5926.グローバル化の中で日銀の金融政策は?



米国FRBの出口戦略に対して、EU・英国・カナダ・オーストラリア
などが中央銀行は一致して出口戦略を取る方向である。しかし、日
本とスイスは金融緩和を継続する。スイスは小国であり仕方がない
が、日銀の対応はおかしいし、問題を起こすことになる。
                 津田より

0.景況感と失業率
現時点のニューヨーク株価は、PER30倍まで行っている。割高の水準
である。ITバブル時はPER40倍まで行ったが、それ以外ではこの水準
はなかった。東京市場はPER14倍とニューヨークに比べて安い水準で
あるが、海外投資家は株価先物の売りになっている。将来は値下が
りすると読んでいる。

円安であるにもかかわらず、海外投資家の東京市場での買いが少な
いことで2万円を維持しているが上値が重い。何かが変である。今
までは円安になると株高になると思われていたからである。

また、米国商業用不動産価格も過去最高の状態になっている。日本
の不動産価格も銀座などの一等地は、1990年頃のバブル時の価
格を超え始めている。東京都心全体の不動産価格も上がっている。

日本もバブルが始まっている。世界の通貨発行高が正常時の5倍に
なり、世界的にバブル的な現象が起こっているようだ。

しかし、米国の景況感はそれほど良くない。インフレも1%程度、
日本では0%であり、先進諸国の景況感は良いわけではない。しか
し、日米ともに失業率は、完全雇用に近い位置にあるが、賃金の伸
び率が低い。

これは、上位10%の高所得者の資産が増えて、その人たちが不動
産を買うか、事業用に不動産を買うので、バブル状況になっている
が、90%の人たちの収入は、やっと生活できるレベルである。

このため、この層の消費は増えないし、物価が上がると困ることに
なる。そのため、商品を安くするので、賃金も上げることができな
いことになる。

1.世界の金融政策は一体化が必要
イエレン議長やFRB理事が心配しているのは、バブル崩壊による景気
の急減速であり、金利が低いことで銀行の倒産が起きることである。
そのためインフレ率が低くても公定金利を上げ、資産の売却で市場
金利を上げようとしている。このため、世界の中央銀行マフィアた
ちは、定期的に会合を開いている。それで世界の先進国の中央銀行
が揃って、金融緩和に動いているのである。

世界が協調して金融緩和を行い、世界が揃って金融緩和縮小を行う
必要があるためだ。一国だけが行うとその国の通貨だけが異常に高
くなったり、安くなったりするからである。世界経済はグローバル
化して一体で金融政策をしないといけないのである。

白川前総裁は、日本だけ金融緩和を行わなかったことで、1ドル=
74円という超円高にして、日本経済を窮地に陥れたが、今度は、
先進国の多くの中央銀行が金融緩和縮小する場面で、黒田総裁の日
本だけが金融緩和を維持する選択をすることになり、円安になるは
ずであるが、欧米から日本たたきが起こる可能性が高い。円安にな
り日本だけが得をすることは、先進諸国は許さない。

白川前総裁の判断は、日本だけ損をする処置であり、先進諸国は容
認したが、黒田総裁の判断は逆に、日本だけが得することになるの
で、許さないのである。

日本だけ金融緩和が遅れて、このため、金融緩和の効果が遅れてい
るので、金融緩和縮小も遅らせたいということであるが、それは金
融緩和を遅らせた日本の責任であり、先進諸国の責任ではないとい
うことである。

そして、黒田総裁に金融緩和政策を行わせているのが安倍首相であ
り、安倍首相に対する風当たりも強くなっている。

米国は日本に対してFTAを要求しているし、鉄鋼製品の輸入制限
を行うことにしている。円安になり日本からの輸入を止めることに
なる。G20でも日米首脳会談を最後までトランプ大統領は嫌がっ
た。ECBは米国の同調して金融緩和縮小することで、フランスの
マクロン大統領とは、反対に友好関係を増進した。

2.日本のリフレ派はおかしい
世界経済がつながっているという感覚が、安倍首相を支持するリフ
レ派の経済評論家や学者は持っていないようである。日銀の担当者
もおかしいと思うが、黒田総裁から言われて行っているとは思う。

そして、それらの人は、日本だけが金融緩和を維持するので、日本
だけが円安になり株高になると思っている。景気も良くなるとみて
いる。それが甘いのである。

世界は一体化しているので、金融緩和も緩和縮小も一緒にしないと
いけないのである。世界が一体でバブル崩壊を防止することが必要
であり、世界経済が不景気になれば、すべての国が不景気になるの
だ。鎖国でもしないと一国経済主義というのはないし、日本のよう
に景気の良し悪しを外需に依存している国は、特にそうである。

安倍首相の追い落としのために、前川前文科省事務次官が出てきた
とみている。普通、政府要員が政府を非難することはないが、誰か
が説得したのでしょうね。

どちらにしても、先進諸国の中央銀行と歩調を合わせていくことが
重要であり、それを拒否したことで、その政権を打倒する必要が、
欧米に出てきたことになる。

中国は元ドルのレートを維持するとしたことで、トランプ大統領は
自由民権運動家の劉暁波を殺したのに習近平を褒めている。

証券会社の見方は円安株高であるが、それを相殺する指標なり政策
で米国は打ち消してくると見た方が良い。

どう打ち消してくるのかが見物である。

さあ、どうなりますか?

