5910.中東大戦争に向かうカタール敵視



サウジなど6ケ国がカタールと国交断絶をした。スンニ派諸国の分
裂で何が起きるのであろうか?  津田より

0.サウジの立場
サウジ家は、スンニ派アラブの盟主として、アラブ世界をまとめる
必要がある。しかし、スンニ派は、独裁主義の王国と民主主義国家
の違いにより、分裂している。シーア派の盟主はイランであるが、
宗派としてまとまっている。

このため、サウジは、「アラブの春」という民主化運動を指導する
カタールやトルコと、シーア派イランの両面の敵と戦う必要になっ
ている。

今までのオバマ前政権時代、米国はイランとの核合意などで中立化
して、中東から引き上げる方向であり、サウジの立場は弱まってい
たが、トランプ大統領になりイスラエルやサウジの立場になり、サ
ウジは、息を吹き返したようである。

そして、トランプ大統領が最初の訪問地としてサウジを選択し、サ
ウジは米国の武器を大量(1100億ドル=約12兆円)に買い、ウィン
ウィンの関係を築いた。

このため、ここで、スンニ派のテロリストISISを打倒するとともに
民主化運動を駆逐することを考えたようである。

今までは、米国は民主化の伝道師として、アラブでの民主化運動の
中心地、トルコやカタールに空軍基地などを置いていた。中央軍前
線司令部もカタールに置いている。

現在、サルマーン国王とムハンマド副皇太子がサウジの政治を取り
仕切っているが、故アブドゥッラー国王時代の穏健的な外交から一
変して自己中心的な、アラブ盟主としての外交になっている。

最初に実行したのが、シーア派の亜流フーシ派との戦いであるイエ
メン内戦に介入したことであるが、このイエメン紛争は長期化して
いる。次に石油価格安定のために、原油生産の調整をせずに価格を
下落させて、米国のシェールオイルを叩いたが、今はOPECの原
油生産の調整を行っているが、価格は依然、50ドル前後で低迷し
ている。そして、今回のカタール国交断絶である。

すべて成功していていない。これは、複数の他者同士の関係を見ず
に、自己都合だけで外交をするからだ。

1.カタール国交断絶
サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン
、イエメンの暫定政権、モルディブを加えた計6カ国は、カタールと
の国交断絶をした。

カタールには、アルジャジーラという中東地域の世界的な報道機関
があり、反独裁的な報道が強く、サウジなどの独裁国家では活動を
制限されていた。そして、イランとも沖合のガス田の共同開発をイ
ラン核合意後、行っている。トルコとともにムスリム同胞団に援助
をしているなど、サウジとは違う独自外交をしていた。

米オバマがイランとの融和政策を取ったことで、米軍基地があるカ
タールもイランに融和的な姿勢に転換した。そして、カタールのサ
バハ首長が、「ハマス」をパレスチナ人の正当な代表と指摘し、イ
ランについても「湾岸地域の安定のための大国」と呼んだという報
道が出たが、これは報道機関がハッキングされたことであり、その
ような演説をしていないとカタール政府機関は言っている。

カタールは、サウジ主導のイエメンにおけるシーア派(フーシ派)
との戦闘に参加していたので、イランを正統な大国とは言うはずが
ないとは思う。

このカタール国交断絶にトランプ大統領は、サウジを支持した。ト
ランプ大統領は6日のツイッターで「最近行った中東訪問で、過激
思想を持つ集団への資金提供は今後あってはならないと私は述べた
。首脳らはカタールを挙げた!」、そして、カタール断交に踏み切
った行動はサウジの首都リヤドで行った湾岸アラブ諸国首脳らとの
会談が「既に実を結んでいる」ことを証明していると続けた。

しかし、米国の中東最大の空軍基地であるアルウデイド空軍基地が
カタールにあり、ISIS(自称イスラム国)掃討作戦の出撃拠点にな
っている。このため、米軍の基地への補給ができなくなり、米軍も
困ることになるとマティス国防長官やティラーソン国務長官は発言
している。事実、ティラーソン国務長官は事前に「断交しないよう
に」という調整工作をサウジにしたが、トランプ大統領に否定され
てしまった形になる。トランプ大統領の頓珍漢な発言で、米国政権
内部での意見分裂を露呈している。

