5962.新しい社会主義とは何か?



世界の景気は上昇している。その中で前回指摘したように、習近平
は、新しい社会主義思想を確立するというが、どのような社会主義
なのであろうか?それを検討しよう。       津田より

0.現状の世界景気
海外政治や国内の政局の有料版記事が続いているが、この期間、日
経株価は22000円にもなり、景気は良いように見える。この状況を生
み出しているのが、1つに世界の中央銀行の量的緩和を含む金融緩
和であり、もう1つが、中国景気の上昇で、日本の部品企業の受注
が好調であり、また世界的なブランド品や高品質な製品の好調な売
れ行きのためである。

中国の景気が良いのは、一帯一路の国家政策が世界的な物流改革を
起こし貿易を活発化させたことによる。このため、世界的な金融緩
和よる資産バブル崩壊の危機を救い、かつ世界的な景気の押し上げ
になっているからである。世界はすでに中国の景気動向に大きく影
響されている状態である。

そして、これにより、米国を追い越せる位中国の経済規模が大きく
なり、習近平は経済政策でも自信を持ってきた。このことにより、
新しい社会主義を打ち立てる野望を持てるようになったのである。

やっと、今回の19回全人代で、自分の部下を常務会メンバーに多
数入れたことで権力の集中化が増し、習近平独裁ともいえる体制が
でき、比較的容易に新しい社会主義を構築できるようなったのであ
る。

この社会主義思想面では、王滬寧(おう・こねい)の存在が大きい
。その王滬寧を精神文明思想のイデオロギー担当にしたことでも、
思想構築の重要性と、その思想に期待が込められている。

さあ、どのような思想なのであろうか?

1.中国の国際展開・外交
中国の外交の基礎は、孫子の兵法である。ケ小平は実力が着くまで
欧米に従い技術を習い尊大に振舞わないとしたが、この次の段階に
来た。尊大に振舞うことができるようになったということである。

そして、一帯一路により中国は海外に巨大な権益を持つようになり
、この権益拡大で、より大きな利益を生むように、中国主導のルー
ル作りも始めるようである。中国主導の世界的な規範が動き始め、
手始めにインターネット規制の規範を世界の標準にしようとしてい
る。これとともに、権益防護のために、海外への兵力の展開をする
必要で、愛国心を強調することも重要になっている。

また、一帯一路の成功で、本来の中国の世界観が出てきている。世
の中は「中華」とそれを取り巻く蛮族と見る「華夷(かい)思想」
であり、小国を小さくとも法的に大国と対等の主権国家という発想
がない。この華夷思想が前面に出てきた。

このため、中国に近い友好国であるカンボジア・ラオスなどは属国
化して、2つの国の首相は、簡単には習近平にも会えないし、国の
法律も中国の制限があり中国内の省長のような存在にされている。

これが嫌で、ミャンマーは中国離れをしたことでも、属国化した国
には国としての自由もなくなることがわかる。

中華思想の中心でもある習近平によると、中国は2050年までに「国
家として総合的な力を確立し、世界に大きな影響力を及ぼす国際社
会のリーダー」になるとし、米国を仰臥すると言っている。中国の
夢でもある。

しかし、これも孫子であるが、「戦わずに勝つ」方法を今の中国は
実践している。1つ1つの兵器の性能は、米国兵器の70%である
が、数を圧倒的に多くして、勝てないと思わせることに注力してい
る。日本の海上保安庁の艦艇の数でも、すでに中国が圧倒的な数に
して日本を仰臥している。質より量の考え方で来る。

また、孤立化を避けるためにロシアとは特別な関係を持つとしてい
るが、天然ガスの価格などの交渉は厳しく、ロシアの経済的なメリ
ットはそれほどでもないようだ。また、中国は、ロシアの軍事技術
を手に入れて、自国の軍事産業を活性化することを図り、よって、
政治的関係だけの同盟であり、ロシアも孤立化を避けるためだけに
中国と良好な関係にしているようだ。米国は、トランプ大統領にな
り、中国包囲網を築けるチャンスであったが、ロシアゲートにより
実現しなかった。日本はロシアとの友好関係を構築して、中国の攻
勢を防ごうとしている。

もう1つが、遠交近攻策である。遠くとは友好関係を構築し、近く
は攻めることになる。欧州やアフリカとは友好関係を構築して、近
くのインドとの国境では国境紛争を起こし、南シナ海でも領有権を
主張している。

2.中国の新社会主義とは
Wikipediaによると、社会主義とは、個人主義的な自由主義経済や資
本主義の弊害に反対し、より平等で公正な社会を目指す思想である。

そして、習近平は、新たな常務委員全メンバーを引き連れ、1921年
に中国共産党第1回党大会が開かれた上海の記念館と、同会が官憲
に察知され、場所を変えて続行された浙江省嘉興の記念船「南湖紅
船」を訪れ、習近平を先頭に7人がそろって拳をあげ、入党の誓いを
したという。公平な社会を目指す習近平の新社会主義に掛ける意気
込みを感じるし、中国共産党による一党支配体制を堅持することを
誓わせたようである。

習近平は総書記就任直後、党中央委員を集めた会議で、
「(改革開放の前後)二つの歴史時期において、社会主義建設の思
想指導や方針、対策、実際の施策に大きな違いがあるのは確かだが
、両者は分断されたものではなく、まして根本的に対立しているわ
けではない。改革開放後の歴史時期によってその前の歴史時期を否
定し、また、改革開放前の歴史時期によってその後の歴史時期を否
定することはできない」(2013年1月5日新華社通信)
と語っている。この意味は「立ち上がり(毛沢東)、豊かになる(
ケ小平)段階から強くなる(習近平)段階を迎えた」との時代認識
を示したのであろう。習近平思想は中国が強くなる時代の思想とい
うことである。

今の中国は、国家政策である一帯一路の成功で経済は拡大している
が、しかし、資金のバラマキによるミンスキー・モーメントなど金
融崩壊などの可能性がある国内事情を承知している習近平と共産党
指導部は、国内に向って規制や統制を強化せざるを得ない。ジャー
ナリズムの制限や言論統制を強めている。

一党支配を崩す民主化も進めないが、このため、国民の期待を維持
することが重要な課題になる。この方法として、当面は、貧富の差
を縮小して国民の多くが豊かになるという期待を持たせることで一
党支配の維持を図るようだ。

逆に、習近平は、
「我が国の経済は急成長の段階から、高品質なものを生み出す段階
に移行し、今まさに転換期にいる。途切れさせることなく、我が国
の革新力と競争力を高めなければならない。」と言い、“創新経済
”とも命名し、自由な発想を奨励もしている。

