797−1.米国の戦略と世界の対応



ブッシュの「悪の枢軸」としてイラン・イラク・北朝鮮を位置付け
た。この反響と世界の動向を考察しよう。  Fより

この分析を ロシア政治経済ジャーナル No.104、No.105、No.106で
やっている。この分析をまず見て、少し足して解説しよう。
元の解説はなかなか優れてるので、詳細はロシア政治経済ジャーナ
ルを見て欲しい。
http://www.ai.wakwak.com/~cpm/russia/

▼アメリカの動き(アラブとの戦争)
アメリカの戦略について、短期戦略=アフガンとの戦争に勝利:
中期戦略=アラブとの戦争に勝利:長期戦略=中国との冷戦に勝利し
て今後も世界における覇権を確立すること。

1、アラブを攻め、中国との冷戦を演出しながら軍事産業を儲けさせ
ることにより米国経済を上向かせること。その証拠に戦争がはじま
ってから、アメリカの株価が下げ止まっている。
2、MD構想を推進することで、軍事産業を潤わせること。
ブッシュは1月26日、2003会計年度(02年10月〜03年9月)の国防予
算を15%増額し、かつ別立てでテロ戦争資金を320億ドルも積み
上げている。公共事業、公共事業
3、この2つの政策を進めることで世界の覇権を確立することである

民主主義国家アメリカが戦争を開始するためには、国民の支持が不
可欠。だから、米国は戦争を始める前に必ず「国民の支持を得るた
めの工作」を行うのである。(例、日本に真珠湾攻撃をさせる)

具体的に言うと、「中東和平のために力の限り努力しましたがアラ
ファトがそれに応じなかったんです!」(嘘泣)
「イラクが国連の査察に応じるよう説得を続けたのですが、フセイ
ンが応じなかったんです!」(嘘泣)と、最大限の努力をしたふり
をし、国民が戦争もやむを得ないと思い始めた頃に戦闘を開始する
のである。

・パレスチナ問題で、
ブッシュは1月25日、「アラファトには失望しちゃったぜ!」と記者
団に語り、パレスチナ政府議長に対する不信感を露わにした。
パレスチナのイスラエルに対する自爆テロは止まらない。
また1月初めには、パレスチナがイランから武器を密輸していたこと
が明らかになっている。
ブッシュは、「アラファト議長との関係断絶について検討している
」と、この関係断絶に関しては強硬派のチェイニー副大統領、ラム
ズフェルド国防長官が支持している。アメリカはイスラエルに味方
することが決まっているのだ。ただ、時が熟すのを待っているにす
ぎない。

・イランについて
さて、パレスチナに次いで槍玉にあがっているのがイランである。
一つは、既述のようにイランがパレスチナに武器を密輸しているか
ら。
もう一つは、イランがアルカイダのメンバーを匿っている可能性が
あるため。FBIのモラー長官は1月24日、訪問先のイスラマバードで
、「アルカイダのメンバーがイランに逃れた」としイラン政府に、
テロリストを保護しないよう求めた。

以上二つの理由で、アメリカとイランの関係は悪化しているわけだ
が、これは表向きの理由にすぎない。
真の理由は「アメリカがイランとの関係を悪化させたい」というこ
と。

これはつまり、アメリカがこれからイラクとだけ戦争をするのでは
なく、アラブ全体を敵に回す計画であることを示している。
パレスチナ、イラク、イランが攻められるとなると、他のアラブ諸
国は選択を迫られることになる。
「ジハード(聖戦)かアメリカか?」
アラブ国民の大半は、ジハードを支持するだろう。
実を言うとアメリカは既に、他のアラブ諸国に選択を迫っている。
米政府は1月24日、サウジ、エジプト、ヨルダンに「パレスチナの
武器密輸を証明する書簡」を送ったと発表した。

しかし、3国は「アメリカはイスラエル軍のパレスチナに対する侵略
を黙認している」とし米国を非難している。
今回「密輸の証拠」を提示したことは、アメリカにつくのか?それ
とも滅び行くテロリスト(つまりパレスチナ、イラン、イラク)に
つくのかを脅しているのだ。

・イラク
アメリカが次の標的にしているのは、言うまでもなくイラクである。

▼アメリカの動き(戦時のエネルギー確保と中国封じ込め)
米国は、「国際テロリズムとの戦い」を口実に中央アジアへの影響
力を強めている。
しかし、真の理由は
a)中国封じ込めの準備(地政学的理由)
b)中央アジアには資源(特に石油、天然ガス)がたっぷりある
の二つ。

アラブと戦争をしたい米国は、中東への石油依存度を減らしたい。
では、どこから石油を持ってくるのか?
一つはロシア、もう一つは中央アジアである。
具体的には、アフガンにパイプラインを建設し、中央アジアの原油
・天然ガスをインド洋に抜けさせる。
アゼルバイジャン→グルジア→トルコをつなぐパイプラインを建設
し、中央アジア+カスピ海の原油・天然ガスを欧州に流す。

