5971.テスラ生産トラブルで日本企業との違いがわかる



テスラが大衆車モデル3の大量生産工程でトラブルに遭遇して、生
産台数が伸びない。これでアイデア実現と製造工程の違いがわかる
。これにより欧米中国と日本の良さと悪さの両方が比較できること
になる。それでは検討しよう。         津田より

0.テスラの評判
テスラの第3四半期の決算は、6億1937万ドル(706億円)
の赤字になり、第2四半期2188万ドルの黒字から転落した。こ
の要因は、製造を開始した廉価版モデル3(400万円程度)の生
産工程にトラブルがあるためで出荷台数も206台(10月段階)
と非常に少ない。

テスラの評判が良いのは、イーロン・マスクCEOのアイデアを形にし
てきたことによる。マスク氏は、天才的なひらめきを持っている。

自動車をスマホのような感じにしたことが大きい。人工知能を用い
た自動運転技術、米国全域に急速充電ポイントを作り、自動車の制
御ソフトを顧客が知らない間にバージョンアップさせるとか、自動
車の各部分をコントロールパネルから自由に設定できる機能など、
自動車の概念を超えた自動車に投資家は、期待していることがわか
る。

このため、生産工程にトラブルがあることを認めた段階でもテスラ
の株価は353ドル、GMの株価は45ドル、フォード12.6ド
ル、トヨタ124ドルであり、年間生産台数30万台のテスラの方
が年間1000万台を生産するトヨタより株価が3倍弱も高い。

しかし、モデルSやXの工場の立ち上げを大学卒業の新人に4ケ月
で行わせたり、その実現のために社員を酷使していることもわかる。
また、少しでもできないとクビにすることでも有名である。

モデルSやXは、1000万円以上もする車であり、生産台数は多
くない。多くの生産工程を人手で行えるレベルである。工場要員も
厳選すれば、品質を維持できる。

1.テスラ生産工程にトラブル発生
しかし、モデル3は400万円と廉価版で、年生産台数は50万台
としている。多くのロボットを使用しているし、その工程で問題が
多発しているようである。

また、問題を起こすと簡単にクビにしているので、その原因追及が
不十分になっている可能性もある。生産管理なども今までは必要な
かったが、大量生産するときには、生産管理という多くの人手と工
員の不具合発見が必要になる。マスクCEOのアイデア実現とは違
う要素が必要になる。これを理解していないと、生産トラブルを解
決できない可能性も出てくる。

数か月で解決できないなら、その時は日本の自動車会社の生産管理
担当者を引き抜き、解決にあたらせた方がよいように感じる。天才
のアイデアでは解決しないからである。

株価も数か月で解決しないと暴落する可能性もあるとみる。今、テ
スラ株を持っている方は要注意でしょうね。それを引き金に米国株
暴落となるかもしれない。テスラ株は過剰な高評価であり、期待で
この株価は成り立っている。

2.日本の製造工程
日本の製造業は、工員に大きな権限を与えている。生産ライン停止
を工員ができる。品質を工程の作業段階で作りこむという思想であ
る。工程の改善をQC活動で行い、工員が競っている。良い工程の
改善提案には賞金も出している。

このため、日産や富士重工で問題になった完成検査を非正規雇用の
無資格者に行わせても品質には問題が出ない。

今のテスラは、完成検査段階の検査でトラブルを発見しているよう
であり、日本と同じように品質を生産工程で作らないと、問題を解
決できないはずである。

このような生産管理手法を、日本は米国のジャパン・パッシングを
受けて、1990年代に世界に広めた。このため、欧州でも米国で
も中国でも日本的な生産管理手法を行っている。