この結果、経済政策を2つの柱で進めるようである。国家が進める
計画経済と民間企業中心のイノベーションを進める市場経済の混合
経済のようである。民間企業の資本自由化を進めて、自由な発想が
できる方向にも動いている。

しかし、民間企業も過剰な介入はしないが、統制できるように国家
総動員法を整備して、危機時にはいつでも介入できるようにしたし
、企業内に共産党委員会を作り、平時でも企業に介入できる仕組み
を整えた。

今までの経済成長は、国家政策と自由経済の両方でうまくいったが
今後もこれを推し進めて、うまくいくのかどうかはよくわからない。

しかし、中国衰退の評論とは違い、世界的な経済圏を構築すること
は確実である。ある程度の経済原則が中国流になることも避けられ
ないし、華夷思想で日本を経済的に属国化しようとしてくることも
確実である。中国では自由な発想ができないので、中国人技術者が
育たずに、日本人技術者を引き抜き、新技術製品を作る可能性も高
い。

それに対応する日本の経済政策、外交政策をどうするのか、非常に
難しいことになってきたことは確実である。


参考資料:
Why China’s Capital-Account Liberalization Has Stalled
Oct 31, 2017 YU YONGDING
https://www.project-syndicate.org/commentary/china-capital-account-liberalization-on-hold-by-yu-yongding-2017-10

