772−1. Fさんの経済理論に反駁



Fさんの経済理論に反駁           トロロ 
  
>10年間、国家が景気対策で公共投資をしてきても、日本の経済
>は活性化しなかった。これは、米国のTVAのような山に金を捨
>ててきたためです。民間の投資を呼び込まない公共投資をして、
>国家財政を破綻させたからです。このため、30兆円の予算にせ
>ざるを得ないことになったのです。

Fさんはこう言います。異議があります。
この10年は改革の10年でした。あるいは折衷主義の10年とい
ったほうが正確かもしれない。一方で「改革」をやり、もう一方で改
革に伴う景気低落を「下支え」するための公共投資が同時にあるいは
ほぼ同時に行われてきたのです。マッチ・ポンプだから結果は見えて
いる。「壮大なるゼロ」どころか今のこの惨状です。
ケインズ主義に責任転嫁するのは全く不当と言うべきです。ケイン
ズ政策など一度もまともに実行されていない。少なくとも97年以
降は。
故小渕首相は「借金王」となって需要創出のために努力しました。し
かし一方では堺屋太一経企庁長官は「三つの過剰」を解消するとして
リストラを推進しました。見事な折衷主義です。一時的に企業収益
が好転し,設備投資が回復しかかりました。だが最強打者=個人消
費に火はつきませんでした。敗北したのはサプライサイド経済学で
す。
小泉政権はまるで漫画です。早晩落ち着くところへ落ち着く。ただ
し国富は大きく損なわれるでしょう。結局ケインズ主義にもアメリ
カ流新古典派経済学にも徹することが出来ず、ふらふらとした場当
たり政策(折衷主義)を我が国の為政者は実行してきたのです。Fさ
んの経済理論もその潮流の一部を形成しているように私には見えま
す。

アメリカでも景気後退局面からどうやって抜け出すかが議論されて
います。主要な対立点は、財政再建か減税かです。さすがアメリカ
人は現実主義者です。「IT革命の継続深化を!」などという文化
大革命ばりの議論は、少なくとも主流の議論ではないようです。
IT革命論は一時我が国でも流行りました。それもITバブルの崩
壊で消えてしまったものと思っていたら、Fさんは「効率論」を持ち
出し、「新技術」の必要性を説きます。TVAはダメでヒットラーの
経済政策は良いと言います。まるで善か悪かの二分法です。

政府支出は必ず1以上の乗数効果をもたらします。TVAがヒット
ラーの1/10の効率しかないのであれば、10個のTVAを作れ
ばよかったのです。後知恵ですがルーズベルトの失敗はここにあり
ました。今の我が国と同様反対勢力の力が大きかったのでしょう。
ただこれだけの問題ではないのですか?

我が国は10年ケインズ主義をやってきた――ケインズ主義はイン
フレをもたらす――しかし我が国はデフレに悩んでいる。論理的に矛
盾しています。インフレにはインフレになる理由があります。デフ
レについてもまた然り。この点についてのtanakaさんの説明は納得
できるものです。Fさんの理論は「ケインズ主義はインフレをもたら
す」を繰り返すばかりで、まるで条件反射です。要するにFさんは我
が国のデフレギャップが小さいか、あるいはゼロ、又はインフレギ
ャップが存在することを立証すればいいわけです。それがなされな
いから議論がどうもかみ合わない。
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(Fのコメント)
私はケインズ理論はダメと主張しています。国家投資をいくら山に
捨てても、それでは需要を生まない。個人消費に結びつかない。
民間投資が後についてくる有効な投資をしないとダメですと。たと
えば、羽田空港の滑走路を2本増設して、今の便数の2倍の便を出
しても、そこには需要があり、多くの客がつく。これは需要を生み
出すことになるのです。具体的な例です。それをしないで、10倍
山に金を捨てろという主張には、憤りを感じます。国家に甘えては
ダメです。全員が国家に甘えれば、その国家は沈没することになる。

トロロさんの主張はそう見えます。今までの日本の施策は失敗であ
るとするなら、やはり成功した歴史の例を見て研究するべきではな
いですか??

その例として、ヒットラーの経済政策とクリントンの1992年の
国家経済政策を検討しているのです。現在 米国は、エネルギー革
命(燃料電池)に大幅の予算を付けて、それを加速しようとしてい
ます。
しかし、それはここで何度も主張していることです。国家として、
エネルギー革命を加速するべきであると。しかし、日本では100
億円程度の予算しか付けないのです。ここが間違いなのです。
またもや、米国に水素エネルギー革命を取られる可能性があるので
すよ。1992年の政策であるIT革命のようにですよ。
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     消費について       ジン   