しかし、日本では長期雇用制度で、工員が班長になり課長になると
いう人事システムであり、それをしない国では十分な成果が出てい
ないようである。

実験計画法などの数値的な処理も重要であり、アイデアを形にする
手法とは違う地道な数値処理も必要としている。この数値処理は、
原因個所の特定には大きな効果がある。

3.STEM人材と日本人の気質
マスクCEOのアイデアを実現するのは、多くのソフトを作ること
ででき、そのソフトの質による。このため、ソフトを組む要員の質
が重要なことになる。このため、論理思考の要員を確保することが
重要である。このため、STEM人材が必要になる。この要員たち
は、頭がよいので最初から高いポジションを期待することになる。
工員の経験なしに生産現場の管理職になる。このため、日本的な生
産現場を構成できないことになる。

しかし、生産工程の改善は、繰り返される作業をどうすれば、より
よくできるのか、どう顧客の満足を得ることができるのかなど、小
さなアイデアの積み重ねと、その経験で徐々に変えることによるの
で、気長である。ソフト作成とは違う気質が必要になる。それほど
論理思考が必要としないが、じっくり問題を考える能力が必要であ
る。

じっくり物事にあたるなど、天才とは違い、普通の人の感覚が重要
になる。職人の仕事も一緒である。この職人気質と日本人の気質は
非常に整合性がよいように感じる。気長でまじめな性格は、反対に
気ぜわしい成果主義には、なじめないことになる。欧米中などのや
り方を持ち込んでも日本では成功しない理由である。

このため、テスラとは違い、トヨタのハイブリッド車でもリニアモ
ーターカー、燃料電池車でも10年以上の長い期間の研究をもとに
作り上げることが日本的であり、職人気質的な新製品開発である。

そして、今まではSTEM人材を日本企業ではそれほど重要視して
こなかった。企業が外注や社内で育成するとしていたが、ICTの
変化のスピードが速く、それでは世界に追いつけなくなってきたこ
とで、日本でも大量のSTEM人材を必要となっている。しかし、
大学卒業のSTEM人材が年間16万人しかいないし、日本企業の
人事では高いポジションを早期には期待できない。このため、海外
の優秀なSTEM人材は日本企業への就職を希望しないことになる。

ここが日本の問題になっているポイントである。

日本の良さをどう世界との差別化に結び付けるのかを考える必要に
あると思っている。

さあ、どうなりますか?