==============================
中国、強硬外交時代に突入か 2期目の習主席の大きなビジョン
Nov 3 2017newsphere
【北京・AP通信】 今年夏公開の映画『戦狼2』は、中国のアクショ
ンスター、ウー・ジン氏演じるタフで愛国心溢れる主人公が中国人
民解放軍の援護を受けながら味方の中国人だけでなく敵のアフリカ
人までも救う。
『戦狼2』は観客から大きな支持を得て、中国の映画興行収入最高記
録を更新した。映画のラストシーンでは中国のパスポートと共に「
あなたには偉大な祖国がついていることを、忘れないでください」
という言葉が映し出される。それを見て国家を歌いだす観客もいた
という。
 このような極めて旺盛な愛国心を巧みに扇動してきたのが、中国
の与党である中国共産党中央委員会総書記、習近平国家主席だ。習
氏には中国国民に対する党の影響力を強めると共に、米国や西洋諸
国の力が弱まった時を狙って自国の存在感を示したいという野心が
ある。
 先月開催された中国共産党全国代表大会では、参加党員らが習氏
の掲げる政策を支持した上で、習氏の党総書記(任期5年)2期目続
投を承認した。これを受け習氏の外交政策はさらに強硬なものにな
り得るとオブザーバーは言う。
 マイアミ大学の政治学教授ジューン・トイフェル氏は、「習氏は
勢いに乗っている」と言う。中国政府が南シナ海に建設した人工島
の開発を進めていることからもわかるように、習氏は他国への圧力
を徐々に強めており、中国の影響力は今後も拡大を続けるだろうと
トイフェル氏は予測している。
 先月18日、中国共産党大会の開幕式で習氏は演説を行い、中国は
「自主的外交で平和を」追求し、防衛対策として軍事力の保持に努
めると繰り返し主張した。しかし同時に、いざとなれば対立もいと
わないとし、その姿勢を過小評価しないよう他国を牽制する発言も
あった。
 習氏は北京市の人民大会堂に集まった参加党員らに向け、「いか
なるものであろうと、国の利益を害するものを許すような中国であ
ってはならない」と訴えた。
 ケ小平が1980年代後半に徹底的なマルクス主義を唱えて台頭して
以降、中国は改革開放政策の指導者である同氏の「控えめな姿勢で
好機が来るのを待ちながらも、物事を進めておく」という考え方を
固持してきた。
 ここ10年の世界的な経済危機に各国が苦しむ中、中国はさほど大
きな打撃を受けなかったこともあり、ケ小平時代の方針にも変化が
見られるようになった。以降、習国家主席指導のもと中国の外交政
策はますます強気になっている。
 中国は自国の急成長する経済と大量の外貨という経済力をもとに
他国への影響力を強め、国際社会において大きな野心を見せている
。そして今年、中国はある重要な転換期を迎えた。中国人民解放軍
がジブチ共和国で中国初となる海外基地建設に乗り出したのだ。過
去数十年にわたり、中国はこのような軍事施設を帝国主義者が残し
た冷戦の遺物だと非難し、建設には手を出さなかったが、今年にな
ってその主張をひっくり返すこととなった。
 中国の最終的な目標は明らかだ。東アジアを代表する国となり、
経済的にも文化的にも世界を牽引する大国というかつての中国を取
り戻すことだ。
 今月18日の共産党大会開幕式での演説において、習氏はこのよう
な目標を繰り返し述べ、中国の国際社会においての地位向上という
ビジョンを説明した。習氏によると、中国は2050年までに「国家と
して総合的な力を確立し、世界に大きな影響力を及ぼす国際社会の
リーダー」になるだろう。
 オーストラリアのシドニー大学でアジア・太平洋の安全保障問題
を専門としているジンドン・ユアン氏は、「中国が目指すべき方向
性や在り方について、習氏はかなり大胆なビジョンを示している」
と言う。
 共産党大会が無事に閉幕となれば、中国は国際機関における役割
の拡大、アジアインフラ投資銀行を始めとする新たな取り組みの先
導、それに対する出資などの外交政策を、これまで以上に強気な姿
勢で進めていくと思われる。また東・南シナ海やインドとの国境付
近など、緊張感の高まっている周辺地帯により積極的に踏み込んで
いく可能性もある。
 習氏のビジョンが最も明確に表れている戦略といえば、同氏が5年
前の国家主席就任ごろに提唱した一帯一路構想だ。一帯一路構想と
は、道路、鉄道、港湾といった交通網をいたるところに整備し、中
国と東南アジア、中央アジア、アフリカ大陸、ヨーロッパ、あるい
はさらに遠くの地域を繋げることを主な目的とした経済戦略で、数
千億ドルの予算が見込まれる大規模事業だ。これにより各国の経済
に欠かせない国となり、同時に政治的影響力も増大させることが中
国の目標だ。さらに過剰な生産能力と国内市場の傾きを受け伸び悩
んでいる中国企業に好機を与えるという狙いもある。
 ユアン氏によると、中国は一帯一路構想の実現に向け、国際情勢
を上手く利用しながらも、周辺各国や米国との関係悪化に繋がると
ころまでは踏み込まない外交術を磨いてきた。
 しかし、ときに中国は決して主張を曲げない頑固さを見せる。例
えば昨年、南シナ海で中国が領有権を主張していた海域について、
フィリピンが提訴した結果、オランダ・ハーグ国際司法裁判所は中
国側の主張の大半に法的根拠はないとしたが、中国政府はその判決
を遺憾とし受け入れなかった。
 韓国がアメリカのミサイル迎撃システムを配備したことに対して
も、中国政府は安全保障上の危機だと非難し、強固な態度をとって
いる。中国国営メディアは韓国を批判し、韓国への団体旅行が禁止
される事態にもなった。在中韓国企業も大きな打撃を受けている。
 しかしこのような強硬路線よりも現実的なアプローチの方が功を
奏する場合も多々ある。
 ドナルド・トランプ米大統領が中国の北朝鮮に対する対応を不十
分だと厳しく批判したり、中国の貿易に不正があったと糾弾したり
した時にも、中国政府はあえて強く反論に出ることはせず、穏健な
対応を見せた。習氏は同時にフロリダにあるトランプ氏の別荘マー
・ア・ラゴ訪問を首尾よくこなしており、これに対する世論も好意
的なものが多く、中国政府にとっては望ましい結果となった。11月
には今度はトランプ氏が、北京を訪問する予定だ。
 中印国境付近では最近まで膠着状態が続いていたが、中国政府が
国境からの中印両軍撤退に合意した。中国がホストを務めたBRICs首
脳会議が開催される数日前のことだ。首脳会議には習氏とインドの
ナレンドラ・モディ首相の両者が出席している。
 フィリピンに対しても中国政府は態度を軟化させており、ロドリ
ゴ・ドゥテルテ比大統領に対しインフラ投資の実施と、イスラム過
激派との紛争への軍事支援を提供した。さらに2012年に中国が実効
支配したスカボロー礁についても、以前はそこを漁場としていたフ
ィリピンの漁船が漁業活動を再開することを認めた。
 中国のこのようなアプローチは、効果を発揮しているようだ。ピ
ュー研究所が最近実施したアンケート調査によると、フィリピン人
の3分の2が中国と経済的な関係性を強化することが重要だと回答し
た。対して中国と領土問題で対立を続ける方が重要だと回答したの
は28パーセントにとどまった。2015年に行われた同様の調査におい
ては、フィリピン国民の意見はほぼ半々に割れていた。
 中国がどのような外交政策をとるかは、内政の状況にも左右され
る。ペンシルバニア州・ベスレヘムのリーハイ大学に在籍する中国
外交政策の専門家、イーナン・ホー氏によると、中国政府指導部に
