5964.日銀ETF買いでバブル助長



日経平均株価は、2万3千円にもなるが、まだ日銀は少しの下落時で
もETF買いを中止しない。このバブル助長は、今後大きな禍根を残
すことになる。それを見よう。         津田より

0.トランプ大統領のアジア歴訪
トランプ氏は日本で歓待されたが、中国では米国の要求を撥ねつけ
られたのに、中国を非難しないで歴代の米大統領が貿易赤字を放置
したことを非難している。中国が28兆円の製品を買ったことで、
トランプ大統領はディールとして成功と我慢した。短期の取引しか
見ないトランプ政権と中国習近平政権の長期戦略で見る交渉の違い
を見せつけている。

しかも、28兆円の半分がLNGなどエネルギーで、中東サウジの混乱
とみて、中国はサウジから米国のエネルギーに乗り換えるようであ
る。

そして、米国は大企業のトップを連れてきて、中国でのビジネス交
渉しているので、中国と決裂するわけがないし、米国企業の収益の
半分以上を中国で稼いでいるので、中国と友好関係を失うこともで
きない。それを中国も知っているので、強気に出ている。

特に、この半年、中国の景気がよく、その景気の良さで世界の企業
は儲けを増やしたことで、世界株式市場が好調に推移しているので
ある。

安倍首相の圧力一辺倒が世界の非常識であることは、すでにこのコ
ラムで述べているが、中国から北朝鮮との対話を米国は迫られて、
60日ルールなるものを持ち出し、北朝鮮との交渉を開始するよう
だ。中韓会談でも北朝鮮との戦争ではなく対話で合意した。安倍・
トランプの圧力一辺倒は、世界の非常識であることが明確化してき
ている。

よって、ティラーソン国務長官の主張が米国の政策となる方向であ
る。このように中国の意見が、米トランプ大統領の主張と違っても
採用され始めている。米トランプ政権には筋の通った戦略や戦術が
ないことで、世界の主導権が徐々に中国になり始めてしまった。

このため、日本も中国と友好関係を結び、中国の主張との折り合い
をつける必要になっている。このため、日中首脳会談も頻繁に開催
する必要がある。

1.中国の景気動向で世界の株価はどうなるか?
中国の景気動向は、資金のバラマキによるミンスキー・モーメント
が近くて、金融崩壊を避けるためにも資金を絞る方向になる。当然
、今より景気は悪くなる。米国の株高は、米国の税制改正というが
、企業業績の半分は中国に依存する部分であり、この中国での儲け
がなくなると株価は落ちることが予想できる。

米国株価が落ちると、日本の日経平均株価も落ちることになる。

2.日銀の金融政策は間違い
金融政策は、特に量的緩和は、景気後退期に行うことで通貨量を増
やして、通貨量を維持することで、物価下落を止めて景気の底上げ
を図ることである。

しかし、現時点、世界的な景気上昇時であり、金融政策は引き締め
の方向にする必要がある時期なはずである。内閣府は、2012年12月
に始まった景気回復局面が高度成長期の「いざなぎ景気」を超えて
戦後2番目の長さとなったと言っている。

自動車販売店に行くと、土日曜日は多くの客がいて、なかなか対応
してくれない。有名な料理の店でも多くの客が列を作り、景気が良
いことを実感する。

これ以上の景気拡大を起こす必要がないはずである。この景気上昇
は、中国の景気が良いことで起こり、中国の景気は、今後落ちるこ
とが見えている。

現時点では、量的緩和を止めて、買ったETFを売り、次の景気後退に
備えるべき時である。日銀は、手持ちETFを今売れば、膨大なもうけ
を得ることができる。それを国庫に回して、政府はその資金で国債
を大量に償還した方がよい。こうして、次の景気後退期に備えるべ
きである。

もし、日銀がETF買いを続けると、株価は上昇していくが、それはバ
ブルを助長していることになり、景気後退時には、その分株価が落
ちることになる。バブル崩壊になると、景気後退の深さが大きくな
る。よって、今の日銀ETF買いには、良いことはほとんどない。

3.物価上昇2%にならない理由
それなのに、物価はなかなか上がらない。これには理由がある。全
人口に占める60歳以上の高齢者数が50%になり、年金生活者が拡大
している。この年金が年々減額されているからである。

高齢者層でも所得が高い人の年金を減らしたり、所得税を上げて、
しかし、年金の低い人の年金を下げないようにしないと、消費を下
げざるを得ない人口が半分いることによる。