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2017年12月6日 / 11:43 / 6日前
焦点:EV大手テスラ、ささやかれる「拙速な製造」のツケ
Alexandria Sage
[サンフランシスコ 29日 ロイター] - 米電気自動車(EV)
大手テスラ(TSLA.O)の新型セダン「モデルS」やスポーツ用多目的
車(SUV)「モデルX」は、カリフォルニア州フレモント工場の
組立ラインを離れた後、もう1度足止めを食らうのが当たり前だと
いう。
製造における欠陥を修正するためだ。
このような欠陥修正を抜きにしては高級車種が出荷できない状況が
常態化していることが、同社の現旧従業員9人に対するロイターの
取材によって明らかになった。
同社の内部追跡システムによる10月最新データなどによると、組
立後の品質検査で「モデルS」と「モデルX」の9割以上に欠陥が
見つかることが当たり前となっているという。取材した現旧従業員
の一部は、2012年には、すでにこの問題に気が付いていたと語
る。
テスラ側は、同社の品質管理プロセスが異例なほど厳格であり、ほ
んのわずかな欠陥でも発見し、修正することを意図したものだと説
明している。組み立て後の欠陥率についてはコメントしなかった。
トヨタ自動車(7203.T)など、世界でも高い効率性で知られる自動車
メーカーにおいては、組み立て完了後に欠陥修正が必要となる比率
は、製造車両の1割以下にとどまっている、と業界の専門家は語る
。修正によって時間と費用の両方が無駄になることから、組立段階
において適切な品質を確保することが非常に重要だ、と彼らは口を
揃える。
「(テスラでは)組立完了後のやり直しが非常に多く、そこで多大
なコストが生じている」と、かつてテスラのスーパーバイザーを務
めたことのある人物は語った。
シリコンバレー生まれの自動車メーカーであるテスラは、組立完了
後で発見される欠陥の大部分は些細なものであり、ほんの数分で解
消できていると話す。
テスラが製造する車は高額ではあるものの、瀟洒(しょうしゃ)な
デザインと環境を意識したクリーンテクノロジー、そして画期的な
加速性能で消費者を魅了してきた。コンシューマー・リポート誌の
調査では、テスラのオーナーの91%が「また買いたい」と答えて
いる。
とはいえ、同誌と市場調査会社JDパワーは、ドアハンドルの欠陥
やボディパネルの段差などを理由に、テスラ製自動車の品質につい
て批判を繰り広げてきた。
バーンスタインでアナリストを務めるトニ・サッコナギ氏は今月、
テスラの新型セダン「モデル3」の試乗を行い、その適合性や仕上
がりについて「比較的悪い」と評価。
テスラ車のオーナーたちも、ウェブ上のフォーラムで、不快な異音
やバグの多いソフトウェア、密閉性が低いために内装やトランクに
雨水が染みこむといった問題点について、不満を漏らしている。
最低3万5000ドル(約395万円)からの価格帯にある同社初
の大衆車「モデル3」製造にあたり、高品質な車を大量生産する能
力を有するかどうかが、テスラの今後を左右すると専門家は指摘す
る。
テスラはこれまで通年で黒字化したことがなく、四半期で10億ド
ルの損失を計上している。新たな投資を獲得するか、欠陥に対して
厳しい反応が予想される主力市場において販売台数を大幅に拡大し
ない限り、存続が難しい状況だ。
「最上級の仕様を備えた、胸躍る製品を生み出すという点で、テス
ラの能力を疑ったことはない。しかし、新しい何かを生み出すこと
と、それを実際に完璧に大量製造することは別問題だ。後者につい
て、テスラは、まだその実現に至っていない」モーニングスターの
アナリスト、デビッド・ウィストン氏はそう記している。
テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、高度に自
動化された新組立ラインを導入し、「モデル3」においてよりシン
プルな設計を採用することで、同社が「地上で最も優れた製造企業
」になると胸を張る。だが、製造上の問題により、大きな期待を集
めている新型セダンの提供は予定よりも遅れている。
新車発売に予想外のトラブルはつきものだ。とはいえ、既存車種の
「モデルS」や「モデルX」につきまとう欠陥は、テスラがいまだ
基本的な製造技術の獲得に苦労していることを示している、と現旧
従業員は話す。
同社内では「キックバック」と呼ばれているが、こうした欠陥車両
は、へこみや傷といった些細な不具合や、シートの機能不全などの
複雑なトラブルを抱えていたりする場合がある。簡単なものであれ
ば工場内ですぐに解決してしまうという。
面倒なトラブルの場合、テスラの屋外駐車場に運ばれ、修理を待つ
ことになる。こうした「中庭」と呼ばれる駐車場の1つでは、修理
待ち車両が2000台を超えることもあるという。テスラはロイタ
ーに対し、こうした「修理待ちスペース」の存在を否定している。
ロイターが取材した現旧従業員9人には「モデルS」「モデルX」