はナショナリズムを扇動することで、国民の反発や不満を抑止して
きたという伝統がある。
 共産党大会で習氏が総書記続投と政策について思うような支持を
勝ち取れなければ、「今後も他国に対する攻撃性を強め、いずれか
の国に対立を仕掛けることもあり得る。そうすれば国民の愛国心を
喚起し、支持を集めることができるからだ」とホー氏は言う。
By CHRISTOPHER BODEEN
==============================
2017.11.3 13:00sankei
【正論】
「華夷思想」が国際標準となる可能性はゼロだ 日米は中国に「普
遍主義」外交を促せ キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・宮
家邦彦
 10月中旬に英国からルーマニアとウクライナを回った。同じ欧
州だが7日間で3カ国の出張は強行軍だった。日本の総選挙の結果
はキエフで知った。中国共産党党大会では習近平総書記が2049
年までに「中華民族は世界の諸民族の中で聳(そび)え立つ」と豪
語した。
 一方、米国ではロシア・ゲート関連でトランプ陣営の元幹部が起
訴され、来週からはトランプ大統領のアジア歴訪が始まる。この国
際情勢をどう読み解くべきか。簡単に世界一周して考えてみよう。
≪「国際標準」の確立目指す恐れ≫
 〈米国〉
 米国内政の左右分裂・両極化はますます深刻化している。トラン
プ氏は国際協調よりも国内支持層へのツイートの方に関心がある。
民主党系リベラルはもちろん、共和党系穏健派・国際派も従来、米
国主導で築き上げてきた国際秩序が風化する恐れを現実の問題とし
て感じ始めている。
 〈欧州〉
 欧州、特に東欧諸国の戦略家たちはトランプ政権の対北朝鮮対応
を懸念していた。彼らの関心はトランプ氏が同盟国へのコミットメ
ントを忠実に果たすか否かだ。他方、彼らにとり脅威はあくまでロ
シアであり、中国や北朝鮮ではない。欧州と東アジアの最大の認識
ギャップがこれだ。
〈中東〉
 中東も状況は似ている。サウジアラビアやイスラエルなど中東に
おける同盟国も、米国の対北朝鮮対応を注視している。彼らにとっ
て最大の脅威はイランのミサイルと核武装だ。東アジアで米国が危
機管理に失敗すれば当然「明日はわが身」となるからだろう。
 〈朝鮮半島〉
 一部識者が予測した労働党創建記念日や中国党大会に合わせたミ
サイル発射はなかった。北朝鮮にとって実験のタイミングは、核兵
器開発計画の進捗(しんちょく)状況と米国からの圧力の強弱で決
まるのだろう。一方、韓国は相変わらず「対話」の御旗を降ろさな
い。「日米韓」連携強化は容易ではなさそうだ。
 〈ロシア〉
 ロシア外交の最優先事項はクリミア事件に端を発する経済制裁の
解除だ。北朝鮮はシリアと同様、ロシアにとって米国と取引する材
料の一つにすぎない。北朝鮮の優先順位は決して高くないのだ。
 〈中国〉
 党大会の注目点は2つ。第1は習総書記が軍事のみならず技術、
品質、宇宙、インターネット、交通、製造の「強国」建設を謳(う
た)ったこと、第2は政治局常務委員の一人に王●寧(おう・こね
い)という国際政治専門家が入ったことだ。ある米国の高名な識者
は、米国が弱体化する中、中国が国際標準の確立を目指す可能性す
らあると指摘している。
 だが、果たしてそうなのか。筆者は大いに疑問だ。現時点での筆
者の見立ては次のとおりである。
≪華夷思想の世界観は機能しない≫
 今回、習氏は後継者を指名せず3期目続投に含みを残したが、そ
れは必ずしも権力闘争の結果だけではない。今、経済は中国型「中
所得国の罠(わな)」に突入しつつある。これを回避するには内需
拡大、構造改革、技術革新、国営企業改革などを進め、従来の硬直
的利権構造を改める必要がある。
 今回の権力一極集中はこうした改革に不可欠であるが、同時に、
権力集中なしには改革を実行できない中国のジレンマをも象徴して
いる。
 誤解を恐れずに言えば、現行の国際法秩序は欧州の一神教的世界
観から生まれたものだ。神の下で平等に創造された人間と同様、国
際社会は、如何(いか)に領土や人口が大きくても、基本的に平等
な「主権国家」群から成り立っている。
 ところが中国の世界観は違う。世の中は「中華」とそれを取り巻
く蛮族からなると見る「華夷(かい)思想」には、小さくとも法的
に大国と対等の主権国家という発想がない。このような世界観が「
国際標準」となる可能性はゼロだろう。
 ≪米国のパワーを適切に行使せよ≫
 そもそも米国のパワーは低下していない。かくも広大で天然資源
の豊富な大陸に人口は僅か3億人しか住んでいない。そこでは富の
再分配よりも先進性と創造性が重んじられ、今も世界から無数の若
い頭脳が続々と集まる。このような若い国のパワーが衰えることは
ないだろう。
 低下しているのは、米国自体の力ではなく、このパワーを適切に
行使できる米国政治リーダーの能力だ。その典型例がブッシュ、オ
バマ、トランプという3代の大統領なのである。
 最後に、今東アジアで日本は何をすべきか。第1は「日米韓」の
連携を確認・強化する。第2に、この連携の下、北朝鮮の核兵器が
中国の安全保障にとり有害であることを中国に認識させる。第3は
中国に対し、対北朝鮮政策だけでなく、「国際普遍主義」に反する
外交政策を変更するよう日米で慫慂(しょうよう)することだ。
 幸い安倍晋三首相はトランプ氏と良好な関係にある。トランプ氏
のアジア歴訪中に、日本が果たすべき役割は予想以上に大きいので
ある。(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・宮家邦彦 みや
けくにひこ)
●=さんずいに扈
==============================
日米経済界、中国の商慣習に懸念 米で財界人会議 
2017/11/3 13:16nikkei
 【ワシントン=中村亮】経団連の榊原定征会長らが参加する日米
財界人会議が2日、ワシントンで始まった。初日の会合では中国の
商慣習に対する懸念が相次いだ。海外企業への技術移転の要求や中
国版の経済圏構想「一帯一路」の進展を受けて中国主導のルールづ
くりを警戒する。6日の日米首脳会談でも中国問題が焦点の一つに
なる見通しで官民が足並みをそろえる。
 「中国のやり方は我々の利益と両立しない」。初日の会合では中
国の産業政策にこうした厳しい発言が相次いだ。全米商工会議所関
係者が中国版第4次産業革命にあたる「中国製造2025」に関して講
演。参加者からは計画実現につながるとみられる技術移転の要求の
ほか、中国の国有企業が公正な競争を阻害しているとの懸念が出た
。中国の共産党大会後の経済政策に関心が集まった。
 榊原氏は財界人会議で講演し「中国が我々とは異なる価値観に基
づく秩序を形成しているように見える」と発言。講演後には記者団
に「(中国主導のルールづくりが)広がる前に日米の側のルールづ
くりを先行すべきだ」と述べた。財界人会議が3日にまとめる共同
声明には中国の商慣行への懸念を盛り込む方向で調整している。
 日米の経済界が懸念を強めるのは中国独自のルールづくりが加速
しているとみるからだ。たとえば中国は6月にインターネット安全
法を施行し、中国国内で得た顧客情報を国内に保存するよう求め、
持ち出しは当局の認可が必要とした。経団連を含む世界の経済団体
は自由なデータの流通を求めてきたが予定どおりの施行となった。
