について・・柳橋泰生
ダイオキシン類の現在および将来の環境残留・・鈴木規之、桜井健郎
PCBおよび有機塩素系農薬・・岡本 拓
多環芳香族炭化水素(PAH)の環境残留とヒトへの曝露・・木津良一、
鳥羽 陽、早川和一
有機スズの環境残留性・・柴田康行、堀口敏広
フタル酸エステルの環境残留・・片瀬隆雄
柱状底質中の内分泌活性物質・・山下信義、今川 隆、宮崎 章


(No.88)
  白木博次 著
「 全身病 しのびよる脳・内分泌系・免疫系汚染 」
  藤原書店、東京、2001年9月30日発行
  3200円(税別)、296ページ、ISBN 4-89434-250-2 
はじめに(水俣病の教訓、今あらためて「環境ホルモン」の視点か
ら)、増大するヒトの異常、全身病としての水俣病、脳・内分泌・
免疫器官への汚染(環境ホルモンの視点と水俣病、胎児に異変を及
ぼすメチル水銀は環境ホルモン他)、黒い赤ちゃんと副腎皮質、水
俣病と環境問題、有機塩素化合物の薬害・スモン、おわりに(自然
科学としての医学の限界と哲学、従来の中毒学を超えて)

(No.89)
  シェルドン・クリムスキー 著、松崎早苗・斉藤陽子 訳
「 ホルモン・カオス 「環境エンドクリン仮説」の科学的・社会
的起源 」
  藤原書店、東京、2001年9月30日発行
  2900円(税別)、424ページ、ISBN 4-89434-249-9
松崎さんの労作です。EDSTAC最終報告書の翻訳にも共通することで
すが、原書より日本語はなぜこんなにわかりやすいのでしょうか?
しかし、朝日新聞の書評(10/21/01)の評者は本当にこの本読んだ
のかな?


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