もう1つが、非正社員や中小企業社員が雇用数の半分になり、ここ
でも給与が増えないが、社会保障費が上がり手取り収入は増えてい
ない。減っている場合もある。アルバイトの賃金は上がったが、非
正規の契約社員より低い。

よって、消費は全体的には下がり、物価が上昇しないことになるし
、物価が上がる理由の多くが原材料の高騰である。価格が上がると
消費を下げることになる。この部分が大きいので、景気が良いと実
感できない人が多いのである。

4.矛盾の解消は
このため、財政均衡のために年金や社会保障の削減より、労働人口
を増やして、社会保障費を払う人を増やすしかない。このためには
、選択的な労働者政策を早く始めて、日本で技術を覚えて、そのま
ま日本に長いこと住むことができるようにすることである。ワーキ
ング・ビザや技術者ビザなどの発給数を上げて、税金を払う人を増
やしていくしかない。

人手不足が、中小企業で大問題になっているが、その解決にはワー
キング・ビザの範囲を拡大して、鉄工所、機械工などの技術職も対
象とするべきである。そして、最長20年程度の滞在期間や永住権
国籍などを職人でも取れる制度にすることが必要になっている。

今、人手不足で未熟者を検査に回すことになり、品質問題を起こし
ている側面がある。日本のものづくりもこのままでは維持できない
レベルになっている。

もう1つが、技術者を中心に定年をなくすことである。管理者に高
齢者を保持すると、人事の渋滞が起こるので、管理職は無理として
も、技術職の人たちは、年功序列ではない給与にして、雇い続ける
ことが必要になる。これで、年金が軽減されることになる。

急速な人口減少を抑えて、年金崩壊や社会保障崩壊を防ぐ必要にな
ってきた。

5.ハイパー・インフレへ
自民党の量的緩和策では、景気後退期に円が暴落して、ハイパー・
インフレを起こしてしまう。そうなると、一挙に年金や国債の問題
は解決するが、高齢者の生活は崩壊して政治も同時に崩壊の危機に
なる。

自民党の政策は非常に危険であるが、それを安部首相は理解できな
いようである。というより、国民も理解していないので、どうしよ
うもない。何とかなると思っている。

ハイパー・インフレになったとき、その危機を国民が納得できるよ
うな方法で解決できるかになってきた。もう1つ、その解決は自民
党ではなく、今の野党が行うことになるが、その準備ができてるの
か不安である。

さあ、どうなりますか?