の組立てや品質管理、修理の経験を持つ元シニアマネジャーも含ま
れる。会社側から秘密保持契約書への署名を求められているため、
全員が匿名で語った。
このうち4人は解雇されており、そのうち2人は、先月テスラが「
勤務成績の不振」を理由に解雇した数百人に含まれる。ロイターの
取材に応じた解雇従業員は、自らの業績が劣っていたことを否定す
る。
明かされたテスラ社内の品質データについて、ロイターは独自の裏
付けを得ていない。
欠陥の内容について、「ドアの閉まりの悪さ、バリ残り、部品欠落
など、何でもありだ。ぐらついていたり、水漏れしたり、何もかも
だ」と語るのは、また別の元スーパーバイザーだ。「『モデルS』
は2012年から作っている。それなのに、なぜまだ水漏れが起き
るのか」
<拙速な開発>
テスラは、同社が欠陥のない自動車生産に苦労しているという現旧
従業員の指摘に異議を唱えている。同社広報担当者は、全車両が
500以上の検査や試験をパスしなければならない同社の厳格なプ
ロセスを説明した上で、組立後に製品の手直しをすることがあると
しても、それは品質重視の姿勢を反映したものだ、と語る。
「私たちの目標は、顧客1人ひとりに完璧な車を製造することだ」
とテスラは声明で主張する。「したがって、ほんのわずかでも改善
の余地がないか、すべての車両をチェックしている。大半の顧客は
、製造後に行われた作業に気付くことすらないだろうが、私たちは
、車体に数分の1ミリのズレや、塗装のわずかなムラであっても気
にかけている。完璧を期すため、こうした改善点を製造現場にフィ
ードバックしている」
「モデルS」や「モデルX」に関わっていた従業員によれば、たと
え問題が生じた場合も、組立ラインを止めるなとの圧力が存在した
という。あるときはフロントガラス、あるときはバンパーといった
具合に、在庫がないという理由で、部品が欠けたままの車が一斉に
流れてくることもあった、と彼らの一部は語る。そのような欠陥は
後で修正されるという理解だったという。
車が組立ラインを離れた時点で、内部追跡システムで報告された以
上の欠陥を、品質検査員が発見することもあった。「問題を2つ見
つけたなら、これはかなり良い方だ。しかしもっと突っ込んで調べ
ると、15も20も見つかることがあった」と彼らの1人は語った。
たえず面倒を引き起こしていたのが「アライメント」の部分だとい
う。シニアマネジャーの言葉を借りれば、車体部品をかなりの勢い
で「むりやり押し込まなければ」ならなかった。従業員らによれば
、すべてのチームが同じ手順書に従っているわけではなかったため
、サイズの違いが生じていたのである。
テスラは、同社の品質管理に一貫性が欠けていることを否定する。
エラーを発見・修正する「徹底的な」プロセスが「大きな成功」を
収めていると述べている。
こうした問題の一端は、同社のマスクCEOが、設計プロセスの短
縮や一部の製造前試験の省略、現場レベルでの改善といった手法に
よって、業界標準よりも迅速に新車種を発売する方針を決定したこ
とにある、と一部の従業員は考えている。こうした場当たり的なや
り方が、修正発生率の高さにつながっている、と言うのだ。
JDパワーは「熱狂の裏側」と題する3月のレポートで、新型の「
モデルS」と「モデルX」について、異音や擦り傷、ドアのアライ
メント不整といった問題を取り上げ、テスラの製造経験の浅さが原
因であると指摘した。このレポートの結論として、テスラ車の全般
的な品質は高級車セグメントにおいて「競争力に欠け」、「精度と
細部に対する注意」が不足していると述べている。
JDパワーでグローバル自動車コンサルタント部門のディレクター
を務めるキャスリーン・リツク氏は、こうしたお粗末さは、メルセ
デスベンツ(DAIGn.DE)やBMW(BMWG.DE)といった高級車ブランドで
はめったに見られないものだ、と語る。
「こうした企業は、はるか以前から製造業に携わっている」と彼女
は言う。「彼らは即座に対処する術を心得ている」
テスラは顧客満足度の高さが、「今日入手可能な、最も安全で性能
の優れた車」を作っていることを証明していると述べている。
(翻訳:エァクレーレン)
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トヨタ、HV不毛の欧州で快走 販売比率5割に迫る 
2017/12/16 22:00日本経済新聞 電子版
 電気自動車(EV)シフトの震源地である欧州でトヨタ自動車の
ハイブリッド車(HV)が快走を続けている。10月の新車販売に占
めるHVの比率は45%に達した。きっかけはディーゼル車で発覚し
た排ガス不正。HVに需要がシフトし発覚前に比べて比率が2倍に
上昇した。排ガス規制への対応でもトヨタが先行しておりエコカー
の本命争いは混沌としてきた。
 欧州でトヨタが目標としてきた販売台数は年間100万台だ。10月の
新…



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