 経済界の動きは日米両政府の懸念とも重なる。トランプ米政権は
通商法301条に基づいて中国の知的財産権の保護に関して調査してい
る。日米両政府は半導体技術などの高度な技術を持つ企業に対する
中国企業の買収を警戒する。日米経済対話でも「第三国に不公正な
貿易慣行に効果的に対処する」と中国を念頭に置いた共闘を掲げる。
 6日の日米首脳会談ではインド洋と太平洋をつないだ地域全体の
経済成長を目指す「自由で開かれたインド太平洋戦略」が議題にの
ぼる見通し。中国の一帯一路に対する対抗軸を明確にし中国をけん
制する狙いがある。
 環太平洋経済連携協定(TPP)は中国に先行して電子商取引や
国有企業改革などの通商ルールをつくり、日米主導の経済圏づくり
を目指していた。トランプ米政権は永久離脱を宣言した以上は復帰
の可能性は極めて低い。だが経済界から中国への懸念があがるなか
、日米両政府はアジア太平洋での経済秩序を再構築する必要がある。
==============================
習近平新指導部の上海視察は何を意味するのか?
2017年11月2日(木)15時45分NWJ
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
10月31日、習近平ら新チャイナ・セブンは上海にある第一回党大会
開催跡地を視察した。これに関して「権威高める狙い」「江沢民派
閥排除を強調」などの報道があり、又しても中国の真相を観る視座
を歪めている。
NHKも、産経新聞も
NHKは11月1日のニュースで「習主席の権威高める狙いか  中国共産
党ゆかりの地を訪問」と題して、「中国の国営テレビは、習近平国
家主席が新しく選ばれた最高指導部のメンバーとともに共産党への
忠誠を誓う姿や、大勢の人に歓迎される姿を放送し、習主席の権威
を一層高める狙いがあるものと見られます」と報道。
産経新聞は2017.10.31 17:28のネット・ニュースで「習近平氏ら中
国共産党指導部7人が上海入り 第1回党大会記念館を訪問、江沢
民派閥"排除"を強調か」というタイトルで、習近平が新チャイナ・
セブンを従えて上海を視察し、第一回党大会の跡地を訪問したこと
を報道している。
両方とも「習近平が新チャイナ・セブンを従えて第一回党大会が開
催された上海にある跡地を視察した事実」を報道していることに関
しては全く間違いがない。しかしNHKは、それを「習近平の権威を高
めることが狙いだ」と解釈し、産経新聞は「江沢民派閥"排除"を強
調するため」と解釈している、その解釈が適切ではないのだ。
中国共産党は1921年7月23日から31日まで、上海のフランス租界の貝
勒路樹(ベラルーシ)徳里3号(のちに望志路106号、現在の興業路
76号)にある建物の中で、こっそりと第一回党大会を開催した。参
加者はわずか12人(後に1人増加)。
こっそり開催したのは、国民党の政権下にあったので、共産党の活
動は厳重に取り締まられていたため、隠れるようにして開催したわ
けだ。開催中、案の定、国民党軍に場所がばれた情報を事前にキャ
ッチして、慌てて逃げ出し船の上で残りの議事を討議した。
産経新聞には、「毛沢東らが党設立を決めた」とあるが、「ら」と
いう一文字がありはするものの、党設立は毛沢東が主導したもので
はない。中国共産党を主導したのは陳独秀で、このとき毛沢東はま
だ下っ端で、長沙の代表に過ぎない。それも開催前に北京から離れ
ていなければ代表の一人にさえなれなかった。毛沢東が共産党の権
力を握り始めるのは延安に着いてからで、それから15年も以降のこ
とである。この経緯は拙著『毛沢東日本軍と共謀した男』p.49前後
で詳述した。
ではなぜ、NHKや産経新聞の「解釈」が必ずしも適切ではないのか。
(なお、筆者はペーパーレスで、メールに自動的に入ってきたネット
・ニュースしかチェックしていないことをお許し願いたい。)
勿忘初心(初心、忘るべからず)
2007年3月、習近平は江沢民とその大番頭・曽慶紅の、胡錦濤政権
に対する強引な主張によって、上海市の書記として上海にやって来
た。着任後、習近平が最初に視察したのは、なんと、中国共産党第
一回党大会が開催された跡地だった。それはまるで中国共産党の「
紅い血統」を誇示するようでもあり、5年後の「紅い皇帝」を心に
描いていたような選択だった(詳細は『チャイナ・セブン <紅い皇
帝>習近平』p.122)。
しかし10年後の2017年10月18日、党大会初日に習近平は総書記とし
ての3時間24分にわたる党活動報告をしたが、そこで何度も使った言
葉は「勿忘初心(初心、忘るべからず)」だった。
この「初心」とは何なのか?
それは中国共産党は何のために設立されたのか、という建党時の理
念だ。
1949年10月1日に中華人民共和国が誕生したとき、私たちはその「中
国」を「中華人民共和国」と呼ばずに「新中国」と称した。
全中国で「共産党がなければ新中国はない」という歌が歌われ、教
育現場で歌わされるだけでなく、新華書店という唯一の本屋に行っ
ても必ずこの歌が流れており、幼稚園生から公園で太極拳を舞う老
人に至るまで、どこもここも「新中国」という言葉に満ちていた。
あの「新中国」が誕生した時(その後の数年間だけ)、人民はまだ中
国共産党を信じていた。
1978年12月に改革開放が始まって、社会主義国家の人民が金儲けに
走っていいことになり、これでは「精神が腐ってしまう」と反対し
た毛沢東時代の老人たちは「特色ある社会主義国家、中国」という
「特色」二文字を冠することによって黙らされ、30年後には底なし
の腐敗が蔓延した。
何が共産党だ、何が社会主義国家だ!
人民の不満は爆発寸前になっている。それを言論弾圧などで抑え続
けることが出来る時代ではない。
ネットがある。
もう誰も共産党など信じていないことを習近平は知っているだろう
。だからこそ、どのようなことがあっても共産党がどれだけ素晴ら
しいかを人民に植え付け再洗脳しなければならないのだ。
となれば、中国共産党が誕生した時の「初心」に戻ろうではないか。
それが「勿忘初心」なのである。
だから新チャイナ・セブンにあの最後の中国の知恵袋・王滬寧(お
う・こねい)を精神文明思想のイデオロギー担当に遂に入れてしま
った。江沢民、胡錦濤、習近平と三代の紅い皇帝に仕え、絶対に政
治の表舞台に出たくないと頑なに拒否してきたあのブレインを、表
舞台に出してしまったのだ。
もう、彼なしでは一党支配体制が危ないほど、「特色ある社会主義
国家」を支える「中国共産党」は、実は危機に瀕しているのである。
中国共産党入党の時の「宣誓の言葉」
習近平率いる新チャイナ・セブンは、上海市にある第一回党大会開
催跡地で、中国共産党に入党するときの「宣誓の言葉」を斉唱した
。右手の拳骨を頭近くにまで掲げて、「宣誓の言葉」を唱えた彼ら
は、「党員になった時の初心を忘れてはならじ」と誓ったのだった。
この「宣誓の言葉」を聞けば、どんなに堕落し腐敗した党員でも、
さすがに厳粛な気持ちになる。それが中国共産党員入党という儀式
だ。
中華民国における腐敗を打破し、自由と民主を目指したはずの中国
共産党は、今もういない。
腐敗を撲滅し、自由と民主を人民に与える初心を全うするには、中
国は民主化するしかない。一党支配体制を打破するしかないのだ。
そんなこと、出来るはずがないだろう。
民主化をすれば、中国共産党による一党支配体制は終焉する。習近
平はラスト・エンペラーになるのである。それだけは、絶対にあっ