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日銀はサプライズ緩和政策からの方針変更か
2017年11月10日 11:30
久保田 博幸
11月9日に日銀は金融政策決定会合における主な意見(10月30・31日
分)を公表した。このなかの「金融政策運営に関する意見」のとこ
ろを確認してみたい。
「現在の強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが重要」、「
金融市場調節方針を維持することにより」、「現在の金融政策は・
・・政策効果の不確実性が最も小さく、最適な金融政策である」
決定会合では現状維持が賛成多数で決定されていたため、現状維持
が適切であるとする意見が出るのは当然ではあるが、物価目標達成
にはかなりの距離はあるものの、それによって追加緩和を行う必要
性はないと主張しているようにも思われる。意見のなかには次のよ
うなコメントもあった。
「政策変更の効果に確信が持てない限り、現状維持が適切である」
。「目標達成を急ぐあまり極端な政策をとると、金融不均衡の蓄積
や金融仲介機能の低下といった副作用が生じる恐れもある」。「追
加緩和に関しては、市場や金融機関への影響、政策の持続性等の観
点から、プラスの効果より副作用の方が大きいとみている」、「国
債市場の流動性に加え、国内外投資家の動向や金融機関の保有有価
証券ポートフォリオの中身について一層注視する必要がある 」
どうやら副作用についてもかなり気配りをしているようにも思われ
る。「目標達成を急ぐあまり極端な政策をとると」との表現があっ
たが、2013年4月の量的・質的緩和、2014年10月の量的・質的緩和の
拡大、2016年1月のマイナス金利付き量的・質的緩和、同年9月の長
短金利操作付き量的・質的金融緩和は、ある意味、目標達成を急ぐ
あまり取った極端な政策のようにも思えるのだが、日銀はそのよう
にサプライズ緩和政策から方針を変えてきているようにも思われる。
しかし、なかには何を言っているのかわからない意見も出ている。
「米欧の中央銀行が出口に向かっているので、日本銀行も同様に出
口に向かうべきだという意見があるが、これらの国に比べて、金融
緩和の開始時期が遅いため、出口に向かう時期が遅くなることにつ
いても不思議はない。」
当たり前だが、日銀の緩和策は2013年4月の量的・質的緩和に始まっ
たものではない。それまでの日銀の緩和策は緩和策とは言えないと
言うのであろうか。
米欧の中央銀行が出口に向かっているのは何故なのか。それは世界
的な金融経済リスクの後退とそれによる世界経済の回復が要因のは
ず。そもそも金融緩和の開始時期の違いがあったとは思えず、日本
だけ景気回復に取り残されているわけではない。むろんそれぞれの
中央銀行は横並びに動く必要はなく、自国の経済物価状況に応じて
行うものである。しかし、無理な物価目標を立ててしまって身動き
を取れなくしてしまい、表立っては出口に向きを変えることすらで
きないのが現在の日銀の姿ではなかろうか。
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東証後場寄り やや下げ渋り、日銀ETF買いの思惑で 
2017/11/10 13:03nikkei
 10日の後場寄り付きの東京株式市場で日経平均株価はやや下げ渋
っている。前日比230円程度安い2万2600円台前半で推移している。
日銀による上場投資信託(ETF)買い入れが入ったとの観測が出
て、相場を下支えしている。JPX日経インデックス400と東証株価
指数(TOPIX)も下げ幅を縮小している。
 TOPIXの前場終値は前日を1%下回った。市場では経験則上
、日銀が午後にETFを買い入れるとの見方が多い。オプション価
格から算出する日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)
は午後、前日比10%低い19.1まで低下した。市場では「VIの低下
で株価下落への警戒感がやや薄れ、株価指数先物の買い戻しにつな
がっている」(外資系証券の株式担当者)との声が出ている。
 前引け後の東証の立会外で、国内外の大口投資家が複数の銘柄を
まとめて売買する「バスケット取引」は約517億円成立した。
 12時45分現在の東証1部の売買代金は概算で2兆1195億円、売買
高は11億7953万株だった。東証1部の値下がり銘柄数は1448と、前
引け時点からやや減少した。値上がりは533、変わらずは53銘柄だっ
た。
 大日印が一段安となっている。セコムやユニチカも安い。午前の
取引終了後に1〜9月期の連結決算を発表したユニチャームが一段
高となっている。ソニーやSUMCOは買われた。
〔日経QUICKニュース(NQN)〕
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債券バブルは2020年に破裂−「利回り上昇、株価も下落」に備えよ
Christopher Anstey
2017年11月8日 02:04 JST
30年にわたる債券利回り低下の理由として最も有名な説は「世界的
