5923.米国、戦略なしで八方塞がり



米国の経済戦略、外交戦略が何なのかが見えてこない。その場その
場に対応しているだけで、方向性が見えないし、戦略を立てて対応
しているのどうかが不明である。戦略なしの米国自体が八方塞がり
になり始めている。さあ、どうなりますか?  津田より

0.世界戦略は何か?
トランプ政権に世界への戦略があるのかが不安になる。北朝鮮の弾
道ミサイルに対応する戦略が、戦争を見据えているのか、平和的対
話をする意思があるのかどうも見えない。米国のヘイリー国連大使
は、「やむを得なければ」軍事力を行使する用意があるというが、
マティス米国防長官は、北朝鮮が戦争を挑発する以外、「戦争はあ
りえない」という立場である。

北朝鮮は、米国に戦争の意思なしと見て、「大小の『贈り物』を贈
り続ける」とする談話を出し、核・ミサイル開発をさらに推し進め
る姿勢を示している。それでも米国は、欧米銀行の北朝鮮関連資金
の差し押さえをするのみである。

韓国文大統領にも北朝鮮の対話は、適切な条件が必要として、禁止
をしなかったことで、それを受けて、中国とロシアは平和的な解決
が必要として、国連安保理の米国主導の北朝鮮非難声明も反対して
いる。米韓首脳会談で文大統領に強く当たらなかったことで、そう
なっている。

米露首脳会談でも中東の安全地帯での停戦に合意できたが、北朝鮮
問題では合意しなかった。ということで、トランプ大統領が言った
レッドラインである、ICBM実験をした北朝鮮をどうするのか見
えないことになっている。

これはオバマ前大統領が事前にレッドラインとしたシリアでの化学
兵器使用と同じで、そのオバマ前大統領を強烈に非難したトランプ
大統領も、同じ轍を踏むことになる。

戦略方向性が閣内統一しているなら、発言も統一しているはずであ
るが、その場その場で適当に対応しているようにしか見えない。

G20でも世界から米国は孤立している。自由貿易でもパリ協定で
もドイツなど欧州や中国、日本など世界主要国とは違うポジション
であり、意見を共有する国がなく、米国が世界の覇権国ではなくな
り、意見を先導するような立場ではなくなったことが、G20でも
明確化した。

その意味では、世界に覇権国はなく、Gゼロの世界になったと言え
る。今回のG20を主導した国がないことが今後大きな問題になる
とみる。

1.中東混乱か?
外交専門家がいないことによるとは思うが、米国の方向性がないの
で、オバマ時代のイラン関係正常化路線でカタールのようにイラン
と湾岸地域での天然ガス共同開発をしている国は迷惑を受けている。

しかし、米国はどのような中東政策なのかが依然、見えない。IS
崩壊後の中東の秩序はどうするのか、ないと中東は新たな紛争が起
きることになる。クルド族とトルコの関係やイスラム穏健派とイス
ラム独裁国、シーア派とスンニ派との関係など、多くの戦争になる
要因を持っている。というように中東の混乱が現時点でも見えてい
る。混乱時、米国はどうするのかも見えない。

米トランプ大統領はサウジのカタール国交断絶を支持したが、その
理由である原理主義のテロ組織に資金援助をもっとも行っているの
はサウジであり、頓珍漢にもほどがあるとみていたが、最近はわか
ってきたのか、サウジに自制を求めている。

そのサウジは、カタールへの要求を拒否されたことで、より強力な
対応処置を取るとしている。断交以上の処置とは戦争しかないよう
に思うが、中東の複雑性は戦争に結びつきやすい。

NATOに対応する米国の方向性は、今回見えたようである。ロシ
アの東欧、中欧への侵攻は対応する国に軍事支援を行うことにした
ことで、ロシアとの関係は改善しないようである。ドイツとフラン
スは国防費を増やして、米国からの安全保障での依存を脱却するよ
うである。