アメリカが中央アジアを重視している証拠に、米国政府・軍の高官
は今年に入って、既に7回もこの地域を訪問し、「資金援助するし、
投資もするからアメリカ軍を駐留させてよ!」と頼んでいる。
ちなみに、「アメリカとウズベキスタンは25年(!)の軍事基地供
与に関する秘密協定を結んだ」との情報もある。

▼アラブの動き
アメリカに攻撃される可能性が高いのは、まずイラク、そしてイラ
ンである。そこにイスラエルがからむと全アラブが巻き込まれるこ
とになる。
戦争の構図はアメリカ+イスラエル対全アラブになる可能性が高い。

1、イラクとイランが急接近
米国に敵視されているイラクとイランが急接近している。
両国は今年に入ってから閣僚級の会談を繰り返している。
イラクのサブリ外相は1月27日、イランの首都テヘランでハタミ大統
領と会談した。イラク外相のイラン訪問は、88年にイラン・イラク
戦争が終結した後初めて。

2、イラク副首相がロシア・中国を訪問
危機が間近に迫っているイラク。頼りになるのは大国ロシアと中国
しかない。イラクのアジズ副首相は1月24日、モスクワを訪問しイワ
ノフ外相と会談した。

イワノフ外相は、「米国によるイラクへの攻撃に反対する」、アジ
ズ副首相は「国連のアナン事務総長との対話を継続する」との声明
を出した。
イラクは「国連の査察を認めない」方針を崩さなかった。

この話しには実は重要な伏線がある。
アジズ副首相はモスクワに到着した当初、「イラクへの制裁解除が
保証されれば、国連の査察を認める」と語っていた。
ところが、イラクのラマダン副大統領が、「イラクは,攻撃されても
国連の査察を認めない」との声明を出したのだ。
理由は何と、「米英がイラクを爆撃しているから」
米英はもちろんこのことを否定しているが、本当だとしたら、「ア
メリカはイラクに査察を要求しておきながら、実は認めて欲しくな
い」つまり「イラクと何がなんでも戦争したい」ということになる。

イラクからの報告を受けたアジズはその後、本国の意向に従い「ア
ナンと対話を続ける」と言うにとどまった。

3、イランが米国を批判
イランのシャムハニ国防軍備相は1月26日、米国を痛烈に批判する
コメントを出した。「アメリカは、タリバンとの戦争が終わればア
フガニスタンから撤退すると言っていたが、その気はないようだ!
」とし、「これはイランにとって重大な問題だ!」と述べた。

また、「イランがアルカイダを匿っているという米国の主張には全
く根拠が無い」とも語っている。このように、イラクとイランは戦
争を回避する努力をすると共に、米国との戦争に備えている。

▼中国の動き
世界経済が停滞するなか、一人成長を続ける中国。
中国の国益は、欧米+イスラエル対アラブの戦争を傍観することにあ
る。また、裏からアラブ諸国を援助するのも中国の国益に沿ってい
る。

アメリカは景気をよくするためにアラブを攻める。しかし、長期の
戦争は国力を疲弊させる原因にもなる。それを中国は傍観。
世界の工場としての地位を確立しながら、軍事力をどんどん拡大し
ていく。そして、来るべきアメリカとの冷戦に備えるのである。

中国は、アラブにがんばってもらい、アメリカをできるだけ弱体化
させて欲しい。だから、中国はアラブを裏から支援する。
最近の動きを見てみることにしよう。
江沢民は1月23日、エジプトのムバラク大統領と北京で会談した。
江主席は、「中東問題の解決がテロ根絶に不可欠」と述べた。
またムバラク大統領は、「テロ攻撃を他国に拡大するべきでは無い
」として、米国を非難した。

また江沢民は1月27日、イスラエル軍のパレスチナに対する攻撃を批
判している。中国はこれからも、国連安保理の常任理事国として米
国の行動を非難していくだろう。
しかし、本音では戦争を歓迎しているのである。

▼ロシアの動き
ロシアは、欧米+イスラエル対アラブの戦争を歓迎する立場にある。
なぜか?儲かるから。
1、欧米に原油を高値で輸出して儲ける
2、アラブに武器を売って儲ける
というわけでロシアの動きを見てみることにしよう。

・アラブとの関係
ロシアは中国と同じで、表向きは「アメリカのイラク攻撃」に反対
している。両国は国連安保理の常任理事国。拒否権を持っている。
しかしこれまでの例を見ると、アメリカは自分に都合の悪い時、国
連安保理の決定を無視している。

ロシアも戦争を止める気がないことに関するエピソードを挙げてみ
よう。
イラクのアジズ副首相が1月24日モスクワを訪問した。でも、クール
なプーチンは副首相に会わなかった。ロシアは、「戦争反対!」と
叫びながら、戦争を待ち望む。
そしてアラブに対しは、「安心しろ!戦争になったら全力を挙げて
援助するから!」と言いつつ、武器を売りまくって儲けるのである。