な過剰貯蓄」というものだ。だが、ゲーブカル・リサーチの分析に
よると、貯蓄の増加は既に止まっており、数年内に減り始める見込
み。これが市場を転換させる要因となり得る。
  過剰貯蓄が進んだのは主要経済国で貯蓄率の高い35ー64歳の比
率が上昇したためだと、ゲーブカルのエコノミスト、ウィル・ディ
ナイヤー氏が今月、リポートで指摘した。人口構成のこうしたパタ
ーンが逆転すれば、「大幅な利回り上昇」と、世界の株価の「大幅
下落」につながる可能性があると警告する。
  「資本提供者比率」、つまり35ー64歳の人口をそれ以外の人口
で割った比率は、世界の貯蓄性向が今後10年で低下することを示唆
している。さらに詳しく35ー64歳を5歳ごとのグループに分けて分
析すると、貯蓄率の高い46−50歳よりも貯蓄率が比較的低い60−64
歳の人口が多くなるため、貯蓄性向は2020年以降、急速に低下する
という。
  「今後数年は、金利と資産価格に対する人口構成の影響は中立
だろう」が、「2020年代に金利が上昇するリスクに備えて、保有債
券のデュレーションを短縮していくべきだ」とディナイヤー氏は記
述した。
原題:Get Ready for Great Bond Bust of 2020, Due to Demographics (1)(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ
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米法人税先送り案 共和の上院、下院と別内容 
2017/11/10 8:18nikkei
 【ワシントン=小竹洋之】米与党・共和党の上院指導部は9日、
下院とは別内容の税制改革法案を公表した。連邦法人税の税率を35
%から20%に引き下げる時期は2019年とした。財政赤字の拡大を危
惧する保守強硬派に配慮した。下院は18年実施を盛り込んだ別の法
案を審議中で、両院の調整が必要になる。トランプ政権が目指す年
内の法案成立が懸念が広がりそうだ。
 上院の案は法人税減税の1年先送りのほか、所得税減税なども含
む。連邦所得税の税率区分(10〜39.6%)は7段階を維持し、最高
税率は38.5%に引き下げる。
 このほか州税などの支払額を連邦税から差し引ける地方税控除を
全廃する一方、医療費控除や学生ローンの利子控除を維持する。
 共和党の下院指導部は税制改革法案を2日に公表済み。所得税の
税率区分を7段階から4段階(12〜39.6%)に簡素化する措置など
も盛った。下院は9日の歳入委員会で法案の一部を修正して可決し
ており、11月下旬までに本会議で採決したい考えだ。
 下院案の法人・所得減税を実行に移した場合、18会計年度(17年
10月〜18年9月)からの10年間で財政赤字が1.7兆ドル拡大し、予算
決議で定めた1.5兆ドルの上限を超えるとの試算が出ている。保守強
硬派は財源の手当てが不十分だと反発しており、上院指導部は下院
案を修正して同意を得る方針に傾いたもようだ。
 上下両院で成立した法案の内容が異なる場合は、両院協議会を開
いて調整する必要がある。政府高官や下院指導部からは法人税率引
き下げの先送りを容認する声も出ているが、都市部の下院議員が地
方税控除の全廃に反発する公算が大きく、法案の一本化作業が難航
する可能性もある。
 トランプ政権は約30年ぶりの抜本税制改革を年内に実現し、米経
済を底上げする戦略を描いてきた。上下両院の調整に手間取り、大
型減税の実行が遅れれば、市場や支持基盤に失望感が広がりそうだ。
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景気拡大、いざなぎ超え確認 戦後2番目の長さに  
2017/11/8 19:43nikkei
 2012年12月に始まった景気回復局面が高度成長期の「いざなぎ景
気」を超えて戦後2番目の長さとなったことが8日、確定した。内
閣府が同日発表した9月の景気動向指数(CI、2010年=100)の基
調判断を11カ月連続で据え置き、景気回復が9月で58カ月間に達し
た。海外景気の回復などを追い風に歴史的な安定成長軌道を歩むが
、賃金伸び悩みなど懸念材料も残る。
 CIは生産や雇用などの経済指標の動きを総合して算出し、景気
の方向感を示す。9月は基調判断を最も強気の「改善を示している
」に据え置いた。
 景気回復の期間などは、後日開く景気動向指数研究会で専門家ら
の意見を聞いて内閣府が判断する。茂木敏充経済財政・再生相は9
月25日公表の月例経済報告で、すでに現在の景気は「いざなぎ景気
を超えた可能性がある」との認識を示しており、今回の景気動向指
数の判断から具体的なデータとしても確認された。
 いざなぎ景気は1965年11月から70年7月まで57カ月間続いた。今
の景気回復が2019年1月まで続けば、02年2月から73カ月間続いた
戦後最長の景気回復を抜く。
 緩やかな回復が持続する背景にあるのは堅調な世界経済だ。経済
協力開発機構(OECD)は、17年の成長率が調査対象の45カ国そ
ろってプラスになると予想。対象国すべてがプラス成長になるのは
リーマン危機前の04〜07年以来、10年ぶりで、外需の恩恵が日本企