2.トランプ政権の経済政策
米国の景気は好調のようである。雇用統計でも24万人雇用増加で
FRBは、利上げや資産縮小に向けて動き出すことになり、ECB
も同様に出口戦略になり、日本を除く世界的な金利上昇が起きてい
る。

米国の民間消費が好調であり、その原因は2008年8兆ドルの家
計金融資産が2017年には16兆ドルになっている。しかし、そ
の間に新しい投資は、たった6千億ドルしかない。ほとんどが株式
市場での株価の上昇による。自動車のサブフライム問題で販売台数
が落ちたが、住宅販売が好調になってきた。というように経済は好
調になっている。

それも金融資産を持つ上位10%程度の人の消費が米国を支えてい
る。このため、2007年のリーマンショク前のバブル期以上に株
や住宅など資産価格が上昇している。景気が良いということは、バ
ブルも絶好調ということになり、バブル崩壊をFRBは心配してい
る。しかし、バブル崩壊の切欠が何になるのかはわからない。

私は、当初7月の雇用統計が低調になり、そこで大きな調整が起き
ると見たが、そうではなかった。次の候補は10月の国債限度額の
引き上げに失敗して、米国債がデフォルトすることになると見る。
ということで、大きな調整は10月まで先送りになったようである。

景気好調なのに、トランプ政権は、鉄鋼の輸入関税を20%するな
ど、保護貿易に向かっている。次にアルミの輸入も同様な処置をと
るようであり、徐々に保護範囲を増やしていくようである。競争的
環境ではなくなり、価格を上げていくことができるようになる。そ
れも基礎素材であるので広範な範囲の製品に価格転嫁が起きる。

しかし、この保護貿易で、世界的な経済活動を下押しすることにな
る。中国や欧州などは、対抗的な貿易制限処置をとる可能性があり
、米企業を狙い撃ちすることも考えられる。保護貿易で世界的な景
気は下押しになり、米国の小麦・肉などの食糧や建設機械の輸出は
難しくなる。

米国自体が完全雇用状態であり、かつ移民制限も行い始めて、イス
ラム圏からの入国を制限した。また、FRBの金利上昇と資産縮小など
で、株式市場の一層の株価上昇は限界がある。

このため、景気後退でのインフレが起きるスタグフレーションを起
こすことになりそうである。その時にはFRBは、利下げや量的緩和を
再度行い、景気を上げる方向になるとみる。このため、現時点では
早期に正常化を進めるのである。

3.日本も同様に
日銀だけは金融緩和の縮小を行わずに、10年国債金利を0%付近
に置く金利政策が続くので、世界的な金利上昇から大幅な円安にな
る。しかし、米国の保護貿易で景気は悪くなりそうである。もしか
すると、米国でバブル崩壊になり、景気が急降下する可能性も出て
きている。

しかし、金利差から円安になり輸入品価格は上昇しているか景気後
退のリスクオフでの円高で、景気は悪い状態になりデフレかスタグ
フレーションになる。

この円安の時、日銀は金利を上げ円安を止めて輸入インフレを止め
ると、金利が急上昇して、今度は予算の中の国債費の負担が増して
、財政赤字が巨大になり、大量の国債を発行する必要になる。どち
らにしても、財政の均衡化が必要になる。景気悪化時の増税という
最悪な状態になる危険がある。

もしかしたら、円高になるが、追加の金融緩和ができない状態にな
る。ETF買いもPER20倍以上と割高になり商い低調という市
場機能を落とすことになり、国債買いは市中に国債がないというこ
とになり、できないことになる。

どちらにしても、景気の良い時に国債を召還するという常識的な財
政運営や金利を正常に戻すという金融政策などをしなかった政府の
責任は大きいことになる。

もちろん、安倍内閣は国民の非難を浴びてつぶれることになる。

しかし、安倍政権を倒せるが、次の政権運営は厳しいことになる。
日銀の金融緩和を止めると金利上昇になりできず、徐々に緩和縮小
を行い、景気刺激策を取るために財政出動をすることになるが、難
しいことになる。

というように、危機を乗り越える方法が非常に難しいことは確かで
ある。

さあ、どうなりますか?



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