てはならない。
習近平政権は、その巨大な矛盾の中で闘っている。
おまけに中国共産党は日中戦争時代に勇猛果敢に日本軍と戦って新
中国を建国したのだという抗日神話を捏造して、真相を隠蔽しなが
ら人民に嘘をつき続けていなければならない。
習近平思想は毛沢東思想を越えなければならない
毛沢東思想とは、ざっくり言えば「マルクス・レーニン主義の中国
化」だが、ではそれは具体的には何を意味するのか?
拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に詳述したが、毛沢東は1917
年のロシア革命をきっかけとして誕生したソビエト連邦(旧ソ連)と
スターリンがモスクワで指揮するコミンテルン(共産主義インターナ
ショナル)が大嫌いだった。農民出身で学歴がない毛沢東は、コミン
テルンのエリート集団が大嫌いなのだ。
だからロシア革命の中心となった都市の労働者ではなく、文字も読
めない(中国人民の90%を占めていた)農奴のような農民を立ち上
がらせて中国式の革命を広げていった。これは完全なボトムアップ
の運動だ。文化大革命にしても少年少女たちを紅衛兵にして立ち上
がらせたボトムアップ運動である。「敵は司令部にあり!」として、
国家主席の座を劉少奇に渡してしまった政府を批判せよと扇動した。
そして文化大革命の10年間、知識人を弾圧した。
このことは、毛沢東が北京大学の図書館の小間使い的なことをやら
されて、その屈辱に耐えかねて北京から逃れたことと深く関係して
いる。もし長沙に逃げず、北京にいたら、北京には多くの優秀なエ
リート共産党員がいたので、毛沢東は絶対に北京代表にはなれず、
第一回党大会の代表として党大会に参加することは出来なかったは
ずだ。
しかしその毛沢東は結局、毛沢東思想によって新中国を誕生させた。
習近平はその「新中国」を乗り越えて、「中国共産党建党」から「
新中国」ではなく、「新時代」に入らなければならないのである。
このネットの時代に、しかも中産階級が増えた時代にボトムアップ
運動などが起きたら、一党支配体制は一瞬で崩壊する。人民は既に
コントロールしやすい「無知の群れ」ではない。
ここにこそ上海市の第一回党大会開催跡地を習近平率いる新チャイ
ナ・セブンが視察した意味がある。
「党の初心」に戻るのであって、決して毛沢東思想に戻るのではな
い。
もし、毛沢東思想を中心にすれば、「新時代」の中国は「網民(ネッ
ト市民=ネットユーザー)」の声を聴かなければならないことになる。
それは絶対にできない。だから、「中国共産党建党時の初心の威厳
」により人民を圧倒し続けなければならないのである。
これが上海市に新チャイナ・セブン全員が揃って行った意味である。
江沢民閥を排除するためなどと、狭量な解釈をするのは妥当ではな
い。
この大局に気づかなければ、これからの5年間の中国の真相を見つめ
ようとする正確な視座を持つことは出来ないだろう。
==============================
中国軍がグアムを標的に軍事演習、太平洋進出を米警戒
China Practices Bombing Guam, Flies Jets Toward Hawaii
2017年11月1日(水)17時35分NWJ
トム・オコナー
<グアムは北朝鮮だけでなく、太平洋の覇権を狙う中国の脅威にも
さらされている>
米軍関係者は10月31日、米領グアム島の米軍基地を標的にした軍事
演習を中国が実施したと明らかにした。緊張が続く太平洋上で軍事
活動を活発化させる中国の動きに、米国防総省は警戒を強めている。
米国防総省の関係者は米軍事専門紙ディフェンス・ニュースへのブ
リーフィングで、中国軍のH6爆撃機が「グアム攻撃」を想定した「
異例の」飛行訓練を行い、ハワイ島近くにも爆撃機を飛ばしたと明
らかにした。グアムとハワイの米軍基地は、アメリカのアジア太平
洋戦略の要だ。中国の急速なアジア太平洋進出は、アメリカの安全
保障を脅かす行為だと、ジョセフ・ダンフォード米合同参謀本部議
長はみる。ディフェンス・ニュースによればダンフォードは、アメ
リカが太平洋上で軍事プレゼンスを保つ重要性を繰り返し強調した。
「太平洋上から米軍を排除しようとする人々がいる」「彼らに伝え
たい。アメリカは太平洋の大国だ。これからもここに留まる。アメ
リカの経済的繁栄はこの地域の安全保障と政治にかかっている」
米中間に火花
ダンフォードはさらに続けた。「中国の脅威が念頭にあると受け止
められても構わない。これが、国際秩序に沿ったやり方だ」「アメ
リカの国益を最大限にすることに焦点を絞っている。そのためには
一切妥協しない」
米海空軍の基地があるグアムとハワイは今年に入り、北朝鮮からの
核攻撃の脅威にさらされている。ドナルド・トランプ米大統領が8月
、「世界が見たこともないような炎と怒りに直面する」と北朝鮮を
脅し、核・ミサイル開発を止めさせようとした直後、北朝鮮軍が金
正恩朝鮮労働党委員長に提出したのが、具体的なグアム攻撃計画。
中距離弾道ミサイル「火星12」を4発同時にグアムに撃ち込む案だっ
た。
金は後日、グアムへのミサイル発射計画を一時保留すると表明。ア
メリカが朝鮮半島周辺で軍事増強をやめ、日本の自衛隊や韓国軍と
の合同軍事演習を実施しなければ、計画を実行しないとし、いった
んは緊張が緩んだ。だがアメリカが8月下旬に米韓合同軍事演習を実
施し、9月の国連演説でトランプが北朝鮮を「完全に破壊」すると言
って脅迫すると、北朝鮮は再び態度を硬化。「アメリカの狂った老
いぼれを必ず火で鎮める」と言い返した。
トランプはグアムの知事に対し、米軍は北朝鮮の攻撃からグアムの
人々を守る用意があると伝えた。だがグアムにとって、北朝鮮以上
に脅威なのは中国だ。中国軍は2015年9月、核搭載が可能な中距離弾
道ミサイル「東風26」を公開した。グアムを核攻撃し無力化できる
中国初のミサイルで、中国の国防アナリストやメディア関係者らは
「グアム・エキスプレス」や「グアム・キラー」と呼んでいる。
トーマス・シュガート元海軍指揮官は今年2月、「ウォー・オン・ザ
・ロックス」という自身のブログで、中国は以前から「デコイ」(
おとり)を使って太平洋上の米軍基地や艦船へのミサイル攻撃を想
定した実戦演習を行っていた、と明らかにした。米軍が中国のミサ
イル攻撃に反応する時間は「10〜15分程度」しかないという。中国
はまた、日本や韓国の米軍基地に撃ち込むため様々な射程の強力な
ミサイルも保有している。
==============================
皇帝になった習近平:内に統制強化、外に覇権的拡大
在中国日本企業は中国共産党の統制監督下に
2017.11.1(水)  樋口 譲次 アゴラ
在中国日本企業は中国共産党の統制監督下に
 衝撃的なニュースが飛び込んできた。何と中国共産党組織が外資
企業の7割に設置されたというのである。伝えたのは、米ニューヨー
クに本部を置く中国語非営利衛星放送局の新唐人テレビだ。
 それによると、中国共産党機関紙「人民網」は、次のように報じた。
 10月19日、中国共産党中央組織部の斉玉副部長は、中国共産党大
会の記者会見で、2016年末までに国営企業14万7000社のうち93.2%
に党組織が設立され、民間企業273万社のうち67.9%、さらに外国企
業10万6000社のうち70%に上る7万5000社に党組織を設立した旨を明
らかにした。(ゴシックは筆者付記)