そして、国交断絶によりサウジとの交通断絶で、食料や衣類など生
活用品の輸送もできなくなってしまった。このため、急きょ、イラ
ンとの関係を強化して、イランから食料品や衣類など生活用品の空
輸での調達を行い始めた。トルコも空輸での食料品などの補給を行
うことを決めている。

この件で、イランのザリフ外相は7日、事態の沈静化策を話し合う
ため急きょトルコの首都アンカラを訪問。エルドアン大統領らとの
会談を行い「地域で気掛かりな事態が起きている。トルコと緊密な
意見交換が必要だ」と語った。

トルコ、イランとの関係強化が確立したので、カタールは「事実無
根。決して降伏しない」(ムハンマド外相)とサウジなどに反発し
ている。

また、同じ考えのトルコが軍事援助を強化している。サウジは軍事
的な行動も示唆したことで、カタールはトルコとの軍事関係強化に
乗り出し、トルコのエルドアン大統領は緊張緩和のため、カタール
、ロシア、クウェート、サウジアラビアの首脳と電話会談を行い、
仲裁を開始していたが、仲裁は失敗のようである。このため、急き
ょ、トルコのカタール駐留軍を増派した。

2.中東大戦争に
米トランプ大統領は、独裁国家サウジ、地域で孤立化したイスラエ
ルに味方したことで、ロシアやシーア派イランと世俗国家トルコ、
カタールを敵にしてしまったように見える。

民主化の進んだ地域カタールとトルコに置いた巨大な米軍基地も撤
退を余儀なくされる可能性が出てきた。中東政策に戦略性を感じな
い頓珍漢なトランプ大統領により、再度中東戦争を意識する必要に
なってきた。

それも今までとは違い、ロシア、イラン、イラク、トルコ、カター
ル、シリアなどシーア派、スンニ派世俗主義国など広範な国家が、
敵になり、味方はイスラエルとサウジ、UAE、エジプトなど独裁
国が中心になる。徐々にヨハネの黙示録に書かれた多くの国にまた
がった国家連合との戦いになってきた。

そして、これを仕掛けたのが、プロテスタント福音派(エバンジェ
リカル)系のシンクタンクとの情報もあり、彼らは最後の審判を企
画しているようにしか見えない。ユダヤ教のクシュナー氏とムハン
マド副皇太子が近い関係にあり、クシュナー氏が仕掛けたとの情報
もあり、最後の審判に向けた一神教の恐ろしさを感じる。

3.東アジア情勢
米国が石油を必要としていない中東での戦争を企画して、中東情勢
を緊迫化させて、軍需産業を盛り立てる意図があるかもしれないが
、アジアで問題な北朝鮮との戦争はできないことになる。

北朝鮮は、やりたい放題になるし、韓国はTAHHDを配備せずに
中国寄りになり、南シナ海では中国が、やりたい放題になる。

米軍は中東での戦争に備えることが必要になり、中東米軍の駐留し
ている国と戦争になり撤退戦になる。このため、東アジアでの戦争
はできないことになる。

日本は、自国の安全保障のために、戦争放棄を見直すことが必要に
なってきたように思う。

さあ、どうなりますか?