業に及ぶ。日本固有の要因では日銀による異次元の金融緩和が為替
の円安につながり、企業収益を下支えしていることも大きい。
 一方、家計所得についてみると、1人当たりの名目賃金にあたる
現金給与総額の伸びは、今回の景気回復局面がスタートした12年11
月から足元にかけて1.6%にとどまる。賃金が上がらない中で一般の
消費者にとっては景気回復の「実感が乏しい」との声もある。
 1人当たりの賃金に働く人の人数を乗じて算出する名目総雇用者
所得は、この間に7.7%増えた。人手不足を背景に女性や高齢者とい
った新たな労働者が市場に参入したことで、働く人全体が受け取る
報酬の総額自体は大きく増え、景気底上げに貢献している。
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2017年11月9日 / 16:31 
焦点:今の景気拡大、人口減主因に消費・設備投資で「いざなぎ」
に大差
[東京 9日 ロイター] - 日本の景気は、「いざなぎ景気」を超
えて約5年間の拡大が続いている。だが「中身」には、成長率、消
費、設備投資の伸びに「青年」と「高齢者」ほどの開きがあり、内
閣府からも今回は「横ばい景気」との指摘がある。人口減少問題が
解消しなければ、近い将来の成長打ち止め感は強まるばかりだ。
「いざなぎ超えとはいっても、今回の景気は悪くなっていないとい
う程度」──。内閣府幹部からは、景気拡大期間が長期化したこと
への高揚感はほとんどない。むしろ、アベノミクスが目指す企業部
門から家計部門への好循環には、いまだ至っていないと指摘。中身
では、「いざなぎ」よりかなり見劣りするとみている。
景気拡大期間は、政府が9月分の「景気動向指数」を8日に公表し
、同指数(CI)による景気の基調判断を「改善」と判断したこと
により、2012年11月の「景気の谷」以降58カ月間となった。
戦後最も長い拡大期間は、2002年1月から08年2月までのい
わゆる「いざなみ景気」の73カ月、続いて1965年10月から
70年7月までの57カ月の「いざなぎ景気」。今回の58カ月間
は「いざなぎ」を超えたということになる。
しかし、実質成長率で比較すれば、過去2回とは相当見劣りする。
高度成長期にあたる「いざなぎ景気」では5─13%程度、2000
年代の「いざなみ景気」では2%弱の成長が続いた。 今回の拡大期
間は、13年こそ円安の恩恵で2.6%成長となったものの、その
後は消費税引き上げでマイナス成長、直近2年間は1.3%成長に
とどまっている。
その根本原因をたどれば、人口減少問題が企業や家計の行動に影響
していることは明らかだ。
アベノミクス下ですすんだ円安を起点に、輸出と企業収益の拡大が
実現し、雇用者増までは実現できた。
しかし、非正規労働者の賃金底上げは実現しつつあるものの、人口
減少による国内市場の縮小が企業の視野にあり、正規労働者の1人
当たりの賃金の伸びは鈍い。
「人手不足とはいえ、企業にとって賃上げには、成長期待が重要な
要素。期待ができないのに正社員の賃上げで固定費が上昇すること
には消極的だ」(野村総研・エグゼクティブエコノミスト・木内登
英氏)との指摘がある。
少子高齢化に伴う社会保険料の増大も、勤労者世帯の家計の財布の
ひもを固くしている。株価が上昇しているとはいえ、恩恵は株式投
資を行う余裕のある富裕層にとどまる。
中間層の所得はこの間、社会保険料の重圧だけがのしかかかり、経
済全体で消費は振るわない状態だ。
民間消費は、「いざなぎ景気」時の毎年度13─15%の高い伸び
に比べ、足元では0%台にとどまっている。
さらに市場規模の縮小は、国内設備投資の委縮を招いている。
2000年代の景気拡大期には4─5%の伸びを示していた設備投
資だが、今回は2%台。
内閣府幹部によれば、人手不足の割に伸びが鈍いのは、省力化投資
が緩やかに伸びているものの、産業機械メーカによる価格競争で、
ロボットや運搬機械などの価格が低下傾向にあるため、全体として
投資金額がさほど伸びないといった事情もあるという。
ただ、労働者1人当たりの資本装備率は、バブル期には年間3%以
上伸びていたのに対し、ここ5年程度は減少しているとの分析もあ
る。設備投資の鈍さはこうした数字にも表れており、これが労働生
産性を低下させている一因ともなっている。
安倍晋三首相は「生産性革命」という課題を今後の目玉政策に位置
付けている点で、人口減少がもたらすこの国の問題を認識している。
ただ、人口減少そのものへの対策、言い換えれば少子化を改善する
具体的な対策は、まだ、明確に見えていない。「政府が少子化対策
に本格的に取り組まなければ、経済全体が縮小均衡に向かう流れが
止められない」(日本総研・山田久理事)との指摘も出ている。
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2017年11月7日 / 18:27 
金融相場と業績相場が異例の併存、歴史的な株高にバブル警戒も
[東京 7日 ロイター] - 金融相場に業績相場が重なるという特
異な現象が、株式市場で起きている。本来なら景気が良くなれば金
利は上昇し、金融相場から業績相場に移行するが、今の先進国は物