・アメリカ・中央アジアとの関係
ロシアは莫大な対外債務を返済するためにアメリカの協力を必要と
している。また戦争が始まればアメリカに石油を輸出する道も開け
るからアメリカとの関係は良好なのである。
しかし、中央アジアへの米国進出に関しては気になるところ。
そこで、ロシア政府はアメリカをけん制する動きを見せている。
トルクメニスタンのニヤゾフ大統領は1月21日、モスクワでプーチン
大統領と会談。石油・天然ガス分野での関係を強化することで合意
した。

トルクメニスタンは、中央アジア1の独裁国家だが、莫大な天然ガス
が眠っているからロシアにとってもアメリカにとっても非常に重要
な国なのである。
アメリカはトルクメニスタンの天然ガスをアフガン経由でインド洋
に流したい。ところが独裁者ニヤゾフはタリバン支持者。
今回のアフガン攻撃でも中立を守り、米軍の駐留を認めていない。
そこに目をつけたプーチンは、すかさずニヤゾフを呼び出し「アメ
リカにつくなよ!」と釘をさした。

また、プーチン大統領は1月25日、アゼルバイジャンのアリーエフ大
統領とクレムリンで会談。
アリーエフは、アゼルバイジャン領内のレーダー基地をロシアに貸
与することに同意し、レーダー基地を10年間貸与し、ロシア軍兵士
1500人の駐留を認める。
アゼルバイジャンには莫大な量の石油が眠っているから、アメリカ
は、その石油をグルジア、トルコ経由で欧州に流したい。しかし、
ロシアは邪魔するために、ソ連KGB出身のアリーエフを呼び出し「米
国とあまり仲良くしないでくださいね!」とプーチンは釘をさした
のだ。しかしアリーエフはプーチンさんの大先輩だから、敬語で。
というわけで、中央アジアをめぐる米ロの攻防は激しさを増してい
る。

現状を見ると、ウズベキスタンが一番アメリカよりで、キルギス、
タジキスタン、カザフスタンが続き、資金援助と投資を見返りに
これらの国は、米軍の駐留を認めている。

ところがロシアは、独裁国家だが天然ガスがあるトルクメニスタン、
プーチンの先輩が大統領で原油があるアゼルバイジャンに接近し、
アメリカのプランを台無しにしようとしている。

アメリカ、中国、ロシアは戦争の拡大を望み、アラブは為すすべも
なく戦争に引きずりこまれていく。

しかし、ここで待ったがかかる。欧州の動きである。

▼欧州の動き
欧州と米国は、欧米というように同一の戦略と思われているが、
今回の米国の動きに、大反対している。ブッシュの「悪の枢軸」に
対して、NATOのロバートソン議長は、米国の9.11関連の攻
撃には協力するが、今後始める戦争には付き合わないと言っている。

欧州はイラン石油に大きな権益を持っている。米国がイランやイラ
クと険悪な関係であったため、この2ケ国にフランスやドイツ、
ロシアは、石油取引を仲介しているのだ。しかし、戦争になれば、
その利益がなくなる。このため、ロスチャイルドの支配するEUは
、米国のブッシュ政権から離れる方向になっている。そして、EU
と協調していたクリントン前政権のオルブライトや民主党を中心に
エンロン問題を大事にしてブッシュ政権潰しを志向し始めている。
しかし、この仕掛けはうまくいかない可能性もある。しかし、EU
の反対が大きいと、イラン・イラクとの戦争もできない。ユダヤ系
のニューヨークタイムズもこの動きに同調し始めている。
どうも、米国国内のユダヤ系も2分した動きになっている。ウオー
ルストリート・ジャーナルはブッシュ派である。ヨーロッパ系の
マスコミはほとんど反ブッシュである。

▼北朝鮮の浮上
この代案として北朝鮮が浮上してきたのです。この北朝鮮に権益を
持っている国はないので、心置きなく戦争ができる。誰も反対しな
い。ただ、現在時点では、戦争のできる名分がないのです。これを
今後、米国は作るはず。アルカイダに援助しているとか、幹部を匿
っているとか。そして、ドイツの北朝鮮援助医師団も北朝鮮の現状
を独裁政権で民衆は悲惨とレポートしているため、EUも反対でき
ない。
ロシアも中国も、大きな反対はしない。利害に関係がないためであ
り、かつ北朝鮮は米国の3条件を飲めない。米国の3条件は1つが
武器輸出禁止、2つが核兵器開発の放棄、3つが前面装備の後退で
ある。

しかし、現在北朝鮮の外貨の得る方法が、日本の朝鮮総連からの送
金を止められて、ミサイルの輸出をアラブ諸国にするしかない。
韓国からの観光収入も、大幅減少している。気候も不順で作物ので
きもよくない。
このため、外貨獲得をする手段が武器輸出しかないのが現状である。

いつ、戦争が始まるかだが、韓国・日本開催の世界選手権サッカー
が終わった後であろう。先に日本か韓国での北朝鮮テロが引き金に
なると思う。米国の自作自演でないことを願うが。


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