 帝国データバンクの調べによると、昨年(2016年)8月末時点で、
中国に進出している日本企業は1万3934社。
 単純に計算すると、進出企業の70%は約9800社に上り、実際の数
字は明らかではないが、それほど多くの日本企業が中国共産党の統
制監督下に置かれているという、驚くべき事実が中国側から公表さ
れたのである。
 前掲の斉玉副部長は、企業内に共産党組織を設立することは、企
業の経営発展を促すことになり、党組織のアドバイスにより、中国
の政策を理解し、雇用問題の解決を図れるためだと話した。
 しかし、それはあくまで、表向きであって、国内外におけるいざ
という時に、共産党の方針に従って、企業を統制し監督することが
主たる狙いになっているのは否定できない。それは、この後述べる
、中国の「国防動員法」と大いに関係しているからである。
 他方、中国の国内事情からみれば、党員をもってすべての企業の
内部監視を行わなければ安心できない中国共産党の不安な心理状態
が透けて見える。
 今般の共産党大会で「核心的リーダー」、言い換えれば「皇帝」
になった習近平総書記(国家主席)が、神格化された自らの権力に
よって一党独裁体制を維持するための国内統治を強化しようとする
意図がありありである。
「国防動員法」が及ぼす日本への脅威
 中国は、2010年7月に「国家の主権、統一と領土の完全性および安
全を守るため」として「国防動員法」を制定した。
 この法律によれば、「召集された予備役要員が所属する単位(役
所や企業など)は兵役機関の予備役要員の召集業務の遂行に協力し
なければならない」(同法第31条)。
 在中国日本企業が雇用した中国人従業員が予備役として招集され
る場合はそれに従い、職場を離れている間も、雇用主である日本企
業は給与支給などの処遇を続ける義務が生じる。
 また、同法には「金融、交通運輸、郵政、電信、報道出版、ラジ
オ・テレビ・映画、情報ネットワーク、エネルギー及び水資源の供
給、医薬衛生、食品と食糧の供給、商業貿易などの業種に管制を敷
く」(同法第63条)との規定がある。
 最悪の場合は日本企業の中国の銀行口座凍結や金融資産接収のほ
か、売掛金放棄なども起こり得る。
 さらに、「備蓄物資が国防動員の需要を延滞なく満たすことがで
きなくなったときは民生用資源を徴用できる」と規定し、「社会生
産、サービス及び生活に用いる施設、設備及び場所その他物資」(
いずれも同法第54条)がその対象となっている。
 自動車や電機など、現地工場の生産設備や物流のためのトラック
などの機材が根こそぎ徴用されてしまうことも予想される。
 最近、中国に出張中の日本人社員が、スパイ容疑で拘束され、逮
捕される事件が頻発しているが、有事の際には日本人駐在員やその
家族が人質になる恐れがある。
 また、企業秘密やノウハウなどがすべて中国側に筒抜けになって
しまう危険性も排除できないのである。
 冒頭に述べた日本企業をはじめとする外資企業を中国共産党の統
制監督下に置こうとする狙いと「国防動員法」の目的は、基底で重
なり、相互に関連している構図をしっかり認識したうえでの中国に
おける企業活動が求められよう。
 さらに、在中国日本企業は「国防動員法」が発動されると以上の
ような事態が起きることを想定して、情勢緊迫時には、すみやかに
国外へ退去し、あるいは資産を移せるよう普段から準備を行う必要
がある。
 と同時に、そろそろこのような「異質な国家」における企業活動
にはハッキリと見切りをつけ、他の有望な国や地域への移転を促進
するのも必要な対策の1つかもしれない。
 実は、この法律によって、日本国内で仕事をしている中国国籍保
持者や中国人旅行者にも「国防動員の平時準備と任務完遂の義務」
(同法第5条)が適用される。
 2016年末の在日中国人数(在日華僑を含む)は、約70万人(法務
省統計)。同じく2016年の中国から日本への旅行者は約637万人(日
本政府観光局=JNTO統計)で、合わせると、年間約700万人の中国人
が日本に滞在していたことになる。
 それらの中国人に対し、突発的に国防動員がかかる可能性は十分
にあり得る。その場合は、わが国の安全保障・防衛に重大な影響を
及ぼす危険性があり、そのことについて重々認識し、有効な対策を
練っておかなければならない。
 しかし、対応の中心となるのは全国約25万人の警察官、そして約
15万人の陸上自衛官であり、それらの要員をもってしても、対応に
限界があるのは歴然としている。
 このように、中国の厖大な「人口圧」によってわが国が押しつぶ
される可能性を決して甘く見てはならない。予想される事態は、至
って深刻である。
中国共産党大会後の中国:内には統制強化、外には覇権的拡大
 10月18日に開幕した第19回中国共産党大会で、習近平国家総書記
(国家主席)は毛沢東、ケ小平に匹敵する「核心的リーダー」、言
い換えれば「皇帝」の地位を獲得し、自らの神格化と権力集中に成
功した。
 そして、「立ち上がり(毛沢東)、豊かになる(ケ小平)段階か
ら強くなる(習近平)段階を迎えた」との時代認識を示し、自らの
使命を「強軍」「強国」に置き、建国100周年を迎える今世紀中頃ま
でに「社会主義現代化強国」を構築する長期目標を掲げた。
 また、2025年までには「総合的な国力と国際影響力において世界
の先頭に立つ国家になる」と宣言した。
 しかし、テレビなどの映像を通じて、外国には中国の団結と安定
のイメージを見せようとの意図があったかもしれないが、共産党大
会が開催された首都北京は厳戒態勢に包まれていた。
 街では包丁の販売やレストランでの調理、宅急便の配達が禁止さ
れた。会場付近の車両や住居は窓を開けてはならず、地下鉄では厳
重な検閲が行われ、少しでも反政府的な言動を行った人や宗教団体
のメンバーは当局の取り調べを受けた。
 また、共産党大会期間中、政府機関をはじめ、幼稚園や刑務所に
至るまで、大会を生放送で観るよう義務づけられた。
 中国国内では、一党独裁の共産党政権下の68年間に、貧富の格差
拡大とセーフティーネットの未整備、汚職や腐敗の蔓延、環境の劣
悪化など、様々な社会問題が積み重なり、その矛盾は極限状態にま
で達している。
 また、経済の中に隠れていたリスクが突然爆発し、資産価値が暴
落して大混乱を起こす「ミンスキー・モーメント」発生の恐れが指
摘されるなど、深刻さを増す国内事情を承知している習総書記を頂
点とする共産党指導部は、内に向って規制や統制を強化せざるを得
ないというのが実情のようだ。
 一方、習総書記は、党大会冒頭の活動報告で、過去5年間の成果と
して、「南シナ海での人工島建設を積極的に推進した」ことを挙げ
、東・南シナ海での中国公船の活動活発化を念頭に「海洋権益の維
持を有効に遂行した」とも述べた。
 日本をはじめ近隣諸国の主権を脅かし、ルールに基づく国際秩序
を破壊する「力による現状変更」として、国際社会から厳しい非難
を浴びている行動を、政権の成果として誇る国がすぐ近くにいる現
実を深刻に認識しなければならない。
 前述のとおり、「社会主義現代化強国」の建設という目標には、
それを支えるための「強軍」という、さらなる軍備拡大方針が重な
っている。
 習総書記は、米国の軍事力を睨みながら、今世紀半ばまでに中国
軍を「世界一流の軍隊」にすると明言した。
 その強大な軍事力を背景として、習総書記がこれまで繰り返して
きた「中華民族の偉大な復興である中国の夢を実現するため、引き