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2017.6.5 20:18sankei
【カタール断交】
サウジの“逆鱗”に触れたカタール 5カ国が断交に踏み切った背
景には何があったのか
 トランプ米大統領の中東歴訪からわずか約2週間。地域大国サウ
ジアラビアを中心とする5カ国が、同じイスラム教スンニ派のカタ
ールと断交に踏み切った背景には、何があったのか。
 カタールは、サウジが脅威と認識するシーア派大国イランに融和
的な姿勢を見せてきたほか、域内で警戒論が強いイスラム教原理主
義組織ムスリム同胞団の「保護者」としても振る舞ってきた。豊富
な天然資源を有する富裕国でもある。
 カタールはいわば、スンニ派の盟主を自任するサウジに逆らう形
で独自の存在感を発揮してきており、だからこそサウジの“逆鱗”
に触れたのだといえる。
 カタールをめぐっては、2014年に同胞団を支援したとの理由
でサウジなどが大使を召還するなど、火種がくすぶっていた。イス
ラム世界の変革を求める同胞団の思想が広がることは反王制運動に
つながりかねず、サウジにすれば体制を脅かす危険組織と映る。そ
れを支援することは、同じ君主制国家のカタールといえど同罪とい
うわけだ。
 サウジはまた、ペルシャ湾を隔てて対峙(たいじ)するイランが
、核・ミサイル技術の開発や、サウジ国内のシーア派などを通じた
工作で、自国への圧迫を強めていると受け止めている。昨年1月に
はイランと断交。近年は、対イランを念頭に置いたスンニ派同盟の
枠組み作りにも取り組んできた。
 サウジは今回、カタールが、イランがイエメンで支援するシーア
派系武装勢力を手助けしたと非難。真偽は不明だが、対イランでサ
ウジとは一線を画した外交を展開するカタールは、サウジにとって
は足並みを乱す厄介者だ。今回の断交措置にはそれを懲らしめる意
味合いがある。
 一方、今回の断交を受け、ティラーソン米国務長官は5日、湾岸
諸国の団結を促す声明を出した。トランプ氏が5月、サウジを初外
遊先に選び、対テロでのアラブ諸国の結束をうたった直後だけに、
事態の激変に困惑している様子もにじむ。米国のメンツを無視する
ような今回の断交劇は、米国の中東地域への影響力が大きく低下し
ている現実も示している。(大内清、エルサレム 佐藤貴生)
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トルコ大統領、カタール断交で関係国首脳と会談 緊張緩和目指す
2017年06月06日(火)15時09分
[アンカラ 6日 ロイター] - トルコのエルドアン大統領は、一
部のアラブ諸国がカタールと断交したことを受けて、緊張緩和のた
め、カタール、ロシア、クウェート、サウジアラビアの首脳と電話
会談を行った。
大統領府の関係者が明らかにした。
同関係者は「会談では、地域の平和と安定が重要だという点が強調
された。緊張を和らげるため、外交と対話の道に専念することが重
要だと強調された」と述べた。
サウジ、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンは5
日、カタールとの断交を発表した。トルコはカタールや一部の湾岸
諸国と良好な関係を築いている。
ロシア大統領府は5日遅く、プーチン大統領とエルドアン大統領が
会談で対話と妥協を呼びかけたと表明。
エルドアン大統領は、サウジのサルマン国王やカタール、クウェー
トの首長とも会談。関係筋によると、今後もこの問題に取り組んで
いく方針という。
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2017年 06月 7日 06:31 JST 関連トピックス: トップニュース
カタール、ハマスとムスリム同胞団への支援停止する必要=サウジ
外相
[パリ 6日 ロイター] - サウジアラビアのジュベイル外相は6
日、カタールが中東主要国との国交を回復するには、イスラム原理
主義組織ハマスとイスラム組織「ムスリム同胞団」への支援を停止
する必要があると述べた。
サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレ
ーンなどは前日、テロリズムを支援しているとしてカタールと断交。
ジュベイル外相はこれについてパリで記者団に対し、カタールはハ
マスとムスリム同胞団を支援することでパレスチナ自治政府、およ
びエジプトをないがしろにしているとし、「カタールは中東の地域
的な安定に貢献できるよう、こうした(支援)政策を停止する必要
がある」と述べた。
また、「カタールが数年前に過激派グループ支援、自国の敵対的メ
ディア、他国への干渉について確約したことを実行に移すことを望