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2017年 07月 15日 07:01 JST 
ドル全面安、弱い指標でFRB年内追加利上げに不透明感=NY市場
[ニューヨーク 14日 ロイター] - 終盤のニューヨーク外為市
場では、ドルがほぼ全面安の展開となり、対円では約2週間ぶりの
安値に沈んだ。朝方発表された6月の米消費者物価指数(CPI)
、小売売上高統計が市場予想に届かず、米連邦準備理事会(FRB
)が年内に追加利上げに踏み切れるか懐疑的な見方が強まった。
6月のCPIは前月から横ばいと、市場予想の0.1%上昇を下回
った。5月は0.1%下落していた。FRB内では最近の物価の弱
含みは一時的との見方が大勢だったが、6月にプラスに転じること
ができなかったことで懸念材料となりそうだ。また、6月の小売売
上高は前月比0.2%減と、2カ月連続のマイナスとなった。
ウエストパック・バンキング・コープのシニア通貨ストラテジスト
、リチャード・フラヌロビッチ氏は「CPIデータは、インフレの
弱含みがどの時点から一時的からより持続的なものになるのかとい
う問題を提起する」と話す。
主要6通貨に対するドル指数.DXYは0.6%低下の95.152。
一時は2016年9月以来の水準となる95.132まで下がった。
米フェデラルファンド(FF)金利先物相場では、弱い指標を受け
て、年内の利上げ観測が後退した。
ドル/円JPY=は0.65%安の112.53円。一時は2週間ぶり
の安値となる112.28円まで売られた。
ウエストパックのフラヌロビッチ氏は、ドル/円に一段の下げ余地
があると指摘。「とりわけ米国債利回りの低下に伴い、夏の終わり
までに110円まで下落する可能性が十分ある」と予想する。
ユーロ/ドルEUR=は0.62%高の1.1466ドル。
ポンドは対ドルで1.18%高の1.3088ドル。一時は2016
年9月以来の水準となる1.3093ドルまで買われた。
高利回り通貨の豪ドルとニュージーランドドルは大幅高となり、豪
ドルは約1年3カ月ぶりの高値をつけた。中銀当局者のハト派発言
に加え、世界の株式市場が最高値圏での取引となっており、リスク
選好が高まっていることが追い風となっている。

清水功哉(日本経済新聞)
きのうのNYで、あそこまで円が買われた理由がこれでしょう。膨
張していた円ショートの巻き戻し。「米利上げ観測後退」は一種の
「口実」? −− シカゴ投機筋 円の売越幅が2年ぶり高水準、ユ
ーロ買越幅6年ぶり水準 ( 日経速報ニュース  )
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緩和マネー、縮小へ難路 世界で90兆ドル 景気・物価なお不安
2017/7/15付日本経済新聞 朝刊
 米連邦準備理事会(FRB)に続き、主要な中央銀行が2008年の
リーマン危機後、ほぼ10年にわたり続けてきた金融緩和の解除に動
く。カナダは12日、7年ぶりに利上げを決断。英中銀も10年ぶりの
金融引き締め(総合2面きょうのことば)を視野に入れ、欧州中央
銀行(ECB)やスウェーデン中銀も「緩和方向」の政策方針を中
立に戻した。「超低金利時代」が続いた金融政策は大きな転換点に
差し掛かり、正常化へ向けて試練…
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鉄鋼発「貿易戦争」の恐れ 米「関税・割り当て同時」検討 WTO
ルール、「安保」抜け穴に 
2017/7/15付日本経済新聞 朝刊
 【ワシントン=河浪武史】米政権が検討する鉄鋼の輸入制限を巡
り、トランプ大統領が関税引き上げと輸入割り当てを同時に課す考
えを表明した。今回の輸入制限案は安全保障を理由とする異例の措
置。世界貿易機関(WTO)ルールの抜け穴になりかねず、各国は
対抗措置を検討する。米政権内にはアルミニウムや半導体の輸入制
限案もあり、秩序なき「貿易戦争」の懸念が強まる。
 「各国の長年にわたる不当廉売が、我々の鉄鋼産業を破…



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