続き努力・奮闘しなければならない」との言葉通り、外に向かって
は覇権的拡大の圧力を愈々強めるものと見なければなるまい。
 一見、平和の中にある日本において、中国が「輿(世)論戦」、
「心理戦」および「法律戦」の「三戦」に「歴史戦」加え、それら
を積極的に展開しつつ、政治、外交、経済、文化、法律などの分野
の闘争と密接に呼応させた、巧妙で強かな作戦を仕かけている現実
がある。
 また、国内問題を国外問題に転嫁する手法は、これまでわが国が
経験してきた中国の常套手段であり、それらに対する不断の警戒を
怠ってはいけない。
 いま日本は、北朝鮮の核ミサイル開発の恐怖におののき、その関
心はひたすら北朝鮮問題に縛られている。
 しかし、21世紀の日本そしてアジア太平洋地域、ひいては国際社
会に向けられた最大の安全保障の課題は、中国の覇権的拡大のうね
りがもたらす影響にほかならない。
 北朝鮮発の「差し迫った眼前の危機」、「これまでにない深刻か
つ重大な脅威」に加え、中国の海洋侵出による覇権的拡大の重圧は
、わが国に戦後最大の試練を与えている。
 目先の脅威を注視するばかりでなく、日本に及ぶ中長期的な脅威
にもしっかり目を向け、「北朝鮮に備えつつ、中国に備える」とい
う真の課題に、わが国は果敢に挑戦しなければならない。
==============================
ロイター2017年10月30日 07:06中国人民銀行、ネット通じた融資へ
の監督を強化=経済誌
[北京 28日 ロイター] - 中国の経済誌「財新」は28日、当
局がインターネットを通じた融資への監視を強化していると報じた
。規制が行き届いていない中で急拡大を遂げていることへの懸念が
背景にある。
財新のサイトによると、中国人民銀行(中央銀行)の金融市場部門
幹部の紀志宏氏が、人民銀行が複数の当局とともにオンライン上の
金融リスクを管理する特別規則を策定したことを明らかにした。
同氏はあるセミナーで、この規則はすでに一定の成功をおさめたと
述べたという。
また、中国はあらゆるオンライン金融事業の規則の見直しを進め、
すべての活動が一定の監督の対象となるようにすべきとの考えを示
した。
==============================
「国会議員」75%をクビにした習近平新時代の危うさ  
編集委員 中沢克二 
(1/2ページ)2017/11/1 2:00日本経済新聞 電子版
 今回の中国共産党大会は、結局のところ総書記(国家主席)であ
る習近平(シー・ジンピン、64)の独り舞台だった。絶大な力を持
つ党幹部、中央委員に選ばれたのは204人。このうち習政権1期目の
2012〜17年に中央委員を務めて再選されたのはわずか78人だ。実に
6割が新人に入れ替わった。
 重要事項を決める中央委員会の全体会議に陪席できる中央候補委
員まで含めると75%の入れ替えだ。毛沢東が発動した奪権(権力…
==============================
中露は新型の国際関係の模範
人民網日本語版配信日時:2017年10月31日(火) 18時50分
ロシアのメドベージェフ首相が31日から中国を公式訪問し、第22回
中露首相定期会談に臨む。(文:蘇暁暉・中国国際問題研究院国際
戦略研究所副所長。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載) 
ロシアは中国の発展を注視し、両国関係を重視している。プーチン
大統領は第19回党大会に祝電を送った。10月26日に習近平国家主席
と電話会談した際、プーチン大統領は両国関係を高く評価。中露関
係は現代の世界の大国のむつまじい共存の模範といえるとの考えを
示した。 
国と国がいかに付き合うかは、中露の課題であるだけでなく、それ
以上に世界にとって解決する必要のある難題だ。第19回党大会報告
は「相互尊重、公平・正義、協力・ウィンウィンの新型の国際関係
の構築を推し進める」との答えを示した。中露関係はすでに新型の
国際関係の「モデルルーム」となっている。 
相互尊重は両国が調和ある共存を実現するうえでの基礎だ。中露は
共同声明など重要文書で、「中露善隣友好協力条約」を順守し、互
いに主権・安全・領土の一体性など核心的利益を守る相手国の努力
を支持し、相手国が自国の国情に合った発展の道を歩むことを支持
し、相手国の発展・振興を支持し、相手国が自主的内政方針を推し
進めることを支持すると表明してきた。中露は上層部が緊密な意思
疎通を保ち、様々な制度・メカニズムが連携して両国のスムーズな
交流を支えている。 
公平・正義は両国の包括的協力において当然の義だ。中露は共に第
2次世界大戦の戦勝国、国連安保理常任理事国、主要新興市場国であ
り、国際・地域問題で一層緊密かつ効果的に協力し、地域及び世界
の平和・安定・繁栄・発展を促進する責任と義務と必要がある。朝
鮮核問題など地域の紛争問題への対処においては、中露は軍事的手
段をとるべきではないと強調するとともに、混乱に乗じて利益を得
ようとする国に対して警告し、情勢の暴走を効果的に防いでいる。
協力・ウィンウィンは両国関係発展の永続的原動力だ。双方は各々
の強みを発揮し、互恵・相互理解の原則に基づき、発展戦略の連携
及び「一帯一路」建設とユラーシア経済連合の連携をめぐり各分野
の実務協力を深めている。両国はまた、人的・文化的交流及び協力
をたゆまず推し進め、民意の通じ合いと文化的融合を世々代々の友
好の基礎としている。 
第19回党大会報告は「中国は積極的にグローバル・パートナーシッ
プを発展させ、各国との利益の合流点を拡大し、大国の調整と協力
を推進し、全体的に安定し、均衡的に発展する大国関係の骨組を構
築し、『親・誠・恵・容』の理念及び『近隣国と親しくし、近隣国
をパートナーとする』周辺外交方針に従い周辺国との関係を深め、
正しい義利観と真実・真誠の理念を堅持して発展途上国との団結・
協力を強化する」と指摘した。中露の良好な相互作用は、中国の特
色ある大国外交設計の合理性と実行可能性を証明し、中国の「コミ
ュニティ」建設の素晴らしい将来性を示すとともに、新型の国際関
係構築の模範も示した。(編集NA)
==============================
中国経済、今年は7年ぶりの成長加速か−市場関係者が予想引き上げ
Bloomberg News
2017年10月30日 15:35 JST
中国の経済成長が今年、7年ぶりに加速するとの見通しを民間エコ
ノミストらが最新調査で示した。
  ブルームバーグが先週終えた調査によれば、2017年の中国成長
率は6.8%となる見込み。昨年末時点では6.5%と予想されており、
16年実績の6.7%から成長鈍化が進むと想定されていた。今年の年間
成長率が前年を上回れば、10年以来となる。
  先週までの調査で、成長見通しを上方修正したのはエコノミス
ト55人中11人。ベレンベルク銀行は0.3ポイント引き上げ6.9%に、
ドイツのヘッセン・テューリンゲン州立銀行(ヘラバ)も0.3ポイン
ト上方修正し6.8%とした。ゴールドマン・サックス・グループとバ
ンク・オブ・アメリカも引き上げた。
原題:Economists Press Pause on China Slowdown as 2017 Pick 
Up Forseen(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ



コラム目次に戻る
トップページに戻る