5908.ニューヨーク市場の楽観主義は大丈夫か?



日米株価だけではなく、世界の株価が皆上昇している。来週には、
FOMCが開催されて、利上げはほぼ確実になっている。このため、日
経平均株価も上昇すると思われている。しかし、これは本当であろ
うか?検討する。       津田より

0.トランプ大統領とイエレン議長の相反した政策
トランプ大統領は、パリ協定から離脱を表明した。環境省の予算も
大幅に削減して、環境基準を大幅に緩和することになる。石炭業界
は大喜びであるが、石油などの業界は反対になっている。石炭業界
は、新規火力発電所の燃料として大きな制限を作られて、販売でき
ないために、雇用数を大幅に減らしていたが、息を吹き返す可能性
がある。

科学技術の研究予算も大幅に削減するから、環境技術で米国は今後
トップに立てないことになる。失業が、今は花形の環境技術の研究
者にも押し寄せることになる。反対に、中国は環境技術の研究費を
増やしているので、米国の研究者は中国で雇われることになりそう
である。

そのほかに、トランプ大統領は、国務省予算も大幅に減らして、海
外援助費用を減らすので、海外での米国の影響力は大幅に縮減する
ことになる。国内でもオバマケアを大幅に削減して、無保険者が、
大幅に増えるようであり、ここでも予算の削減を行うようだ。

そして、減らした予算は、ほとんどを法人税の減税にする。なぜ、
このような政策を行うのかというと、景気に陰りが見えてきて、雇
用を守るとともに、米ニューヨーク市場の株価が今後落ちていくか
ら、企業収益を増やして、株価を維持するためでもある。そのこと
によって、消費を維持したいのであろうと推察する。

現時点、自動車のサブプライムローンが破たんしてきて、自動車販
売でのローン審査が厳しくなっているから、自動車販売台数が前年
割れを5ケ月も継続している。自動車は多くの産業に関連している
ので、自動車販売台数が減少すると、産業全体の企業活動が低調に
なり、米国労働者の雇用数が減ることになるからである。

しかし、この状況で、イエレンFRB議長は、6月の利上げを行う方向
である。新規雇用者数が、それでも13万人も増加している。失業
率も下がっている。もう1つが、バブルの危険性のある株価上昇を
抑えたいようである。

もう1つが、今後の金融政策の糊代を稼いでおきたいからである。
量的緩和を行ったことで、景気が良くなると資金が市中に出ている
ので、バブル化しやすくなっているので、早めに引き締め政策を行
う必要がある。

このため、バランスシート修正を12月ぐらいから行うともしてい
る。この出口戦略は、野村総研のリチャード・クー氏が言っている
ことである。

ということで、トランプ政権の景気刺激政策とイエレンFRB議長の景
気抑制の金融政策が相反することになっている。

1.AIバブルが発生か?
市場は、自動車販売台数の減少やムーディーズの中国格下げ、FRBの
利上げ、失業保険申請者数は24万人と増加し、フルタイムの仕事
数36万人減という株価を下げる売り材料に全く影響されずに、ト
ランプ政策に期待しているし、ロシアゲートでトランプ大統領が弾
劾されても、ペンス副大統領が大統領になったら、より上手く政策
を実行すると期待している。

何か、超楽観主義にニューヨーク市場はおおわれている。このため
、株価の上昇が止まらない。ダウ平均株価の予想PERが20倍にもな
っているので、バブル状況のようだ。

この理由としては、AIを使った産業の革新に投資資金が流れて、
株価PERが通常は17倍までといわれている数値が、20倍にな
っている。というように、2001年までのITバブルとも似てい
るようだ。

トヨタ自動車が日本では一番時価総額が大きいが、フェイスブック
はトヨタの10倍、2位のアルパベットはまだ売り上げが少ないが
トヨタの7倍にもなる。このようにAI系の企業の株価が急伸して
いる。テスラがGMやフォードより時価総額が上であり、何かがお
かしい。

どうも、イエレン議長が心配したことが現実に起きている可能性が
高い。そういう意味では、FRBの対応は遅れたことになる。そし
て、バブル化した相場は、いつか崩壊することになる。

2.ヒンデンブルグ・オーメンの点灯
おかしいと思っていたら、ヒンデンブルグ・オーメンが点灯した。
このヒンデンブルグ・オーメンは、米国株式市場のテクニカル的な
株価暴落の前兆とされるシグナル(サイン)であり、これが6月1
日に点灯した。直近では3月13日に点灯。同月21日にはダウが
昨年11月の米大統領選後で最大の下げ幅を記録している。日経平
均は同月13日から4月17日までの間、終値ベースで1300円
近く下落した。

ヒンデンブルグ・オーメンの起きるのは、四つの条件が同じ日に起
こった時に発生するとされる。また、一度発生すれば向こう30営業
日は有効で、マクラレンオシレーターがプラスとなれば無効となる。
1.ニューヨーク証券取引所(NYSE)での52週高値更新銘柄と52週安
 値更新銘柄の数が共にその日の値上がり・値下がり銘柄合計数の
 2.8%以上
2.NYSEインデックスの値が50営業日前を上回っている
3.短期的な騰勢を示すマクラレンオシレーターの値がマイナス
4.52週高値更新銘柄数が52週安値更新銘柄数の二倍を超えない

過去のデータによれば、ヒンデンブルグ・オーメンが確認された後
、以下のようなことが起こるという。また、本シグナルが発生して
も暴落しないケースもあるが、1985年以降では、米株式市場が暴落
した際は、いずれの場合も本シグナルが現れたそうだ。
・77%の確率で株価は5%以上下落する
・パニック売りとなる可能性は41%と算出されている
・重大なクラッシュとなる可能性は24%と算出されている

ということで、今後1ケ月の間には米国市場は暴落なり、東京市場
も影響されて、暴落する可能性がある。

FOMCが13日にあり、利上げを決めるはずであり、そのタイミング
で下落が始まる可能性も無視できない。また、コミー前長官が8日
に議会証言を行うともいう。

しかし、現時点の恐怖指数(VIX)は、9.75と極端に低く、
誰も株価が大幅下落するとは考えてもいないことになっている。

この指数が30を超えないと暴落にはならない。しかし、それは社
会で恐怖を煽る事件や統計が出てくると、一挙に数値はアップする
ので、何か経済的な事件が起こるのかもしれない。現時点、自動車
のサブプライムローンが焦げ付いているので、自動車関連の金融機
関の破たんはあり得る。

3.相場の格言
「相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、
幸福感の中で消えていく」アメリカの著名投資家ジョン・テンプル
トンの言葉ですが、現在、ニューヨーク市場は、全員が儲かってい
る状況であり、幸福感の中にいる。そして、その時が相場の消える
時なのである。

東京市場は、長らく懐疑の状態であり、やっと楽観主義が海外から
押し寄せてきた感じである。日経平均株価の予想PERは14倍であり
ニューヨーク市場から比べると、割安な株価である。このため、懐
疑から楽観に移行したのである。

しかし、その時が崩壊の時になっている。幸福感を感じる期間が非
常に短いかもしれない。

さあ、どうなりますか?



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