>最強打者=個人消費に火はつきませんでした。敗北したのはサプ
>ライサイド経済学です。

 個人消費が伸びない理由は、物が満ち足りていることと深い関連
があるんですよね。新しい需要を導き出す政策が必要だったのでは
ないでしょうか。従来型の公共事業をずるずると引きずってきた責
任は重いです。その責任をインフレ策で回避するのも、いかにも無
策です。
 新しい需要とは、将来の不安を解消する分野、たとえば太陽光発
電とか、浄水システムとか、食料生産につながる分野に、もっと補
助制度を活用して、あるいは公共事業に組み入れていく必要があっ
たのではないでしょうか。私の家ではちょうど1年前に太陽光発電
の設備をしました。高い買物でしたが、補助が打ち切られる直前で
したので、思いきって投資しました。
 公共施設でもっと太陽光発電などの自然エネルギーにお金をかけ
れば、生産コストが下がって、値段が下がれば消費が伸びます。
そのへんの開発に力を入れてくれれば、国民は将来の不安が軽くな
って、財布のひももゆるむのではないでしょうか。
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自然エネルギーについて       一言居士   
 
 経済の理論にはついていけないので(もっと勉強しなければならな
いが)、技術的な発言にとどめます。念のために言っておきますが別
に自然エネルギーの利用に反対しているわけではありません。技術
者としての客観的な立場で述べております。

 私が大学で受けた発電に関する講義の中では、自然エネルギーを
使った発電は効率が悪いと言う話もあったけど、電力会社の人の話
です。

 効率が悪いと言うのは、ライフサイクルコストと言う観点からな
のですが、発電所(自然エネルギーを含めて)の建設、運用から撤去
までを含めたコストや二酸化炭素排出量の総和と発電量等を比較し
ての話ですが。この点はよく考慮した方が言いと思います。自然に
優しいといいながら逆に二酸化炭素を排出していたりする場合があ
ると言うことです。

 つまり太陽電池パネルを作るのにもお金とエネルギーを要してい
ます。これと従来からの発電所の投資効果や二酸化炭素の発生量(建
設から撤去まで)を比較すると不利になるかもしれないと言うことで
す。

>公共施設でもっと太陽光発電などの自然エネルギーにお金をかけれ
>ば、生産コストが下がって、値段が下がれば消費が伸びます。

 難しいですね初期費用が増えると思います。償還期間が長期にな
りますよ。役所の人が住民を説得できるのかな。逆に役所の人を住
民が説得できるのかな。

 電気というエネルギーはそもそも便利だけど、効率の悪いエネル
ギーなのですね。ものを燃やして発電するにしても、自然エネルギ
ーを利用するにしても、一体元のエネルギーのどれだけを我々は使
っているのかというと、数パーセントですよ。

 私の私見ではエネルギー問題や環境問題の観点では節電を徹底を
した方がよっぱどいいような気がしますが。(消費の観点では駄目な
意見かもしれないけど) 

 その他に工学系の分野では電気以外の自然のエネルギーの利用も
考えられています。例えば建築関係では昼間から電気を付けるので
なく、自然採光といって太陽の光を部屋に取り込む工夫をするとか
。家の風通しを良くして夏でも涼しいようにするとか。そのほか色
々なアイディアが出てくるでしょう。東京都が義務付けた屋上緑化
等もヒートアイランド現象で熱くなった都市を冷やす工夫です。
都市に緑がもっと多ければ夏に涼しくなります。

 自然エネルギーの利用には色々なアイディアがありますが、どれ
も市場のメカニズムに乗って自立できるシステムにを作れなければ
いつまでたっても補助金をあてにした事業になってしまいます。
ここがもう一つの難しいところでしょう。

 私は最近、武蔵野の雑木林が消えていく(誰も燃料用に落ち葉を拾
わないし、木を切らないためどんどん木が太くなってきている。
また植生も変わってきて雑木林でなくなってきている。)のを聞いて
、これを資源として利用できないのかと思ったのですが。かまどで
煮炊きした時代と違って市場メカニズムに乗せるのは困難かな。 
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(技術者のTより)
太陽光発電は採算に乗るのは、かわらと一体化したパネルにすると
かの工夫と、高サイクル可能な安い蓄電池の開発が不可欠になって
いる。京都議定書の報道もあり、住宅関係者の話ですと200万円
以内でできると、新築では売れるようです。一番問題は電気を使う
時間と電気を生み出す時間がずれていることで、蓄電池で安くて、
高サイクルの物が必要なのだそうです。コストでは、今の電気より
高いようですね。

それに比べると、風力発電は現在でも風速5M以上風が常に吹いて
いれば、火力より安いことになる。しかし、風力の問題は、安定的
な電力供給ができないことで、もし普及させるなら、大容量の蓄電
池が必要になるのです。このように蓄電池の役割が大きいのですが
、日本はこの分野では最先端にあるようです。NAS電池やイオン
2次電池、鉛蓄電池の高サイクル化も完成している。後は、量産体
制にどう日本政府が支援するかだと思うが。高サイクル鉛電池の量
産化ができれば、今の自動車用電池と同等の価格になり、爆発的な
需要を抱えることになると思う。それも、日本のほとんど無人工場
で生産可能です。日本の工場の復権にもなるのです。

このように、いろいろな分野で同じことが起こっているのですが、
政府が支援してくれないために、中国に工場が行ってしまうのです
。無人工場ではなく、有人工場では中国のほうが断然安い。


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