んでいる」とし、「誰もカタールを傷付けようとは思っていない。
カタールはどの方向に進みたいのか、決める必要がある」と語った。
サウジなどの中東主要国はカタールと断交すると同時に同国との陸
路、空路、海路の交通・輸送手段も遮断。ジュベイル外相はこうし
た措置はカタールにとり莫大なコストとなるとし、「常識的に考え
ればカタールは正しい道を選ぶだろう」と指摘。カタールが方針を
転換しなかった場合に軍事介入はあるかとの質問に対しては「そう
ならないことを望む」と述べた。
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トランプ氏、サウジ主導の対カタール断交を支持
Margaret Talev、Jennifer Jacobs、Glen Carey
2017年6月7日 06:31 JST
トランプ米大統領は、サウジアラビアが主導したカタール断交への
支持を表明した。
  トランプ大統領は6日のツイッターで「最近行った中東訪問で
、過激思想を持つ集団への資金提供は今後あってはならないと私は
述べた。首脳らはカタールを挙げた!」と述べた。
  その後の追加ツイッターでトランプ大統領は、カタール断交に
踏み切った行動はサウジの首都リヤドで行った湾岸アラブ諸国首脳
らとの会談が「既に実を結んでいる」ことを証明していると続けた。
さらに別の投稿で「多分これがテロリズムの恐怖終幕の始まりにな
るだろう!」と述べた。
原題:Trump, Taking Sides in Gulf, Backs Isolation of Qatar (1)(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ
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カタールの1人当たりGDPは1420万円、サウジの約2倍−チャート
Lee Miller、Mohammed Aly Sergie
2017年6月9日 12:06 JST
  カタールがテロ組織を支援しているとしてペルシャ湾岸の隣国
3カ国が同国との外交関係を断絶したことを受け、カタールの国民
は経済的な圧迫を感じつつある。国際通貨基金(IMF)が集計し
たデータによると、1人当たり購買力平価ベース国内総生産(GD
P)で、カタールは1998年にアラブ首長国連邦(UAE)を抜いて
以来、世界首位だ。ガス資源が豊富なカタールの今年の1人当たり
GDPは12万9112ドル(約1420万円)と予想される。これは、米国
とサウジアラビアの合計を約12%上回るが、IMFのデータによる
と、ピークだった2011年の14万7854ドルを下回る。
原題:Qatar’s $129,000 Average Income Is Double Saudi Arabia’s: 
Chart(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ
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カタール強硬、収拾見えず=アラブの「イラン包囲網」亀裂
 【カイロ時事】サウジアラビアやエジプトを含むアラブ諸国が「
テロ支援」やイランとの融和を理由に断交に踏み切ったカタールが
、強硬姿勢を貫いている。サウジなどはカタールに拠点を置くとさ
れる個人や組織をテロリストに指定して締め付けを図るが、カター
ルは「事実無根。決して降伏しない」(ムハンマド外相)と反発。
アラブ諸国が目指す「イラン包囲網」にも亀裂が生まれている。
 カタールと断交した国は中東、アフリカなどの9カ国。いずれも
アラブとの友好を重視し、サウジが強く働き掛けたとみられる。
 断交の引き金となった「イランと敵対するのは賢明でない」とす
るカタール首長発言について、同政府は7日、「サイバー攻撃によ
る偽ニュース」と断定した。それでも、収拾に向かう兆しは全くな
い。潤沢な天然ガス収入を基に、カタールが中東で独自外交を進め
ることがアラブ諸国の不信感を増幅させ、ムスリム同胞団やハマス
などのイスラム組織への支援疑念も晴れないためだ。
 各国はカタールとの陸海空の往来を停止し、地続きのサウジは国
境を封鎖。ヒトやモノの行き来を止める「兵糧攻め」で、カタール
の軟化を促したい考えだ。しかし、イランでの報道によると、カタ
ールはペルシャ湾を挟んで向き合うイランから、食料空輸の受け入
れを開始。アラブ諸国の思惑とは裏腹に、関係縮小に追い込むはず
のイランとの接近を招く結果となっている。(2017/06/10-19:17)


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