価や賃金が上がらず低金利政策を継続。ドルが上がらないために新
興国も通貨が安定し、利下げが可能になっている。
世界同時好況が今の歴史的な株高の裏付けだが、異例な金融緩和が
もたらすバブル発生への警戒感も強い。
<世界同時好況もたらした上がらないドル>
世界の景気動向を敏感に反映する建設機械の需要。コマツ(6301.T)
では、2017年9月中間期は10ある地域別の売上高が全て前年
比プラスとなった。主要建機の年間世界需要見通しを引き上げ、
2018年3月期業績予想を上方修正。「全世界的にいい状況に入
ってきている」──。会見に臨んだ藤塚主夫副社長は、そう述べた。
米キャタピラー(CAT.N)も、17年通期の業績予想を10月に引き上
げた。株価は年初来で約48%上昇し、米ダウ.DJI構成銘柄の中で
、米航空大手ボーイング(BA.N)の69%に次いで第2位。コマツの
株価も年初来44%高と、日経平均.N225の20%を大きく上回って
いる。
世界同時好況をもたらしている一つの「鍵」は、上がらないドルに
ある。ドルインデックス.DXYは9月の安値から反転しているものの
、年初の水準からはまだ3分の1足らずの戻りに過ぎない。ドル安
は米国のグローバル企業の業績を押し上げるだけでなく、新興国に
も恩恵をもたらす。
「以前は米国が金利を上げるとドルが上昇、新興国では通貨が下落
しインフレが発生、利上げせざるを得なくなり景気が後退した。し
かし、今回はドルが上昇せず、新興国も利下げの余地が生まれた」
と三井住友銀行チーフ・マーケット・エコノミストの森谷亨氏は指
摘する。今年に入って利下げをロシアは5回、ブラジルは7回実施
している。
米国第一主義を掲げるトランプ大統領の誕生で、一時は保護貿易へ
の警戒感も強まったが、世界同時好況を原動力に貿易は拡大。世界
貿易機関(WTO)によると、今年の世界貿易量は昨年の1.3%
増から3.6%増に拡大する見通しだ。
<米利上げでも緩和環境が継続>
上がらないドルをもたらしている要因の一つに、米国の金融政策に
ある。米連邦準備理事会(FRB)は15年末に利上げに踏み切り
、今年9月には資産縮小も決定した。しかし、FRBも強調するよ
うに、そのレベルはまだ「金融緩和地帯」にある。
政策金利のFFレート(中心レート)USFFTARGET=は、4度の利上げ
を経ても1.25%。06年時点のピーク5.25%の4分の1に
も達していない。10年米長期金利US10YT=RRも約2.3%と06年
当時の半分以下だ。米経済は完全雇用に近づき、企業業績は過去最
高水準だが、金利の水準は極めて低い。
米国だけでなく、欧州でも欧州中央銀行(ECB)が資産圧縮(テ
ーパリング)を決定したが期間は延長、ペースも緩やかだ。カナダ
や英国も利上げしているが、かつての金利水準には程遠い。どの国
も、通貨高をもたらしかねない利上げに慎重になっている。
みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏の調べに
よると、主要7カ国(G7)の政策金利合計は、足元で2.525
%。サブプライム問題前は20%近くに達していた。BRICS(
南アを除く)の政策金利合計値も26.1%と過去最低水準まで低
下している。
各国とも、成長のスピードはかつてほどではなく、賃金や物価も上
がらないからこそ、各中銀は低金利政策を維持し続けることができ
ている。株高もバブル期と違いファンダメンタルズの裏付けもある。
しかし、経済の水準とかけ離れた低金利が続くことで、世界同時好
況がもたらされているとすれば、バブル発生への警戒感は怠れない。
<日本株が直面する「初めて」の状況>
金融相場と業績相場の併存が最も顕著に表れているのが日本だ。イ
ンフレ率は先進国で最も低いものの、景気は上向き、企業業績も過
去最高。一方で、日銀は金融緩和を継続している。
「これまで、ちょっとでも景気が良くなれば、すぐに引き締めに動
いていた日銀だが、今回は我慢している。このため金融相場と業績
相場が同時に起きている。長い間、株式市場を見てきたが、こんな
ことは初めてだ。この状態が続くなら日経平均は3万円に行っても
おかしくない」とケイ・アセット代表の平野憲一氏は話す。
日経平均は7日、96年に付けた「バブル崩壊後高値」を更新、歴
史的な水準に達した。しかし、黒田東彦日銀総裁は、金融緩和姿勢
を維持し、年間約6兆円のETF(上場投資信託)買い入れも継続
する考えを示している(6日の発言)。
ただ、欧米は金利水準が低いとはいえ、金融引き締めにすでに方針
転換した。いま日本株を買っているのは海外勢だ。海外株が下落局
面に転じたときに、日本株だけ売らないという期待は持ちにくい。
日本企業の業績は好調とはいえ不祥事は相次ぎ、ROE(株主資本
収益率)も海外に比べ低いままだ。人口減少や社会保障の問題も残
されている。この好機を利用して「体質改善」を進めることが、持
続的な株高に欠かせない。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)



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